SAPをはじめとするERPパッケージ導入は、多くのメリットが期待できる施策である一方で、巨額の損失を生んでしまった事例も存在します。
費用と時間を要するSAPの導入が失敗する理由や、成功のためのポイントについて、ご紹介します。
ノーリツが経験したSAP導入の失敗事例
日本の大手給湯器メーカーであるノーリツは、かつてSAPのERPパッケージの導入に挑んだものの、大きな損失を被る結果に終わりました。
ERP廃棄で16億円の特損
2000年、ノーリツは12月の決算期において、96年より導入を進めてきたERPパッケージの廃棄を決定し、16億円もの特別損失を計上することとなりました。
参考:日経XTech「【事例】ERP廃棄で16億円の特損—ノーリツ」
https://xtech.nikkei.com/it/members/NIS/JIREI/20040420/1/
ノーリツが採用したのは、SAPが提供するERPパッケージでしたが、外付けのシステムも含めて完成にまで至ったものの、その全てを廃棄することになってしまったのです。
廃棄の理由として重くのしかかったのは、保守費用やバージョンアップに伴うアップデート費用です。
導入コストだけでなく、今後数億円単位で保守費用が発生することに対して、ノーリツは無関心すぎてしまったことが、仇となりました。
また、ノーリツが当時採用したシステムが、R/3と呼ばれるパッケージでした。しかしこの製品はシステムが完成した2000年の秋にはサポートの対象外となり、そこからの移管にはさらに改修費用がかさむことが後になって判明したのです。
この結果、ノーリツは今後発生しうる膨大なコスト負担を考慮し、16億円かけて構築したシステムは全て廃棄することとなりました。
「チャレンジ精神」が裏目に出た結果に
上の記事よると、ノーリツがこのような損失を計上してしまったのは、当時売り上げが下降気味であり、何らかのブレークスルーを必要としていたことが原因にあったと担当者は振り返っています。
トヨタ流生産方式と呼ばれるJITを実践していたもののここに何らかの変化を加える必要があると考え、SAP製品のR/3の導入に至りました。
しかしR/3はJITとの相性が悪かったために、独自開発によってさらにコストを圧迫することとなったのです。また、当時はJITを実践する企業においてR/3を導入しているケースは少なく、十分なサポートを得ることができなかったことも、裏目に回りました。
現場からの評判も高くなく、結果的にSAP製品の導入は徒労に終わってしまったのです。
SAPの導入が失敗する理由
このようなノーリツの失敗事例も含め、SAPの導入に際して失敗に陥りやすいケースを列挙することができます。
保守費用の計算を怠る
一つは、高額な保守費用が発生する可能性を考えず、システムを組み上げてしまうケースです。
ノーリツにおいても財務会計や購買管理、販売管理や生産管理まで、一気に一元管理を進めてしまおうという挑戦的な取り組みを実践しました。
しかし一元管理体制を整えたのはいいものの、導入後はそれらの膨大な管理コストがかかってしまい、加えてアップデートにも数億円規模の負担を強いられることが後から判明し、廃棄に至っています。
SAP製品の導入は、システム構築費用だけでなく、その後も保守費用や改修費用が発生します。その負担も織り込みながら、ERPの導入は進めていきましょう。
安直な期待を抱く
ノーリツではJITによる効率的な生産を実践していたのにも関わらず、相性の悪いSAP製品の導入を行ってしまいました。
事前に調査を行っていれば回避できたかもしれない事案ですが、当時ノーリツは新しい取り組みに躍起になっていたことからも分かるように、SAP製品に対して過度な期待を持っていたことも考えられるでしょう。
グローバル標準のSAP製品を導入すれば、自社の売り上げも自動的に伸びていくはずだという考え方は非常に危険で、システムに依存した発想です。
どのようにコントロールするかというプランなしにSAPを導入するのは、リスクの大きな選択肢なのです。
SAP導入を成功に導くポイント
こういった失敗を踏まえ、SAPの導入を成功に導くためにはどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。
業務ベースのSAP運用を
一つ目のポイントは、SAP運用は計画的に行うという心がけです。
ノーリツの失敗事例のように、SAPを導入すれば自動的に業績はアップすると考えてしまうと、思わぬ費用負担や業務との相性の悪さに悩まされることも起こりえます。
システムによって業績を伸ばすのではなく、まずは業務を改善し、改善のためにどんなシステムが必要なのかを考える段階で、初めてSAP製品の検討を進めていきましょう。
運用体制の評価も定期的に行う
SAP製品を導入しても、実際に現場社員にとってメリットをもたらすことができなければ、SAPの効果は半減してしまいます。
事前にどのようなシステムの導入を必要としているかはもちろんのこと、導入後も適切にシステムが利用されているか、改善点はないかを評価する体制を整えましょう。
おわりに
SAP製品は魅力的なシステムを提供してくれますが、使い方を誤ると大きな損失をもたらしかねません。
あらかじめ運用方針を確認し、SAP導入を成功に導きましょう。
ベトナムオフショア開発のONETECHは2021年にSAP開発に進出
