SAPの提供するERPは主に4つのモジュールに分かれていますが、その中でも会計モジュールは最も重要な役割を果たします。今回はそんな会計モジュールの中でも管理会計をつかさどる、COモジュールの役割や導入のポイントについて、ご紹介していきます。
COモジュールとは
SAPは、各機能に分かれてモジュール化しており、必要に応じてそれぞれを増設したり、あるいは分離したりする事ができるようになっています。
企業のニーズに応じての仕様というわけですが、COモジュールはそれでもほぼ全てSAP導入企業が採用しているモジュールとなっています。
COモジュールの役割
COモジュールが担うのは、管理会計の分野における業務サポートです。
管理会計というのは、組織の中で利用するための収益分析、費用の分析を行う部門です。人件費から仕入れ費用、さらにはオフィスや工場の光熱費まで、ありとあらゆる支出情報が管理会計に集まり、同時に売り上げや収益についてのデータも集まります。
逆に言えば、正確な管理会計を行うためには、これら全ての情報を効率よく、そして漏れなく集め、正確な数字を弾き出す必要があります。
COモジュールを使って、この作業を効率化する事が可能です。
財務会計(FI)モジュールとの違い
会計モジュールは、管理会計のCOモジュールだけでなく、財務会計のFIモジュールも含まれます。
管理会計と財務会計は、どちらもデータを集積して分析結果をアウトプットするという、同じような役割を果たしますが、その違いはデータの用途にあります。
まず、管理会計は社内用にデータの会計を行うため、どのようなデータが算出されるかは企業の目的に応じてバラバラです。
一方、財務会計のFIモジュールは、社外に財務諸表を公開するための機能を有しています。国や株主など、第三者が閲覧できるようにアウトプットするため、内容に関しては微妙な違いが生まれます。
そのため、データ集積のプロセスは同じですが、それぞれで目的が違うために、出力情報には差異が生まれるという点には注意しておきましょう。
COモジュールでできる事
COモジュールを使ってできることには、いくつかの種類があります。
一つ目の機能である間接費管理(CO-OM)は、どこで生まれた経費なのかを具体的に特定できない間接費を管理してくれます。
間接費を投じて恩恵を受けた部門へ等しく配分することで、間接費の形状を適切に行う事が出来ます。
二つ目の機能が、製品原価管理(CO-PC)です。間接費とは反対に、原価のような直接費を管理し、適切に計算する事が可能です。
三つ目の機能は、収益性分析(CO-PA)です。計上した間接費と直接費を使用し、事業や製品ごとに利益を分析する事が出来ます。
間接費が多く発生している部門はどこか、一番収益性の高い製品はどれかといった客観的情報から、賢明な経営判断へと生かせます。
COサブモジュールの存在
COモジュールは、その役割に応じてさらにモジュールを細分化して考えることもできます。これらはサブモジュールと呼ばれ、COモジュールの機能性を支えています。
例えばCO-OM関連のサブモジュールに、原価センタ会計(CO-OM-CCA)というものがあります。これは、原価や経費がどの範囲に適用されるのか、ということを明確に線引きするための機能です。
あるいは利益センタ会計(EC-PCA)では、損益決算書や貸借対照表を、利益センタ別に作成し、業務の効率化を促せます。
サブモジュールのそれぞれの役割を把握することで、適切な機能の実装に役立てられます。
COモジュール導入のポイント
COモジュールの導入を検討する場合、いくつかのポイントに注目して考える事が重要になります。
無理に機能の全てを使う必要はない
COモジュールを活用する事で、これまでの伝票とは異なりはるかに多くの情報を自動的に出力する事ができるようになります。
しかし、それらの情報が必要かどうかは企業が判断する事なので、出力できるからといって全てを実行する必要はありません。
ニーズに沿った情報のみを出力できるよう設計する
COモジュールの運用において重要なのは、どんな情報を必要としており、なおかつ改善の余地があるかをはっきりさせる事です。
いきなり出せる限りの情報を会計管理の際に出力しても仕方ないため、まずは必要な機能に的を絞りながら検討していきましょう。
また、SAPの導入をきっかけに、上層部としっかりとコミュニケーションをとり、必要としている要件を整理しておく事が大切です。
おわりに
COモジュールは、企業の会計管理を効率化してくれる、優れたERP製品です。経費の形状や原価の計算など、これらの算出スピードは迅速であるだけでなく、詳細に表示することも可能です。
また、機能性が豊富な分、それだけ混乱を招いてしまう可能性もあります。あらかじめ用件をしっかりとまとめておく準備も重要であることは覚えておきましょう。