iPhoneを使って簡単に3Dデータを作成出来るサービスがあることをご存じですか?
iPhoneを使った3Dデータを作成する方法として、【フォトグラメトリ】という写真測量法とiPhoneに搭載されているセンサー技術【LiDAR】を使い3Dモデルを作成する2つの方法があります。
この記事では、iPhoneを使い簡単に3Dデータを作成する方法を紹介いたします。またiPhoneでLiDarスキャンアプリを作ってみたいという方はお気軽にご相談ください。
フォトグラメトリとは?
フォトグラメトリ(写真測量)は写真を使った測量を指し、おもに建築、工学、地質学、製造などで利用される測量法です。
フォトグラメトリの特徴として複数枚の写真を使い、3D形状の地形を測量することが可能な点です。
特殊な写真ではなく通常の写真測距でき、多面的に撮影した複数枚の写真を用意することで、ビルや建物の3Dデータを測距することができます。
通常110枚程度の写真を用意すると、3Dデータを作成することができます。
簡単にまとめると、スマートフォンやデジタルカメラで撮影した写真で3D測距ができるということです。
LiDARとは?
Light Detection And Ranging(光による検知との測距)の略称です。
※Laser Imaging Detection And Ranging(レーザー画像検出と測距)の略称とも呼ばれています。
その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測する技術です。
自動車の自動運転を支援するシステムで多く使われるミリ波(周波数帯30~300 GHzの非常に高い周波数の電波)レーダーによる計測よりも、高精度に人や障害物を検知することが可能になることから、自動運転実現に向けて高度化が期待されています。
(引用:産総研マガジン)
LiDARの技術は自動車だけでなく、iPhoneやARのヘッドセットにも搭載されるようになり、私達の生活でも活用されています。
LiDARを搭載したiPhone(iPad)機種は、次の通りです。
・iPhone 12 Pro
・iPhone 12 Pro Max
・iPhone 13 Pro
・iPhone 13 Pro Max
・iPhone 14 Pro
・iPhone 14 Pro Max
・iPhone 15 Pro
・iPhone 15 Pro Max
・12.9インチiPad Pro(第4世代以降)
・11インチiPad Pro(第2世代以降)
で利用できます。
iPad Pro 2020年モデルにLiDARが搭載されたことで、LiDARの技術認知が広がりました。
iPhoneで3Dスキャンをする方法
iPhoneで3Dスキャンをする方法として、次の4つのアプリを紹介いたします。
・Polycam LiDAR 3D スキャナー
・Metascan 3D Scanner
・Trnio 3D Scanner
・PIX4Dcatch:3D scanner
・SCANIVERCE
※注意
それぞれ言語対応や互換性のある機種や利用価格が異なるので、利用する際はしっかりAppStoreの内容を確認しましょう。
方法①Polycam LiDAR 3D スキャナー
Polycam LiDAR 3D スキャナーは、iPhoneに搭載されているLiDARセンサーを使い、素早く3Dスキャンを行うアプリです。
インターネット接続も必要がなく、3Dスキャンにかかる実行または処理できるスキャンの数に制限がない点が魅力です。
Polycam LiDAR 3D スキャナーは寸法的にも正確であるため、任意の2点間の距離を簡単に測定でき、測定値は数 cmまで正確に測ることができます。
出力データは、OBJ、.GLB、.USDZ、.DAE、.STLの形式に出力することが可能です。
またPolycam LiDAR 3D スキャナーは、複数言語に対応しており日本語での利用も可能です。
言語:日本語、 アラビア語、 イタリア語、 スペイン語、 ドイツ語、 ヒンディー語、 フランス語、 ベトナム語、 ポルトガル語、 ポーランド、 ロシア語、 簡体字中国語、 繁体字中国語、 英語、 韓国語
価格:無料(App内課金あり、サブスクリプション形式もあり)
互換性:
iPhone | iOS15.2以降~ |
iPad | iPadOS15.2以降~ |
iPod touch | iOS 15.2以降~ |
Mac | macOS 12.1~ Apple M1以降のチップを搭載したMacが必要 |
▼App Store
方法②Metascan 3D Scanner
Metascan 3D Scannerは、写真を使った【フォトグラメトリ】と【LiDAR】センサーを使った2つの測量が手軽にできるアプリです。
スキャンした3Dデータを編集し、メッセージやWEB上、VRで共有することも可能です。
Metascan 3D Scannerは言語対応が英語のみなので、利用する際はその点も注意しましょう。
言語:英語
価格:無料(App内課金あり)
互換性:
iPhone | iOS 14.0以降~ |
iPad | iPadOS 14.0以降~ |
iPod touch | iOS 14.0以降~ |
▼App Store
方法③Trnio 3D Scanner
Trnio 3D Scannerは、iPhoneで撮影した写真を3Dデータに変換するアプリです。
