建設業の業務効率化に欠かせない3D技術に興味をお持ちの方も多いでしょう。また、最新技術を導入している企業をチェックしてDXの実現や依頼・就職の参考にしたい方も多いはずです。
この記事では、3D技術で建設業界をDXするスタートアップ企業の特徴・サービス・魅力を詳しく紹介しています。また、スタートアップ企業に向いている人や注意点も解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
3D技術で建設業界をDXするスタートアップ5選
まずは、3D技術を通じて建設業界をDX(デジタル・トランスフォーメーション)する5つのスタートアップ企業についてご紹介します。
それぞれ企業の特徴やサービス、魅力を紹介しているので、最新技術の使われ方をぜひチェックしてみてください。
株式会社Polyuse(ポリウス)
出典:株式会社Polyuse「公式サイト」
株式会社Polyuse(ポリウス)は、建設用3Dプリンタの技術で業界に知られているスタートアップ企業です。国内唯一の建設用3Dプリンタメーカーであり、コンクリート材料を出力できる専用のプリンタを使って業務を実施しています。
実際に、業務の一環として3Dプリンタを用いて倉庫やサウナ、公衆トイレなどを建設しているのが特徴です。またインフラ設備として、円柱型の集水桝(ます)を現場で作成するなど、実証実験を成功させています。
さらには、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」にも登録されており、すでに業務に活用できる段階まで技術が進歩しています。施工DXを率いる会社として7.1億円もの資金調達を達成するなど、今、建設業界のDXを目指す企業として熱いスタートアップ企業です。
ローカスブルー株式会社
出典:ローカスブルー株式会社「公式サイト」
ローカスブルー株式会社は、オンライン点群処理ソフトウェアを通じて、地形データの活用支援を提供しているスタートアップ企業です。建設業界に欠かせない測量業務のサポートデータとして活用できるのはもちろん、3Dデータを災害対応の基礎資料として提供しています。
中でも有名なのが、令和3年度にi-Construction大賞、国土交通大臣賞を受賞したオンライン点群処理ソフトウェア「ScanX」です。低価格で大量の点群データを共有でき、フィルタリング等も実施できることから測量会社で広く活用されています。 また、ScanXのソフトウェアも国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS」に登録されているのが特徴です。工事成績表定点の加算にも効果的なサービスということで、業務評価向上を目標とする企業におすすめします。
セレンディクス株式会社
出典:セレンディクス株式会社「公式サイト」
セレンディクス株式会社は、球体上の造形に特化した3Dプリンター技術を駆使し、構造物設を支援しているスタートアップ企業です。主に住宅建設の分野で活躍しており、2023年11月30日には、関西の建設ICTとして巨大構造物建設の研究もスタートしています。
最新の建設技術の場合、24時間以内に30坪分の球体建設物を完成できるのが特徴です。耐久性、耐火性、耐震性など、自然災害の多い日本でも利用でき、緊急時の仮設住宅建築に活用できると期待が集まっています。
株式会社クアンド
出典:株式会社クアンド「公式サイト」
株式会社クアンドは、遠隔支援コミュニケーションツールを通じて、情報共有の円滑化、3D映像の撮影を提供するスタートアップ企業です。株式会社クアンドが提供するSynQ Remoteは、現場状況を映像共有しながらメモやコメントが可能であり、3D映像の撮影にも活用できます。
また、撮影したデータと現場点検データをリンクさせ、遠隔操作を実施しながら現場情報をリアルに共有できるのがサービスの特徴です。住宅都市局や道路下水道局、港湾局など、現場と社内をつなぐ便利なツールとして、開発・向上に期待が寄せられています。
テラドローン株式会社
出典:テラドローン株式会社「公式サイト」
テラドローン株式会社は、UAV(ドローン)や点群処理ソフト、インフラ点検アプリなど、3D技術を活用したデバイス・ソフトウェアを提供するスタートアップ企業です。UAVで撮影した3次元点群データを処理し、土木・建築向けの地形データに変換できます。
また、点群データを活用した設計検討としてBIM/CIM関連の業務サポートを自社で提供しているのが特徴です。豊富な新技術サポートに特化した会社であることから、外部委託を活用したDX化を実現できます。
建設業界スタートアップ企業の事例
建設業界のDXを担うスタートアップ企業の中でも、特に注目されている技術事例を2つ紹介します。現在、どのように建設業界がアップデートしているのか、ぜひ参考にしてみてください。
3Dプリンタ施工の実施
出典:株式会社Polyuse「NEWS」
