業務の中でXYZ座標を観測する測位技術を使いたいと考える企業も多いでしょう。このとき重要になるのが、誤差を抑えつつ正確な位置を観測できる「RTK測位」という方法です。では、RTK測位とはいったい何なのでしょうか。
この記事では、RTK測位について学びたい初心者向けに、基礎知識をご紹介します。また、RTK測位の活用シーンや実際に使えるサービスも説明しているので、業務に適用できるか確認していきましょう。
ハイクオリティな測位技術である「RTK」とは?
RTK測位とは、衛星軌道上に飛ばされたGNSSを使ってXYZ座標を調べる測位技術のことです。世界各国で打ち上げられているGNSSのデータを受信することで、簡単にXYZ座標を検出できます。
まずはRTKの概要を理解することを目的に、3つの特徴を見ていきましょう。
①GNSSを活用して誤差数cmの測位ができる
私たちが普段使い慣れているGPSは、気軽にXYZ座標を観測できるのが一般的です。中には、GPSも誤差なくXYZ座標を取得できるとイメージしている人も多いでしょう。ですが実は、誤差が数十cmを超えることから、思っているよりも誤差があるのです。
一方RTK測位では、人工衛星であるGNSSを使って、XYZ座標を観測します。なんと測位誤差が約数cmになるなど、今いる地点をほぼ正確に測位できるのが魅力です。地上にある既知点と衛星の両方からXYZ座標を検出します。国内にある大量の基地局を使用することによって、誤差を最小限に抑えることができるのです。
②RTK測位の種類
RTK測位では、以下に示す2種類の方法が利用されています。
- RTK-GNSS
- ネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)
「RTK-GNSS」では、XYZ座標が設定されている既知点と、位置を求める観測点の2点で同時に観測を行って、XYZ座標を測位するクオリティを高める方法です。それぞれで検出されたXYZ座標の誤差要因を消去して、誤差を小さくします。
「ネットワーク型RTK-GNSS(VRS方式)」では、事前にXYZ座標が確認されている電子基準点、そして観測点の2点で観測を行い、電子基準点のリアルタイム観測データを利用して補正を行う方法です。国土地理院はもちろん、通信会社が設置している基地局などを活用し、高いクオリティでXYZ座標を取得できます。
③RTK測位以外の測定技術
近年では、XYZ座標を取得して業務に利用する企業・業者が増えていますが、RTK測位の他にもさまざまな測定技術があることをご存じでしょうか。例えば、次のような測定技術はさまざまな現場で活用されています。
- 単独測位
- 相対測位
- DGPS測位
利用する測位技術は、法律やマニュアルによって細かく定められています。このうち高い精度で位置情報を把握したい場合には、RTK測位などを活用することで、さまざまな業務に適用できるのが魅力です。
RTK測位の仕組みとは?
そもそも、RTK測位はどのような仕組みでXYZ座標を取得しているのでしょうか。ここでは、その仕組みと手順をご紹介します。
まずRTK測位を行う際には、地上設置型の受信機、もしくはドローンといった移動式の機器を利用します。各種機器から発信された受信データを「人工衛星」および「既知点(基地局)」が受け取り、現在地の座標を返してくれるのが特徴です。
また、人工衛星は1つだけではなく、その時間帯に観測できる複数の人工衛星からXYZ座標を受信します。それぞれが返してくれた情報の中から、誤差要因を除外していくことによって、正しい座標へと補正を行い、誤差数cmの位置を検出できるというわけです。
RTK測位ができる機器は、それぞれ複数のメーカーから販売されています。例えば以下のメーカーなどから本体搭載の機器や、後付けできる機器も提供されています。
- DJI
- LOCOSYS Technology Inc.
