建設業に従事している人のなかには、工事管理と工事監理の違いがわからないとお悩みの人も多いのではないでしょうか。どちらも同じ読み方をするため、確かに混同しやすいキーワードです。
そこでこのコラムでは、管理と管理の異なる点についてわかりやすく解説します。業務に関する複数の異なるポイントで紹介しているので、業務中の聞き間違いや読み間違いを避けるための参考にしてください。
工事管理(施工管理)とは
管理とは、施工業務のなかで発生する一連の流れを管理する業務のことです。別名、施工管理ということも多く、工事を円滑に進めるために次の項目を継続的に把握・管理します。
- 工期までに工事を終わらせるための「スケジュール」
- 限られている予算内で支出を抑えるための「予算」
- 施工後の品質試験や検査員による検査をクリアするための「品質」
- 工事中に発生するかもしれない事故を未然に防止するための「安全」
時間や予算、人員が限られている工事では、いかに計画的かつ効率的に工事を完了できるかが求められます。土木・建築の工事で必須の管理業務であることから、ゼネコンで働く人など、施工管理者として動いている人が、よく管理を担当します。
工事管理で利用するツール一覧
管理をおこなう際には、次のような効率化ツールを導入して、工事全体をチェックするのが一般的です。
- KANNA(カンナ)
- ANDPAD(アンドパッド)
- サクミル
- KAKUSA
- eYACHO
- anymore
- BUILD-U(ビルドユー)
- PROCES.S
- スパイダープラス
- Photoruction
- insightscanX(ONETECHが2025年に開発)
上記で紹介したツールはあくまで一例ですが、Excelなどのアナログな管理手法を取っており「業務にかかる時間が増えている」「日常的に残業が発生している」とお悩みなら、建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)のために、新たなツール導入を検討してみてください。
工事監理とは
監理とは、現場の動きや建築物・建設物が正しく設計図書通りに完成しているのかを照合する業務のことです。主に、工事の品質に関わる監理をするのが目的であり、現場作業ではなく、できあがりつつある建築物や建設物のチェックをします。
なお「監理」には取り締まるという意味があり、建築士法でも次のように明記されています。
この法律で「工事監理」とは、その者の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。
引用:e-GOV法令検索「建築士法」
主に、発注者となる市町村や企業の代わりに正しく工事完成に近づいているのかをチェックし、品質を守るのが仕事です。
工事監理で利用するツール一覧
監理のミスを減らすために、次のような効率化ツールを導入して、工事品質の維持に取り組む企業が増えています。
- NEC情報共有ASPサービス工事監理官
なお、監理の場合は業務範囲が品質維持と狭いことから、提供されているツール自体が少ない状況です。
工事管理(施工管理)と工事監理の違い
前述した管理・監理の違いを項目に分けて詳しく解説します。
業務内容の違い
まず管理では、施工会社の担当者が管理者として現場を回します。設計業務でつくられた図面や数量計算書などを参考にしながら計画を立てるのはもちろん、工事中も現場へ向かい、作業員への指示出しや現場の日常点検などを実施します。
また現場だけでなく事務所でも資料の作成や発注者への報告、翌日以降の計画の見直しなど、リアルタイムで進む工事進捗を調整しながら、期日までの完成を目指すのが主な業務です。
一方で監理は、設計会社が設計図書どおりに工事が進んでいるのか判断するのが仕事です。立場としては発注者側と似ており、確認のなかで見つかったポイントなどをまとめて、承認や是正をおこない、工事中に発生する手戻りを防止します。
なお監理では、国土交通省が定める「工事監理ガイドライン」に基づき業務を実施するのが一般的です。
業務フローの違い
管理の仕事は、まず各作業員への朝の朝礼から始まります。その日の目標やスケジュールについて現場作業員に伝達したのち、各員が持ち場についたら現場の見回りを進めます。
なお、担当者はただ現場を見回るだけではなく、その都度作業員に工事の状況を確認したり、施工位置に間違いがないのかをチェックしたりしなければなりません。さらには現場の様子を写真撮影して台帳にまとめるといった作業も必要です。あわせて工事で利用する材料等の発注が滞りなく進んでいるのかを確認し、発注先や別の担当者と連絡を取りながら、工事を円滑に進めます。
対して、監理は定期的に現場を見て回るという点は同じですが、その頻度は施工担当者よりも少なく、業務計画書に記載されている品質チェック等が必要なタイミングで現場の様子を確認しに向かうのが特徴です。
なお、監理をする際には「抜き打ち検査」のように、事前連絡なしで検査をおこなう場合もあります。現場状況を確認した後は、発注者に問題なく工事が進んでいるのかを報告するための書類をまとめたり、施工担当者に連絡をしたりと、影ながら工事がうまく進むようにフォローするのが仕事です。
担当者の資格の違い
管理を担当する人材は、特に資格を求められません。ただし、複数の視点から現場を管理しなければならないため、土木・建築施工管理技士といった現場に関わる資格や、ある程度の経験年数があるとよいでしょう。
また監理の担当者は、建築基準法で定められている次の資格がなければ担当できません。
- 一級建築士
- 二級建築士
- 木造建築士
- 建設設備士
出典:e-GOV法令検索「建築士法」
