AWSのコスト削減は、クラウドを運用する企業にとって重要な課題のひとつです。特に動画配信やダウンロード販売のサービスを展開している場合、データ転送料金のコスト削減が重要になります。
今回は、コスト削減をテーマとして、全体的な料金算出の基本を確認しつつ、実際のマイグレーションの事例をもとに解決方法を取り上げます。
AWSのコスト計算方法とデータ転送料金の削減
外出自粛の影響から、動画配信のようなリッチメディアの利用が急増しています。さらにAIのビジネス活用が拡大し、機械学習(ML)でビッグデータの活用に取り組む企業も増えました。クラウドを運用する際には快適な利用環境を整備すると同時に、クラウド全体のコストの削減と最適化が求められます。
AWSのコスト計算方法と削減の基本
AWSのコスト削減を考えるために、まずAWSの料金体系、コスト計算方法、基本的なコスト削減方法について整理しておきましょう。
AWSはワークロードと価格モデルをベースに、サーバー(インスタンスタイプ)、ストレージ、データ転送量で構成されています。さらに必要なサービスを追加して料金が発生します。
導入検討時には、公式の見積りツールAWS Pricing Calculatorを使って、用途に合わせたコストの最適化が可能です。たとえば、インスタンスレベルでコストを最適化するには、リザーブドインスタンス(RI)やスポットインスタンス、Savings Plansのようなオプションを利用すると月額の請求費用を抑えられます。
しかし、インスタンスの最適化には、AWSの仕様と料金体型を熟知した上で、手間と時間をかけてチューニングすることが必要です。
そもそもAmazonが値下げして提供すればよいのでは?と考えるかもしれませんが、Amazon自体もサービス料金の改定に取り組んでいます。たとえば機械学習が活用されるようになったことから、Amazon SageMakerの料金が引き下げられました。
AWSのデータ転送料金の課題
このようにコスト削減は、AWSのシステム全体で最適化を行うことが重要です。特にデータ転送量の管理は重要なポイントになります。
AWSでは、インターネットからAWSに向けた上りの料金は無料、AWSからインターネットへの下り(エグレス)が従量課金制になります。
トラフィックを快適に改善するためにはAmazon CloudFrontが用意されています。CloudFront はAmazon Prime Videoにも活用されている魅力のある高速ネットワーク配信サービスですが、トラフィックの増加にしたがって費用もかさんでいきます。
AWSのデータ転送料金を把握し、コストを削減するには?
ダウンロード販売や動画配信などを提供している場合、ストレージサービスであるAmazon S3(Amazon Simple Storage Service、以下S3)からユーザーに対するデータ転送量が膨大になります。転送料金の大半を占めるといえるでしょう。
AWSのデータ転送量のコスト削減を検討するには、データ転送量を監視して目安を把握する必要があります。
S3からのデータ転送量を把握する
S3のデータ転送量を把握するには、AWS Lambdaを使ってイベント発生時にコードを生成し、NewRelic Insightsのようなダッシュボード型の監視ツールを使って監視します。
S3の利用からアクセスログの発生にしたがって、AWS Lambdaのログファイル作成イベントでLambda Functionを起動し、監視ツールにカスタムイベントを送信します。クエリを使ってログを分析し、スクリプトで使用量や変動を監視します。
AWSのデータ転送量を監視すると、キャンペーンなどの期間に一時的にどれぐらいのトラフィックの増加があるのか把握し、転送量の大きいユーザーを特定できます。こうして目安をつけることは、システムを最適化する目的はもちろん、マーケティングとしても意義があります。
AWSをはじめクラウドの抱えている課題
データ転送量によって生じるコストを削減しようとしたとき、もしAWS内でデータ転送量を削減ができない場合は、発想の転換が大切です。
解決策のひとつとして、IaaSを提供しているコストパフォーマンスに優れた他のクラウドプロバイダにマイグレーションを行う選択肢があります。しかし、AWSの利用を前提としてプラットフォームを構築していると、移行の時間やコストが膨大になります。移行時にシステムを停止できない課題が生じることもあります。
