建設業界の2024年問題に挑むDX。施工管理者・設計者のノンコア業務に潜む年間数千億円規模の時間ロス(建設DXシリーズ第3回)


建設DXの真のターゲットはどこ?施工管理者・設計者のノンコア業務に潜む「年間〇千億円」の巨大な時間ロスをフェルミ推定で暴く!

建設業界の人手不足の現状と将来予測|国土交通省データから読み解く構造問題
建設業界の人手不足の現状と将来予測|国土交通省データから読み解く構造問題

建設業界の皆さん、日々のお仕事、本当にお疲れ様です!

「建設業の働き方改革」「2024年問題」「人手不足」…これらのキーワードを聞かない日はありませんよね。デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)が叫ばれる一方で、「結局、ウチは何から手をつければいいの?」と頭を抱えている経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

本ブログシリーズでは、これまでも建設業界が抱える課題について深掘りしてきました。第1回では人手不足の現状と、それがもたらす労働時間の増加という負のサイクルを解説。第2回では、その中でDXがいかに重要なカギとなるかを解説しました。しかし、DXと一口に言っても、建設現場で働く職人さんの作業を直接変えることだけがDXではありません。

今回の記事では、さらに一歩踏み込んで、「建設業界の膨大な時間ロスは一体どこに隠されているのか?」という問いに、誰もが知っているあの「フェルミ推定」を使って迫ります。そして、DXの真のターゲットが、意外なところに潜んでいることを定量的に示します。

これにより、皆さんの「DX、何から始める?」という悩みに具体的な方向性を示すことを目指します。高付加価値人材である「施工管理者」や「設計者」が日々膨大な時間を費やしている「ノンコア業務」。ここを深掘りすることで、日本経済全体に年間数千億円規模のインパクトを与える可能性が見えてきます。

さあ、数字のベールを剥がし、建設DXの「本当の狙い目」を一緒に見ていきましょう!


1. 建設業界の直面する課題と本記事の問い

建設業界の現状:人手不足と時間の圧迫

建設業界は、今、まさに激動の時代を迎えています。皆さんも肌で感じていることと思いますが、とにかく「人がいない!」というのが現状ではないでしょうか?

データを見てみましょう。建設業の就業者数は、1997年のピーク時685万人から、2023年には483万人へと約7割にまで減少しています。特に技能者の減少は深刻で、ピーク時に比べて66.2%も減っているんです。

さらに、2026年1月時点では、国内企業の52.3%が正社員不足を感じている中、建設業は驚異の69.6%で全業種トップの不足率を記録しています。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ困っているわけです。

人が減れば、どうなるか?残った一人ひとりの負担が増えるのは当然ですよね。2022年度の建設業の年間実労働時間は、全産業平均に比べてなんと68時間も長く、年間出勤日数も12日多いんです。もう、働きすぎですよ…。

こんな状況下で、2024年4月からは時間外労働の上限規制が適用され、いわゆる「2024年問題」が本格的に到来しました。このままでは、さらに厳しい状況に追い込まれるのは目に見えています。

どの業務を削減すべきか?

人手不足と労働時間増加という二重苦の中で、私たちが最も効果的に業務を削減し、時間的リソースを創出できるのは、一体どの業務なのでしょうか?

目の前の現場作業を効率化するのももちろん重要です。しかし、もっと大きな視点、もっとレバレッジの効く部分があるはずです。今回は、その「隠れた時間ロス」の正体を、具体的な数字とともに炙り出していきます。


2. 建設業の職種構造:DXの影響が大きい職種

建設業界には様々な職種がありますが、今回のDX(デジタルトランスフォーメーション)を考える上で、特にその影響を大きく受ける、つまり「DXの恩恵を最大化できる」職種があります。それが、『施工管理者』『設計者』です。