建設現場における大きな変化として挙げられるのが、建設用3Dプリンタを活用した施工業務の実施です。
これまでの建設施工と言えば、重機や人力でコンクリートの打設を実施するのが一般的でした。一方でスタートアップ企業が提供する3Dプリンタ施工では、専用のプリンターに設計された3Dデータを読み込ませるだけで、次のことを実現できます。
- コンクリート打設の自動化
- 人力の削減
直近の事例として、建設用プリンタを提供する株式会社Polyuseでは、3Dプリンタのみで10m²以上の建設施工を実現しました。人の手を最小限に抑えながら建築構造物・部材を準備できることから、今後の施工方法が変化していくと期待されています。
3次元測量による地形把握
出典:PRTIMES「テラドローン、地上・上空のどちらでも3次元測量が可能な『SLAM技術搭載のUAVレーザ』の開発を開始」
テラドローン株式会社では、手軽に点群データを取得できる「Lidar」という技術を活用し、より簡易的かつ高品質な点群生成の実現へ向けて研究を実施しています。
点群処理ソフトを活用して、ほぼ現実に即した点群データを取得できることはもちろん、取得したデータを処理することで、そのまま建設設計・施工の検討に活用できるのが魅力です。
地上でもLidarを用いて測量でき、UAVをもたない企業でも点群測量を実施しやすくなると期待されています。
建設業界スタートアップ企業の魅力
建設業界のスタートアップ企業は、既存企業と大きな違いをもっています。参考として、スタートアップ企業ならではの魅力を3つまとめました。
新技術に触れられる
スタートアップ企業は、新技術特化の業務に従事できるのが魅力です。前述した3Dプリンタ・点群測量の技術は、大企業もしくは一部の企業でしか実施できていません。また、本格的な業務に取り組めているのはほんの一部の会社です。
一方、スタートアップ企業は、新たな分野に真っ向からチャレンジできます。新技術に挑戦できる環境が整っていることから、新たなチャレンジをしたい人におすすめです。
経営の知識が身に付く
スタートアップ企業は、従業員ひとり一人が重要なポジションを担うことから、メイン業務と経営の知識を同時に身に付けられるのが魅力です。
より業務の深部にまで深く入り込むことができるため、建設における経営力を身に付けたい人におすすめの会社だと言えます。
業界のつながりが手に入る
スタートアップ企業として新技術を提供していけば、その分だけ官公庁や新技術に力を入れている企業とのつながりが大きくなります。
横のつながりが増える分、経営者そして従業員の認知度の向上にもつながっていくことから、スタートアップ企業は業界で活躍したい人におすすめの環境です。
建設業界のスタートアップ企業に向いている人
建設業界のスタートアップ企業への就職・転職を希望している方向けに、スタートアップ企業に向いている人の特徴を2つまとめました。
責任感がある人
スタートアップ企業は、少数精鋭の会社であることから、従業員ひとり一人が主役です。業務をまるごと任せられる機会が多いため、責任感をもって業務に取り組める人材が最適でしょう。
実力主義で動ける人
スタートアップ企業で働く際には、実力主義の考えをもつことが重要です。少数精鋭で利益を生み出し続ける必要があることから、案件遂行を実現しなければなりません。
また、次なる案件獲得のためには、結果を残す必要があることから、実力主義で動ける人材が求められると覚えておきましょう。
建設業界を含めスタートアップ企業の注意点
魅力的なスタートアップ企業で働くことに憧れている方も多いでしょう。しかし、スタートアップ企業には注意点も存在します。参考として2つの注意点を整理しました。
給与・福利厚生が安定していない
スタートアップ企業は、できたばかりの企業であり、まだまだ後ろ盾が少ないのが事実です。そのため、大きな仕事を受注できれば、給与がよくなる一方で、逆に仕事がなければ給与が減ってしまいます。
また、休日や保険といった福利厚生が安定しづらいのも特徴です。良い面もあれば、悪い面も存在する会社であることを念頭に、就職・転職を検討しましょう。
生存率が低い
日経ビジネスが調査した内容によると、スタートアップ企業の場合、20年間生存し続ける確率は0.3%だと言われています。
5年後は15.0%、10年後は6.3%と業務を継続できる企業が減り続けるため、創意工夫を凝らしながら働き続けることが重要な会社だと覚えておきましょう。
おわりに
建設業界で活躍するスタートアップ企業は複数存在し、すでに業務という成果を生み出しています。一方で、スタートアップ企業は業務・給与等が不安定化しやすいのがネックです。 面白く新しいことにチャレンジできる企業であるため、その分だけさまざまな困難のある会社だと言えます。
面白く新しいことにチャレンジできる企業であるため、その分だけさまざまな困難のある会社だと言えます。
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