みなさんは「8th Wall」というWebAR開発プラットフォームをご存じですか?
従来のARは、専用アプリが必要なものがほとんどでした。
そんな中、専用アプリをダウンロードせずにAR体験ができるWebAR開発プラットフォームが注目を集めています。
この記事では「8th Wall」の機能や特徴を解説します。AR開発の入門にもってこいなプラットフォームなので、参考にしてください。
8th Wallとは?読み方も紹介
8th Wall(エイスウォール)とは、アメリカ企業「8th Wall」が開発・提供するAR開発サービスです。WebARを手軽に作成できる開発プラットフォームという役割があり、サービスに登録するだけですぐAR技術を活用できます。
現実世界に3Dのデータを読み込み、まるで現実上にデータの世界があるかのように見せる技術です。3Dモデル作成技術と多少のコーディング技術があれば、すぐにAR技術を活用できます。
まずは8th Wallの特徴や開発の基礎知識を分かりやすく解説します。
▼公式サイト: https://www.8thwall.com/
ネイティブアプリとの違い
「AR技術を使う」と聞くと、次のようなサービスを思い浮かべるのではないでしょうか。
- ポケモンGO
- Pikmin Bloom
アプリに搭載されたデータを通してARの世界を体験でき、今や世界中で利用されているエンタメゲームアプリです。基本的には専用アプリをダウンロードしなければAR技術を楽しめません。これをネイティブアプリと呼びます。
一方8th Wallは、Webブラウザを使ってARを楽しめるのが特徴です。サービスに登録するだけでWeb上でARを楽しめます。
ARアプリを開発して提供する手間がかからないことはもちろん、Web上で操作し、OSを問わず利用できるのが特徴です。また、開発したWebARを自由にカスタマイズできるため、提供しているサービスに導入しやすい機能だといえます。
Unity開発者は8th Wall XR for Unityがおすすめ
8th Wallを利用するためには、ARで表現したい3Dモデルを作成しなければなりません。もし普段からUnityと呼ばれる開発ツールを利用しているのなら、8th Wall XR for Unityの利用をおすすめします。
8th Wall XR for Unityは、8th Wallに導入されている開発機能です。1つのプラットフォームで3Dモデル作成、動作設定、AR反映を実施できるため複数のツールを介することなくAR開発に取り組めます。
8th Wall XR for Unityは「XR developer」という名称で機能が設けてあります。UnityのUIを使ってあるので、開発に活用してみてください。
2022年3月にNianticより買収
8th Wallは、WebARの技術ではトップシェアを占めていました。しかし2022年3月にゲームアプリ「ポケモンGO」の提供で知られているNianticによって買収されました。AR技術のインフラ「ARDK」を提供している企業であり、当サービスに新たな風を吹き込みつつあります。
そして近年、現実世界のデータを3Dモデル化する「VPS」技術が追加されました。Niantecの買収に伴い、さらなる映像表現を楽しめると期待が集まっています。
- 日本国内: トヨタ自動車, Sony Picturesなど
- 海外: Nike, Porsche, McDonald’s, Red Bull, Adidasなど
8th Wallは数多くの企業にWebARの体験を提供しています。
▼YouTubeリンク 8th Wall
8th Wallを活用した開発事例
事例①マクドナルド・スウェーデンが本物の風船をARに置き換え、廃棄物を削減
スウェーデンのマクドナルドは、環境に配慮するため、飾りである風船をWebAR風船に置き換えました。
購入来たゲストも仮想空間でAR風船をポップすることに夢中になり、マクドナルドで食事やおしゃべりを楽しめます。
事例②Kinder – Jump Into Africa Portalで3Dサファリを体験
Kinder – Jump Into Africa Portalは、文字通りアフリカにとび、サファリ体験ができるゲームです。家族がアフリカのサバンナと交流し、探索できる3D WebARポータルになります。
Jump Into Africa Portalに入ると、アニメーション化された3Dサファリ動物の楽しいインフォグラフィックを観察でき、自分の自然の生息地の動物についてもっと知ることができます。
