ゲームやエンターテイメントの世界における活躍が著しいAR(拡張現実)の技術ですが、最近では教育分野のでの活用も進められています。
二次元的な情報にとどまらない、立体情報を円滑に伝えられるARは、教育との相性のが良い技術でもあります。
今回は、そんなARが教育分野において活躍している事例について、いくつかピックアップしてご紹介します。
東京書籍
日本国内向けに教科書などを出版している東京書籍では、自社開発のARアプリである「マチアルキ」を提供しています。
参考:ニュースイッチ「教育でも採用…印刷物でAR活用が広がり始めた理由」
生徒が自分の足で地域を歩き回り、地元の商店街や観光地の魅力を発掘し、動画などにまとめてARで発信するのをサポートするという機能を備えています。
動画コンテンツをつくる、という仕事に関しての注目度は近年子どもたちの間でも急激に高まっており、将来はユーチューバーになりたいと考える子どもも増えてきています。
そこでARアプリを使って動画コンテンツを気軽に作れる機会を提供するだけでなく、地域活性化や地域との交流の機会を子ども達に提供することで、多くのメリットを一度に享受できる仕組みを、「マチアルキ」によって獲得できるようになりました。
現在、「マチアルキ」は150校をこえる教育機関に提供されており、当初対象としていた中学生への提供だけでなく、小学生向けの活用も進められているところです。
子どもたちのアウトプットの機会を増やせるアプリの需要は、今後も高まることが予想されます。
防災教育
静岡県の小学校では、ARアプリを使った防災教育が開始されています。赤外線センサーを使ったスマホでアプリを立ち上げることで、身の回りに突如として火事や津波が現れ、擬似的な災害発生を体験できるというものです。
参考:毎日新聞「ARで津波や火事「体験」 児童「怖かった」」
防災教育は口頭でのレクチャーや、擬似的な避難訓練を通じて行ってはいるものの、その状況は実際の災害発生時とは大きく異なるため、いまひとつ体感的な経験を得ることは難しいものです。
避難時のルート確認や移動方法について学ぶ程度にとどまっている現行の避難訓練ですが、ARアプリを使うことで、見慣れた普段の景色が突如として炎に包まれたり、津波が押し寄せてくる様子を確認できます。
ARが優れている点として、現実空間に仮想的なオブジェクトを表現することで、リアルな体験を実現できることにあります。
視覚的に見慣れた景色が一変する様子は非常に印象的で、子どもたちに取っても衝撃的な体験となり、災害の恐ろしさを理解できるという仕組みです。
また、実際に身の回りで災害が発生した場合、どのような環境の変化が現れるかということも肌で理解できるようになるため、実際に災害が怒った際にも落ち着いた行動をとりやすくなります。
Wonderscope
こちらはスマホやタブレットで利用が可能なARアプリで、スマホカメラを利用することで、まるで現実空間が絵本の世界に吸い込まれたような擬似的な体験をユーザーに提供してくれます。
物語の舞台となるのは、現実世界にあるベッドルームやダイニングルームといった空間です。アプリではオブジェクトの寸法や位置を独自に認識し、様々な場所にキャラクターを配置して、物語を展開するという、ユニークなアニメーションの物語を体験できます。
参考:MoguraVR「絵本の世界が部屋に広がる 注目VR企業がARアプリ配信」
そして、物語はただ眺めているだけでなく、時としてユーザーが直接物語に介入できる仕組みも備えています。
マイクを使ってキャラクターたちとユーザーが会話できるようになることで、まるでユーザーも物語の中に入り込んだような体験を得られるのが特徴です。
また、物語は常に一つのエンディングに落ち着くとは限らず、ユーザーの振る舞いによって物語が変化するという、インタラクティブな仕組みも備えています。
様々な角度からキャラクターたちや会話を吟味し、そのコミュニケーションの姿から感情豊かなアニメーションを体験できるアプリです。
セントラル・ベッドフォードフォーシャー大学
イギリスのセントラル・ベッドフォードフォーシャー大学では、VR/AR技術を取り入れた教育機関『Immersive Technology Institute(没入型技術研究所、ITI)』を新たに創設し、新しいデジタル技術の活用を促す教育を提供します。
参考:MoguraVR「イギリスの大学でVR/ARデバイスを使った教育が始まる」
ITIでは主にARやVRの技術的なスキルの教育を行うことを想定しており、プロジェクトの立ち上げにはビジネス実績が豊富なVR/AR開発企業のAiSolveが参加しています。
小売業から旅行、教育やヘルスケアなど、複数の分野に向けたソフトウェア開発を行なってきた実績を持つ同社が関わっているということで、実用性の高いAR教育の提供が期待されています。
労働者の技術力と企業ニーズには大きなギャップが生まれており、ここを埋めるための施策の一環として、大いに注目されています。
ベトナムオフショアでのAR開発の実績
最後に弊社ONETECHのベトナムオフショアで受託開発したAR事例をご紹介します。
最寄りの避難場所への方向をAR(拡張現実)で表示、地方自治体の公式防災スマホアプリ制作
昨今の防災意識が高まる中で、地方自治体の公式アプリを制作しました。有事の際に最寄りの避難場所を示す矢印がAR表示されるのが特徴です。ARはmetaio SDKとgoogle mapのマッシュアップで制作
現場の課題解決のためのARの応用。医療機器のARマニュアルアプリ
医療デバイスの利用方法は複雑しています。 また日々忙殺する医療現場での医療機器の教育にさける時間も限られています。 命に関わるケースもあるので作業ミスを防止ためARマニュアルアプリを作成しました。
MR(複合現実)ホロレンズ・スマホで工作機械の保守点検アプリ
Video – MR(複合現実)ホロレンズ・スマホで工作機械の保守点検アプリ
ホロレンズ、スマホで工作機械の起動手順、保守点検作業をARでガイドします。定期的な保守点検作業では作業記録を本アプリで記録して本部に送付することで業務効率化が実現できます。ポイントは、任意のARガイドの設定ができるので汎用性の高いシステムになっています。UNITYで制作しました。
おわりに
教育分野におけるAR活用の機会は増加しており、今後も様々なサービスやプロジェクトの立ち上げが期待されています。
国内での活用事例も増加傾向にあるため、義務教育としてARが活用される日も遠くないでしょう。