BIM・CADソフトで利用するデータ形式「DWG」「DXF」の違いが分からないとお悩みではないでしょうか。中には、2つの違いが分からないままデータを使っている人も多いはずです。
そこでこの記事では、DWG・DXFの概要と違いを詳しくまとめました。また拡張子を操作できるソフトも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
DWGとDXFは図面に用いられるデータ形式
まずDWGとDXFは、図面作成・保存に利用するデータ形式です。
どちらもCAD・BIMソフトで利用する2D・3Dデータの作成に対応しており、数多くのソフトで読み込み・書き出しできるように作られています。また、DWG・DXFには次の特徴があるのもポイントです。
- さまざまなスケールに対応できる
- 定義した情報(線の太さ・種類・色など)を記憶できる
近年では、土木・建築・建設・機械といったインフラ関係の業界だけでなく、ステージ設計や商品デザインといった複数の業界で活用できるのが魅力です。CAD・BIMソフトを操作する際に良く利用すると覚えておきましょう。
DWG・DXFと類似のデータ形式一覧
DWG・DXFとは別に、次の類似拡張子も利用可能です。
拡張子 | 特徴 |
SXF(エス・エックス・エフ) 正式名称:Scadec data eXchange Format | 「CADデータ交換標準コンソーシアム (SCADEC))」で策定された標準仕様。2000年8月より普及した。 |
IGES(アイジェス) 正式名称:Initial Graphics Exchange Specification | 「日本自動車工業会」のJAMA-IS規格に準じて作られた標準仕様。主に3Dモデル作成として利用する。 |
JWW(ジェー・ダブリュー・ダブリュー) 正式名称:Jw_cad for Windows | フリーソフト「Jw_cad」独自の形式。汎用性に劣る。 |
STL(エス・ティー・エル) 正式名称:Stereolithography | 製品開発(ラピッドプロトタイピング)で活用されている3Dモデル向けの拡張子。主に3Dプリンターで使用する。 |
STEP(ステップ) 正式名称:Standard for the Exchange of Product Data | 3D CADとして利用される拡張子。 |
ACIS(エイシス) 正式名称:Assessment of Communication and Interaction Skills | テキストとして管理。人間用のデータではなく、ソフト間で共有するために利用する。 |
3MF(スリー・エム・エフ) 正式名称:3D Manufacturing Forma | 3Dオブジェクト用。3Dプリンターやレンダリングのために利用する。 |
このように、世の中ではさまざま拡張子を利用しています。普段何気なくデータを保存・開封していると思いますが、実際には用途や目的が違うのです。
DWGとDXFの違い
DWGとDXFは似た特徴をもっていますが、若干の違いがあるのも事実です。
参考として、2つの違いをわかりやすくまとめました。どのような使い分けが必要なのか、ぜひ参考にしてみてください。
DWGの特徴・違い
DWGは、エンジニアリング向けの製品を提供するAutodeskの拡張子です。例えば次のようなソフトで広く活用できる一方、他社ソフトでは読み込めない場合があります。
- AutoCAD
- Revit
- Civil3D
- Maya
- Fusion
- 3ds Max
- Inventor
また、この拡張子は0と1で構成されているバイナリコードで作られているのが特徴です。DXFに比べて処理が早く、ファイルサイズを約25%も軽くできると言われています。普段からAutodesk製品を利用している方なら、DWGを利用するのが良いかもしれません。
DXFの特徴・違い
DXFも同様に、Autodesk社提供の拡張子です。ただDXFはオープンソースとして利用できます。
世界のさまざまな企業が提供しているCAD・BIMソフトと共有でき、受け取ったデータをそのまま開封しやすいのがポイントです。
またDXFは、DWGとほぼ同時期に開発されました。Autodesk製品のメイン機能となるDWG、他社ソフトとの共有を考慮したDXFとしてよく利用します。
DWG・DXFはどちらを使うべきか
Autodesk製品を導入している(導入する予定がある)のなら、DWGを利用しましょう。一方、Autodesk社以外のCAD・BIMソフトを導入している(導入する予定がある)のなら、各ソフトのメイン拡張子を利用しましょう。
基本的に、メインはデータが軽く保存しやすいDWG、他社や発注者へのデータ提供・共有する際にはオープンソースのDXFというように、使い分けるのがおすすめです。
DWG・DXFの使い分けと活用例
2つの拡張子の使い分けにお悩みなら、次のように活用してみるのはいかがでしょうか。
- まずはデータ容量を抑えるために容量の軽いDWGで設計を実施する
- 設計完了後にデータ共有や提出を求められたらDXFに変換して共有する
基本的にDXFを選んでおけば、他のソフトで読み込めない問題を回避できます。ただし、BIMとして設計を実施する際には、DXFですべての3D要素に対応できないと覚えておかなければなりません。
もしDXFに反映できない要素がある場合には、DWGでの共有もしくは3Dデータ共有に特化したデータを出力するのが良いでしょう。
