自動運転やロボット技術などに導入されているSLAMという最新技術に興味をお持ちではないでしょうか。
このコラムではSLAMの概要や活用されている機械や技術、SLAM活用に必要なセンサーについて解説します。位置情報を活用するSLAMの全容を把握して、ぜひ技術を活用してみてください。
SLAMとは?
SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)とは、位置情報の取得・地図作成をリアルタイムで実施する技術のことです。主に最新の自動車などに導入されていることが多く、次のような特徴を持っています。
- 現在位置を把握する
- 周辺の状況を把握する
今まで自動車などは、人間という操縦者が目で周囲を見て判断することにより操縦できました。ですが自動車単体だと、人間がいなければ同じような動作はできません。
対してSLAMの技術を活用すれば、自動車といったロボット自体が周囲の状況や自分の位置を把握できます。まるで人間と同じように正しい位置情報を把握できるため「どこを通れば安全なのか」「どのような道順が良いのか」などを自己判断できるようになるのが魅力です。
SLAMによる位置情報推定の仕組み
SLAMの技術をわかりやすく説明するため、以下の簡単な仕組みを整理しました。
- 周辺の状況を認識する(ここでSLAMを活用)
- AIによる操縦の判断
- 機械操作による移動
まずSLAMの技術を活用して、自動車といったロボットの周辺状況を把握します。次に、その情報を受けといったAI技術などが、学習した情報などをもとに「何をすべきか」判断します。最後に、AIが機器を操作して動きを生み出します。
つまりSLAMには「人間の目」と同じ役割があるのです。目で見て自分の位置を判断し、次にどう行動するのかを決めます。ロボットに新しく目が追加されたことにより、ロボット自体に自己判断させる能力を付与できるのが魅力です。
SLAMが活用されている機械・技術とは?
SLAMの技術は現在でも、さまざまな場所で活用されています。参考として、技術活用されている機械や技術そして具体例をまとめました。
【活用1】自動運転技術
自動車が自ら到着先まで運転してくれる「自動運転技術」としてSLAMが活用されています。
近年では自動運転技術を搭載した自動車が数多く普及しており、人間が自ら操縦をしなくても、一般道路や高速道路を自動で走行してくれるようになり始めました。
信号機を自己判断できることはもちろん、横断歩道を渡る人、急に飛び出してくる人などを避けながら運転してくれるため、人間が自ら像住する必要がなくなりつつあります。
【自動運転技術の実例】
ANAでは空港内を走行するランプバスを自動走行させるためにSLAM技術を活用しています。すでに実証実験が始まっており、精度向上の研究を進めています。
出典:国土交通省「ランプバス自動構想実証実験」
【活用2】自律ロボット
位置情報の認識と地図作成の技術は、以下に示すような自律ロボットにも搭載されています。
- ドローン
- ロボット掃除機
なかでも進化を遂げているのが、自宅内の形状を把握して掃除をしてくれるロボット掃除機です。掃除をしながら自宅内をマッピングしてくれるのはもちろん、マッピングした情報をもとに「掃除をしてほしくないエリア」などを設定できます。
センサーなどで読み取った情報を活用して、自動走行してくれるため、ぶつかって物を壊したり、本体が壊れたりすることを防止できるのも魅力です。
【自律ロボットの実例】
SwitchBotが提供しているスマート家電のひとつであるロボット掃除機には、レーダーベースの位置情報取得機能があり、掃除のたびに部屋の情報をマッピングしてくれます。取得した情報を学習して効率よく掃除を進めてくれるのが特徴です。
出典:SwitchBot「ロボット掃除機K10+Pro」
【活用3】AGV(無人搬送車)
工場・倉庫などで荷物などを輸送してくれるAGV(無人搬送車)にも、位置情報・地図作成に関わる機能が搭載されています。
指示された場所まで安全に荷物を運ぶAGVには、積載型・重量型・牽引型・屋外型などさまざまな種類が提供されており、床にひかれた線をもとに走行してくれるものはもちろん、マッピング機能・AI機能を駆使して搬送してくれるものなど、多種多様なロボットが利用されています。
人間の手で荷物を運ぶ必要がなくなるため省人化を期待できるほか、あらかじめ搬送計画を用意しておけば、昼夜を問わず24時間365日稼働し続けてくれるのが魅力です。
【AGVの実例】
大手ECサイトのAmazonは、膨大な商品の搬送を効率化するために「QRグリッド式」のAGVを導入しました。本体の上に荷物を載せて走行できるQRグリッド式AGVは、ロケーションに合わせて走行条件を設定しながら自動で荷物を搬送してくれます。
