AWSを利用するときには「どれだけ費用を抑えて最大の性能を得られるか?」という費用対効果の検討が重要です。AWSのさまざまなサービスを熟知しておくと、サーバーのコストダウンに役立ちます。
AWSのリザーブドインスタンス(RI)は、オンデマンドインスタンスと比較して大幅に割引を受けられるサービスです。今回は、インスタンスに関する基本的な用語解説からリザーブドインスタンスの特徴、具体的な料金のシミュレーションまで取り上げます。
EC2のインスタンス
リザーブドインスタンスを解説する前に、インスタンスに関するAWSの基本的な用語を整理します。
インスタンスとは?
AWSの「インスタンス(instance)」とは、クラウド内における仮想コンピューティングの環境を指します。ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク環境などを含みます。
Amazon Elastic Compute Cloud (以下、EC2)では、それぞれのインスタンスに対してオペレーションシステム、アプリケーションサーバー、アプリケーションを提供します。EC2はテスト環境から大規模なECシステム構築に至るまで、柔軟に組み合わせ可能な幅広いインスタンスを備えています。
インスタンスタイプ
EC2で提供されるCPU、メモリ、ストレージ、ネットワークを「インスタンスタイプ」と呼びます。インスタンスタイプは、ファミリーと世代、追加機能、サイズを組み合わせた名前で示されています。
たとえば「m6i. 32large」であれば、インスタンスファミリーM6(第6世代)、インテルのXeon Scalable Processor(開発コード:Ice Lake)搭載、32largeサイズです。このサイズでは、128基のvCPUと512GiBのメモリを搭載しています。
インスタンスタイプは、以下の活用の用途から最適なインスタンスを選択できるようになっています。
・汎用
・コンピューティング最適化
・メモリ最適化
・高速コンピューティング
・ストレージ最適化
一般的な業務用のシステムを構築するのであれば、汎用およびコンピューティング最適化を選択するとよいでしょう。
インスタンスファミリー
汎用合には、T/M/AそしてMacのインスタンスファミリーがあります。一般的によく使われるmは「Most scenarios」の意味であり、さまざまな活用シーンでバランスよく利用できます。Tはバースト可能な「Turbo」で一時的に高性能を出すことができ、mファミリーより低コストで運用できます。AはArmベースのプロセッサです。
最適化を目的としたインスタンスでは、コンピューティング最適化のCファミリー、メモリ最適化のR/X/zファミリー、ストレージ最適化のI/D/Hファミリーがあります。
リザーブドインスタンスとは
一般的にリザーブ(reserve)は「予約」を意味します。EC2のリザーブドインスタンスも同様に予約の意味であり、一定期間の継続的な長期利用を前提として、あらかじめインスタンスを予約しておくことで割引を適用するサービスです。「長期予約割引」と考えるとよいでしょう。
オンデマンドインスタンスとリザーブドインスタンスの違い
AWSの通常の利用がオンデマンドインスタンスです。オンデマンドインスタンスでは、利用した時間に対して費用を支払う従量課金を採用しています。
一方、リザーブドインスタンスでは、1年や3年の利用を前提として大幅な割引が受けられます。長期的にEC2を利用する場合にはコスト削減が可能です。クラウド上のインスタンスを購入するイメージより、利用目的に合わせて「最適化された環境を確保する契約」と考えるとよいでしょう。
リザーブドインスタンスの種類
リザーブドインスタンスには、以下の2種類があります。
・スタンダード
・コンバーチブル
スタンダードの場合は、オンデマンドインスタンスの料金の最大72パーセントの大幅な割引が受けられます。割引率では、コンパーチブルより安価になります。しかし、インスタンスファミリーの交換ができないといった制限に注意が必要です。
コンバーチブルの割引率はオンデマンドインスタンスの料金に対して最大54パーセントの割引率ですが、インスタンスファミリーなどを別のリザーブドインスタンスに交換可能です。ただし、同一リージョンに限られるなどの条件があります。
リザーブドインスタンスでは、インスタンス自体の交換や状況に合わせてインスタンスのサイズなど一部の属性の変更ができる場合がありますが、条件を確認する必要があります。
リザーブドインスタンスの期間
リザーブドインスタンスでは、スペックおよび期間(1年または3年)を指定して割引が行われ、割引率はインスタンスの種類や支払い方法によって変わります。
リザーブドインスタンスの適用と支払い方法
AWSはリージョン以下の1つ以上のデータセンターで構成されているアベイラビリティゾーン(AZ)で運用されます。アベイラビリティゾーンにおいて、必要な仕様と一致するインスタンスに適用されます。属性や期間などの条件が一致した場合には、オンデマンドインスタンスで料金の割引を適用することも可能です。
支払い方法には以下の3種類があります。
・全額前払い
・一部前払い
・前払いなし
最も割引率が高いのが全額前払いであり、利用する初月に全額を支払います。前払いなしで運用した場合は、割引料金の単価を毎月支払います。
リザーブドインスタンス購入で気をつけたいデメリット