そこで、プロバイダを併用するケースが考えられます。といっても、AWS Identity and Access Management (IAM)によってワークフローや権限を管理している場合は、プロバイダの併用が困難かつ煩雑になる問題をはらんでいます。
AWSは信頼性が高い上にクラウドサービスとして柔軟性に優れるため、小規模のシンプルな構成からサービスを開始できます。スモールスタートで事業を拡大するベンチャー企業に向いています。ところが事業が拡大すると、コスト管理に関する問題が生じます。
AWS+定額料金のプロバイダによる解決策
プロバイダ併用によるデータ転送量のコスト削減の解決策としては、ディスクキャッシュの機能をもたせたプロキシサーバーをフロントエンドに設置し、フロントエンドは定額制クラウドプロバイダを通して行う方法が考えられます。
ファイルを送信するストレージは従来のAWSのS3を利用し、アップロードに関しては従来通りで行います。つまり上りはAWS、下りはAWSから別の定額制クラウドプロバイダを経由して利用者にダウンロードする方法です。
フロントエンドの定額制プロバイダには、IaaSとして定評のある「さくらのクラウド」が有力候補のひとつといえるでしょう。さくらのクラウドは、ルータとスイッチを指定して回線料金を定額で利用することもできます。
ただし、さくらのクララウドでは、指定したルータとスイッチのデータ転送量を大幅に超えたときに帯域制限があります。信頼性を保持する意味では、ややデメリットといえるかもしれません。
しかしながら、帯域制限がかかる前に通知されるため、通知があった時点でルータとスイッチをアップグレードする対策が行えます。一時的なトラフィック増加に対応する場合は、その期間だけネットワーク構成を変更したほうが効率的です。
さくらのクラウドは、定額制のウェブアクセラレータも提供しているため、アクセス急増時に負荷分散を行って安定化ができます。ウェブアクセラレータはアカウントごとに用意され、データ転送が累計500GiBに到達するまで無償で提供されています。
可用性を重視するのであれば、AWSのS3を使用して青天井のデータ転送量および料金の環境を整えたほうがベストです。しかしコスト最適化を重視するなら、定額制クラウドプロバイダ+AWSという構成が解決策として有効です。
さくらのクラウドからAWSへのマイグレーション
ここまでの解説はAWSで構築したシステムのデータ転送量によって生じるコスト削減でしたが、他のIaaSからAWSへのマイグレーションのケースにおいても同様のことがいえます。
弊社におけるAWSの実績を評価いただいて「さくらのクラウドからAWSに移行したい」というご相談がありました。しかし、お客様のサービスは動画共有が必要だったことから、AWSのS3をストレージとして使うと、ダウンロードのたびにコストが際限なく請求されることが想定されます。
したがって、信頼性の高いS3を動画ファイルのストレージとして利用しながら、利用者のフロントエンドに関しては、従来のさくらのクラウドを利用するご提案をしました。
おわりに
AWS以外のIaaSを利用していたスタートアップ企業から、ビジネスの拡大にともなって、実績のあるAWSにマイグレーションしたいというご相談をいただくことが少なくありません。
予算がいくらでも使えるときは可用性重視でAWSに移行しても構いませんが、データ転送量のコストを考慮するのであれば、定額制クラウドプロバイダ+AWSという選択肢があります。
マルチクラウドが一般的になりつつある昨今、複数のクラウドの長所を組み合わせるシステム構成の検討をおすすめします。
加速するクラウド化により、自社の基幹システムやWebサービスをAWSへ移行することを検討されている企業が増加しています。ONETECHではベトナムにて低コストで新規WEB開発、スマホアプリ開発からクラウドへの移行、その後の運用保守までワンストップで提供しています。またAWSがサーバやミドルウェアを管理してくれるLambdaを利用したサーバレス構築にもいち早く取り組んでいます。パブリッククラウドの構築はMicrosoft Azure、Google Cloud Platform (GCP)も実績がございます。
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