出典:日経XTECH「Amazon初の完全自律型搬送ロボットの実力、『ここまで来るのに50年かかった』」
SLAMを活用するために必要なセンサーの種類
SLAMには「レーザースキャナー(LiDAR)」「HDカメラ(モノラル・ステレオ)」「ToFセンサー(距離画像)」という3種類のセンサーがあります。それぞれ異なる特徴で位置情報や周辺情報を把握するため、具体的な違いを整理しました。
【LiDAR SLAM】レーザースキャナー(LiDAR)
レーザースキャナであるLiDARが搭載されたSLAMは、2D・3Dの点群データを活用して周辺情報を把握できる技術です。
衛星などから受信した位置情報、そして測量をするように周辺へレーザーを飛ばすことで取得した点群データをもとに、現在位置やまわりの様子を把握します。
高密度の点群データを活用してマッピングを行うため、細かな情報も読み取れるのが魅力です。ただし、一面田んぼのように周辺に検知できる対象が少ないと、データを取得しづらくなります。
【Visual SLAM】HDカメラ(モノラル・ステレオ)
HDカメラを用いたSLAMは、カメラレンズから取得した情報をもとに周辺情報を把握できる技術です。
単体のカメラはもちろん、複数のカメラで周辺を撮影することにより、画像処理の機能を使って位置情報の取得・地図作成に対応できます。ただし、夜間帯など暗い場所で情報を検知するのが難しいのが特徴です。
【Depth SLAM】ToFセンサー(距離画像)
ToFセンサーを用いたSLAMは、距離情報をもとに周辺状況を把握できる技術です。
例えばセンサーで周囲に見える物体をすべて読み込ませることによって、自動で距離を取得します。取得したデータをヒートマップ状の深度画像に変換し、色の違いをもとに位置情報や周辺状況を把握できるのが特徴です。
SLAMに利用されているアルゴリズムとは?
位置情報や周辺状況など、情報の取得・解析に長けているSLAMの技術には「EKF」「Fast」と呼ばれる2種類のアルゴリズムが活用されています。それぞれのアルゴリズムの違いや、特徴についてわかりやすく整理しました。
【アルゴリズム1】EKF SLAM
EKF SLAMとは、不確実な測定データなどから現在位置を正確に推定するアルゴリズムです。移動し続けるロボットの位置情報を正確に取得し、大きなずれをつくらないために用いられています。
また、EKFは初期アルゴリズムとして導入されていることが多く、リアルタイムで膨大なデータを処理できるのが特徴です。ただし、利用時間が長くなればなるほど計算の負荷がかかり、誤差などが出やすくなることに注意しなければなりません。
【アルゴリズム2】FastSLAM
FastSLAMとは、技術を搭載したロボットの動きを大量の点群で表現して地図を作成してくれるアルゴリズムです。膨大なデータを点群で表すことにより、計算処理の負担を必要最小限に抑えられます。
ただし点群密度を上げすぎると逆に高負荷がかかりやすくなる場合があるそうです。長い時間膨大なデータを処理させるためには、事前に適切な点群密度を設定することが欠かせません。
SLAMを利用するメリット一覧
データ取得の技術は複数ありますが、そのなかでもSLAMを活用するメリットを以下にまとめました。
- 走行先の情報を自動で推定してくれる
- リアルタイムで膨大なデータを処理できる
- マッピングの効果により走行先にある障害物を回避できる
静止している物体はもちろん、動いている人や動物の情報を検知し続け、最適な動きを判断できるのが魅力です。3次元としてデータを取得できることから、いりくんだ道や多数の障害物があるエリアを難なく走行できます。
SLAMを利用するデメリット一覧
自動運転などに欠かせないSLAMですが、次のデメリットを抱えています。
- 導入コストが高額になりやすい
- 時間帯・天候によってセンサーの品質が変化する
- 人間による補助が必要である
最新の技術ということもあり、まだまだ導入には高額なコストがかかります。また、センサーや写真をもとに周辺を解析するため、撮影が難しい夜や、センサーを乱反射する雨の場合に、期待する品質を得られないケースがあるかもしれません。
特に不特定多数の自動車・自転車・人・動物が動いている道路の場合、いかなる危険がやってくるか判断できない場面も多いことから、完全に手放しで自動運転技術を活用できるわけではないと覚えておきましょう。
おわりに
センサーを活用して位置情報や周辺状況を把握できるSLAMは、自動運転の機能をもつロボットに欠かせない技術です。ただし今後さらに技術発展が進むと期待される一方で、時間帯や天候といった課題も残っています。
今後、一般人が利用できる状態になるまで時間はかかりますが、今後の進展から目が離せません。
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