新たなビジネスの創出や、新しい商品の開発は大きなチャンスをもたらしてくれるとともに、相応のリスクも潜在しています。新しい企画を成功させるために行っておきたいのが、PoC(概念実証)です。実証実験とも呼ばれるこのプロセスは、なぜ行う必要があり、どんな効果が期待できるのでしょうか。
今回はPoCの重要性や、実施におけるポイント、プロトタイプとの違いについて説明します。
最後にベトナムオフショア開発でのPoCの事例などもご紹介します。
PoCとは
PoCはProof of Conceptの略称で、新しい技術やアイデアを具体的に形にしていく上では欠かせないプロセスです。
意思決定へ大きな影響を与えるPoC
PoCにおいて必要となるのは、新たに構想を練っている技術や商品アイデアなどが、どれくらいの実現可能性を秘めているのかを検証する過程です。
その設計で実際に意図していた通りのパフォーマンスを発揮し、採算を確保できるのかなど、実際に製品化する前にテストを挟みつつ、検証を進めていきます。
PoCにおいては商品としての価値の評価はもちろんですが、純粋に製品としてのクオリティを把握し、さらなるアップデートの余地を発見するのにも用いられます。PoCを通じて、多くの課題を洗い出すのが目的です。
PoCに必要なステップ
PoCを正しく行うためには、適切なステップを踏む必要があります。まずは、目的の設定です。
その製品やアイデアがどんな目的で生まれたのか、課題に対してどれほどの解決力をもたらしてくれるのかを、数値化するなどして具体的にしましょう。
二つ目に、検証内容の策定です。PoCをどのように実施するかですが、実際の使用シーンを忠実に再現し、実用性の高いデータを採取できるような検証を行う必要があります。
実際に製品を利用するユーザー目線も得られるよう、実験には適切なプランニングが必要です。
検証を行った後は、正しく評価を行いましょう。都合の良い数字ばかりに目を向けるのではなく、課題を洗い出しながら、実現可能性や改善の余地を検討しましょう。
なぜPoCが重要なのか
PoCは多くの企業が実施している開発プロセスの一環ですが、そもそもなぜPoCはそれほどに重視されているのでしょうか。
コンセプトの実現可能性を見極めるため
PoCが重要視されている理由の一つに、コンセプトの実現可能性を測る上で欠かせない点が挙げられます。
どれだけイノベーティブなアイデアであっても、それがコンセプト通りに商品化し、期待していた通りのセールスを記録できるとは限りません。
ましてコンセプトをそのまま製品化してしまうと、あまりに粗さが際立ってしまい、そもそも消費者からは商品として見てもらえないということさえあり得ます。
そこで、まずはアイデアを商品化する前に、その実現可能性についてきちんと検証しておく必要があります。
商品化に伴い修正すべき点はどこか、そもそも商品化することは可能なのかを、PoCによって判断します。
開発リスクを把握するため
新しい商品の開発には、相応のリスクも伴います。マスターとなる商品を問題なく動かすことはできても、商品として大量に製造するとなると、若干数は不良品が混じってしまうこともあります。
これがラベルの印刷ミスなどであれば問題ないのですが、商品が故障して動作しなかったり、人体に悪影響を及ぼしかねないアクシデントのリスクが生まれたりするとなると、看過できません。
新商品の製造には新しい生産ラインの準備も必要となりますが、このような過程の中で、リスクが高まらないかどうかをPoCで検証します。
開発に伴うリスクを把握し、最小化に向けた施策を展開できるようになるのも、PoCの特徴です。
コストの計算を具体的にするため
製品化を進めていく上で、重要なのが価格です。原価に応じて商品の小売価格は大きく左右されるため、生産コストにどれくらいかかるかによって商品化の命運も分かれるところです。
想定よりも価格が高くなるようならセールスの見込みは立たないため、商品化することはできません。
PoCを通じて、期待しているパフォーマンスを維持するためにはどれくらいのコストがかかるのかも計算できます。
商品化前にコストを計算することになるため、生産が開始してから大きな赤字営業になってしまうという事態を避けられるでしょう。
PoCとプロトタイプの違い
PoCと並んでよく使われるのが、プロトタイプと呼ばれる言葉です。プロトタイプもPoCも、商品化の前に通過するプロセスであることは同じですが、それぞれで役割は微妙に異なります。
プロトタイプとは
プロトタイプと呼ばれる過程においても、企業が行うのは製品の商品化に向けた検証や実験です。
コンセプトの商品化に伴い、どのような問題が現れてくるのかどうかをプロトタイプの段階で確かめ、アップデートを加えていくことが目的です。
プロトタイプの前に行うPoC(実証実験)
前述の通り、プロトタイプとPoCではそれぞれの仕事内容に大きな違いはありません。そのため両者は同じものとして扱われることもありますが、相違点として、PoCはプロトタイプの前段階に行うということが挙げられます。
プロトタイプにおける検証というのは、すでに商品のコンセプトや方向性が決まっており、本格的な製品化やサービス展開に向けて動き出している段階で行われます。
