現場状況をデータとして精密に確認できる「Holobuilder」に興味をお持ちの方も多いでしょう。しかし、具体的な機能や使い方がわからず、導入すべきか迷っている方もいるはずです。
このコラムでは、360°カメラを利用して現場状況を管理できる「Holobuilder」の概要や機能、役立つシーンを紹介します。どのような目的、現場で役立つツールなのかチェックしてみてください。
Holobuilderとは?
Holobuilderは、アメリカカリフォルニア州にある建設業界向けの開発企業「FARO technologies」が提供している現場管理ソフトです。現場状況を360°見渡せる写真をツリー状のファイル構造で管理できるのはもちろん、撮影した画像にコメントや必要情報を掲載できます。
また、ただ写真をチェックできるのはなく、BIM業務などにも利用する3Dポイントクラウドデータを生成し、現実と寸分変わらないハイクオリティな3Dモデルの生成にも役立つのが製品の魅力です。ほかにもデータ共有やスケジュール管理など、さまざまな機能に対応していることから、視覚的な現場管理をする際に役立ちます。
HoloBuilderはモバイルアプリもあり
当ソフトは、Webを通じて利用できるSaaS型のソフトウェアであることから、ネット環境をもつデバイスであれば自由にアクセスできるのが特徴です。
また、スマートフォンなどで操作・チェックしたい場合にはモバイルアプリも提供されています。Android・iOSの両方に対応していることから、機種を問わず利用できるため安心です。
なお、アプリ版を利用したい場合には名前が変わり、JobWalkという名称のアプリダウンロードが必要になります。Holobuilderと同じアカウントを連携できるほか、エンジニアリング向けのソフトウェアを提供するAutodeskのアカウントを使ってログインすることも可能です。
Holobuilderを利用する際に必要なアイテム
当ソフトを操作する際には、専用アプリケーションだけではなく、次のようなアイテムが必要です。
- 360°カメラ
- パソコンやスマートフォンといったデバイス
まずHolobuilderは、360°写真のデータを管理できるアプリであることから、その媒体となる360°カメラを自社で用意しなければなりません。ワンクリックで対象範囲内の状態を撮影できるため、必要箇所数分だけ撮影をするのが一般的です。
またアプリを導入するためのデバイスを用意する必要があります。各従業員が所有するスマートフォンにも導入できることから、特段、新たにデバイスを購入する必要はありません。ただしセキュリティ対策などを徹底する場合には、社用のデバイスを用意しておくことをおすすめします。
Holobuilderの機能
Holobuilderには主に、次の3つの機能が搭載されています。
- 進捗管理機能
- 360°写真の対比機能
- クラウド共有機能
具体的な機能の特徴を整理しました。公式サイトの説明だけではイメージできないという方方は、ぜひ参考にしてみてください。
進捗管理機能
当ソフトを利用すれば、現場写真を活用した業務の進捗管理が可能です。
例えば、最新の360°写真を撮影し、変更点や追加作業に関する情報を追加すれば、関係者全員にリアルタイムの進捗を伝えられます。360°写真はフォルダ分けして画像データを整理できることから、過去からの変化もすぐに見分けられます。
また、360°写真とは別に、個別の2D写真をキャプチャできるのが特徴です。対象箇所全体の状況を伝えたときは360°写真、部分的な状況を伝えたい場合には2D写真というように使い分けをしながら進捗を管理できるため、伝わりやすい状況報告が可能となります。
ポイントクラウドの生成機能
撮影した360°写真を活用すれば、ソフト内でポイントクラウド(点群データ)の生成が可能です。
例えば、建物などの壁や床、インテリアをまとめて点群化できることはもちろん、屋外の地面や設置物などをすべてデータ化できます。また、生成したポイントクラウドは建設業務等で利用できるBIMデータの現況地形として利用できるのが特徴です。
ただ写真を撮影して終わりではなく、測量の役にも立ちます。現況地形の距離計測も可能であることから、現地踏査資料の作成もまとめて利用したいなら、Holobuilderを利用するのが便利です。
360°写真の対比機能
当ソフトでは、複数の360°写真を横並びで表示して、前回との違いを対比する機能が備わっています。対比というシンプルな機能ですが、次のようなシーンで利用できます。
- 発見された建物の損傷と補修後の変化
- 施工前と施工後の変化
