XRやゲームの開発のために、現実に即した地形データを入手したいと考えていないでしょうか。もし予算に限界があるなら、無料提供されている点群データを入手するのがおすすめです。
この記事では、無料で点群データを手に入れる方法について紹介します。オープンソースで公開されているおすすめサイトの紹介はもちろん、目的の点群データが見つからなかった場合の対処法も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
点群データとは?
点群データとは、縦軸・横軸・高さ軸を表すXYZ座標の情報を持つ点データの集まりのことです。ひとつの点だとただの点でしかありませんが、複数の点が集まれば線をつなぎ合わせて面データ(サーフェス)を作成できます。
また、地形から取得した点群データは「世界測地系」といった座標データを持っているのが特徴です。
BIM設計業務に活用できることはもちろん、3Dオブジェクトの作成、XR空間の作成など、豊富な用途に活用できます。地形データの作成やオブジェクト作成を効率化したい場合には、点群データが役立つと覚えておきましょう。
無料で点群データを手に入れる方法
点群データを無料で取得したい人向けに、主な入手方法を3つ紹介します。インターネット上ですぐに点群データを入手できるのが特徴です。
提供されている点群データの特徴や、各おすすめサイトでの入手方法をまとめているので参考にしてみてください。
①国土地理院から入手する
出典:国土地理院「基盤地図情報ダウンロードサービス」
1つ目は、国土交通省が運営する「国土地理院」から入手する方法です。国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスを利用すれば、次の点群データを入手できます。
- 全国1mメッシュの点群データ
- 全国5mメッシュの点群データ
- 全国10mメッシュの点群データ
例えば1mメッシュは、1mごとに点群が取得されているデータのことです。点群の密度は若干低めですが、メインの地形のまわりを表現する補助的な役割で利用できます。
また、国土地理院の情報を取得する際には、アカウントの作成・アンケートの回答が必要です。
②東京都 オープンデータ カタログサイトから入手する
出典:東京都「東京都 オープンデータ カタログサイト」
2つ目は、東京の点群データが集まる「東京都 オープンデータ カタログサイト」を利用する方法です。東京都内の詳細な点群データが無料で公開されており、詳細な地形データ・オブジェクト作成に利用できます。
点群データを探す際には、検索画面で「点群」と入力してリサーチするのが簡単です。
ただし、東京都内すべての点群データが揃っているわけではありません。エリアが限られていること、最終更新日が古いデータがあることに注意して、必要なデータを探してみてください。
また「東京都 オープンデータ カタログサイト」は登録なしですぐに点群データをダウンロードできます。
③G空間情報センターから入手する
出典:社会基盤情報流通推進協議会「G空間情報センター」
3つ目は、さまざまな都市の点群データを提供している「G空間情報センター」を利用する方法です。東京都内の精密な点群データを提供する「PLATEAU(プラトー)」のほか、全国の点群データが一部無料で公開されています。
点群データを探す際には、TOPページ中部にある「データを探す」のカテゴリ一覧を利用するのが便利です。都市全体の点群データはもちろん、重要建築物の点群データをダウンロードできます。
G空間情報センターのデータは現在進行形で追加されているため、定期的にチェックしてみてはいかがでしょうか。
点群データの活用用途
入手した点群データの活用方法にお悩みなら、こちらで紹介する3つの活用法を参考にしてみてください。国や企業の活用事例も掲載しているので、ぜひ役立ててみてください。
①ゲーム開発
取得した点群データを、ゲーム開発に利用してみるのはいかがでしょうか。例えば、点群データから次のオブジェクトを作成できます。
- ステージ(地形)
- オブジェクト(物)
また、今回紹介している無料の点群データには含まれませんが、点群データからリアルな人物の3Dモデルを作成できるのもポイントです。ゲームのデザインに関わるポイントで点群データを活用できるため、前述したオープンソースのサイトから、役立つデータがないか探してみてはいかがでしょうか。
【ゲーム開発事例】
ソイソフトウェアの「海行(うみゆき)」さんは、静岡県で公開されている点群データをUnityに反映して、リアルな地形データを表現しました。
ゲームのステージ作成に役立つことはもちろん、現実に即した災害シミュレーションといった用途にも活用できるのが魅力です。
②土木・建築の設計・施工業務
点群データはすでに、土木・建築の設計・施工業務で利用されています。例えば、次の用途で利用されているのが特徴です。
- 写真測量で現況地形を作成して設計図面として活用