なぜ彼らがDXのターゲットとなるのでしょうか?その理由は大きく3つあります。

  1. 高賃金であること(時間単価が高く、時間ロスがコストに直結するため)
    施工管理者や設計者は、その専門性の高さから、建設業界の中でも比較的高額な賃金を得ています。つまり、彼らの一人ひとりの「時間」は、非常に高価なリソースなのです。彼らが無駄な業務に費やす時間は、そのまま企業にとっての大きなコストロスに直結します。高額な人件費をかけている人材が、本来の専門性を活かせない業務に時間を取られているとすれば、それはもったいないどころの話ではありません。
  2. 高度な専門知識を持つ人材であること(彼らの時間創出は業界全体の生産性向上に寄与するため)
    彼らは、プロジェクトの計画、実行、管理、そして創造性の核となる高度な専門知識と経験を持っています。本来であれば、その知識と経験を活かして、より付加価値の高い業務、例えば新たな技術開発、複雑な問題解決、顧客への提案力強化などに時間を集中すべきです。彼らがノンコア業務から解放されれば、業界全体の生産性向上はもちろん、技術革新や品質向上にも大きく貢献できるはずです。
  3. ノンコア業務が多いこと(DXによる削減効果が大きいため)
    「いやいや、うちの施工管理者も設計者も、毎日めちゃくちゃ忙しいよ!」という声が聞こえてきそうです。それはその通りです。彼らは本当に忙しい。しかし、その「忙しさ」の中には、実はデジタル技術で効率化できる「ノンコア業務」がかなりの割合を占めていることが多いのです。

後ほど詳しく説明しますが、報告書作成、写真整理、図面修正、進捗記録、資料作成、調整業務など、定型化・自動化が可能な業務に、彼らは貴重な時間を奪われています。ここにDXを導入すれば、削減できる時間とコストは計り知れません。

これらの理由から、建設DXを考える上で、施工管理者と設計者の業務効率化は避けて通れない、いや、真っ先に手を付けるべき最重要課題なのです。


3. フェルミ推定:施工管理者の人数

さあ、ここからは具体的な数字を使って、建設業界の巨大な時間ロスを定量的に示していきます。まずは「施工管理者」の人数から推計してみましょう。

フェルミ推定とは、一見すると見当もつかないような数量を、いくつかの手がかりを基に論理的に概算する手法です。ここでは、公開データと合理的な仮定を用いて、ざっくりとした規模感を掴むことを目的とします。

施工管理者数の算出

まず、国土交通省のデータによると、令和4年平均の建設業就業者数は479万人、そのうち建設技術者数は37万人であるとされています。
この「建設技術者」には、施工管理者だけでなく、設計者や研究者なども含まれます。

ここでは、建設技術者全体のうち、ある一定割合が「施工管理者」であると仮定して、その人数を推定します。
仮定:建設技術者の約75%が施工管理者である
(これはフェルミ推定のための仮定であり、実際の統計値とは異なる場合があります。ただし、現場管理という職務の特性上、技術者の中で多くの割合を占めると考えられます。)

計算式:施工管理者数 = 建設技術者数 × 施工管理者割合

  • 建設技術者数:37万人
  • 施工管理者割合:75% (仮定)

施工管理者数 = 37万人 × 0.75 = 27.75万人

よって、全国の施工管理者数は、およそ「28万人」と推定できます。

(出典:国土交通省 を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

この28万人という数字が、今後の議論の出発点となります。


4. フェルミ推定:施工管理者の賃金総額

次に、この28万人もの施工管理者が、年間でどれくらいの賃金総額になっているのかを推定してみましょう。彼らの労働時間がコストに直結することを意識するための重要なステップです。

施工管理総賃金の算出

施工管理者の平均年収を基に、全体の賃金総額を算出します。

仮定:施工管理者の平均年収を600万円とする
(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などのデータを参考に、施工管理技士の年齢構成や経験年数を考慮した概算値として仮定します。2022年の建設業の平均年収は約522万円であり、施工管理技士は比較的高い傾向にあるため、この仮定は妥当と考えられます。)

計算式:施工管理総賃金 = 施工管理者数 × 平均年収

  • 施工管理者数:28万人 (先ほどの推定値)
  • 平均年収:600万円/年 (仮定)

施工管理総賃金 = 28万人 × 600万円/年 = 1兆6800億円/年

なんと、全国の施工管理者に支払われている賃金の総額は、年間およそ「1兆6800億円」にも上ると推定されます。
この数字の大きさに、ちょっと驚きませんか?これだけの巨大なコストが、建設業界で「施工管理者」という職種に投じられているわけです。

