一体型VRヘッドセットの需要は、コンテンツの拡充とともに高まりつつあります。ポピュラーなのはFacebookが提供するOculusシリーズですが、最近では中国発のメーカーからのリリースにも注目が集まっています。今回は中国のVRヘッドセットメーカーであるPico Technologyが新たに発表した、「Pico Neo 3」についてご紹介します。
Pico Neo 3の概要
Pico Technologyは2015年に設立された、比較的歴史の浅いメーカーですが、これまでにも優れたヘッドセットを発表してきました。
2019年は両目4Kの解像度の「Pico G2 4K」をリリースし、2020年にはポジショントラッキングのある6DoF対応の「Pico Neo 2」、そして上位モデルの「Pico Neo 2 Eye」では、アイトラッキング機能を搭載した高性能なモデルに仕上がっています。
今回発表されたPico Neo 3は、こういった後継機の意匠を受け継ぎつつも、新たな機能を複数搭載し、さらなるアップデートを加えた製品となりました。
Pico Neo 3の特徴
ここで、Pico Neo 3の具体的な特徴について見ていきましょう。
Snapdragon XR2を搭載
一つ目の特徴は、半導体大手のクアルコムが手掛けている5G対応AR/VR専用チップセット、「Snapdragon XR2」を搭載している点です。
参考:MoguraVR「Picoが新一体型VRヘッドセット「Pico Neo 3」の詳細発表、AR/VR専用チップ搭載」
Snapdragon XR2は世界初の5G対応XRプラットフォームとして、2019年に発表されたチップセットです。
従来のモデルである「Snapdragon 835 XR Platform」と比べ、CPUとGPUのパフォーマンスは2倍に進化し、ビデオ帯域は4倍、解像度は6倍、そしてAI処理は11倍となるなど、驚異的な進化を遂げています。
ARやVRはもちろんのこと、次世代技術と言われるMR(Mixed Reality、複合現実)にも対応しているため、最先端のXRの現場でも十二分な活躍が見込めるでしょう。
参考:ケータイWatch「クアルコム「Snapdragon XR2」発表、世界初の5G XRプラットフォーム」
Pico Neo 3においてもこのパフォーマンスの高さは存分に生かされています。解像度3,664 × 1,920の5.5インチディスプレイを使用し画素密度は773ppi、リフレッシュレートは最大90Hzと、高いスペックを誇ります。
瞳孔間距離(IPD)は物理的に3段階の切り替えを行えるようになっているので、使用者を選ばないのも嬉しいポイントです。
光学式コントローラーを採用
Pico Neo 2からの変更点として、Pico Neo 3では光学式コントローラーが採用されている点も特徴です。
従来のモデルでは磁気式のハンドコントローラーが使われており、こちらは周囲の影響を受けづらいのが特徴でした。
ただ、周囲の磁場の影響を受けやすいことや、コントローラーが大きくなってしまう仕組みであるため、使用にはある程度の制約もあったのです。
今回採用されている光学式コントローラーは、Pico Neo 3本体に搭載されている光学カメラを使って利用できるものです。
磁気式に比べて精度が高く、より繊細な動きを表現する上では役に立つ仕組みです。
中国内外で発売予定
Pico Neo 3は中国発のHMDで、複数のモデルの発売を予定しています。
一般消費者向けの通常モデルが2,499元(42,400円)、法人向けの「Neo 3 Pro」と「Neo 3 Pro Eye」は、それぞれ3,699元(約96,600円)、7,999元(約135,600円)となっています。
北米向けに公開された価格は、「Neo 3 Pro」が699ドル(約76,000円)、「Neo 3 Pro Eye」が899ドル(約97,900円)となっており、現地に比べれば割安の価格です。
日本向けの価格については明らかになっていないものの、2021年夏に一般向けに公式リリースされる計画があるということで、今後の続報にも期待したいところです。
Pico Neo 3の活用方法
Pico Neo 3はハードウェアの性能もさることながら、ソフトの連携機能にも強みを備えます。
NVIDIAのDirect Modeに対応
まず、PCとDisplayPort経由で有線接続することにより、NVIDIAの提供するDirect Modeを利用可能です。
ゲーミングプラットフォームのSteamが提供する「SteamVR」を起動してVRコンテンツを楽しめるということで、コンシューマーにとってありがたい機能になるでしょう。
NVIDIAのCloud XRも対応
こちらもNVIDIA関連の機能ですが、XRコンテンツ配信サービス「CloudXR」にも標準対応しているのがPico Neo 3の特徴です。
CloudXRは、オンラインのクラウド上で描画処理を行えるという、パワフルな機能を持ったクラウドサービスです。
AR/VRコンテンツは容量が大きいため、これまではダウンロードしてから運用することが一般的でした。
しかしクラウド上でAR/VRコンテンツ配信が行えるようになれば、高性能なPCやスマホでなくとも、ハイクオリティなコンテンツを体験できるようになります。
ハードウェアに負担をかけないという点でも、非常に画期的なサービスであるCloudXRですが、Pico Neo3では標準で対応しているため、より快適なコンテンツ体験を実現してくれるでしょう。
おわりに
Pico Neo 3は最新のチップを備えた次世代VRヘッドセットとして、高いポテンシャルを備えています。
日本でもリリースが予定されているため、今後VRヘッドセットの購入を検討している方にもおすすめできる1台です。