近年、VR(Virtual Reality、仮想現実)の技術はますます進化を遂げ、多くの人に様々な用途で親しまれるようになってきました。
しかしVRは、何十年も前から少しずつ研究が重ねられてきた技術でもあり、その歴史には紆余曲折もありました。
今回はVRの歴史に注目し、仮想現実の進化を紐解いてみましょう。
VRの登場
まずは、VRという言葉やコンセプトが、いつごろからスタートしたのかについて見ていきましょう。
VRの元祖は20世紀前半に登場
今でこそ当たり前のように開発が進んでいるVRですが、そのコンセプトが登場したのは80年以上前の話です。
1935年、作家のスタンリー・G・ワインボウムが発表したSF短編小説「Pygmalion’s Spectacles」の中に、ゴーグルを装着すると仮想的に五感を感じ取りながら擬似体験が可能な装置が登場します。
フィクションとはいえ、当時としては非常に先進的な装置として考えられており、VRの先駆けとして今でも記憶されています。
60年代から活発化したHMD研究
本格的にVRの技術研究が進められたのは、60年代に差し掛かった頃でした。1962年、モートン・ヘイリグはセンソラマ(
)と呼ばれるシステムを開発しました。これは大型のシステムであったものの、没入型で多感覚入力が可能という、マルチモーダルインターフェースを採用していたことから、世界でも最初期のVR機器として知られています。
また、ユタ大学のアイバン・サザランドは、1968年に「ダモクレスの剣」と名付けられたヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発し、話題を呼びました。
実用性はどれも低かったものの、大いに可能性を秘めた装置が次々と生まれ始めていたのです。
第一次VRブームの到来
VR装置の商用化が始まったのは、90年代前後からです。当時は家庭用コンピューターも次々と登場しつつあった時代であるだけに、IT革命と同時にVR界隈にも密かなブームを生み出そうという動きが見られました。
VRの商用デビュー
VRが初めて市場に発表されたのは、1989年のサンフランシスコで行われたイベントであったと言われています。Texpo’89と呼ばれるハイテクイベントにおいて、VPL Research社が「RB2(Reality Built dfor 2)」と呼ばれるVRコミュニケーションシステムを発表し、世間の注目を集めました。
参考:CreatorZine「VRの初商用化は30年前、現代を生きるクリエイターが知っておくべき歴史と必要な視点とは」
https://creatorzine.jp/article/detail/538
HMDを被った2人の参加者が同じVR空間の中で会話できる3Dテレビ会議システムというのがコンセプトで、未来の電話のあり方を方向付けてくれたのです。
また、その数年後には任天堂が「バーチャルボーイ」と呼ばれるVR機器を発表しています。これは本体単体で動かすことができるVR機器で、立体空間の中でゲームを楽しめるというコンセプトを掲げていました。
当時のVRの難点
このように、VR装置の開発は世界中で、様々なアプローチを取りながら進められてきました。
しかし難点としては、やはりこれらの装置が高額であったため、一般に普及するには至らなかったこと。そして、本体のスペックが価格に見合わないものであったことが挙げられるでしょう。
ただでさえ2Dのパソコンも今と比べると非常に低スペックであったために、VRのような小型装置では、できることも限定的でした。
そのため、第一次VRブームは10年ほどで収束を遂げ、しばらくは根本的なハードウェア開発が進められました。
スマホやゲーム機が牽引した現代のVRブーム
そして2010年代以降、ハードウェアの性能が飛躍的に進化したことで、VRは再び日の目を浴びることとなります。
Kinectの登場で家庭への浸透が進む
家庭で気軽に楽しめるVR装置として、いち早く登場したのがマイクロソフトの「Kinect(キネクト)」でした。
これはテレビの前に装置を設置することで、テレビの前のプレイヤーの動きを捉えてくれるという、モーショントラッキング機能が搭載されたハードです。
特別な機械を装着せずともプレイヤーの動きをゲームにアウトプットできるということで、ゲーム業界に衝撃を与えました。
Kinectはすでに流通が終了しているものの、今でも医療分野や研究者の間で重宝されており、10年以上に渡り活躍しているロングセラーデバイスです。
スマホで楽しめるVRアプリやデバイスの登場
VRが本格的に楽しまれるようになったのは、スマホの登場が決定的でした。安価で誰でも手に入れられ、高性能なスペックを有しているということで、VRアプリもスマホ向けに数多く配信されたのです。
その結果、ARと共にVRはスマホを通じて認知され、徐々にVRという言葉も世間に浸透していくこととなりました。
進むVR専用ウェアラブルデバイスの開発
2016年、世界は「VR元年」が到来したと言われるほど、VR業界が活況を見せた歳でもありました。
「HTC Vive」や「PlayStation VR」など、様々なメーカーからVR専用機器が発売され、VRはもはやスマホのおまけではなく、単体で楽しめるエンターテイメントであり、テクノロジーであると認知され始めたためです。
現在も HMDやウェアラブルデバイスの開発は続けられており、着実な進歩を遂げています。価格はまだ決して安くはないものの、今後数年で低価格化と高品質かはさらに進んでいくでしょう。
おわりに
VRの歴史は長く、それだけに確かな技術開発も進められてきました。すでに様々な業種で見かけるようになりましたが、今後はますます活躍の場も広がっていくでしょう。
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