SAPは世界で最もポピュラーなERP製品を提供する企業で、ERP=SAPとして紹介されることも多く、業界でも高水準のサービスを提供しています。今回は、SAPがなぜ選ばれるのかというメリットと、反対にSAPを選ばない企業が出てくる理由について、ご紹介していきます。
SAPとは
SAPは、元々ドイツにあるソフトウェア会社の名前を指していますが、彼らのERP製品の名前もSAPと呼ばれています。
一元管理を実現するソフトウェア
ERP製品は、元々企業が備える経営資源、つまり人・モノ・金・情報を一元管理しようということで誕生したソフトウェアです。
これまでは部署ごとに管理されていたこれらのリソースを、一つのシステムの中で扱えるようにすることで、効率的な業務フローを実現し、さらなる企業の成長を促します。
SAPを構成する4つのモジュール
SAPは、主に4つのモジュールから構成されており、それぞれで異なる働きをします。
人事モジュールは人材の採用から退職まで、役職の変更などをすべて一元的に管理し、ロジスティックモジュールは商品の販売管理や物流を担当します。会計モジュールはその名の通り財務会計と管理会計を担当し、内外に向けたお金の流れをまとめてアウトプットしてくれます。
4つ目には分析系を含むその他モジュールがまとめられており、生産管理やプロジェクトの進捗管理などもここで担います。
SAPが優れているのは、これらを必要に応じて導入したり、あるいはしなかったりを選べる点です。必要のない機能を無駄に詰め込む必要がないので、最低限の機能で最大限の効率化を目指せます。
SAPのメリット
世界で最もポピュラーなERPパッケージということもあり、SAPのメリットは非常に魅力的です。
世界標準のERP製品
SAPが世界標準のERPということは、日本語や英語だけでない、様々な国の言語や通貨にも対応しているということです。
グローバル展開を考えている企業にとってはありがたい機能となっており、スムーズな海外市場への参入も可能になります。
また、大企業との取引が控えている、あるいは今後あり得るという中小企業も、SAPの信頼性の高さが好印象となり得ます。
SAPは大企業で採用されているERPであるため、まだ信頼関係が構築できていない関係でも、安心して取引をしてもらう事が出来ます。
最高峰の業務フローを実現
SAPの最大のメリットは、SAPを導入することでハイエンドな業務フローを実現する事ができるところです。
SAPの何年も積み重ねてきたアップデートの歴史は、それだけ多くの優良企業のフィードバックが繰り返されてきた事が背景にあります。
SAPはそれをベストプラクティスとも呼んでいますが、SAPが考える最善の業務フローを、SAPの導入によって実現できます。
事業のスケールを問わず、SAPの導入によって迅速に優れた業務フローを実現できるのはありがたいメリットです。
SAPのデメリット
このようなSAPの強みが魅力的に紹介される一方、想定しておかなければならないデメリットも存在します。
導入コストの問題
一つ目の懸念事項は、導入コストの問題です。最高クラスの一元管理を実現してくれるSAPですが、その分導入費用も高額になる傾向があります。
SAP製品は、購入費用が高額なのはもちろんですが、実装に際してかかる費用はそれだけに止まりません。
効果的なSAP導入を促すためのSAPコンサルタント費用、定額の保守費用、さらにオンプレミスでの運用の場合にはサーバー費用がかかり、総額を考慮すると安易に選択できるモノではありません。
設備投資に割ける予算に余裕があれば導入するに越したことはないのですが、この点は重くのしかかるでしょう。
また、業務フローをSAPで刷新するとなれば、導入当初の生産性低下は免れません。新しいシステムの導入にはつきものですが、最高速度達成まではしばらく時間を要するため、スケジュールの都合にも余裕が必要です。
人材の不足
SAP導入は、基本的に専門のコンサルタントがいなければ、運用が難しいとされています。
SAPコンサルタントは現在人材不足が叫ばれており、人材育成にも費用がかかることから、その母数は一向に増えないのです。
また、日本では2025年までにシステムの改修を終えなければ、その費用が企業を大きく圧迫するという、「2025年の崖」問題が迫っています。
この結果、現在は一時的にSAPコンサル需要が高まっているため、より人材の確保は難しくなっています。
タイミングよくリーズナブルなコンサルタントを見つけられなければ、コストパフォーマンスを期待することは難しいでしょう。
2020年2月にサポートポリシーの変更として2006年に発売したERPパッケージ「SAP ERP(ECC6.0)」のサポート期限の延長の発表がありました。標準的なサポートサービス「メインストリームメンテナンス」の提供期間を「2025年末から2027年末へと変更する」と発表されました。しかし人材不足の根本的な解決はなされていません。
おわりに
SAPは魅力的なメリットが並ぶERP製品ですが、一方でコスト面でのデメリットも気になるところです。
うまく予算に折り合いをつけ、導入に向けて検討を進めましょう。