建設・不動産・設備メンテナンスといった現場がかかわる業務の効率化やDX化を実現するために、導入できるアプリケーションを探している人も多いでしょう。それならデータ共有や空間データスキャニングに対応した「Scanat」を導入するのがおすすめです。
このコラムでは、現場で利用できるアプリケーション「Scanat」の魅力や評判、導入事例についてわかりやすく解説します。使い方の手順も説明しているので、ぜひ導入する参考にしてみてください。
Scanatとは?
Scanatは、東京都港区に本社を構えるnat株式会社が提供している空間スキャニングアプリケーションです。
3次元測量などに使われているほかスマートフォンなどにも搭載されている「LiDARセンサー」と呼ばれる機能を使って、現実の空間をスキャニングして2D・3Dとして図化できます。
また、当アプリケーションは既存の建物、構造物のサイズや間取りを図りたい場合、詳細な形状を把握したい場合などに役立つのが魅力です。クラウド共有にも対応していることから、スキャニングしたデータをそのまま事務所にいる担当者に送信するなど、効率の良い連携に対応できます。
提供元 | nat株式会社 |
測量機能 | LiDARレーザーシステム |
導入デバイス | スマートフォン(iOS) |
適用業種 | ・建設 ・不動産 ・設備、メンテナンス ・住設、建材 ・家具、家電 ・イベント、ディスプレイ |
ScanatはNETISにも登録
Nat株式会社が提供しているScanatは、国土交通省が運営している新技術情報提供システム「NETIS」にも登録されているアプリケーションです。
- 会社名:nat株式会社
- 所在地:〒105-0001 東京都港区虎ノ門2丁目2-1 住友不動産虎ノ門タワー5F
- 代表者:劉 栄駿(Bruce Liu)
- 設立:2019年5月20日
- URL:https://www.natincs.com
- 事業内容:現実空間を高精度に記録する iOS アプリ「Scanat」の開発と運営
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000046540.html
正しい性能を発揮できると証明されているため、国や自治体が発注する業務として提案することも可能となります。既存建築物・構造物のスキャニングなど従来の測量を上回る技術提案をしたいなら、ぜひNETISに登録された当アプリケーションを提案に加えてみてください。
Scanatの主な機能
Scanatに搭載されている機能が、目的に合致しているのか確認する参考として主な搭載機能を紹介します。
スキャニング
アプリでは、以下に示す2種類のスキャニング機能を利用できます。
- ノーマルスキャン
- 間取りスキャン
まずノーマルスキャンはビデオ撮影と同じ方法で空間を撮影することで、撮影した範囲をそのまま3Dモデルとして出力できる機能です。目安のスキャン範囲は200㎡であり、まるで写真のような精度で3Dモデルをチェックできるようになります。
次に間取りスキャンは、屋内撮影向けのスキャニング機能です。上空から見下ろしたような間取り平面図(3D)を出力でき、屋内全体を網羅的に撮影することで、精密な3Dモデルを作成します。
なおスキャニングの精度は5mに対し約1.9cmとスキャニングアプリのなかでも高い精度を出せるのが特徴です。三次元測量の誤差基準(5cm以内)を満たしていることから、そのまま図面として利用できます。
計測
スキャンして作成した3Dモデルは、以下に示す3つの方法で計測が可能です。
- 長さ・高さ・幅
- 面積
画面上の3Dモデルをタップするだけでmm、㎡で計測できます。床面積はもちろん、外壁など3Dモデル全体の計測が可能です。
図面変換
Scanatでは、スキャニングした3DモデルをDXFの図面データに変換できます。
なお、便利な図面変換ですが、コンマ数値の微妙な誤差があるため、変換後は寸法の値確認と調整が必要です。変換したデータをそのまま設計等に利用すると、小さなズレが起こる場合もあるので注意してください。
また、ノーマルスキャンモードで作成した3Dモデルはnat株式会社に有料で変換してもらえます。住宅やオフィス、店舗の平面図・立面図・天伏図を2〜4営業日で納品してもらえるため、ぜひ業務に活用してみてください。
データ管理
当アプリケーションで作成した3Dモデルは、すべてクラウドに保存され、離れた場所にいるチームや受発注者と共有が可能です。
例えば、作成した3DモデルをFBX・OBJ・STLといった拡張子で出力できるため、BIM・CIMソフトにそのまま反映できます。またE57やXYZの点群データとしても出力できることから、点群処理ソフトなどと連携することで、精度管理や編集なども可能です。
Scanatの料金情報
Scanatは、サブスクリプション形式の月額制・年額制で契約が可能です。4種類のプランが用意されているので、気になるプランを申し込んでみてください。
スタータープラン | ベーシックプラン | ビジネスプラン | エンタープライズプラン | |