(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

この1兆6800億円という数字は、単なるコストではありません。それは、彼らの高度な専門性と労働に対して支払われている、いわば「期待値」です。この期待値に見合うだけの価値を彼らが最大限に発揮できる環境を整えることが、DXの真の目的と言えるでしょう。


5. フェルミ推定:設計者の人数

施工管理者と同じく、建設DXの重要なターゲットとなるのが「設計者」です。彼らの人数も、同様にフェルミ推定で概算してみましょう。

設計者数の算出

先ほど、国土交通省のデータから建設技術者数が37万人であることを見ました。
ここでは、建設技術者全体のうち、残りの割合が「設計者」であると仮定します。

仮定:建設技術者の約25%が設計者である
(先ほどの施工管理者の割合75%を差し引いた残りの割合として仮定します。これもフェルミ推定の仮定であり、実際の統計値とは異なる場合があります。)

計算式:設計者数 = 建設技術者数 × 設計者割合

  • 建設技術者数:37万人
  • 設計者割合:25% (仮定)

設計者数 = 37万人 × 0.25 = 9.25万人

よって、全国の設計者数は、およそ「9万人」と推定できます。

(出典:国土交通省 を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

施工管理者に比べると人数は少なめですが、彼らもまた、建設プロジェクトの根幹を担う非常に重要な存在です。


6. フェルミ推定:設計者の賃金総額

続いて、設計者全体に支払われている賃金総額も推定してみましょう。

設計者総賃金の算出

設計者の平均年収を基に、全体の賃金総額を算出します。

仮定:設計者の平均年収を650万円とする
(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」などのデータを参考に、建築設計士の専門性や経験を考慮した概算値として仮定します。2022年の建築設計の平均年収は600万円台であることが多く、この仮定は妥当と考えられます。)

計算式:設計者総賃金 = 設計者数 × 平均年収

  • 設計者数:9万人 (先ほどの推定値)
  • 平均年収:650万円/年 (仮定)

設計者総賃金 = 9万人 × 650万円/年 = 5850億円/年

全国の設計者に支払われている賃金の総額は、年間およそ「5850億円」と推定されます。

(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

施工管理者と設計者を合わせると、実に年間2兆円を超える賃金が、これら高度な専門性を持つ人材に投じられていることになります。この巨大な投資が、最大限の価値を生み出すためには、彼らの「時間」がどのように使われているかを精査する必要があります。


7. ノンコア業務の割合

ここまでの推定で、施工管理者と設計者という二つの職種に、いかに大きな人的・金銭的リソースが投じられているかが分かってきました。では、彼らの日々の業務は、その専門性をフルに活かせる「コア業務」だけで構成されているのでしょうか?残念ながら、そうではないのが現実です。

施工管理者・設計者の業務分類

まず、彼らの業務を大きく二つに分類してみましょう。

  • コア業務:
    意思決定、設計、技術判断、品質管理、安全管理の計画立案、工程管理の最適化、顧客や関係者との高度な折衝、チームマネジメント、創造的な発想など、彼らが持つ高度な専門性や経験、判断力が不可欠な業務です。これこそが、彼らが本来集中すべき、高付加価値を生み出す業務です。
  • ノンコア業務:
    報告書作成、写真整理、図面修正、進捗記録の入力、定型的な資料作成、確認業務、軽微な調整業務、会議の議事録作成、データ入力、情報収集と整理などです。これらは手順が定型化されており、デジタル技術によって自動化・効率化が可能な業務です。あるいは、専門性というよりは時間と手間がかかる「事務作業」に分類される業務です。

ノンコア業務割合の仮定

では、これらのノンコア業務が、彼らの業務時間のどれくらいを占めているのでしょうか?

