現実世界に仮想的なオブジェクトを投影するAR(拡張現実)の技術は、国内でもビジネス分野で急速な普及が進んでいます。今回は土木・建設分野における国内のAR活用事例について、順に見ていきましょう。
清水建設
まずは、清水建設の運用事例からです。
地下埋設物可視化システム
清水建設では、比較的早い段階からARの実践的な運用を進めてきました。2016年に発表した「地下埋設物可視化システム」は、タブレットを使って地下にある埋設物をAR技術で可視化し、効率的で安全な掘削作業などを進められる技術です。
地下掘削工事は目視で正確に地中の様子を探るのが難しく、ライフラインの損傷リスクを伴う作業が常態化しています。
そこで誕生したこのシステムは、ARによる可視化アプリと位置情報検知機能などを搭載しており、タブレットカメラで地上を捉える事により、正確にライフラインの位置情報を把握できます。
埋設物のデータベースはクラウドに保存されるため、常に最新の情報がタブレットに表示されるという仕組みです。
これにより、タブレットを使うだけで簡単にライフラインの場所を把握し、安全かつ素早い工事を実現しています。
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2016/2015058.html
Shimz AR Eye
2021年3月に発表した「Shimz AR Eye」は、タブレット端末で建物のBIMデータとリアルタイムのライブ映像を合成表示し、ARでビジュアライズが可能なシステムです。
施工中の設備配管や建物躯体の施工管理をサポートするシステムとして運用が期待されており、BIMとARの融合をさらに進めてくれると期待されています。
タブレット上に平面図を表示し、位置情報を指定する事で、速やかに設備配管やダクトの表示が可能になります。
図面を見ながらなんとなくで位置を確認しなければいけない、という状態から解放され、正確な作業の遂行を促進してくれます。
https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2021/2020060.html
大林組
続いては、大林組の導入事例についてです。
スマホdeサーベイ
大林組は独自のARアプリ「スマホdeサーベイ」を開発し、スマホで利用できる身近なAR技術の促進に取り組んでいます。
スマホdeサーベイは地形と土量を簡単に測量できるアプリで、AR機能を用いたオブジェクト認識能力も備えています。
通常の現地測量においては人手が必要なだけでなく、トータルステーションや巻き尺といった測量ツールも必要です。
一方、こちらのアプリを活用すれば、道具はスマホだけで済ませられるだけでなく、人でも一人で完結します。
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1910/18/news043.html
次世代型の自動品質検査システム
大林組ではARだけでなく、ARとVRを融合したMR(複合現実)の運用も進めています。
詳細な情報を記載しているBIMデータと、MRの技術の連携によって実現したのが、次世代型の自動品質検査システムです。
現場監督の目として、高度な精度とスピードを備えたシステムの活用により、品質検査の効率化を実現しています。
タブレット端末さえあれば運用可能なこのシステムは、現場の作業効率化と省人化の両方に役立ちます。
https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d216.html
その他のAR運用事例
ここで、その他の企業のAR運用状況についても確認しておきましょう。
飛鳥建設
飛鳥建設では、BIMデータとARおよびMRの連携により、建設現場の作業効率向上に向けた動きを加速させています。
AR・MR技術をBIMデータと連携させる事で、実際の建設現場に建設予定の仕様を照らし合わせ、高い精度での作業とヒューマンエラーの減少に役立てています。
https://dcross.impress.co.jp/docs/usecase/002138.html
戸田建設
戸田建設ではAR技術を使い、建設機械の配置をシミュレーションするシステムを開発しました。
タブレット端末に建設機械の3Dモデルを表示し、実際の現場映像と重ね合わせる事で、正確な配置を促進してくれるというものです。
建機配置計画にかかる時間が短縮できるだけでなく、作業員負担の軽減に活躍します。
人材不足や熟練労働者の離脱が顕著に進んでいる建設業かにとって、大きな手助けとなってくれるでしょう。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/02532/
ベトナムオフショアでのVR開発の実績
最後に弊社ONETECHのベトナムオフショアで受託開発した事例をご紹介します。
建設予定の倉庫を3Dホログラムで表示。HoloLens2(ホロレンズ)プレゼン用MRアプリ開発
マイクロソフトのMRデバイスHololens2向けに建設予定の倉庫を3Dでホログラムでプレゼンテーションが可能です。プレゼンターがiPadでホロレンズ側の3Dホログラムを動かすしながら説明ができます。
iPhone12にも搭載されたLiDARセンサーで遠隔測定、測量UNITYアプリケーションの研究開発
危険が伴う場所での遠隔測定、人員不足のために測定業務を自動化したいという課題でのお問い合わせありました。そこで弊社ではiPad ProやiPhone12より精度の高いIntel RealSense LiDAR Camera L515を利用して遠隔測定アプリケーションを作成する研究開発をしました。
おわりに
AR技術の運用は、すでに国内でも多くの企業で進められています。実証実験の過程を経て、今後のさらなるARやMRを活用した技術やサービスの登場に期待したいところです。