スーパーへ買い物に来た客は、店内の看板やスーパーマーケットのキンダー製品の隣にある剥がし、印刷チラシをスキャンすることで体験することができます。
▼YouTubeリンク Kinder ‘Jump Into Africa’ In-store Activation | Retail Web AR
事例③ドミノ・ピザ
出典:ドミノ・ピザ「YouTube動画より抜粋」
配達系の飲食店であるピザ屋「ドミノ・ピザ」では、8th WallのARを活用し、世界のチーズ知識を紹介するサービスを提供しています。
地球儀型の3Dモデルを現実世界上に表示し、アイコンをタップすることによって世界のチーズ情報をチェックできるのが特徴です。自社サービスのプロモーションとして公開されたARであり、8th Wallを使って開発されました。
事例④トヨタ自動車
出典:トヨタ自動車「YouTube動画より抜粋」
自動車開発・販売企業である「トヨタ自動車」では、自社製品のクラウンをAR化して、誰もが外観やデザイン、内装をチェックできるARサービスを提供しました。
新製品の雰囲気を伝えることはもちろん、わざわざ販売店まで行かずとも自動車の雰囲気をチェックできるのが魅力です。表示されている3Dモデルは、カラー変更や走行している状態をチェックできます。
【解説】8th Wallとは?WebARの開発支援ツールの解説と最新動向
【8th Wallとは】使い方や活用メリット・コスト感まで徹底解説!
WebARの特徴
WebARとは、
・専用のARアプリをインストールする必要がない。
・ブラウザ上で動作するため、Android、iOSのアプリを開発する必要がない。
そのためARに馴染みのないユーザーでも手軽にAR体験をする事が可能です。
8th Wallの特徴
8th Wallで利用できる機能一覧
8th Wallで利用できる機能を以下に整理しました。
機能名 |
特徴 |
AR Engine |
ハイクオリティなAR表現に活用する機能です。平面認識や画像トラッキング、フェイストラッキングといった技術を活用できます。 |
Cloud Editor |
AR開発に使うWebエディタです。クラウド管理しながら肺活を進められるため、企業やチームで同時にプロジェクト開発を進行できます。 |
Built-In Hostiong |
8th Wall用に利用できるホスティングサーバです。別サービスでサーバー契約・レンタルする必要がないため、管理を集約化できます。また、有料プランを契約すればローカルホスティングも可能です。 |
上表の項目は、8th Wallを利用するうえで触れる機会が多いものばかりです。中でもCloud EditorはAR開発に必須の機能ですので、操作に慣れておくことをおすすめします。
公式サイトには、個人学習用のドキュメントやチュートリアルが用意してあるので、無料試用期間を使って操作を覚えてみてはいかがでしょうか。
ARkitとARCoreとの比較
次に8th Wallの特徴を理解するために、ネイティブアプリ(ARKit/ARCore)と比較し、表にまとめました。
ARKitはiOS向けのAR開発ツール、ARCoreはAndroid向けのAR開発ツールです。
8th Wall | AR Kit | ARCore | |
開発企業 | 8th Wall Inc. | Apple | |
対応OS | iOS,Android (対応ブラウザ:Safari、Chrome、Firefoxなど) |
iOS12以上 | Android7.0以上 |
料金 | Agency:$99~/月 Business:$250~/月 | 無料 | 無料 |
トライアル | 14日間のトライアルあり | ー | ー |
開発環境 | three.js、A-Frame、Babylon.js、Amazon Sumerian | iOSネイティブ(Objective-C、Swift)、Unity、Unreal | Androidネイティブ(Java)、Unity、Unreal、iOSネイティブ(Objective-C) |
8th Wallアカウントの作り方
8thWall Webの公式サイト(https://8thwall.com/)にアクセスしましょう。
手順①
公式サイト画面右上の「Start Trial」をクリックします。
手順②
無料トライアル申込み画面にページが遷移します。自分のメールアドレスを入力し、
「Start Trial」をクリックします。
