これから中古住宅を購入するなら、事前にホームインスペクション(住宅診断)を実施しておくことをおすすめします。ただ、なかには当診断の概要を知らないという方も多いはずです。

そこでこのコラムでは、ホームインスペクション(住宅診断)の概要や実施するメリットについてわかりやすく解説します。費用相場や実施しないデメリットも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ホームインスペクション(住宅診断)とは
ホームインスペクションとは、住宅の劣化状況や不具合の有無などを、建築の専門家が第三者の立場から調査・診断するサービスです。
日本語では「住宅診断」とも呼ばれており、これから生活する家が本当に安全なのかを確認してもらうために実施します。
なかでも中古住宅の購入を検討している人にとって、経年劣化している建物の状態を事前に把握することは非常に重要です。たとえ見た目がきれいだったとしても、内部に次のような問題が起きていることも少なくありません。
- 雨漏りによる木材の腐食
- シロアリ被害
- 基礎コンクリートのひび割れ
このような問題を事前に把握すれば、大きな修繕費が発生するリスクを避けたり、安心して購入判断を下したりすることが可能です。
また、診断は買主側だけでなく、売主側にとってもメリットがあります。あらかじめ建物の状態を診断しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズな売買が可能となるでしょう。
耐震診断との違い
住宅の状態を確認する診断には、他にも耐震診断というものがあります。参考として以下に、2つの診断の違いを整理しました。
ホームインスペクション(住宅診断) | 耐震診断 | |
目的 | 住宅の劣化状況や不具合の有無を確認し、修繕の必要性を判断する | 地震に対する建物の安全性を確認し、耐震性を評価する |
診断内容 | 外壁や屋根、床の傾き、水回り設備の劣化、雨漏り、シロアリ被害など | 建物の構造(柱・壁・基礎など)の強度や耐震基準への適合性 |
対象建物 | 主に中古住宅(戸建て・マンション) | 主に1981年以前に建てられた旧耐震基準の住宅 |
実施者 | 建築士や住宅診断士などの専門家(第三者) | 耐震診断の知識を持つ建築士(自治体が指定することも) |
費用相場 | 一戸建て:5〜7万円前後、マンション:4〜6万円前後 | 簡易診断:無料〜数万円、本格診断:10万円〜20万円以上 |
結果の活用 | 購入判断の材料、売買時の価格交渉材料、修繕計画 | 耐震補強工事の検討、補助金申請の基礎資料 |
それぞれ目的・内容が異なりますが、併用することで「現状の把握」「耐震性の確認」の両面から、より安心した住まい選びが可能となります。
ホームインスペクションは制度説明が義務化されています
2018年の宅地建物取引業法の改正により、現在、不動産会社はホームインスペクションに関する説明を行う義務が課されています。
これは中古住宅市場の活性化や消費者保護の一環として、国が制度化を進めた取り組みのひとつであり、不動産会社は売買契約の前に次の内容について、重要事項説明のなかで説明しなければなりません。
- その建物がホームインスペクションを受けたかどうか
- ホームインスペクションのあっせんが可能かどうか
制度の義務化に伴い、購入者は建物の状態を客観的に判断しやすくなりました。また以前まで発生していた後々の住宅トラブルを防ぎやすくなっています。
国がこうした制度を後押しする背景には「中古住宅を安心して買える社会を構築する」という狙いがあります。少子高齢化や空き家問題が深刻化するなか、良質な中古住宅の流通を促進することは持続可能な社会づくりに欠かせません。
ホームインスペクション(住宅診断)の費用相場
診断にかかる費用は、住宅の種類や診断内容、業者によって少しずつ異なりますが、一般的な相場は以下のとおりです。
- 一戸建て住宅であれば基本調査で5万〜7万円程度
- マンションであれば4万〜6万円程度
費用の内訳には「目視調査」「写真撮影」「報告書の作成」などが含まれており、担当者が家全体を見てまわることで劣化や損傷の状況を調べます。(打音調査などは基本実施しません)
なお、診断オプションとして「屋根裏や床下の詳細な調査」「機材を使った検査(赤外線カメラなど)」「耐震診断」などの追加が可能です。ただし追加費用がかかり、フルパッケージで10万円以上になるケースもあります。まずは見積もりを取得し、どこまで診断してもらうべきか検討することから始めましょう。
ホームインスペクション(住宅診断)を実施するメリット
ホームインスペクションを実施すれば、建築物の損傷状況に関する情報を得やすくなり、すばやく対策を講じられるようになるのが魅力です。
ここでは建築物の所有者にどのようなメリットがあるか詳しく解説します。
建物の瑕疵を発見できる
ホームインスペクションを実施すれば、所有物件を利用する前に物件で発生している瑕疵を見つけやすくなります。

まず建物診断を実施しなかった場合には、特に建物の状態を確認することなく過ごすことになります。基本的に瑕疵は10年間保証されますが、11年目に瑕疵が原因で損傷やアクシデントが起きても保証されなくなる点に注意しなければなりません。
