企業で活躍システムとして、SAPと呼ばれるパッケージが度々紹介されています。
SAPという単語そのものは何かと耳にすることは多いものの、そもそもSAPがなんであるか、ということは中々紹介されていないものです。
今回はそんなSAPの概要や、ERPなどSAPを取り巻くキーワードについてご紹介していきます。
SAPとは
SAPはSystem Analysis and Program Developmentの略称で、SAPは一言で言えば基幹システムの一種で、正確にはSAP社のERP商品のことを指すケースが多いです。
ERPとの違いは
ERPはEnterprise Resource Planningの略称で、直訳すると「企業資源計画」という言葉になります。
一般的には「基幹システム」といった訳語があてがわれており、業務効率化につながるパッケージとして注目を集めています。
ERPのパッケージを販売している会社はSAP以外にも様々あり、オラクルや日立、IBMなど、ニーズに合わせたシステムの導入を行うことができます。
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ERP登場の背景
企業の経営を支えるには、優秀な人材はもちろんですが、優れたシステムも欠かせません。
会計や人事、在庫管理など、企業運営では複数のセクションにおいて、数字を管理する業務が発生します。
ERP登場以前、これらの管理システムは部門別に管理され、それぞれで異なるフォーマットや環境によって管理されていることもありました。
そのため、部門を超えた情報共有や財務状況の管理を行う際、再度統一フォーマットにまとめる必要があり、この作業に多くの時間を要していたのです。
これらを統合的に管理し、業務効率化と情報の一元化を図ろうというのがERP登場の背景です。
そしてSAP社が販売するERPがポピュラーになったことから、SAP=ERPとしての認識が広まったのです。
SAP(ERP)の役割
SAPが果たすのは、主に以下の5つの役割です。
いずれも企業運営においては不可欠の管理業務で、統合基幹システムによってこれらを一元化することができます。
財務会計管理
財務会計は企業のデータ管理において最も重要な役割を担い、SAPを導入する上でも重要視される分野です。
企業の財布を司る経理部や財務部での運用が想定され、SAPの本領が発揮されます。
販売管理
販売管理システムは、商品の出荷管理にまつわるシステムです。商品の売買に関する人やモノの情報をコントロールし、記録してくれます。
クライアントに合わせた請求書作成なども行われ、お金の流れに関する情報は財務管理のシステムへ自動的に送信されます。
在庫購買管理
在庫購買管理は、在庫にまつわるデータを司ります。
現在の在庫量や、現在の発注状況の把握、在庫を仕入れた際の価格などをリアルタイムで管理してくれます。
生産管理
生産管理もその名の通り、モノの生産状況にまつわるデータの管理を行います。
製造業や卸売業など、モノを扱う企業が積極的に導入しているシステムで、販売管理や在庫購買管理システムとの連携が期待されます。
人事給与管理
人事給与管理は、給与計算の自動化やWeb明細の発行をサポートしてくれるシステムです。
社員の目標設定や評価の管理も行えるため、業務の効率化だけでなく、優れた人材育成環境を整備することにもつながります。
SAPの導入方法
SAPの導入については、主にコンフィグとABAPという、2つのアプローチが採用されています。
コンフィグ
SAPの導入は企業によって詳細な設定が必要となるため、ソフトをインストールするだけで運用ができるわけではありません。
コンフィグはカスタマイズとも呼ばれ、SAPの導入に際して、導入企業のニーズに合わせてパラメータを設定する作業です。
設定項目は多岐にわたり、システムの全ての項目を導入企業だけで設定するには多くの時間を要します。
そのため、SAPコンサルタントやSAPエンジニアは、このコンフィグの作業を行う上で活躍し、導入企業の負担を大きく軽減する役割を果たします。
ABAP
繊細な設定が可能なSAPですが、時にはSAPに標準搭載されているパラメータだけでは対応できないケースもあります。
ABAPを用いる開発工程はアドオン開発とも呼ばれ、コンフィグ以上に複雑な作業を要します。
ABAPはC言語やJavaなどとは違い、SAP以外の開発業務において活用するケースがないため、比較的マイナーな言語でもあります。
そのためABAPを扱えるエンジニアの希少性は高く、SAPのアドオン開発には時間と費用の負担が大きくなってしまうこともあります。
一方SAPによるシステムの完全な一元化を目指すには、業務上ABAP開発が欠かせないケースも多いものです。
優れたエンジニアによって、バグが少ないシステムの構築を行ってもらうことがSAP運用では重要になってきます。
「SAP ERP 6.0」が2025年に保守終了も2027年まで延長
SAPは企業の基幹システムとして機能の拡張を繰り返し、複雑性を増したことにより膨大なデータをリアルタイムで処理することが難しくなってきました。そこでSAPはリアルタイム性が欠如した従来の「SAP ERP 6.0」から、最新の「SAP S/4 HANA」への移行を進めています。
当初「SAP ERP 6.0」の保守期限は2015年末で終了でしたが、多くの企業からの要請により、2020年末そして2025年末というように更なる保守延長を重ねてきました。
これは「SAP 2025年問題」とよばれていて、IT人材不足に端を発する「2025年の崖」と言うキーワードとともにIT業界では同時に大きな話題となってきました。
さらに2020年2月にSAPは「SAP ERP 6.0」の保守期限を2025年末から2年後の2027年末まで延長することを発表しました。
※2%の延長保守料を支払うことで、保守期限を2030年末まで延伸可能。
日本国内だけでもSAPユーザー企業は約2,000社といわれている中、ERPは企業のビジネスを根底から支えるIT基盤のため、その影響度は計り知れません。
SAPシステムエンジニアの需要
SAPシステムのエンジニアは、現状不足している状態です。エンジニアの数は少なくなっていっているのに対して、SAPを導入する企業は増えていっています。SAPは全世界で約20万以上の企業が導入していて、日本だけでもおよそ2,000社以上が導入しています。
シェア率が伸び続けるとそれだけ信頼度も高まり、導入を検討する企業も増えてきます。しかしながら、エンジニアの数自体が少ない上にSAPシステムのエンジニアとなるにはそれぞれの部門に特化した専門知識や経験が必要です。
そのため、SAPシステムのエンジニアの需要は伸びています。さらに、専門性の高いエンジニアであるため報酬も高いことから、今SAPシステムのエンジニアが求められていることが分かります。
おわりに
SAP以外にもERPを販売する企業は多く、様々な需要に応える統合基幹システムが今日では見かけます。
自社が必要とするシステムの要件を検討し、SAP社のERPが良いのか、他の会社の製品はどうかなど、色々と比較してみるのが良いでしょう。