対して、PoCはコンセプトや方向性が決まっておらず、まだ叩き台に乗せた段階の企画に対して行われる実証実験です。
ひとまず初期の方向性で試してみて、それが有効かどうかを確かめながら、コンセプトなどを固めていく場合に行います。
そのため、PoCはプロトタイプに向けて検証することも多く、様々な要素を考慮しなければなりません。適切なステップを心がけ、アイデアを固めていきましょう。
PoCが必要な業界とは
PoCによる検証が必要な業界は、多岐に渡ります。メーカーやヘルスケア、そしてエンターテイメントに至るまで、多くの企業がPoCのプロセスを大事にしていることがわかります。
医療・サイエンス業界
PoCが最も重要な分野といえば、医療やサイエンスの業界が挙げられるでしょう。新薬の開発や新しい研究の開始には大きなチャンスが眠っている一方、莫大な予算を投じる必要があります。
そのため、思いつきのアイデアひとつひとつに予算をかけるということは難しく、PoCによって適切な評価を獲得できたものを優先的に進める体制を整えています。
また、新しい薬の販売には純粋な開発期間だけでなく、人体への影響などを徹底てして検証する必要もあり、長い年月を要します。
そのため、PoCのノウハウについても深い知見があり、検証実験の精度の高さにおいては最高レベルの業界であると言えます。
製造・IT業界
工業部品の製造においても、PoCによって適切な評価を受けることは重要です。何らかのエラーが発生した際には重大な事故につながる可能性もあるため、新製品の開発に着手する際にも安全性は第一です。
また、新しいソフトウェアやクラウドサービスの開発においても、PoCは重要です。適切なセキュリティ環境は用意できるか、クラッシュなどを起こさず安定した運用環境を実現できるかなど、確認しなければならない事項は枚挙にいとまがありません。
ソフト・ハードを問わず、ものづくりの現場におけるPoCの重要性は、今後も廃れることはないでしょう。
エンターテイメント業界
意外に思われる人もいますが、エンターテイメント業界でもPoCは活躍します。大ヒット映画や音楽が誕生する背景には必ず入念なリサーチやアーティストの選定が行われています。
台本やショートムービーを作ってその映画が売れるかどうかを検証したり、音楽市場の動向と照らし合わせながら、新しいアルバムの制作に取り掛かったりすることもあります。
莫大な金額が動く市場である以上、リサーチ業務は欠かせないのです。
PoC成功のためのポイント
そんなPoCを適切に運用するためには、正しいステップだけでなく、いくつかのポイントに注目する必要もあります。
小規模の実験から始める
PoCの実施において重要なのは、スモールスケールの実験から始めるということです。大規模な検証はコスト負担が大きいだけでなく、検証結果を適切に把握するのも難しくなります。
大規模な検証には時間もかかるため、できる限り素早くPDCAを回せるようにしておくことが大切です。
常に同じ条件で検証する
PoCは無数に行うことになるであろう検証方法ですが、常に同じ環境でテストを行うことも大切です。
環境が違えばデータも違ってくるため、正しく検証結果を獲得することができません。常に同じ環境で検証を進め、最適解を導けるよう整えておきましょう。
検証で得られた評価を次回の実験に活かす
PoCにおいて最も重要なのは、検証対象であるアイデアの正当性を確かめることではなく、正しく結果を出力し、次回へ活かすことです。
検証段階でアイデアが完璧である必要はなく、適切に課題を見つけ出し、本格的な製品化に向けたアップデートを進めることです。
そのためにも、PoCはできるかぎり高速でPDCAを回し、結果を適切に評価して次の結果に活かすことが大切です。
初期のアイデアへ必要以上に執着するのではなく、より良い製品を作ってやろうという意識を尊重するよう心がけましょう。
ベトナムオフショア開発でのPoCの事例紹介
ONETECHはベトナムオフショア開発をしています。オフショア開発とPoC開発は非常に相性が良いです。
ベトナムオフショア開発でPoCを実現するメリット
ベトナムには若くて優秀なITエンジニアが多くいます。また多くのITエンジニアは先端テクノロジーに興味を持っております。もちろん人件費も日本より安くPoC開発コストを抑えることが可能です。
ベトナムオフショア開発でPoC事例
ONETECHでは下記のようなPoC開発の実績があります。
- Microsoft HoloLensのアプリケーションの開発です。
- HoloLensを使い業務効率化を実施します。PoCを展示会でのマーケティングに定め手開発を実施しました。
- 機能をスモールスケールに分けてAI画像認識、AI文字認識(OCR)を段階てきに実証していきました。
ONETECHの開発実績(R&D、PoC)
https://onetech.jp/works/rd/
おわりに
PoCによってもたらされる検証結果は、必ずしもすぐに商品化できるようなことではないと示すことが一般的です。
そのため、PoCでそのアイデアの欠点ばかりが浮かび上がっても、変に落ち込まず、次の検証へ活かすことが大切です。
適切な検証方法を身につけ、新たなイノベーションへ結びつけていきましょう。