手順③
記入したメールアドレス宛てに「Verfication Code」が届きます。
6桁のコードを記入しましょう。
手順④
名前やメールアドレス、パスワード、電話番号など必要事項を入力します。
手順⑤
クレジットカードやプラン情報の入力画面に遷移しました。必要事項を入力していきましょう。
※14日間の無料トライアル期間中いつでもキャンセル可能です。有料プランを利用しない場合は、トライアル終了後キャンセル作業を行ないましょう。
手順⑥サンプル版作成
アカウントの作成が完了すると、公式サイトのトップページへ画面が戻ります。ワークスペースを作成する際には、画面上部に表示されている「マイプロジェクトへ」をクリックしましょう。
体験版の場合、プロジェクトの作成ができません。代わりにサンプルプロジェクトをチェックしてみましょう。画面下側に表示される「Image Targets Flyer」をクリックしてください
サンプルデータを開くと、以下の表に起動画面が表示されます。実際にどのようなAR技術が使われているのか、紫色の「起動する」をクリックしてみてください。
起動するをクリックするとQRコードが表示されます。スマホでQRコードを読み込むとカメラが起動して画面上にARが出現しました。
他にも複数のサンプルプロジェクトが用意してあるので、どういった表現ができるのかチェックしてみてください。
8th Wallアカウント作成後にできること
8th Wallアカウントを作成し、プランに加入すると次の機能が利用できるようになります。
・Cloud Editor + Hosting
8th Wallは、AR開発に必要なクラウドエディタやホスティングサーバーを提供しています。
・World Tracking (SLAM)
8th Wallでは、モバイルブラウザに最適化されたマッピング(SLAM)エンジンを提供しています。
●SLAMとは?
SLAMとは、「Simultaneous Localization and Mapping」の頭文字をとってSLAM(スラム)と呼びます。これを日本語にすると”Simultaneous=同時に起こる”、”Localization=位置特定”、”and=と”、”Mapping=地図作成”となり、「位置特定と地図作成を同時に行う」という意味になります。(引用:MACNiCA)
World Trackingを使用することで、6-DoF、照明推定、瞬時の平面検出などの機能を使用することができます。
・Image Target
8th Wallでは、ポスターや看板、ディスプレイ、広告などの画像認識を行ないトラッキングすることができます。
Image Target APIを使用すると、ARコンテンツ体験ごとに最大1000個のアップロードされたマーカー画像にアクセスすることが可能です。
・Face Effects
人物の顔を認識して、顔に合ったテクスチャを貼ることができます。この技術によりメガネやジュエリーなど試着体験を提供することが可能になります。
アプリを必要とせずに、スマートフォン、タブレット、デスクトップを含むすべてのデバイスで使用することが可能です。
8th Wallの料金
出典:8th Wall「プランページ」
8th Wallは、無料試用期間の体験版を除き、基本有料のAR開発サービスです。利用料金の参考表を以下に整理しました。
|
スタータープラン |
プラスプラン |
プロプラン |
エンタープライズプラン |
|
価格 |
月額 |
$12 |
$59 |
$129 |
要見積もり |
年額 |
$108(月額$9) |
$588(月額$49) |
$1188(月額$99) |
要見積もり |
|
プランの特徴 |
・3名同時利用可能 ・無制限でAR/VRの作成可能 100以上のテンプレート/モジュール活用可能 など |
・6名同時利用可能 ・組み込み型のAR導入可能 ・メールサポートの利用 ・スタータープランの全項目 |
・組織全体で同時利用可能 ・ローカルホスティングに対応 ・顧客向けライセンス購入 ・プラスプランの全項目 |
・オリジナル機能の追加 ・プロプランの全項目 |
基本的に、スタータープラン・プラスプランは個人向けやスモールビジネス向けとして提供されています。もし大規模ビジネスを検討しているのなら、プロプランがおすすめです。また、既定の機能に不足を感じているのなら、エンタープライズプランを契約して、カスタマイズしてみるのはいかがでしょうか。
自身の目的とプランの特徴、価格を比較しつつ、どのプランを契約すべきなのか検討してみてください。
