施工業務を効率化できる「Fileldwire」というアプリに興味をお持ちの方も多いでしょう。しかし、具体的な機能や料金のことがわからず、導入に迷っている方もいるはずです。
このコラムでは、Fileldwireの概要やほかの施工管理アプリとの違い、役立つ機能について解説します。企業活用事例も掲載しているので、施工業務を効率化する参考にしてください。
Fileldwireとは
Fileldwire(フィールドワイヤー)とは、米国テキサス州でテック事業を展開している「Hilti North America」が提供している施工管理アプリです。主に次の目的で利用することにより、施工業務を効率化できます。
- 施工管理
- 受発注者間のファイル共有
- BIM業務
近年、施工業務でニーズが高まっているBIM業務に活用できるのはもちろん、施工管理に欠かせないタスクマネジメントやデータ共有をまとめて実施できるアプリです。また世界で200万件以上の施工プロジェクトに利用されている[1] ことから、使いやすさと実績に優れるアプリだと言えます。
従来の施工管理アプリとの違い
Fileldwireならではの魅力として挙げられるのが、豊富な利用ユーザーに対応している点です。例えば、以下に示すユーザー向けの機能が備わっています。
- ゼネコン
- 専門業者(施工業者)
- 依頼者(土地所有者)
- 建築家・デザイナー
ゼネコンの場合は、施工管理機能が役立つほか、ファイル共有はすべての業種間をつなぐ便利なツールとなります。また、依頼者にもすばやく進捗状況を共有できるのが魅力です。BIM業務に関わる建築家なども利用しやすいアプリであることから、チームで動く業務や、協力業者・下請け業者との連携が必要な会社に役立つアプリだと言えます。
Fileldwireの料金体系
Fileldwireは、チームの規模や求める機能に合わせて、次のような料金プランが用意されています。
基本プラン | プロプラン | ビジネスプラン | ビジネスプラスプラン | |
料金 | 0ドル/月 | 39ドル/月 | 59ドル/月 | 79ドル/月 |
プロジェクト数 | 3 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
主な機能 | ファイル共有 計画閲覧 | ファイル共有 計画閲覧 資料作成 サポート | ファイル共有 計画閲覧 資料作成 カスタム機能 BIM閲覧 サポート | ファイル共有 計画閲覧 資料作成 カスタム機能 BIM閲覧 提出管理 サポート |
例えば、メインで業務を担当する企業が豊富な機能を利用できるビジネスプランなどを導入し、ファイル共有が必要な下請け業者などが無料で導入できる基本プランを利用するといった使い方が可能です。
また、上記のプランだけでなく、カスタマイズやトレーニングなどを選択できる「カスタム契約プラン」も提供されています。上記の項目よりも豊富な機能を導入したいなら、公式サイトからHilti North Americaに問い合わせをしてみてください。
Fileldwireの主な機能
Fileldwireのなかでも頻繁に利用する機能を3つ整理しました。自社にとって必要な機能があるかチェックしてみてください。
タスクマネジメント機能
タスクマネジメント機能は、施工業務ごとにプロジェクトを作成し、そのなかで次のような作業・管理ができる機能です。
- 施工工程表の作成
- 進捗状況のチェック
- 進捗レポートの作製
- 未解決問題の抽出
プロジェクトでは、色分けして表示できるパンチリスト(付箋リスト)を用意でき、優先順位ごとに付箋の色を分けて管理できます。ホワイトボードに貼り付けたタスクごとに会話機能が用意されているため、アプリ上で意思疎通を完了できるのが魅力です。
ファイル共有機能
ファイル共有機能は、次のような業務に関わるデータをクラウド上で共有できる便利な機能です。
- 業務資料
- 現場写真
- タスクレポート
- 図面(BIM図面も含む)
共有したデータは、複数人で一緒にアクセスできることはもちろん、コメントなどを掲載しながら協議に利用することも可能です。また、Fileldwire上でCADのファイル拡張子、BIMのファイル拡張子を開けるため、わざわざCADソフトなどを別に導入する必要がありません。
屋外での作業が必要となる施工現場で気軽にデータにアクセスできるので「オフラインで業務に対応することに限界がある」「データ共有のためにパソコンまで戻らないといけない」「個別にメールをしてデータを共有している」という
BIMデータ閲覧機能
BIMデータ閲覧機能は、設計時に用意したBIMモデル(3次元モデル)を閲覧できる機能です。閲覧機能が主ですが、次のような情報をアプリ上でチェックできます。
- 構造物の形状(360°)
- 構造物の属性情報
- 寸法計測
- 景観・外観