これはなかなか統計データとして明確なものが出にくい部分ですが、様々な調査や現場の声から、かなりの割合を占めていると推測できます。

仮定:施工管理者・設計者のノンコア業務割合を30〜40%とする

今回は、計算を分かりやすくするために、この中間をとって「35%」と仮定して進めます。
この仮定の根拠はいくつかあります。

  • 施工管理技士の残業時間が多い理由:
    施工管理技士の平均残業時間は月30.5時間と、一般的な会社員の2倍以上です。その主な原因として、業務量の多さ、人手不足に加えて「アナログ業務の多さ」が挙げられています。報告書の手書きや写真の整理、Excelへの手入力など、デジタル化の余地が大きい業務が山積しているのが実情です。
  • 設計者の「発想のための時間」問題:
    設計者においては、6割以上もの人が「発想のための時間」を業務時間外で確保しているという調査結果もあります。これは、本来業務時間内で確保すべき創造的な時間が、雑務やルーティンワークに圧迫されている証拠です。彼らがデジタル化に期待を寄せているのも納得です。
  • BPO(業務プロセスアウトソーシング)の事例:
    事務作業や書類作成、積算業務などのノンコア業務を外部に委託するBPOサービスが拡大しているのも、その証拠の一つです。外部委託で削減できるということは、内部で時間を使っていたノンコア業務の割合が大きいことを示しています。

このように、施工管理者も設計者も、その専門性の高さにも関わらず、多くの時間を定型的な事務作業や情報整理、調整業務といったノンコア業務に費やしている現状があります。ここにDXを導入することのポテンシャルは計り知れません。


8. DXによる削減時間

ノンコア業務の割合が明確になったところで、いよいよDXによってどれくらいの時間削減が可能になるのかを計算してみましょう。

DXによる年間削減時間の算出

まず、施工管理者と設計者の合計人数を再確認します。

  • 施工管理者数:約28万人
  • 設計者数:約9万人
  • 合計人数:約37万人

次に、彼ら一人あたりの年間労働時間を設定します。
先述の通り、2022年度の建設業の年間実労働時間は全産業の平均より68時間長く、年間出勤日数も12日多いとされています。
一般的な年間労働時間は約1900~2000時間ですが、建設業の実態を考慮し、ここでは「年間2000時間」を仮定して計算を進めます。

仮定:年間労働時間を2000時間/人とする
(総務省「労働力調査」などのデータを参考に、建設業の現状を考慮した概算値として仮定します。)

そして、先ほど仮定したノンコア業務割合「35%」を掛け合わせます。

計算式:削減時間 = 対象人数 × 年間労働時間 × ノンコア業務割合

  • 対象人数:37万人
  • 年間労働時間:2000時間/年
  • ノンコア業務割合:35% (0.35)

削減時間 = 37万人 × 2000時間/年 × 0.35 = 2億5900万時間/年

なんと、全国の施工管理者と設計者が、DXによって年間「2億5900万時間」もの時間を削減できる可能性があると推定されます!
この数字、めちゃくちゃ大きくないですか?一人ひとりの努力で削減できる時間には限界がありますが、全体で見るととんでもない規模の時間ロスが生まれているわけです。

(出典:総務省「労働力調査」 を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

この削減された時間は、本来のコア業務に充てることもできますし、労働時間そのものを削減し、従業員のワークライフバランスを向上させることにも繋がります。まさに、建設業界の働き方改革の切り札とも言えるでしょう。


9. 削減可能コスト

年間2億5900万時間もの時間を削減できるとなると、それがコストに換算されたらいくらになるのでしょうか?いよいよ、巨大な時間ロスが「お金」という形でどれだけの規模になるのかを算出します。

削減コストの算出

削減可能なコストを算出するには、削減時間と時間単価を掛け合わせます。

計算式:削減コスト = 削減時間 × 時間単価

まずは、彼ら一人ひとりの時間単価を計算しましょう。

時間単価の算出

時間単価は、平均年収を年間労働時間で割ることで算出できます。

計算式:時間単価 = 年収 ÷ 年間労働時間

  • 施工管理者:
    • 平均年収:600万円/年 (仮定)
    • 年間労働時間:2000時間/年 (仮定)
    • 施工管理者時間単価 = 600万円 ÷ 2000時間 = 3000円/時間
  • 設計者:
    • 平均年収:650万円/年 (仮定)
    • 年間労働時間:2000時間/年 (仮定)
    • 設計者時間単価 = 650万円 ÷ 2000時間 = 3250円/時間

施工管理者と設計者を合わせた全体の平均時間単価を概算すると、約3100円/時間となります。今回はこの平均時間単価を使って、全体の削減コストを算出してみましょう。

  • 削減時間:2億5900万時間/年 (先ほどの推定値)
  • 平均時間単価:3100円/時間 (仮定)

削減コスト = 2億5900万時間 × 3100円/時間 = 8029億円/年

なんと、DXによって施工管理者と設計者のノンコア業務を効率化することで、年間およそ「8000億円」ものコストを削減できる可能性があると推定されます!