8th WallといったWebARのメリット・デメリット
8th Wallのサービスを含むWebARの活用には、複数のメリットそして一部のデメリットがあります。
今後、8th Wallを使ってWebARを作成したいのなら、ツールの良し悪しをチェックしておきましょう。
WebARのメリット
WebARのメリットは次のとおりです。
- 低コストで制作できる
- アプリ不要なので利用してもらいやすい
- 活用用途が豊富である
まず8th Wallといった総合開発ツールがあれば、少ないコストでARを開発できます。作成する手間がかからないのはもちろん、自社オリジナルの開発に比べて費用を大幅に削減できるため、WebARをサービスに導入しやすいのが魅力です。
次に、WebARはQRコードを読み込んで起動するため、一般の人に提供しやすいサービスだといえます。ネイティブアプリを導入せずに利用できるため、興味を持って利用してくれる人を増やせるのが魅力です。
さらにAR技術は、ただエンタメ分野で活躍するだけでなく次の用途に利用できます。
- インテリアの室内配置
- 業務研修
- ファッションチェック
ほかにも豊富な用途があるため、業務にも活用しやすいのが魅力です。
WebARのデメリット
豊富なメリットをもつWebARですが、ひとつだけ「長期利用向きのコンテンツではない」というデメリットがあります。
WebARは、ポケモンGOやPikmin Bloomのようにゲームやコレクションとして長期的に楽しめるコンテンツではなく「一時的に3Dモデルを表示したい」といった場面で利用するのが一般的です。
ビジネス向きのツールですが、ストーリー性のあるエンタメコンテンツとしては活用しづらいツールだと覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
これからARコンテンツが日常的に普及し、ARを活用した宣伝も一般的になります。今から宣伝企画やアイディアを練るといいでしょう。
そしてARコンテンツを提供したいと思ったときのために、専用アプリとWebARのどちらでAR体験をするか検討しておきましょう。
- しかしARを活用したいが制作をどのようにしたらいいか分からない。
- WebARの制作で相談したい。
などWebARやARコンテンツ専用アプリ制作でお困りのことがありましたら、ONETECH にお問い合わせください。
現在ONETECHでは、WebARの研究を進めております。
ARアプリ開発実績も多数あり、下記にまとめました。
▼ONETECH ARアプリ開発実績
■XR開発に特化したベトナムオフショア開発企業 ONETECH
ONETECHは、XRに特化した開発会社です。
VR/ARコンテンツ開発を始めさまざまなシステム開発、アプリ開発、ソフトウェア開発をベトナム オフショアで開発しています。ベトナムのXRトップ企業として紹介されています。
2015年の創業から上場企業からスタートアップ企業までお客様100社以上の300以上のプロジェクトに関わってきた豊富な開発実績があります。
ONETECHはUNITYでAR/VRアプリの開発
AR/VR/MR開発は2015年より取り組んでおります。UNITYの技術者育成に力を入れて取り組んでいます。
VR開発:ベトナムでのVR開発分野において最も開発実績のある企業の一つとなっています。
AR開発:ARkit、ARcoreなどを利用して多数のアプリ開発、Babylon.js、8thWallなどでのWebAR開発実績がございます。
UNITY開発:ONETECHはUNITYを利用し様々なVR開発、AR開発、アプリ開発をしています。HoloLens/Oculus/HTC VIVE/Pico/Nreal Lightなど最新のデバイスも取り揃えています。
ホロレンズ開発:ベトナムで最も多くのHoloLens開発実績のある企業の一社です。
WEBXR開発:WEBXRは、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)および混合現実(MR)をWebブラウザで利用するための技術スタンダードです。ユーザーは、特別なアプリをダウンロードすることなく、多様なデバイスで豊かな3Dコンテンツを体験できます。
CG制作:製品やゲームのアセット、業務用の映像などの3DCGコンテンツの3DCG制作(モデリング・アニメーション・レンダリング)をエンジニアと連携しながらワンストップで受けることが可能です。