ITエンジニアとして日本で働くための在留資格や不許可事例

ITエンジニアとして日本で働くためには就労を可能とする在留資格の取得が必要です。とはいえ、在留資格の手続は難しいことも多く、申請をしても不許可となるケースもあります。
この記事では、ITエンジニアの在留資格や不許可事例についてご説明します。ITエンジニアとして日本で働く際の参考としてご活用ください。

行政書士:柏木 太郎(カシワギ タロウ)
東証一部上場企業の法務部門での勤務を経て行政書士として開業。
行政書士として外国人のVISA申請を手掛けるとともに、法務部員としての
経験を活かし契約書の作成・修正や企業のコンプライアンスを受け持つ。

ITエンジニアの在留資格

ITエンジニアとして日本で働くための在留資格や不許可事例

ITエンジニアとして日本で働くための在留資格や不許可事例

ITエンジニアとして日本で就労するためには、多数ある在留資格のうち「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を取得する必要があります。もともとは「技術」、「人文知識・国際業務」と区別されていたものが1つに合体した在留資格で、現在では最もポピュラーな就労ビザと言われています。
どのような業務態様が「技術・人文知識・国際業務」に当たるかは出入国管理及び難民認定法に記載されています。しかし、難解ですので、ここでは簡単に“ホワイトカラー業務”がこの在留資格に当たるとイメージしておきましょう。ITエンジニアもホワイトカラーですから、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当します。

「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するための要件

「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するパターンは、外国から日本に上陸するときに新しく在留資格を取得する、既に在留している外国人が現に有する在留資格から「技術・人文知識・国際業務」へ変更する、の2つがあります。どちらのパターンによるかで要件が異なりますが、以下4点は必須です。

ITエンジニアの在留資格

ITエンジニアの在留資格

①本邦の公私の機関との契約に基づくものであること

ここでいう「契約」は、雇用のほか、委託、委任や請負も含まれます。もっとも、特定の期間との継続的なものでなければなりません。

②自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動であること

前述したホワイトカラー業務であることはこの要件です。現場労働や単純作業は「技術・人文知識・国際業務」には該当しません。

③従事しようとする業務に必要な技術又は知識に関連する科目を専攻して卒業していること

大学を卒業している必要があるということです。短期大学や専門学校は、日本の学校であればOKですが海外の短期大学や専門学校はこの要件を満たしません。

④日本人が従事する場合に受ける報酬と同等以上の報酬を受けること

職務内容や責任が同じであれば報酬も日本人と同等以上でなければならないとういことです。外国人だからという理由だけで報酬を低くしてしまうと不許可になってしまうでしょう。

不許可事例

ITエンジニアとして日本で働くためには就労を可能とする在留資格の取得が必要です。とはいえ、在留資格の手続は難しいことも多く、申請をしても不許可となるケースもあります。

ITエンジニアとして日本で働くためには就労を可能とする在留資格の取得が必要です。とはいえ、在留資格の手続は難しいことも多く、申請をしても不許可となるケースもあります。

ここでは、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請を行ったものの不許可となった事例をご紹介します。

(1)経済学部を卒業した者から,会計事務所との契約に基づき,会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、そのことについて説明を求めたものの、明確な説明がなされなかったため、当該事務所が実態のあるものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認めらないことから不許可となったもの。

上記は出入国在留管理庁が作成した「留学生の在留資格「技術・人文知識・国際業務」への変更許可のガイドライン」(以下「ガイドライン」)に記載されている不許可事例です。
会計事務所の実態が無く会計事務に従事するとは思われない以上、このことは上記①②の要件を満たさないことを意味します。
なお、実態が無いにもかからず実態があるかのように装う等、虚偽の申請を行った場合は重い罪に問われることになります。

(2)工学部を卒業した者から,コンピューター関連サービスを業務内容とする企業と の契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて、エンジニア業務に従事するとして申請があったが,申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。

こちらもガイドラインに記載されている不許可事例です。知識や学歴等、ITエンジニアとして就労するための要件を外国人本人が満たしていたとも、報酬が日本人より低く上記④要件を満たさないため不許可となった事例です。報酬を決定するのは外国人と契約する企業や団体ですから、「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するためには企業側の理解・配慮が不可欠です。

(3)過去に懲役1年以上の懲役または禁錮に処されたことが判明したことから不許可となったもの

無期または1年を超える懲役もしくは禁錮に処せられた者は退去強制の対象になります(入管法24条)。これに該当すると、当然、ビザの取得・変更・更新のいずれも認められません。
なお、犯罪歴が無くとも、税金を滞納している、公序良俗を乱す行為をはたらいた等、素行の悪さはビザ申請においてマイナスに評価されてしまいますので注意しましょう。

まとめ

この記事では、ITエンジニアについて、取得すべき在留資格や不許可事例をご紹介しました。ビザの審査は年々厳しくなってきており、許可をもらうためには丁寧に自分の経歴や業務内容を説明しなければなりません。ITエンジニアとして日本で働くことを考えている方はこの記事をぜひ参考にしてみてください。
[執筆]行政書士:柏木 太郎(カシワギ タロウ)

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