大幅な割引が可能なリザーブドインスタンスのメリットであり、支払い方法を選択すれば金額が確定するため、システムの運用予算の計画を立てやすくなります。割引の反面、注意しなければならない点があります。
利用金体系が複雑で分かりにくい
まず、料金体系が複雑で分かりにくいこと。メリットが分かっていても実際に利用する際には理解が難しい仕様になっています。また、長期間の利用が前提のため、一度購入すると原則としてキャンセルできないことがデメリットです。
インスタンスを休止しても費用がかかる
たとえば、夜間には休止するようなサーバーの運用では、インスタンスを休止しても料金がかかります。オンデマンドインスタンスを使って稼働時間で料金を算出したほうが安上がりになる場合があります。
柔軟に仕様の変更などができない
価格面以外では、あらかじめ割引されるインスタンスタイプが決まっていて、仕様を変更したい場合や新しい世代のインスタンスが登場したときに、変更や交換が困難なことに注意が必要です。
リザーブドインスタンスの料金比較
実際に料金のシミュレーションによって比較してみましょう。以下の表はt3.xlarge、アジアパシフィック東京リージョン、OSはLinux、テナンシーは共有の仕様でオンデマンドインスタンスとリザーブドインスタンスを比較した場合です(10月4日現在、1ドル=144円換算)。期間は1年間と3年間、支払い法は3種類を比較しました。
対オンデマンド 比率 |
前払い料金 (円) |
月額費用 (円) |
年額費用 (円) |
時間単位 費用(円) |
1年間節約 コスト(円) |
|||
オンデマンド | ¥0 | ¥22,890 | ¥274,681 | ¥31 | ¥0 | |||
リザーブド | 1年 | 前払いなし | 63% | ¥0 | ¥14,412 | ¥172,938 | ¥20 | ¥101,743 |
一部前払い | 60% | ¥82,368 | ¥6,864 | ¥164,742 | ¥19 | ¥109,940 | ||
全額前払い | 59% | ¥161,424 | ¥0 | ¥161,424 | ¥18 | ¥113,257 | ||
3年 | 前払いなし | 43% | ¥0 | ¥9,881 | ¥118,575 | ¥14 | ¥156,106 | |
一部前払い | 40% | ¥164,736 | ¥4,573 | ¥109,793 | ¥13 | ¥164,888 | ||
全額前払い | 38% | ¥309,600 | ¥0 | ¥103,200 | ¥12 | ¥171,481 |
※10月4日調べ。1ドル=144円換算。
※インスタンスファミリーは、t3.xlarge。アジアパシフィック東京リージョンで、OSはLinux、テナンシーは共有の場合。
※参考:https://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/reserved-instances/pricing/
オンデマンドインスタンスと比較して、リザーブドインスタンスの場合は1年間で約60パーセント、10万円ほどの節約ができます。3年間の契約では、約40パーセント、16万円もの節約になります。さらに全額前払いで契約すると大きな節約効果になります。
この表からもリザーブドインスタンスのコスト削減効果が歴然としています。
Savings Plansとリザーブドインスタンス
AWSのコスト削減方法にはSavings Plansもあります。リザーブドインスタンスと同様に1年と3年の期間が設定できますが、Savings Plansの場合は時間あたりの利用量を定めることによって割引が得られることが違いです。
AWSの保守運用について
弊社、株式会社One Technology Japanは多くのお客様のAWSの構築と運用保守サービスをベトナムオフショアで行なっております。AWSはお客様のアカウントで管理したり、弊社のアカウントで管理したりしています。WEBシステムを構築して最適化したアーキテクチャ構成で運営を開始します。当初の構築はEC2やRDSを利用した場合、契約はオンデマンドを提案させていただいております。
しかししばらく運用してシステムやサービスが安定した際にはリザーブドインスタンスに切り替える提案をしています。その際にリザーブドインスタンスのデメリット=リスクもお話ししています。そのうえでメリットの方が大きい場合は即時にリザーブドインスタンスに切り替えます。これはお客様のアカウントであっても弊社が変わって設定変更をさせていただくことも可能です。
また余談にはなりますが最近はサーバレス構成を提案しています。サーバレスの場合はまさに使った分だけの課金になることやAWS側が可用性や拡張性を担保してくれていますのでサーバーコスト削減だけでなくオペレーションコストの削減もできるというメリットがあります。
AWS構築、運営ならONETECHにご相談ください。
おわりに
コロナ禍をはじめとする社会の変化から、ビジネスではあらゆる側面でコスト削減が求められています。EC2を利用するとき、環境に変更を加えずに1年~3年の利用が見込めるのであれば、リザーブドインスタンスの利用を検討すると大幅なコストダウンを実現できます。一方でキャンセルや仕様変更の融通性に乏しいことから、システムの要件を考慮しつつ費用のシミュレーションをしておくことがポイントといえるでしょう。
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