- 作成した3D計画モデルと組み合わせてXR(AR・VR・MR)として反映
- 点群データの情報をもとに重機を自動運転
土木・建築業界では、点群データを含む3Dを活用したBIM/CIMといった考え方のもと、業務の発注が進んでいる状況です。将来的には、ほとんどの業務で点群データが活用されると予想されます。
【土木・建築の設計・施工業務事例】
出典:福井コンピュータ「株式会社 大林組事例」
大手ゼネコンの大林組は、取得した点群データの地形情報を活用して、設計検討や施工ステップ図の作成に取り組みました。
3Dで設計検討を実施することにより、細かい数量を算出できるほか、施工時の問題を可視化しやすくなるのがポイントです。現実に即した縮尺のデータを組み合わせることによって、疑似的に問題なく施工を進められるのか検討できます。
③XR開発
点群データを3Dモデル化すれば、近年話題のXR開発に活用できます。
XRとは「AR(拡張現実)」「VR(仮想現実)」「MR(複合現実)」を組み合わせた技術のことです。3Dモデルを現実に反映したり、メタバースに接続してコンテンツやエンタメを楽しめるといった使い方があります。
もし、点群データを使ったXR分野の開発に興味をお持ちなら、実績が豊富なONETECHにご相談ください。
【XR開発事例】
大阪ガス都市開発株式会社は、点群データを活用してメタバース空間を作成し、バーチャルイベントの開催・サービス提供をスタートしました。
PCや専用のヘッドセットからバーチャル空間に参加でき、複数のアバターとボイス・テキストでコミュニケーションを取ることができます。
点群データがない場合の対処法
インターネットにはさまざまな点群データが無料公開されていますが、必ずしも求めているデータが見つかるわけではありません。そこで、点群データがない場合の対処法を3つに分けて紹介します。
①測量業者に依頼する
点群データがないのなら、測量業者に依頼して目的の場所を測量してもらうのが良いでしょう。
最近では、空中写真(レーザー)測量や、地上レーザー測量を実施する会社が増えています。短期間で点群データを入手できるようになっているため、測量業者に依頼してみるのはいかがでしょうか。
ただし、測量費用がかかることに注意してください。
②UAV(ドローン)で取得する
「なるべく費用をかけずに点群データを取得したい」「いろんな場所の点群データがほしい」と考えているのなら、UAV(ドローン)を購入して、自社で点群データを取得するのが良いでしょう。
ただし、ドローン操縦には免許が必要である(100g未満の機体を除く)こと、ドローン操縦の許可を取得しなければならないことに注意してください。
③LiDAR・フォトグラメトリを活用する
点群データの取得に「手軽さ」「実施しやすさ」をお求めなら、LiDARやフォトグラメトリを活用するのがおすすめです。
LiDAR・フォトグラメトリはそれぞれ、点群データを取得する測量方法のひとつであり、スマートフォンひとつで点群データを取得できます。専用アプリ・ソフトを導入するだけですぐに点群データを取得できるため、ハイスピードで地形データ・オブジェクトデータを作成できるでしょう。
LiDAR・フォトグラメトリについて詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。それぞれのメリット・デメリット、活用事例を紹介しています。
点群データの処理・操作ソフト一覧【無料・有料】
取得した点群データを面データ(サーフェス)化したい、3Dモデル化したいとお考えなら、次の処理・操作ソフトを導入するのがおすすめです。無料・有料それぞれのソフトを一覧でまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
製品名 | 開発メーカー | 使いやすさ・おすすめ度 | |
無料 | Unity | Unity Technologies | ★★★★★ |
3D Point Studio | 3D Point Studio | ★★★☆☆ | |
有料 | Metashape | Agisoft | ★★★★★ |
TREND-POINT | 福井コンピュータ | ★★★★☆ | |
InfiPoints | エリジオン | ★★★☆☆ |
点群データ処理・開発を含めて実施したいのなら、無料から使えるUnityがおすすめです。また、点群処理に特化したソフトをお求めなら、有料のMetashapeが操作性に優れます。
無料の点群データを開発に活用しよう
無料の点群データを使って、AR・VR・MR・XRに活用したいのなら、それぞれの研究・開発実績をもつONETECHにご相談ください。
ONETECHでは点群データを活用したツール、AR・VR・MR・XRといった技術ツールをオフショア開発として提供しています。開発費用を知りたい、実際に開発を相談してみたい方は、ONETECHまでお気軽にご相談ください。