料金(税抜) | 12,000円/月 120,000円/年 | 50,000円/月 600,000円/年 | 300,000円/月 3,600,000円/年 | 要相談 |
オプション(有料) | ・CAD作成代行:15,000円/枚 | ・CAD作成代行:9,000円/枚 ・デバイスレンタル:6,000円/台/月 ・カスタム開発:要相談 | ・CAD作成代行:8,000円/枚 ・デバイスレンタル:4,000円/台/月 ・カスタム開発:要相談 | 要相談 |
なお、当アプリケーションにはトライアル期間がありません。導入する際にはスタータープランから利用を始める必要があります。
Scanatの活用例
Scanatを導入したいけれど、どのような目的や業務で活用できるのかイメージできないとお悩みの方も多いでしょう。参考として、業務への活用例を業界ごとに紹介します。
建設業界
建設業界では現場での仕事が多いため、業務開始当初に必要となる「現地調査」でスキャニング機能が役立ちます。
現場全体を3Dに書き起こすことで、離れた場所にいる人と現場状況の共有が可能です。また、面積の算出や概略図面としても使えることから、詳細測量をする前の簡易検討に活用できます。
不動産業界
豊富な物件を取り扱う不動産業界では、公式サイトなどに物件情報を掲載する際の「間取り図作成」でアプリが役立ちます。
屋内の様子を3Dモデルにできるため、そのままモデルを公式サイトに掲載が可能です。またスキャニングしたデータはVRでの閲覧にも対応しているので、バーチャル内覧にも活用できます。
設備・メンテナンス業界
設備・メンテナンスの業界では、現地調査のほかに点検確認の履歴としてスキャニングデータが役立ちます。
点検を実施する際の状況を3Dモデルとして確認するのはもちろん、点検結果を示す証拠として継続的にデータを保管することで、経年劣化の進行や過年度からの状況の変化を確認しやすくなります。
住設・建材業界
住設・建材業界では、建物内や工事現場の状況を把握するためにScanatが役立ちます。
設備や建材のサイズを決める際には現地の状況を把握しなければなりません。3Dモデルをもとに配置検討などを実施すれば、問題なく材料を届けられるのか、施工ができるのかを判断できます。
家具・家電業界
家具・家電業界など、製品を提供する業界では、顧客への配置提案の際にスキャニング機能が役立ちます。
例えば、現地の状況をアプリで確認し、3Dデータとして書き起こします。その後、自社で提供している家具・家電の3Dモデルのデータを挿入することにより、外観を顧客にイメージしてもらいやすくなるでしょう。
また、現地の寸法をいつでも計測できることから、搬入における作業内容を決める際に役立つなど、見積もりの作成としてもScanatを活用できます。
イベント業界
イベント業界など、広範囲の敷地での設営などが求められる業界では、現地確認と設置検討でスキャニング機能が役立ちます。
3Dモデルとして対象箇所や周辺状況をチェックできることから、設備搬入のルート検討や施設やテントの配置などをスムーズに進められるでしょう。また、3D上で状況を把握できることから、電柱や電線の間合いなど、接触トラブルを事前に確認できるのが魅力です。
Scanatの使い方
はじめてScanatを導入する方向けに、スキャニングの手順を紹介します。
- 撮影範囲のルートを検討する
- アプリケーションを起動する
- ノーマルスキャン・間取りスキャンを選択する
- 撮影ボタンをタップして3Dモデル化したい範囲を網羅的に撮影する
- 撮影が完了したら「終了」ボタンをタップする
- 3Dモデル化されたデータをクラウドに保存する
上記のうち、特に重要なのが撮影範囲のルートを検討しておくことです。
アプリの撮影は対象箇所を360度網羅的に撮影することが欠かせないため、取り忘れなどがあった場合には、改めて撮影をしなければなりません。
画面上には大まかな撮影状況のイメージが表示されるので、画面を確認しながら撮影を進めていきましょう。
Scanatの活用事例
Scanatは、すでに国内企業で豊富な活用事例が登場している人気のアプリケーションです。参考として、公式サイトで公開されているインタビュー事例を以下にまとめました。
例えばアプリを活用することにより、現地状況を即座に把握できます。業種によってBtoCのように顧客の自宅内を見て回る作業も多く、長時間の計測調査は顧客のストレスになってしまうのが問題です。
一方でScanatがあれば、対象箇所全体を撮影し、帰社した後にすべての情報を確認できます。計測し忘れを減らせることはもちろん、現場作業を短縮できることも含め、現場作業の多い業種で広く利用されている人気のアプリケーションです。
おわりに
Scanatは現地状況をスキャニングすることにより、いつでも現地の計測を可能にする便利なアプリです。また、スキャニングしたデータを図面化することも可能であるため、図面作成、計画検討、見積もり作成など豊富な業務に活用できます。