「Hypar AI」と呼ばれる高性能なBIMプラットフォームが登場しつつあることをご存じでしょうか。当プラットフォームはテキストの指示だけでBIMモデルを自動で生成できるという魅力的なサービスです。
そこでこの記事では、Hypar AIの概要や具体的にできることをわかりやすく解説します。業務に活用するメリットも説明しているので、今後の動向を探るべきサービスなのかチェックしてみてください。
Hyparが提供するAIサービスとは?
Hypar AIとは、Revitの製品開発、ビジュアルプログラミングインターフェースの開発を実施する2人のエンジニアによりつくり出されたサービスです。2018年に設立し、SaaS(Web上でソフトウェアを利用できる仕組み)を利用して、Hyparの基本機能に触れられます。
また当サービスは、主に住宅やビルといった建築業務に特化したBIMデータ作成サービスです。3次元空間上にスペース、階段、家具、エレベーターなどを配置しながら手軽にBIMモデルを作成していけます。
なお本記事のメインとなるAIサービスは現在、開発段階となります。詳しくは後述していますが、テキストからBIMモデルを生み出す機能を利用できるまでには、もう少し時間が必要なようです。
Hypar AIのBIM作成サービスでできること
Hyparが提供しているBIM作成サービスを活用すれば、直感的な操作でBIMモデルを作成できるほか、人工知能を使って手軽にBIMモデルの生成が可能です。
具体的にサービスを利用することでできることを整理しました。自社の目的に合うサービスなのかチェックしてみてください。
BIMモデルの作成
当サービスでは、直感的な操作だけで簡単にBIMモデルを作成できます。
画面構成がシンプルであることはもちろん、機能数が必要最小限に絞られているため、概略で建築物を設計したい場合に活用が可能です。
また、3Dのみならず2D画面に切り替えて作業を進められます。配置したオブジェクトのサイズも細かく調整できることから、建築設計業務の”当たり”をつけたいという場合には、BIMソフトを使う前に当サービスを活用するのが効率的です。
Autodesk Revitへのデータ送信
HyparはAutodesk社のRevit開発に携わっているプロが設立したサービスであることから、Autodesk RevitというBIMソフトとの高い互換性をもっています。
例えば、Revitに送信できるエクスポート機能を活用することにより、当サービスで作成したBIMモデルをリアルタイムに連携できるのが魅力です。また逆に、Revitで作成した家具・設備・部屋などのデータを当サービス上にインポートできます。
お互いのデータを連携し合いながら設計検討を進められることから、概略設計をHypar、詳細設計をRevitというように、ソフトを使い分けることにより効率的な設計が可能です。
テキストから自動でBIMデータを生成
当サービスでは今後、AIを活用してBIMデータの生成機能として、Hypar AIという機能が搭載される予定です。
例えば「長さ3m、幅5mの一戸建て住宅を生成して」というように、テキストベースで指示を出すことにより、自動でBIMデータが生成されます。
今までのようにひとつずつオブジェクトを配置して設計するという動き方から、生成したモデルを調整しつつ建築物を作成していくという効率的な動き方にシフトチェンジできるのが魅力です。
画像や地図からBIMデータを生成
Hypar AIの機能がリリースされれば、今後は画像や地図情報から自動でBIMデータを生成できるようになると言われています。例えば、地図の必要範囲をBIMデータ化する際には、次のような情報を自動で反映できるそうです。
- 建物の形状・高さ
- 道路や用地の境界
- 地形の色(河川や道路など)
当機能を活用すれば、メインの建築物を作成する際の景観検討や干渉チェックなどに活用が可能です。地図の範囲を選択するだけで簡単にBIMデータを生成できることから、今まで必要だった、国土地理院からデータを取得するといった手間を削減できるようになるかもしれません。
Hypar AIは現在開発段階
ここまで直感的な操作で建築物のモデルを作成できる「Hypar」、人工知能を活用して自動で建築物のモデルを作成できる「Hypar AI」について紹介しました。
そのなかでも人工知能を活用した機能は、現在開発段階であることに気を付けてください。HyparのSaaSをチェックすることからもわかるように、現在利用できるのは、手動でのBIMモデル生成のみです。
人工知能を活用した自動生成ができるようになるまでには、もう少し時間がかかると覚えておきましょう。
Hypar AIを活用するメリット