どれも工事に関する専門知識が必要であることはもちろん、図面を正しく読める知識や管理能力が求められます。資格を取得するためには、事務経験が必要な資格も多いため、新入社員や若手社員には任せられない業務です。
不要な工事の違い
管理が不要なのは、建設業許可が不要となる次の工事が該当します。
- 建築一式であり、かつ請負金額が1,500万円未満の木造住宅工事である
- 建築一式であり、かつ延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事である
- 建築一式以外の工事であり、かつ請負金額が500万円未満の工事である
- 許可を受けた業種の建設工事に附帯する工事である
出典:国土交通省「建設業の許可とは」
つまり、金額や面積、重要性によっては管理の担当者を置かなくとも工事ができる場合があると覚えておきましょう。
続いて監理の場合は、次のような条件下で担当者が不要となります。
- 建築士が設計しなければならない建築物
- 延べ面積が300㎡を超える建築物
- 木造であり、延床面積が500㎡超えかつ高さ13m超え、軒の高さ9m超えの建築物
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、煉瓦造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造などの建築物
- 公共性のある施設や工作物に関する重要な建設工事
小規模で図面の作成が不要な工事業務の場合には、監理を立てずに対応できるケースも少なくありません。
責任の違い
管理の場合には、次の業務に責任が発生します。
- 施工計画を立案する
- 工程・品質・安全を継続して実行する
- 下請業者・協力業者を手配する
- 材料の発注をおこなう
- 現場の指示をおこなう
- 発注者への報告をおこなう
一方で監理では、次のような業務に責任が発生します。
- 工事状況を設計図書や仕様書と照合する
- 工事問題箇所の指摘や指示、是正をおこなう
- 発注者に工事状況を報告する
発注者への報告という点については、どちらの業務でも必要ですが、責任の範囲がお菊異なります。工事がメインなのか、品質維持がメインなのかという違いがある点に気を付けてください。
工事管理と工事監理を分けるべき理由
同じ工事業務に関わるのにもかかわらず、なぜ管理と監理が分かれているのかわからないという方も多いでしょう。以下に、業務が分割されている理由をまとめました。
業務の役割を明確にするため
工事の進行と品質の確認とで業務を分けることにより、担当者の負担を削減するのが目的です。工事に対応するかたわら、品質のチェックまですべて担当するのは負担が大きいことから、業務が分けられています。
工事業務における見落としを防止するため
一連の工事をひとつの会社(ひとりの担当者)だけで対応した場合、チェックミスなどによる見落としが発生し、手戻り等の大問題が起きるかもしれません。そのためダブルチェックという意味も込めて、見落とし防止のために2つの業務に分けられています。
工事業務を円滑に進行するため
管理と監理を分けて対応すれば、報告資料の作成はもちろん、業務に割くリソースを確保しやすくなるのが魅力です。限られた時間のなかで工事を完了させるためにも、品質を維持しつつスムーズに工事を終わらせるために2つの業務が分けられました。
法的・契約上の要件を満たすため
2つの業務に分けられているのは、限られた人材しか工事監理に対応できないためです。例えば建築士の資格などを取得している人材は業界のなかでも一部の人材だけです。一人の担当者に業務が集中することはもちろん、管理に対応できる人材が減ってしまうため、法的契約上の要件を満たす目的で業務が分けられています。
工事品質アップによるトータルコストを削減するため
「かんり」という意味の業務を2つに分けることで、工事品質を高められるのはもちろん、業務の円滑化によって、余計な人件費や手戻りにかかる工事費用を抑えやすくなるのが魅力です。業務が2つに分かれ、ゆとりのある時間のなかで工事を進められるようになることで、発注者はより多くの業務を年内に発注できるようになるでしょう。
工事管理・監理の業務を円滑化する方法
工事管理・監理の業務では、それぞれ次のような現場トラブルが起こるたびに、柔軟な対応が求められます。
- 雨のせいでコンクリートを養生できない
- 雨のせいで木材が悪くなってしまう
- 運搬の遅延により材料が届かない
- 現場作業員内でウイルスがまん延した
よって、トラブルが起きるなかでも業務を円滑に進める方法を2つ整理しました。
明確なルール・ガイドラインに基づいて業務にあたる
管理・監理は国に定められているルールやガイドラインに基づいて作業を進めることが重要です。自己判断をする場面が多いほどミスや手戻りが増える原因になるため、根拠に基づく行動をとって、無駄のない工事進行を実現しましょう。
業務効率化ツールを導入する
工事業務の人材不足に悩んでいるのなら、業務効率化ツールを導入するのがおすすめです。
例えば、写真台帳の作成をクラウド化できるアプリや、BIMなどの施工ステップ図作成を効率化できるワークフローを導入することにより、一人あ当たりの作業効率を飛躍的に向上できるでしょう。
まとめ
管理と監理は、それぞれ担当者として立ち位置が違うことはもちろん、業務内容も大きく異なります。ただし、どちらも工事に関わる重要な仕事です。工期内に工事を完了させるほか、業務ミスを防止するためにも、自身が担当すべき業務がどちらなのかを確認したうえで、効率よく業務を進行するための施策を検討してみてはいかがでしょうか。
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