- 株式会社小泉測機製作所
- 古野電気株式会社
このとき重要なのが、製品の比較を行うことです。似たような製品でも、メーカーによって性能や搭載されている機能、使いやすさなども変化するので、口コミやメーカー実績などを参考に、目的に合わせた機器を手に入れてみてください。
RTK測位の活用例3選
RTK測位は、平成初期から電子基準点の設置が開始され、近年に入りようやく、開発価格が落ち着き業務として使用されるようになりました。では、RTK測位は、どのような業務に活用されているのでしょうか。
ここでは、3つの活用事例を詳しくご紹介します。XYZ座標取得に関わるさまざまな業務に活用できるので、自身の目的に当てはめながら参考にしてみてください。
RTK測位の活用例①:測量・点検業務
RTKは建設業など、XYZ座標を使って計画を立てる業務に使用されています。その中でも特に利用頻度が高いのが「測量・点検業務」です。
例えば、RTK測量の設置機器やドローンを用いて、広範囲の地形をデータ化する写真測量やレーザー測量が実施されています。また、海上では船舶を利用したグリーンレーザー測量、マルチビーム測深なども活用されている状況です。
これに併せて、現在日本で深刻化している建設物・建築物の老朽化に伴うドローン点検にもRTK測量が利用されています。具体的な位置を把握しつつ損傷状況を把握することにより、損傷の位置や度合いを細かくチェックできるのが特徴です。
また、国土地理院では、RTK測位に関する業務マニュアルが無料で提供されています。観測方法や撮影条件、誤差の許容値、管理表の作成なども整理されているので、事前に確認しておきましょう。
RTK測位の活用例②:自動車運転(ナビ・自動運転)
RTK測位は、私たちが利用している自動車にも搭載され始めています。特に身近なのがナビシステムへの導入でしょう。GPSのみによる測位ではなくGNSSを複数使ったRTK測位を行うことで、ナビでよく発生していた位置ズレが防止できます。
近年では自動運転システムにも導入化が進んでいます。正確な位置を把握しつつ、AI技術などと融合することによって危険を検知する。測位データをベースに移動するため、目的地まで手動運転せずに到着できるのも、もう目の前かもしれません。
また、自動運転のなかで押さえておくべきなのが、国土交通省の最新情報です。自動運転に向けた取り組みや最新の動向を理解しつつ、業務を行うことにより、法律や基準に沿った摘要を行えるでしょう。
令和4年版の国土交通省の自動運転に関する情報をチェックしてみる
RTK測位の活用例③:農作業
RTK測位は、重機を多数利用する農作業にも使用されています。種の植え付けや刈り取りを行うトラクター、農薬を散布する散布車、ドローンなどに搭載することにより、作業の自動化を実現できます。
農作業では、リアルタイムで作物の状況を把握しなければなりません。RTK測位を利用したドローンの撮影や点群測量などを使うことにより、日々の作物の状況や野生動物の侵入などを、現場へ向かわずともチェックできるようになっています。
また、農林水産省では農作業の新技術導入を支援しており、ロボット農業機械の研究成果などが発表されています。各地で実施されているスマート農業のプロジェクトについて、画像やヒートマップ付きの品質、利用者の体験談や効果も紹介されているので、農業DXの現状をチェックしてみてください。
RTK測位の提供サービス3選
RTK測位を行うためには、専用の測位サービスを使用する必要があります。一般的には国土地理院が設置している基地局などを利用することによって、ハイクオリティなXYZ座標を取得できますが、近年では通信会社なども測位サービスに参入している状況です。
最後に、現在利用できるおすすめの測位サービスを3つご紹介します。魅力的なサービスを安定的に利用する参考にしてみてください。
RTK測位サービス①:ichimill(SoftBank社)
ichimillは、SoftBank社が提供するサービスです。3,300箇所ほど設置されている基地局を利用してRTK測位を実施できます。
すでに農業バス、ドローンの自動制御などの共同実証が進んでおり、現場利用なども実施されている状況です。XYZ座標の管理に利用する補正サービスもワンステップで利用できることから、利用開始後、即座に業務に適用できるでしょう。