今後実装される予定のHypar AIを活用するメリットをまとめました。現状の設計業務から、どのような変化があるのか詳しく見ていきましょう。
複数のオブジェクトをひとつのテキストから生成できる
人工知能を活用すれば、テキストで指示を出すだけで複数のオブジェクトを短時間で配置できます。
まず現在の設計では、建物の構造やデザインを思い描きながら、1つずつオブジェクトを組み合わせていくのが一般的です。しかし、1つのオブジェクトを配置するたびに、形状やサイズ、他オブジェクトとの取り合いをチェックしなければならず、ひとつの建築物を作成するまでに膨大な時間がかかっていました。
一方でHypar AIを活用すれば、指示するだけでひとつの建築物を生成できます。建築物の大枠をつくってしまえば、あとは微調整を加えながら形状や配置などを変えるだけでモデルが完成します。
手動による手間を大幅に削減できることから、業務効率化や生産性向上に大きな効果が生まれるでしょう。
条件を与えれば複雑なオブジェクトを生成できる
AIの機能は、条件を与えるだけで複雑なオブジェクトの生成にも対応が可能です。参考として以下に、オブジェクト生成に対応できる指示文をまとめました。
- 幅20m、奥行き20m、高さ50mの12階建てビルを作成してください。1フロアには30㎡の部屋を8つ設けてください。
- 幅30m、奥行き15m、高さ10mの範囲に二階建て住宅をデザインしてください。南東の10㎡には池を設けるため、その範囲を避けた建物にしてください。
日本語版に対応しているのか否かについては、現在情報が公開されていません。ただし英語表記のプロンプト(指示文)には対応しているため、翻訳機能などを活用すれば、日本国内でも問題なく設計を進められるでしょう。
BIM設計業務を格段に効率化できる
当サービスを活用すれば、時間がかかりやすいBIM設計業務を大幅に効率化できると期待されています。
Revitを含め、BIMを活用した業務では、オブジェクトの配置などに膨大な時間がかかります。一方でHypar AIを活用すれば、設計の概略的な部分を省略化できるほか、複数の構造アイデアを手軽に生成できるのが魅力です。
なかでも比較検討のために複数の図面やモデルを作成するという際には、AIの機能が役立ちます。条件を変えながら複数のパターンを短時間で生成できることから、形状や配置の検討によるタイムロスにお悩みの方におすすめです。
Hypar AIで今後のBIM業務が変わる理由
Hypar AIを活用すれば、モデル作成までに時間がかかっていたBIM業務を効率化しやすくなると言われています。参考として、BIM業務で起きる変化を2つ整理しました。
手作業によるモデリングを必要最小限に抑えられる
当サービスを活用すれば、手作業によるBIMモデルの作成工程を必要最小限に抑えられます。
例えば、Autodesk社のRevitを利用する際には、コマンドをひとつずつ起動しながらオブジェクトを組み合わせていく必要がありました。また、2D画面と3D画面を切り替えながら形状を何度も確認をするなど、特に確認という部分に手間がかかります。
一方でAIの機能が搭載された当サービスを活用すれば、画面を切り替えることなく建築物を生成できます。生成した後にデザインや配置を検討するという流れで作業を進められるため、作成しながら何度もデザインを確認するという手間を避けられるのが魅力です。
また、Hypar AIで生成したモデルは、自動でレイヤーが割り振られます。自身がチェックしたいレイヤーだけを表示できることから、AIによる生成でありながら細かな部分まで構造の確認が可能です。
周辺エリアを含めた景観検討が楽になる
Hypar AIの地図のBIM化機能を活用すれば、設計業務に合わせて景観検討を効率化できます。
例えば「周囲の日照状況から見て、設計した建築物のベランダはどの方角に設置すべきか」などを検討しやすくなるのが魅力です。また、発注者へ建物のデザインだけではなく周辺の景観イメージを共有できます。
敷地の入り口から見たら、建物がどのように見えるのか、周辺の状況と照らし合わせて圧迫感がないかといった情報を伝えやすくなるので、ぜひHypar AIの生成機能を活用してみてください。
おわりに
Hypar AIは、今まで手動で対応していたBIMモデルの作成を自動化できる便利なサービスです。しかし、開発段階でありリリースまでにはもう少し時間がかかると言われています。 もし人工知能の機能が搭載された際にすばやく機能を活用したいなら、AutodeskのRevitにアドインを追加しておくのがおすすめです。建築設計の手間を大幅に削減できるため、ぜひ今後の動向を追ってみてください。