VR(バーチャルリアリティ)は今後さらなる成長を遂げると言われている映像技術ですが、気軽に最先端のVRを体験できる機会も増えてきています。その一役を担っているのが、公式ストアにおける配信アプリの増加です。条件をクリアすれば誰でもコンテンツを配信できるというVRプラットフォームのOculusストアで、アプリ配信を行う方法について、ご紹介します。
Oculus Quest(オキュラスクエスト)には厳正な審査が存在
現在、最もポピュラーな単一VR装置として有名なのが、Oculusシリーズの最新作、Oculus Questです。昨年はOculus Quest 2も販売が開始され普及をさらに後押ししています。
没入感の高いVR体験を提供してくれるOculusですが、それだけにコンテンツに求められる敷居も高いのが特徴です。
Facebookが提供するOculus Quest
Facebookが提供する一体型のVR機器、Oculus Questですが、Oculus Goと比べて高い表現能力を実現しているのが特徴です。
通常のVRヘッドセットはジャイロスコープを活用し、頭の向きでユーザーの状況を判断していました。Oculus Questではこれに加えて新たにトラッキング機能を増設し、実際の体の動きや手の動きに合わせ、コンテンツを楽しむことが可能になっています。
厳しい配信条件
これまでにない複雑な体験をVRで実現しているOculusですが、そのハイエンド環境を存分に楽しんでもらうことを目的に、配信コンテンツについても厳しい制限が設けられています。
OculusにはAppleが提供するApp Storeのように、Oculus ストアと呼ばれる独自の配信プラットフォームが存在します。
ユーザーはこのサービスを通じてアプリを入手し、楽しめるよう作られているのですが、開発者がユーザーにコンテンツを届けるためには厳正な審査をクリアしなければならないのです。
そのため、現在はスマホアプリのように気軽にアプリを配信し、楽しんでもらうことができないのが現状です。
現行の配信に伴う審査条件
Oculusストアへアプリを配信する上では、Oculusのハイエンドなパフォーマンスに見劣りしない、優れたアプリであることを証明しなければなりません。
コンセプト企画書の提出
Oculusストアでコンテンツの配信を行う場合、Facebookからクリエイターが求められるのは、コンセプト企画書の提出です*1。
どのようなVRコンテンツを配信する予定なのかという概要だけでなく、規定のガイドラインに抵触していないか、市場でセールスを記録できる見込みはあるのかなどが厳しく精査される仕組みとなっています。
また、審査に際しては単にコンテンツの面白さを列挙するだけでなく、このコンテンツがOculusユーザーへどのような価値を届けるのか、というところまで突き詰めることが求められます。
生半可な気持ちでは応募しないでほしい、という意思の現れであるとも言えるでしょう。
開発者へのメリットもある
このような厳格な措置に対して、公式見解としては「余計な開発コストをかけずに済む」というメリットも提示しています。
VRは通常の映像コンテンツに比べて、制作にも時間とお金はかかります。まだまだ成長中の分野であるだけに参加企業は少なく、限られたリソースは有効に活用しなければならないという意図からなのでしょう。
スマホアプリほどの自由な表現は許されていないとも取れますが、入り口を狭き門とすることで得られるメリットも考慮してほしいというメッセージがうかがえます。
非公式アプリストアであるSideQuest(サイドクエスト)の影響も
このような背景には非公式アプリストアであるSideQuest(サイドクエスト)の活況も影響しているようです。
公式配信のアプリは事前に審査を通過しなければなりませんが、SideQuestを使うことで、非認可のアプリも簡単にダウンロードし、楽しむことができます。
審査条件を大幅に緩和したプランの登場
このようなシビアな状況が1年ほど続きましたが、2021年からはこのような厳格な縛りを撤廃し、より自由なアプリの公開を認めるという発表も最近出されました。
より多くの人に開かれつつあるOculus
今回Facebookが発表したのは、現在の審査システムがうまく機能していることもあり、大きな収益が確保できたということで、今後はより多くのクリエイターにOculusを提供していくというものです*2。
さらなるエコシステムの健全化を図るため、Facebookはコンテンツを配信するための新しいルートを設けることを発表しました。
2021年からは審査不要の配信ルートも
Facebookが発表したのは、既存の配信方法の変更ではなく、新しい配信ルートの確立です。
現在のハイエンドコンテンツを配信するためのルートはそのままに、配信に伴う審査が不要のルートを開拓するということで、よりコンテンツの配信は簡単になる見込みです。
新しいルートの開通は2021年上旬を予定しているということで、今後数ヶ月の続報が待たれる所となっています。
おわりに
Oculus QuestはハイエンドなVR機器なだけあり、コンテンツのポテンシャルをさらに引き上げてくれる可能性を持っています。
今後も様々な映像体験で、消費者を楽しませてくれることでしょう。
参考:
*1 Moguro VR「Oculus Quest用のコンテンツ審査規定が発表、事前のコンセプト提出などが必要に」
*2 Moguro VR「Oculus Quest向けアプリ配信が簡単に――2021年からは審査不要の「新たな方法」追加、公式発表」