ichimillのシステムについて詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。システムの概要や具体的な仕組みを解説しています。
>>ichimillとは?車両位置を追跡できる高精度測位サービスを紹介
RTK測位サービス②:VRS-RTK(KDDI社)
VRS-RTKは、KDDI社が提供するサービスです。KDDIが設置している電子基準点および補正サーバーを利用して位置情報を取得できます。
また、VRS-RTKでは、仮想的な基地局を作成して利用できるため、実際の基地局から離れていても、安定した通信を利用できるのが特徴です。基地局本体が故障や不具合があっても利用できることから、電波障害が起こりにくいサービスだといえます。
RTK測位サービス③:IoT高精度GNSS位置情報サービス(docomo社)
IoT高精度GNSS位置情報サービスは、docomo社が提供するサービスです。docomoが独自に設置している固定局を利用してXYZ座標を取得するサービスであり、全国1,300箇所の電子基準点を利用できます。
また、利用料金の設定もシンプルであり、初期費用不要、IDごとの月額料金だけで継続利用できるのが魅力です。公式HPでは、サービスエリアの範囲マップが用意されているので、RTK測位を行う前に、利用の可否を確認できます。
RTK測位を用いる3つのメリット
従来、位置座標の取得といえば「GPS」という名称が用いられてきました。GPSはお持ちのスマートフォンや自動車などにも搭載されており、地図アプリなどを通じて現在地を確認できます。
これに対し、RTK測位でGNSSからXYZ座標を取得できれば、現状よりもさらなるメリットがあるのです。ここでは、RTK測位を用いるメリットを3つに分けてご紹介します。
RTKのメリット①:位置情報を誤差数cmで測位できる
RTK測位を活用すれば、誤差数cmで測位が可能です。かなりハイクオリティで測位できることも含め、後述する測量や点検業務、農作業、自動運転技術などにも活用できます。
従来の測位方法では、誤差数十cmも出ていたため、ある程度の位置までは観測できていました。しかし、具体的な位置を把握できず、機器を測位データに合わせて操作することはできません。
一方、RTK測位を活用すれば、上記の対応が可能となります。誤差が小さくなるほど業務に利活用する幅が広がっていくため、XYZ座標を利用する業務を進展できるでしょう。
RTKのメリット②:電波妨害の影響を受けにくい
RTK測量は、複数のGNSSからデータを測位することに加え、基地局などからデータを取得して補正を掛けることから、障害物の影響を最小限に抑えられるのが特徴です。
例えば、単独測位や相対測位を利用した場合、測位間に障害物があると電波妨害を受けてしまい、正確な座標を取得できません。特に森の中や住宅密集地などでは、電波妨害を避けるために長い時間をかけて測位を行う必要があるでしょう。
一方、RTK測位では複数の要素を活用するため、他の測位技術よりも高品質なXYZ座標を取得できます。測位技術にとって電波妨害は天敵であるため、RTK測位による回避が重要視されています。
RTKのメリット③:正確な高度を計算できる
RTK測位では、測位システムなどを活用して、XYZ座標を細かく取得できます。このうち、従来の測位技術ではZ座標の取得に手間がかかっていました。例えば、地球は楕円状かつ山や谷といった凹凸のある地形をしています。
測位技術では、測位した楕円球体高から、平均海面高に相当するジオイド高を差し引いて標高(Z座標)を算出する必要があり、ジオイド高の設定に時間がかかるのが特徴です。一方、RTK測量と精度管理システムを活用すれば、ほぼ自動でXYZ座標を取得してくれます。短時間で座標を取得できることから、XYZ座標はもちろん、正確な高度まで算出できるのです。
おわりに
RTK測位は、建設業・農業・自動車産業など、幅広い分野で活躍する手段です。誤差数cmでXYZ座標を取得でき、国土地理院のみならず、複数の通信業者の基地局を利用して全国的に測位できます。
機器の自動化に大きく貢献するサービスも豊富に提供されていますので、この機会にぜひ提供サービスをチェックしてみてください。
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