クラウドサービスを使って、写真を高品質な3Dデータに変換します。
Trnio 3D Scannerも言語対応が英語のみなので、注意が必要です。またこちらのアプリは購入する必要があります。
言語:英語
価格:800円
互換性:
iPhone | iOS13.0以降~ |
iPad | iPad OS13.0以降~ |
iPod touch | iOS13.0以降~ |
▼App Store
方法④PIX4Dcatch:3D scanner
PIX4Dcatch:3D scannerは、写真測量に最適な地形データを取得するためのアプリです。
地上画像をPIX4Dcloudにアップロードすることで、高精度な3Dデータを得ることができます。
アプリが途中まで歩いてきた地形の写真とGPSの位置を記録します。
LiDARセンサーを搭載したiPhoneでは、現在のビデオフレームに3Dメッシュを重ね合わせることができるため、AR(拡張現実)を使用して、より正確なデータにスキャンデータを補完します。
言語:日本語、英語
価格:15日間の無料体験期間後、サブスクリプションで利用可能
互換性:
iPhone | iOS14.1以降~ |
iPad | iPadOS14.1以降~ |
iPod touch | iOS14.1以降~ |
▼App Store
方法⑤SCANIVERCE
Scaniverseの紹介
出力形式
Scaniverseで作成した3Dモデルの出力形式は以下の通りです。
-
メッシュ:
- FBX
- OBJ
- GLB
- USDZ
- STL
-
点群:
- PLY
- LAS
- ※位置情報ONで3Dスキャンした場合は位置情報付きのLAS(WGS84/UTM zone 5x)になります
-
3D Gaussian Splatting (3DGS):
- PLY
- ※3DGS(splatモード)はメッシュ形式での出力が不可能です
- PLY
Scaniverseで行える3Dスキャンの種類
Scaniverseでは以下の3Dスキャンを行うことができます。
1. LiDARセンサーを用いたLiDARスキャン(Area処理)
- 概要: iPhoneに搭載されたLiDARセンサーを使用して3Dスキャンを行います。
- 特性: 最大5m先までの範囲を3Dスキャンすることができ、ホテルの部屋などの空間を素早く3Dスキャンすることができます。
- 注意点: 小物や細かい凹凸があるものをLiDARスキャンすることは難しいため、その場合はフォトグラメトリ(Detail処理)を使用してください。
2. カメラを使用したNoLiDARスキャン(Area処理)
- 概要: LiDARセンサーを使わずにカメラのみで3Dスキャンを行う技術です。
- 特性: LiDARスキャンと同様の特性を持ち、幅広いデバイスで使用可能です。ただし、動き方に癖があるため慣れと練習が必要です。
3. カメラを使用したフォトグラメトリ(Detail処理)
- 概要: 通常のフォトグラメトリとは異なり、動画を撮るような感じで撮影を行います。
- 特性: 靴や料理などの小さいものや細かい凹凸のあるものを3Dスキャンするのが得意です。ホテルの部屋などの空間をスキャンする場合はLiDARスキャンを使用するのが良いでしょう。
- 対応デバイス: Scaniverseが使える全てのiPhoneで実行可能です。
4. 3D Gaussian Splatting(splatモード)
- 概要: 3DGSで生成される3Dモデルは、通常のポリゴンメッシュとは異なり、”もや”のような物体の集合体で3D空間を生成します。
- 注意点: 通常の3Dモデルと異なり、直接UnityやBlenderなどで3DCGとして扱うことはできません。便宜上、3DGSの撮影を3Dスキャンではなく3Dキャプチャと呼称します。
Gaussian Splattingとは
Gaussian Splattingは、複数の画像から3D空間を構築する最新の技術です。この技術は、従来のNeRF(Neural Radiance Fields)や他のフォトグラメトリが抱えていた課題を克服しています。具体的には、データの偏りによって実際の空間には存在しないモヤ(ゴースト)が生成される問題を解決し、光沢や反射のある表面を含めた高精度なレンダリングを実現しています。
Gaussian Splattingの特徴
- 高精度なレンダリング: 光沢や反射のある表面を含むリアルな3Dモデルを生成できます。
- モヤ(ゴースト)の抑制: データの偏りによって生じるゴースト現象を効果的に抑制します。
- スマートフォンでの処理: ハイエンドGPUを必要とせず、スマートフォンのローカル処理で実現可能です。
3Dデータの使いどころはどんな所?
アプリなどでスキャンした3Dデータは、汎用的に利用できるデータに出力されます。
出力されるデータはアプリによって異なるので、出力データの仕様を確認しておきましょう。(OBJ、FBX、USDZ、GLTFなどの汎用データが多い)
これらの3Dデータは、AR/VRなどで利用する事ができます。
3Dデータのテクスチャにこだわる場合は、エディタツールなどを利用し、質感を編集するといいでしょう。
このような3Dスキャンアプリの利点は、すぐに3Dデータを用意できる点から、イチから作成する3Dデータより作成時間が時短な点です。
iPhone 3Dスキャン LiDARの応用アプリ
iPhone3D スキャンで何ができるか?