「SAP2027年問題」SAP ERPの保守期限は2027年に延長されたが。。。
「SAP2027年問題」はSAPのERP製品「SAP ERP 6.0」、ERPにSCM(サプライチェーン管理)やCRM(顧客関係管理)を加えた「SAP Business Suite」などの標準サポートが終了してしまうことです。SAP導入企業は2027年までに、SAP S/4HANAへマイグレーションするなど何かしら対策が必要です。日本国内のSAP導入企業は2000社を超えていますが、半分ほどは保守期限への対策にまだ手をつけられていない状態です。
「新型コロナウィルスCovid-19とSAPエンジニア不足でのダブルパンチ
「SAP2027年問題」対策には膨大な開発リソースと開発サポート体制が必要となります。
SAP S/4HANAへの移行に関するプロジェクト数が増加しており、SAP関連の案件を取り扱っているベンダーやコンサルティングファームではSAP人材、とりわけ、SAP S/4HANAに精通した人材の確保が課題になっています。またコロナウィルスの影響を受けて企業は予定していた予算の見直しにも迫られています。SAP導入企業は企業を支えるシステムの保守期限が迫る中でコストダウンとSAPエンジニア不足など難しい局面を迎えています。
「オフショア開発でコストダウンとSAPリソースの確保を両立
ONETECHはベトナムの勤勉で優秀なエンジニアとともにオフショア開発分野で成功してきました。オフショア開発を活用することでコストダウンとリソース調達が可能です。
2020年11月にONETECHはSAPに精通したSAP15年経験の技術顧問を迎えました。ONETECHのオフショア開発成功を支えたPMP®︎の上級プロジェクトマネージャーがお客様の課題解決に尽力いたします。またSAP University Alliancesのメンバーのベトナム国家大学 ホーチミン市経済法科大学University of Economics and Law(UEF)と連携しSAP人材の育成もスタートしています。またベトナムのSAP開発のローカル企業とのネットワークも構築し「SAP2027年問題」の解決に尽力します。
「SAP技術顧問としてSAP15年経験のコンサルタントがONETECHに参画
2020年11月よりSAPに精通し15年間のSAP経験のあるコンサルタントが技術顧問としてONETECHに参画しました。彼は15年間グローバル企業でSAPコンサルタントとして活躍しました。日本のSier在籍時には0から100名を超えるSAPのオフショアパートナー会社の立ち上げに成功しました。ONETECHは2021年中にABAP200人体制を計画しております。
技術顧問 NGUYEN DANG LAM(グエン ラム)
1980年生まれ、ベトナム国家大学ホーチミン自然科学大学、情報技術卒業、ベトナム国家大学ホーチミン経済大学 会計学部卒業
■経歴
会計と情報技術の博士号取得
・15年間SAP経験
・SAP FI / SAP CO / SAP BW / SAP ABAPモジュールのコンサルティング/実装および機能/技術サポート
・米国、メキシコ、ドイツ、日本(11年)、タイ、ベトナムでの勤務経験
・FI Certified/CO Certified/BWU Internal Training/ABAP Internal Training
・金融コンサルタントとしてグローバルオートモーティブロールアウトプロジェクト
・ERPと財務会計、ABAP、ラテンアメリカのE会計の知識
「 PMP®︎上級プロジェクトマネージャーがSAPプロジェクトを成功に導きます
上級プロジェクトマネージャー NGUYEN ANH TUAN(グエン トゥアン)
1980年生まれ、ベトナム国家大学ホーチミン自然科学大学、情報技術卒業
■経歴
・18年間様々なソフトウェア開発に従事、日本に移住、14年間
・数億円規模の大規模システムの開発経験多数
・NEC在籍時にPMP® 取得を取得
・ONETECH ASIAと株式会社One Technology Japan創業
・ベトナム進出、現地法人設立、経営全般支援
・先端テクノロジー分野に精通
「 SAP University AlliancesのメンバーのUEFと連携しSAP人材の育成
ベトナム国家大学 ホーチミン市経済法科大学University of Economics and Law (UEF)はSAP University Alliancesのメンバーです。
UEFはSAP Next-Gen Labに加盟しています。UEFでは1500名の学生がSAPモジュールを学んでいて150名はSAPを専攻しているITエンジニアです。
ONETECHはUEFと共同して日本向けのSAP開発リソースの教育、育成、人材調達を開始します。
「ONETECHのSAPエンジニア育成予定
2020年11月より技術顧問のグエンラムによりONETECH社内の優秀なJava経験者のSAP育成プログラムを開始しました。またUEFと連携しインターン制度導入と、即戦力のSAP経験者の採用も開始しました。
2021年4月までにSAP ERP ABAP、SAP S/4 HANA ABAP、SAP S/4 HANA FIORI ABAPの資格取得者の体制を構築します。またグエンラムによるSAP ERPのサーバー運用の実践などのプログラムも開始しました。