視点位置をスライド・回転させることで、自由な位置からBIMモデルを閲覧できるのはもちろん、ウォーク機能として、地面の高さから歩いている視点でモデルを閲覧することが可能です。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットといった豊富なデバイスで閲覧が可能であることから、事務所に戻ることなく気軽にBIMモデルを確認できます。
Fileldwireを導入するメリット
Fileldwireを施工業務のために導入するメリットは、次の通りです。
- 施工業務を一元管理できる
- 作業中の荷物を削減できる
- わざわざ事務所まで戻る必要がなくなる
- ペーパーレス化を実現できる
今までの施工業務では、事前に事務所で資料や図面などを紙に打ち出して現場へ出かけることがほとんどでした。しかし、現場に到着した後に不足資料があったことに気づいたり、資料の不備・修正が必要になったりした場合には、また事務所まで戻るという手間がかかってしまいます。
対して、施工管理アプリを導入すれば、スマートフォンやタブレットなどに業務に関わる情報をすべて集約化できます。現場で持ち歩く紙の書類を減らせることはもちろん、アプリを起動するだけで必要な情報にアクセスできるのが魅力です。
また不足資料が合ってもクラウドを通じて共有できるため、移動や修正の手間を必要最小限に抑えられます。
Fileldwireを導入するデメリット
データ共有機能などを活用して施工業務を効率化できるFileldwireですが、次のようなデメリットがあることに注意しなければなりません。
- 契約にランニングコストがかかる
- 現場用のデバイスを導入しなければならない
- ツール操作のノウハウが必要になる
- 協力業者・下請け業者との連携に時間がかかる
まずFileldwireの機能を豊富に利用するためには、有料版の導入が欠かせません。毎月の支払いが発生することから、うまく活用できなければ費用対効果を生み出せなくなるでしょう。アプリを導入して現場で持ち歩くデバイスの購入も必要ですので、事前に自社の効率化に役立つアプリなのか、費用対効果を検討しておく必要があります。
また、当アプリは便利な機能が備わっていますが、利用者に操作のノウハウがなければうまく活用できません。社内チームの利用はもちろん、協力業者・下請け業者との連携に時間がかかるため、事前に研修会・勉強会を実施するなど、すぐに現場で活用できる体制を整えておく必要があります。
Fileldwireの企業活用事例
実際にFileldwireがどのような現場で活用されているのかイメージしていただくために、企業活用事例を3つ紹介します。
クラーク建設グループ&ワシントン州立大学
アメリカのクラーク建築グループは、ワシントン州立大学と連携し、Fileldwireを用いた施工管理を実施しました。
対象となる建物は、デジタル教育方法論について学ぶ4階建ての建物であり、8万3,000平方ftもの範囲を対象として工事を実施します。設けられている施工期間内に作業を終わらせるため、Fileldwireでタスク管理を実施。ToDoリストをチェックしつつ、課題を解決しながらトラブルなく建設を完了しています。
スエズコンサルティング
スエズコンサルティングは、フランスで環境事業・都市開発事業を展開している設計集団であり、マルセイユの都市再生プロジェクトの構築のためにFileldwireを活用しました。
発注者とのデータ共有はもちろん、下請け業者との効率的な連携を目的としてFileldwireを導入しており、限られた予算で効率的な都市計画を実現するために、付箋リストを用いながら都市を課題抽出、そして解決策の検討を実施しました。
また、検討された情報は同アプリ内のレポート作成機能を使って出力されています。Fileldwireでデータを一元管理することにより、情報履歴などをすばやくチェックできたことにより、プロジェクトを成功させています。
モーガード
カナダのオンタリオ州に本社を置くモーガードは、不動産事業における複数の資産検査業務を効率よく進行するツールとして、Fileldwireを導入しました。
無制限にプロジェクトを作成できる有料プランを利用することで、プロジェクトごとに効率よくタスク管理を実施できます。またファイル共有機能で、設計図の代わりとなるプロパティマップを共有し、地図をもとにした詳細メモの共有など、業務管理目的でアプリを活用。
多くの家屋をチェックして回る資産検査の情報や資料をアプリで一元管理することから、効率よく物件の建て替え検討などを提案できています。
おわりに
Fileldwireは、施工業務のデータ管理・情報共有を効率化できる便利なアプリであり、施工者はもちろん、協力業者・下請け業者、さらには発注者とすばやく情報共有ができる便利なアプリです。また、BIMデータの閲覧など、業務のペーパーレス化に役立つ機能も備わっています。
アナログな施工管理に負担を感じているとお悩みなら、ぜひFileldwireの導入を検討してみてください。