ただ2Dの画像を見比べるのではなく、同じ位置・同じ方向の360°写真を同時に表示できるのが魅力です。以前の写真で指摘していたポイントが正しく対応されたのかを確認する際にも利用できることから、管理職など作業状況をチェックして品質維持をしたい場合に役立ちます。
クラウド共有機能
Holobuilderは、利用するユーザーが写真情報をチェックできるだけではなく、連携しているユーザー全員に同じ写真データを共有できる機能が備わっています。
ネット環境にさえ接続されていれば、関係者全員に写真情報を共有できます。コメントやマークアップといった情報もまとめて共有できることから、すばやく写真情報を共有したいという人におすすめです。
Holobuilderの価格情報
当製品の価格情報は、公式サイト上には公開されていません。要見積もりのソフトウェアですので、まずは見積もり相談からスタートしましょう。
なお、本当に自社に必要なソフトウェアなのかチェックしたい方は、無料トライアルをスタートするのがおすすめです。21日間の無料トライアルが用意されており、有料版と同じようにすべての機能を利用できることから、導入検討に役立ててみてください。
Holobuilderが役立つシーン
そもそも当ソフトをどのようなシーンで活用して良いかイメージできないという方向けに、ソフトが役立つシーンを3つ整理しました。現場で発生しやすい問題やその解決例も掲載しているので、自身の目的に合うのかチェックしてみてください。
現地踏査時の状況共有として
建設業務では、業務開始時点に現地状況の様子を確認するための「現地踏査」を実施します。
現地踏査では、現場写真の撮影はもちろん、情報の記入などを対応しなければなりません。しかし従来の踏査は、デジカメなどを用いて必要箇所分だけの情報を記録する手間がかかります。また、膨大な写真を管理することからどれが何の写真なのかわからない、写真台帳を整理して図面に番号を割り振るといった手間もかかっていました。
対してHolobuilderを使って360°写真を撮影すれば、360°写真を1枚撮影するだけで広範囲の状況写真を撮影できます。また、360°写真に直接マークアップをしたり、コメントを掲載したりと、すべての作業を電子化できるのが魅力です。完成した情報はクラウドを通じてほかの従業員に共有できることも含め、少人数での現地踏査、複数人への的確な情報共有を効率化できます。
点検業務の参考データとして
建物や設備のメンテナンスをする際に欠かせない「点検業務」では、次のような情報をまとめなければなりません。
- チェックリストへの記入
- 損傷や劣化の評価
- 対象箇所の状況写真
しかし、箇所ごとに写真を撮影する方法では、担当者ひとりですべての管理を対応しなければならないほか、点検の現場作業が終わった後、帰社しなければ作業を開始できません。
対してHolobuilderを導入し、現場写真の電子化およびクラウド共有機能を活用すれば、現場作業を実施しながら、社内にいる別の担当者と連携しながら現場状況の報告や調書の作成を勧められます。
また、ひとりだと時間のかかる点検業務ですが、連携をすれば効率よく業務を進行できます。さらには360°写真を撮影しておくことにより、帰社後に写真の撮影ミスがあったとしても、360°写真のなかから2D画像をキャプチャできるのが魅力です。
複数箇所の点検にも対応しやすく、1日の点検箇所を増やせるなど、点検業務の作業効率化を検討しているのなら、当ソフトを導入することをおすすめします。
工事業務の進捗報告として
施工業務を実施する際に必要となる「進捗報告」では、発注者や上司に向けて現場状況写真の撮影や箇所ごとの進捗状況を定期報告しなければなりません。
しかし、毎回同じ箇所を撮影して回るのは非常に手間がかかります。また、前景・近景の両方を撮影するほか、過年度の写真(前回報告の写真)と向きや方向を揃えなければならないという手間がかかっていました。
一方で、Holobuilderを導入して360°写真を管理すれば、決められた点に360°カメラを設置して撮影するだけで、現場状況写真の撮影を完了できます。写真に直接マークアップやコメントを書き込めることも含め、以前からどのような変化があったのか、今後起こりうる課題があるのかを、すばやく共有できるのが魅力です。
360°写真は、まるで人間の目線と同じように回転をしながら現場状況をチェックできるため、発注者や上司に伝わりやすい進捗報告が可能となります。
おわりに
Holobuilderは、360°カメラで撮影した写真をクラウド管理できるほか、写真内に情報を書き込める進捗管理に役立つソフトウェアです。現地踏査や点検業務、工事の進捗報告など、写真を使った業務で役立つツールのですので、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。