(出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 および総務省「労働力調査」 を参考に、当記事のフェルミ推定により算出)

この「年間8000億円」という数字、ぶっちゃけヤバいですよね?これはまさに、建設業界全体に潜む「巨大な眠れる資源」であり、DX投資がいかに大きなリターンをもたらすかを物語る数字です。この金額を浮かせることができれば、新たな技術投資、人材育成、賃上げ、そしてもちろん企業の利益へと還元できるわけです。


10. 建設DXの本当のターゲット

これまでのフェルミ推定で、施工管理者と設計者のノンコア業務に年間8000億円もの時間ロスが潜んでいることが明らかになりました。この数字は、私たちが建設DXのターゲットをどこに定めるべきかを示唆しています。

真のターゲットは職人の作業ではない

建設DXと聞くと、「現場の職人さんがスコップをドローンに変える」とか、「重機が自動で動く」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。もちろん、そうした現場作業の自動化・効率化も重要なDXの一側面です。しかし、今回の分析が示唆するのは、建設DXの目的が、現場の職人の作業そのものを変えることだけではない、ということです。

職人の皆さんのスキルや経験は、まさに「身体知」として現場でしか生み出せない価値です。これをデジタルで完全に置き換えることは、現時点では難しいし、置き換えるべきでもない部分も多くあります。彼らが集中すべきは、その専門性を活かした「ものづくり」のコア業務です。

施工管理と設計の情報処理の変革

私たちが本当に変えるべきは、施工管理者と設計者が日々行っている膨大な「情報処理」業務であると結論づけられます。

彼らのノンコア業務の多くは、デジタル化によって劇的に効率化できる「情報」にまつわるものだからです。

具体例を挙げればキリがありませんが、例えば、

  • 現場調査・測量データの収集と整理:
    ドローンやレーザースキャナーで取得した3D点群データを自動で処理し、現況モデルを数時間で作成する。従来のように手作業で測量し、図面に入力する手間を大幅に削減できます。
  • 報告書作成:
    現場写真の自動仕分け、AIによる文字起こし、定型文の自動挿入などにより、報告書作成時間を半減。写真整理ツールや報告書作成ソフトの導入で、現場でタブレットから入力するだけで完成させることが可能です。
  • 図面修正・作成補助:
    BIM/CIMデータと連携した自動調整機能や、AIによる設計案の生成補助、図面間の整合性チェックなどで、膨大な修正作業から解放されます。
  • 進捗記録と情報共有:
    クラウド型プロジェクト管理ツールを活用し、現場の進捗状況をリアルタイムで共有。写真や動画も紐付け、オフィスからでも現場の状況を詳細に把握できます。
  • 数量拾い・積算業務:
    BIM/CIMモデルから自動で数量を拾い出し、積算業務の精度向上と時間短縮を実現します。
  • 点検・検査業務:
    ドローンやAIを活用した自動点検システムで、足場を組むことなく安全かつ効率的に点検を実施。点検結果も自動でレポート化することが可能です。

これらの業務は、IoT、AI、クラウド、BIM/CIMといったデジタル技術を組み合わせることで、大きく効率化することが可能です。
職人さんの手を動かす時間ではなく、施工管理者や設計者の「頭と目と手」が情報処理に奪われている時間を、いかに短縮し、彼らが本当に集中すべき創造的で専門性の高い業務にシフトさせるか。これこそが、建設DXが狙うべき「ど真ん中」なのです。


11. 結論:DXは「時間創出」のための投資

ここまで、建設業界の施工管理者と設計者が、いかに多くの時間を「ノンコア業務」に費やし、それが年間数千億円規模の巨大な時間ロスに繋がっているかをフェルミ推定で見てきました。