DWG・DXFを操作できるソフト一覧
種類 | 名称 | 価格 | DWG・DXFへの対応 | その他の対応拡張子 |
CADソフト | Autodesk製品全般(AutoCAD) | 有料 | 対応 | 3ds、sat、IGESなど |
DRA-CAD(ドラキャド) | 有料 | 対応 | JWWなど | |
Root Pro CAD Free(ルートプロ キャドフリー) | 無料 | 対応 | JWW、sfcなど | |
AR_CAD(エーアールキャド) | 無料 | DXFのみ | JWW、sfcなど | |
BIMソフト | Autodesk製品全般(Civil3D、Maya、Inventor) | 有料 | 対応 | 3dm、STL、STEPなど |
ArchiCAD(アーキキャド) | 有料 | 対応 | plaなど | |
GLOOBE(グローブ) | 有料 | 対応 | emfなど | |
SketchUp(スケッチアップ) | 無料 | 対応 | skpなど |
上表からも分かるように、DWG・DXFはさまざまなCAD・BIMソフトで読み込みできます。世界シェア上位に位置する製品のほとんどが2つの拡張子に対応しているので、データ形式を気にすることなく製品を選べると覚えておきましょう。
DWGのメリット・デメリット
DWGを利用したい方向けに、メリット・デメリットを整理しました。特徴を詳しく知る参考にしてみてください。
メリット
メリットは次の通りです。
- データを変換せずに利用しやすい
- データ容量を節約できる
- 2D・3Dデータをまとめて保存できる
まず、DWGは世界シェア上位のCAD・BIM製品で良く利用されているのが特徴です。一部の製品を除き、データ変換せずに共有できます。
また、バイナリ構造が採用されているため、データ容量を節約しやすいのがポイントです。大規模設計を行う場合にはデータ容量を抑えなければならないことから、DWGを利用しやすいのではないでしょうか。
最後に、2D図面・3D図面のデータをまとめて保存できるのが魅力です。CADだけでなくBIMでも活用できるため、CAD・BIMでデータ変換の必要がありません。
デメリット
一方、次のようなデメリットもあります。
- 汎用性に劣る
- 古い他社製品で開けない場合がある
DWGは汎用性の高さが魅力ですが、一部の製品では読み込めない場合があります。実はDXFのほうが汎用性に優れているのです。すべてのCAD・BIM製品で共有したい場合には、DXFで共有するのが良いでしょう。
また、他社製品でDWGを開けるようになったのは最近の話です。古い他社製品では開けない場合があるため、一度DXFなどに変換しなければなりません。
DXFのメリット・デメリット
DXFのメリット・デメリットを整理しました。必要性を知る参考にしてみてください。
メリット
メリットは次の通りです。
- オープンソースなのでほぼすべての製品に対応している
- 半精度浮動小数点まで拡大縮小できるのでクオリティを維持しやすい
まず、DXFはオープンソースとして全世界に公開されています。ほとんどの製品に適用されているため、データを開けないという問題の解消が可能です。
また、半精度浮動小数点まで拡大縮小できるのが魅力です。数千、数万分の1のスケールもディテールを変えることなく保存・共有できます。
デメリット
汎用性の高さが魅力のDXFですが、次のようなデメリットもあります。
- 情報がプレーンテキストで保存されているので転送に時間がかかる
- 一部の3D要素に対応しているがメインは2D要素だけ
まずDXFは、容量を抑えやすいデータ形式です。しかし、読み込みに若干の時間がかかるプレーンテキストが採用されているため、データ保存や共有といった転送に時間がかかりやすいと覚えておきましょう。
次に、DXFはDWGと同様に2D・3D要素の保存・共有をできますが、3D要素の一部を反映できないというデメリットがあります。もし汎用性の高い3Dの標準フォーマットを利用したいなら「STEP、JT、QIF」などを利用するのが良いでしょう。
DWG・DXFに関するよくある質問
よくある質問を3つ整理しました。
DWG・DXFを編集できるフリーソフトはある?
ほとんどのフリーソフトで編集できます。特にDXFはオープンソースとして提供されているため、ほぼすべての製品で操作が可能です。
DXFをDWGに変換する方法は?
フリーの変換ソフトを利用するか、Autodesk製品を使って変換するのがおすすめです。フリーソフトの場合、すべての要素を変換できないケースもあるので、Autodesk製品で変換するのが良いでしょう。
AutoCADでDXFを開けないときの対処法は?
AutoCADで受け取ったDXFを開けなかった場合には、一度出力元のソフトでもデータを開き、再度データを共有してもらうと開ける場合があるようです。また、AutoCADで使えない文字などが含まれていないか確認してもらうことで解決する場合があります。
おわりに
DWGやDXFは、製品を操作する中で良く利用するデータ形式です。さまざまな業界で利用することから、事前に用途や目的、使い分けを理解しておくと作業しやすくなるでしょう。
もしDWG・DXFを提供しているAutodesk製品に興味をお持ちなら、以下の記事がおすすめです。ぜひ参考にしてみてください。
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