事前確認をしておけば、早めに瑕疵に気がつくことができ、早めの補償を受けられるようになるのがメリットです。気づかないまま放置される状態を避けたいなら、早めの診断をおすすめします。
将来的なトラブルに悩まされにくくなる
対してホームインスペクション(住宅診断)を実施すれば、将来的に起こりうるトラブルを未然に防止できるのがメリットです。
建物に発生している劣化や損傷を放置すると、それが将来的に大きなトラブルに発展するケースもあります。大規模な修復が必要になった場合、高額な費用がかかるため、入居する前に確認しておくのがおすすめです。
ホームインスペクション(住宅診断)を実施するデメリット
実施するメリットの多いホームインスペクション(住宅診断)ですが、2つのデメリットに気を付けなければなりません。
検査費用が発生する
引き渡しを受ける際に建物の損傷や劣化状況を把握できる住宅診断ですが、検査には一定のコストが発生します。
相場としては、一戸建ておよび集合住宅でそれぞれ4〜7万円程度かかるのが一般的です。
なお、利用する専門業者によってこの値段設定は増減します。比較検討を実施しなかった場合、上記の価格よりも高額な請求を受ける場合もあるので、まずは三社見積もり等を行ったうえで金額比較をするのがおすすめです。
すべての瑕疵を発見できるわけではない
調査は基本的に目視で実施されることから、次のような場所の損傷を見過ごされてしまうこともあります。
- 外壁の内側の損傷
- 微細な劣化
- 人が入り込めない場所の損傷
例えば屋根裏の狭い部分に劣化があったとしても、そこに人が入り込めないため、劣化を見つけられません。また打音調査や超音波試験などを実施するわけではないため「コンクリートのうき」「塩害による劣化」なども気づきにくいです。
なお近年では、AIを活用した診断技術の登場により、診断結果の精度が高まりつつあります。3Dスキャン技術を活用した仕組みであるため、微細な損傷を見逃しにくくなっています。
ホームインスペクション(住宅診断)を実施せずに後悔する人の事例
自宅や所有する物件の劣化状況を確認しなければ、後々トラブルが発生しやすくなるとご存じでしょうか。
どのようなアクシデントにつながるのか、具体例もまじえつつ解説します。
報告されていない欠陥でトラブルが起きた
物件に住み始める前にホームインスペクションを実施していなければ、引き渡し時に報告されていなかった欠陥などに気づけません。
その結果、欠陥が徐々に拡大していき、最終的には住宅全体の劣化や損傷につながってしまうことがあります。
例えば、基礎コンクリートに大きな亀裂が残った状態のまま放置されると、亀裂を中心としてひびわれが拡大するほか、雨水が浸透して内部鉄筋が腐食する可能性もあるでしょう。
また、施工不良などが見つからないまま放置されてしまうと、そこから二次的なトラブルに発展するかもしれません。引き渡し時にすべての瑕疵が報告されるとは限らないため、安全を確保するためにも診断をおこなっておくのがおすすめです。
中古住宅の補修範囲が予算よりも多くなった
古い物件を購入して住みはじめる人もいますが、その際に点検を実施していないと、今後の維持管理で多大な費用負担が発生するかもしれません。
例えば、住みはじめた段階でひびわれができていたとしましょう。それにすぐ気がつくことができれば、ひび割れ補修を5,000円/m程度(目安)の費用で終わらせることが可能でした。
一方で、ひびわれが大きくなり鉄筋等の補修まで必要になると、その倍額以上の補修コストが発生するかもしれません。
気づくのが遅ければ遅いほど維持管理コストが増加してしまうため、補修費用を予算オーバーしないためにも、少ないコストで対策できるよう早めに診断を済ませておくのがおすすめです。
ホームインスペクション(住宅診断)についてよくある質問
初めての利用でよくわからないとお悩みの方向けに、よくある質問を整理しました。
契約前にホームインスペクション(住宅診断)は実施できるの?
住宅の売買契約前には、ホームインスペクションを実施することが推奨されます。
購入を検討している住宅の状態を事前に把握することで、大きな修繕リスクを避け、安心して契約に進めるのが魅力です。契約後に不具合が見つかると、修繕費やトラブル対応で大きな負担を強いられるケースもあるため、契約前に「本当に購入すべきか」を判断するためにも、まずは不動産会社や専門業者に相談してみることからスタートしましょう。
新築でもホームインスペクション(住宅診断)は必要なの?
新築の場合、一見診断は不要だと思われがちですが、可能であれば実施して置くことが大切です。
新築住宅でも、建築中の施工ミスや仕上がりの不備が発見されるケースが意外と多く、第三者のチェックによって早期に問題を発見できる可能性があります。特に建売住宅の場合、複数棟を一度に建設するため、施工のばらつきが起こるリスクがあります。
まとめ
ホームインスペクションは、物件の購入者(買主)のみならず売却者(売主)にとってもメリットのある調査です。両者が納得できる不動産売買を実施するためにも、可能な限り将来問題が発生しそうな劣化や損傷を見つけておくことが重要です。
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