人手不足対策から「時間創出」へ

建設業界のDXは、単なる人手不足対策に留まりません。もちろん人手不足を補う側面はありますが、その本質的な目的は、高付加価値人材である施工管理者や設計者の「時間創出」にこそあります。

彼らの貴重な時間が、報告書作成や写真整理、図面修正といったノンコア業務に奪われている現状は、企業にとっても、業界全体にとっても、そして彼ら自身のキャリアにとっても大きな損失です。DXによってこれらの業務を効率化・自動化することで、彼らは本来の専門性を活かしたコア業務に集中できるようになります。

それは、まるで高性能なエンジンの回転数を高めるために、余計な摩擦を取り除くようなものです。余分な摩擦がなくなれば、エンジンは本来のパワーを発揮し、より速く、より効率的に動けるようになるでしょう。

ノンコア業務のDXこそが未来を拓く

DXのターゲットを、施工管理者と設計者の「情報処理にまつわるノンコア業務」に絞り込むことで、私たちは建設業界全体の生産性を飛躍的に向上させることができます。

年間8000億円もの潜在的な削減コストは、業界の持続可能性を高め、新たな投資を可能にし、さらには従業員の待遇改善にも繋がるでしょう。そして何より、ノンコア業務から解放された施工管理者や設計者が、自身のスキルやアイデアを存分に発揮できることは、業界の魅力度を向上させ、若手人材の確保にも貢献するはずです。

建設DXは、単なるデジタルツールの導入ではありません。それは、高付加価値人材がよりクリエイティブで本質的な業務に集中できる環境を整え、「時間」という最も貴重なリソースを創出するための、未来への戦略的な投資なのです。

さあ、皆さんの会社も、この巨大な時間ロスを宝の山に変えるため、施工管理者・設計者のノンコア業務に光を当ててみませんか?建設業界の新しい未来は、そこから開かれていくに違いありません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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References:
建設業の就業者数と技能者数の推移 – 国土交通省. https://www.mlit.go.jp/common/001476831.pdf
建設業の現状と課題 – 建設産業戦略会議. https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001594950.pdf
「人手不足」を感じる企業は5割超。建設業では7割近くに – 帝国データバンク. https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p240201.html
令和4年労働時間調査結果の概況 – 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/wagakuni/2022/dl/r04_02.pdf
建設業の働き方改革の現状と課題 – 国土交通省. https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s204_hatarakikata.html
建設業における時間外労働の上限規制(2024年問題)とは? – 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04618.html
建設業を取り巻く現状 – 国土交通省. https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/content/001602166.pdf
令和4年賃金構造基本統計調査の概況 – 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2022/index.html
施工管理の平均年収は? | 仕事内容とやりがい、資格について – マンパワーグループ. https://www.manpowergroup.jp/client/jinji/survey/126.html
建築士の平均年収は?仕事内容から資格取得方法まで徹底解説 – 建設・設備求人データベース. https://www.kensetsu-d.jp/contents/architect-salary.html
建築士の年収は?給料が高い建築士の特徴や年収アップの方法を解説 – 建築転職. https://kenchiku-tenshoku.jp/media/architect-salary/
建設業の施工管理技士、残業時間の平均は?削減するための対策も紹介 – 建築・建設業界専門メディア「けんせつプラス」. https://www.kensetsu-plus.com/column/detail/20230206103310.html
働き方改革とDXで変わる設計者の未来 – オートデスク. https://www.autodesk.co.jp/blogs/architecture-engineering-construction/future-of-designers-with-work-style-reform-and-dx
建設業界のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の活用例 – 株式会社パソナ. https://www.pasona.co.jp/clients/bpo/kensetsu/
労働力調査 長期時系列データ – 総務省統計局. https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03.html
労働時間 – 日本労働研究雑誌. https://www.jil.go.jp/jil/j_lex/14_1_JIL.html
建設DXとは?推進ステップと成功事例、課題解決のヒント – 富士通. https://www.fujitsu.com/jp/innovation/digital-transformation/dx-column/construction-dx/
建設DXとは?注目される背景やメリット、具体的な事例を紹介 – NEC. https://jpn.nec.com/dx/blog/20230214.html

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