以下はLiDAR & ARKit 6/RealityKit 機能で何ができるかをまとめてみました。
LiDAR & ARKit 6/RealityKit 機能 | 機能概要 | 応用例 |
---|---|---|
高精度の3Dスキャンとマッピング | LiDARセンサーは、環境の高精度な3Dマッピングを可能にし、拡張現実アプリケーションでのリアルな物理ベースのオクルージョンと空間認識を実現します。 | 建築現場の3Dモデリング、歴史的建造物のデジタル保存 |
インスタントAR | 平面検出が迅速になり、ARオブジェクトを現実世界に即座に配置できます。これにより、ユーザーはAR体験をすばやく開始できます。 | 小売店の商品ディスプレイでのインタラクティブなプロモーション |
リアルタイムモーションキャプチャ | 単一のカメラを使用してリアルタイムで人間の動きを捉え、それをAR体験に組み込むことができます。 | スポーツトレーニングや物理療法での動作分析 |
4Kビデオキャプチャ | ARKit 6は、ARセッション中にバックカメラで4Kビデオをキャプチャすることを可能にします。これは、高品質なビデオ制作に役立ちます。 | 高品質な映像制作、ドキュメンタリーや映画制作 |
オブジェクトキャプチャ | macOSのObject Capture APIを使用して、写真から高品質な3Dモデルを生成し、AR体験に組み込むことができます。 | 教育やデザインでのリアルな3Dモデルの作成 |
カスタムシェーダとレンダリング | RealityKitを使用して、物理ベースの素材や環境反射、影、カメラノイズなどを使用し、バーチャルコンテンツをリアルにレンダリングできます。 | ゲームやエンターテインメントでのリアルタイムレンダリング |
ビデオテクスチャ | ARシーンにビデオテクスチャを追加し、よりダイナミックなレンダリングを実現します。 | インタラクティブな広告や教育コンテンツの作成 |
シーンジオメトリ | 実際の環境を詳細にマッピングし、オブジェクトにラベルを付けて、よりリアルなAR体験を作成できます。 | インテリアデザインや空間計画のための精密な空間分析 |
拡張されたフレームワークとAPI | Swift APIを利用して、開発者はボイラープレートコードなしでAR体験を迅速に構築できます。 | 迅速なARアプリケーション開発、開発時間の短縮 |
パフォーマンスの最適化 | 最新のMetal機能を利用して、デバイスに応じてAR体験のパフォーマンスをスケーリングし、滑らかな映像や物理シミュレーションを提供します。 | さまざまなデバイスでの一貫したAR体験の提供 |
ONETECHのiPhone 3Dスキャンを使ったアプリ制作ができます。
LiDARを利用した開発実績紹介
下記URLページは、LiDARを活用したARアプリの開発実績や3Dデータ制作実績をまとめました。参考にしてください。
ゴルフのグリーン上のラインを読むためのARアプリの研究開発です。iPhone13 proのLiDARを使い、Unityで開発したアプリでは、画面上にグリーンの傾斜をメッシュで表示します。最終的に地面の傾斜や摩擦などを物理エンジンで計算してカップまでをARでラインを表示します。
危険が伴う場所での遠隔測定、人員不足のために測定業務を自動化したいという課題でのお問い合わせありました。そこで弊社ではiPad ProやiPhone12より精度の高いIntel RealSense LiDAR Camera L515を利用して遠隔測定アプリケーションを作成する研究開発をしました。
LiDARスキャンアプリを開発
ONETECHではLiDARスキャンアプリを研究開発中です。LiDAR搭載のiPhoneでアプリを立ち上げます。スキャンモードで空間を3Dスキャンします。写真データと深度データをポイントクラウドで取り込み同期されます。さらにデータをエクスポートしてVRやARデータとして変換します。
保守点検業務でiPhoneのLidarで空間の点群データを作成
まとめ
いかがでしたか?この記事ではiPhoneで3Dスキャンを簡単に行なう方法として、LiDARを使った測距とフォトグラメトリを使った測距について解説し、手軽に3Dスキャンを行えるアプリを紹介いたしました。
LiDARがiPhoneに搭載され、3Dデータを簡単に用意することができる時代になりました。
3Dデータを用意することができても、活用できなければ意味がありません。
スキャンした3Dデータを有効に活用したい、3Dデータを使ったシステムを開発したいなどの要望がありましたらONETECHが相談にのります。
▼3Dデータ制作実績
メタバースでのショッピングのための自動車CG制作 | ONETECH開発実績
住宅、マンション3Dシミュレーション「HOUSE DECOR」追加改修 (onetech.jp)
何かお困りのことがありましたら、ぜひONETECH にご相談ください。
ほかにもONETECHはベトナムオフショア開発で受託開発も請け負っております。幅広い分野で開発してきた実績がありますので、ソフトウェア開発のご相談はぜひOne Technology Japanへお気軽にお問い合わせください。