機械学習向けのライブラリは、無料で扱えるものが数多く発表されてきましたが、中でも比較的新しく、それでいて評価の高いライブラリがPyTorchです。いくつもの有益なライブラリが存在する中、PyTorchはどのような点で優れ、差別化しているのでしょうか。
その特徴や他のライブラリとの違いについて、ご紹介していきます。
PyTorchとは
PyTorchは2016年にリリースされた、Python向けの機械学習ライブラリの一種です。
Python向けのオープンソース機械学習ライブラリ
PyTorchを手掛けたのはFacebookの人工知能研究グループで、2016年の発表以来、徐々にアップデートが加えられており、今後の展開にも注目が集まるライブラリです。
オープンソースで公開され、無料で扱えることから多くの人がPyTorchを試し、徐々に人気に火がついている様子もうかがえます。
ディープラーニングへの活用に期待
機械学習に強いライブラリとして誕生したPyTorchですが、機械学習の発展形でもあるディープラーニングの導入にも活用されています。
すでにPyTorchを使ったディープラーニング関連のソフトウェアはいくつも発表されており、代表的なところではUberのAIフレームワークであるPyroといったサービスでも、運用されている様子が見られます。
参考:マイナビニュース「Uber主導のAIフレームワークPyroがLF Deep Learning Foundationプロジェクトに – The Linux Foundation 」
https://news.mynavi.jp/article/20190226-777929/
近年人気上昇中のPyTorch
このような大手企業の実例も徐々に増加していることから、近年はさらにPyTorchの知名度が上昇し、ユーザー数は増加傾向にあります。
機械学習ライブラリにはPyTorchの他にもいくつかのメジャーなものがある中、PyTorchは後発だったため、当初ユーザー数は少なかったのです。
しかしリリース後は着実のそのユーザー数と実績を増やしており、今後はPyTorchがAI開発における主流なライブラリとなる可能性も十分にあります。
また、PyTorchを動かすPythonのユーザーも増加傾向にあるため、両者は比例して成長していくことになりそうです。
PyTorchの強み
それでは、そもそもなぜPyTorchはここまで選ばれるライブラリとなったのでしょうか。
Numpyに似た操作性で扱いが容易
PyTorchの強みの一つとしてあげられるのは、計算処理を行うライブラリであるNumpyに近しい操作性である点です。
Numpyもまた、PyTorchと同様人気の高いライブラリですが、ライブラリごとに操作性が異なる場合、その扱いにてこずってしまうこともあります。
また、Numpyの方が先発のライブラリで、すでにこちらの操作感に慣れていると言う人も多いため、例え新しいライブラリであるPyTorchであっても、自然と扱える仕上がりになっていた事が大きいと言えるでしょう。
活発なコミュニティの存在
また、PyTorchは現在非常に人気が高いライブラリであるために、世界中のユーザーがコミュニティを形成し、情報を共有しています。
そのため、初心者でも気軽に質問をする事ができたり、少し検索するだけで初歩的なエラーは解決する事ができるという事で、初めて機械学習に触れてみるという場合でも、安心して取り組む事ができます。
PyTorchとTensorFlowのどちらを選ぶべきか?
PyTorch登場以前に利用されていたライブラリが、TensorFlowです。こちらもPyTorch同様、ディープラーニング向けのフレームワークとして活用されてきましたが、両者はどのような違いを持っているのでしょうか。
Define and runのTensorFlow
ニューラルネットワークのアルゴリズムを構築する上では、主に2種類の方式が一般的には採用されています。
一つ目の方法がdefine and runと呼ばれるもので、こちらはTensorFlowに採用されてきました。
あらかじめネットワークを構築し、その上でデータを流し込むというプロセスになっており、計算そのものはあとで行うような形を基本とします。
比較的最適化が容易ということですが、近年は今から紹介するdefine by runの方式にとって変わるケースが増えてきています。
Define by runのPytorch
続いてPyTorchが採用しているdefine by runですが、こちらはデータを流しながらネットワークを構築するという形式を採用しています。
実際に移り変わる数値を見ながら動作させる事ができるため、デバッグが比較的容易である事が評価されている方法です。
また、最近発表されたTensorFlow2.0もdefine by run方式へと変更され、本格的にこちらの方式がディープラーニングにおいてはメジャーとなってきている様子が見られます。
おわりに
PyTorchはPythonに特化した機械学習ライブラリで、後発ながらも次々と大手プロジェクトがこちらを採用し、徐々に浸透しつつあるオープンソースのツールです。
Pythonを使いたての人でも扱えるよう、日本語でも多くのマニュアルが発表されつつあるため、その運用難易度は低いと言えます。
無料で導入する事ができるため、一度試しておいて損はないでしょう。