ベトナム駐在員事務所を設立するためには?手続や設立のための必要書類を解説

ベトナム進出を目的として、駐在員事務所の設立を検討している企業が増えています。もっとも、ベトナム駐在員事務所とは何か、設立の手続を正確に理解している方は少ないのではないでしょうか?今回は、ベトナム駐在員事務所について、設立手続や設立後に注意すべき事項を解説します。

行政書士:柏木 太郎(カシワギ タロウ)

東証一部上場企業の法務部門での勤務を経て行政書士として開業。
行政書士として外国人のVISA申請を手掛けるとともに、法務部員としての
経験を活かし契約書の作成・修正や企業のコンプライアンスを受け持つ。

ベトナム駐在員事務所とは

ベトナム駐在員事務所を設立するためには?

ベトナム駐在員事務所を設立するためには?

ベトナム駐在員事務所とは、ベトナムにおいて本社との連絡業務や現地の市場調査、本社の投資機会促進を行う拠点を言います。法人格はなく、行える活動は前述の活動に限られており営利活動はできません。

なお、2016年の法令変更により、「本社がベトナム企業と締結した契約の履行状況のモニタリング」はベトナム駐在員事務所の活動内容から除外されました。そのため、本社がベトナムの企業と締結した契約のサポートを行う場合は現地法人を設立するよう指導を受ける可能性があります。事業を展開し収益を得るための活動を行う場合は現地法人を設立しましょう。

ベトナム現地法人との違い

ベトナムへの進出形態として、現地法人を設立するという方法もあります。現地法人とは、ベトナムに設立する会社をいい、有限責任会社や株式会社があります。こちらは法人格を有し、営利活動を行うことができます。本格的にベトナムで事業を展開する場合は、こちらの現地法人を設立することとなります。駐在員事務所は、現地法人設立の前段階の現地調査のために設立する、というイメージです。

現地法人と比べて簡易な手続と安い費用で設立できるベトナム駐在員事務所ですが、設立後の活動は大きく制限されます。また、手続が簡易とはいえそれでも大量の書類が必要ですし、手続にミスがあればその分設立が遅れてしまったりライセンスを得られなかったりします。ベトナム駐在員事務所を設立する際は、設立のための手続や現地法人との違いを理解したうえで、駐在員事務所が事業の発展のために最適な形か否かよく検討するとよいでしょう。

駐在員事務所設立へのフローチャート

  • ①ベトナムにおいて駐在員事務所として使用する不動産(オフィス)の選定
  • ②①で選定した不動産の賃貸借契約を締結
  • ③設立手続に必要となる書類の収集・準備
  • ④③の書類をベトナム公証役場にてベトナム語へ翻訳
  • ⑤申請窓口へ申請

駐在員事務所の設立手続

ベトナム駐在員事務所を設立するための手続の概要は以下になります。

  • 申請先:市・省にある商工局または経済特区管理委員会など
  • 申請条件:本国において本社が1年以上活動を継続していること
  • 審査期間:申請受付後、2週間程度

設立手続のための必要書類

ベトナム駐在員事務所設立の際に必要になる書類は以下になります。窓口によって必要書類が増減する場合があります。

  • ・本社の履歴事項全部証明書
  • 本社の定款の写し
  • 本社の決算報告書の写し(直近1年分)
  • 駐在員事務所として使用する不動産の賃貸借契約書の写し
  • 駐在員事務所代表者のパスポートの写し
  • 駐在員事務所代表者の履歴書
  • 駐在員事務所代表者に対する代表任命書

ベトナム駐在員事務所設立後の注意事項

無事に設立できたからといって、そこで終了ではありません。設立後にも必要となる手続があったり、行える活動が非営利活動に限られていることに関係する留意事項があったりします。

ベトナム進出を目的として、駐在員事務所の設立を検討している企業が増えています。

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定期的な活動報告が必要

駐在員事務所は、管轄の商工局などに対し、その年の年次報告を行う義務があります。駐在員事務所の活動内容、従業員の情報などを報告します。

必要に応じてライセンスの修正手続が必要

本社やベトナム駐在員事務所の名称・住所・活動内容などに変更がある場合、管轄の商工局に対しその都度ライセンスの修正手続が求められます。ベトナム駐在員事務所の人員変更があった場合も同様です。なお、この修正手続は修正に係る事実が発生してから10営業日以内に行わなければなりませんので、早め早めの準備が求められます。

納税は個人所得税のみで、VATの免除はなし

駐在員事務所は法人格がないため、納める税金は個人所得税のみです。VAT(Value Added Tax)の免除や還付申請も認められません。現地法人に比べて税務処理も簡便ですが、日系のベトナム駐在員事務所への追徴課税例もあるためしっかりとした管理が求められます。

活動可能期間は最長5年

ベトナム駐在員事務所の活動可能期間は、最長で5年です。5年を超えて活動を続けたい場合、ライセンスの延長の手続が必要です。

銀行口座を開設することができない

ベトナム駐在員事務所は法人格がなく、非営利活動しか行えないため、銀行口座を開設することができません。もっとも、支出専用口座を開設することは可能です。

まとめ

今回は、ベトナム駐在員事務所について、設立手続や現地法人との違い、設立後の注意点までを解説しました。ベトナムの経済発展はめざましく、ベトナムへの進出を検討している企業はたくさんあります。ベトナム駐在員事務所は、ベトナム進出の足がかりとして非常に有用な手段です。駐在員事務所設立の際は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

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