土木・建設業界でよく耳にする「i-Construction」に興味をお持ちではないでしょうか。しかし、具体的な概要や目的、動き方が分からずお困りの方もいるはずです。
そこでこの記事では、i-Constructionとは何なのかについて詳しく解説します。i-Constructionで掲げられている3つの柱、活用事例についても解説しているので、新たな考え方や新技術を取り入れる参考にしてみてください。
i-Constructionとは
土木・建設現場の作業すべてにICT技術を取り入れて、作業効率や生産性向上を目指す取り組みのことです。2016年(平成28年)から推進されており、人材・技術・工期といったさまざまな問題を解決するために、多くの現場で導入がスタートしています。
【ICTとは?】
ICTとは、通信技術を活用したコミュニケーションのことです。インターネットの技術を活用することによって人やモノをつなぎ、機械の遠隔操作や自動化、連携などを実現します。
参考として、現在導入されている技術を以下に整理しました。
- UAV(ドローン)
- ICT建機(ブルドーザ・バックホウ等)
- AR・VR・MR・XR
- 3次元データの活用
重機を自動で動かすことはもちろん、ドローンを使って人が踏み込めない場所の測量等を実施できます。さらに、AR・VR・MR・XRの技術を使うことにより、作成した設計データを現場に反映できるなど、危険予知、工程管理といった分野でも活躍している状況です。
i-Constructionの目的
i-Constructionの目的は、土木・建設現場の生産性向上を図ることです。
土木・建設現場の工事は、完成するまでに数ヶ月〜数年もの期間がかかります。また、工事作業員・職人の確保や綿密な工程管理が必要になるなど、莫大な時間とコストがかかるのがかかるのが当たり前でした。
ただし、近年頻発している豪雨・地震といった災害に立ち向かうためには、より効率的に国土強靭化を図る必要があるのも事実です。これら目的を達成するために、現代で発展しているインターネットの技術を駆使して、自動化や効率化といった観点から生産性向上が目指されています。
i-Constructionがスタートした理由・背景
i-Construcitonが始まったことには、日本国内における2つの問題(背景)が関係しています。なぜ、i-Constructionの考えを導入して、生産性向上を目指すべきなのか参考にしてみてください。
①高齢化・人手不足の解決
現在の日本の土木・建設業界は、重度な高齢化・人手不足に悩まされています。
出典:国土交通省「年齢階層別の建設技能者数」
現場で活躍できる若い人材が不足しており、2024年には団塊世代の後期高齢者化によって、さらなる人手不足に悩まされると予想されています。つまり、減り続ける人材問題に歯止めを打つため、i-Constructionという取り組みがスタートしたのです。
②建設業界の生産性の低さを改善
土木・建設業界でよく問題に挙がるのが、残業時間の増加です。
従業員の超過残業に悩まされている企業も多く、過労死といった問題がおおやけになってきました。残業時間の増加に影響しているのが、生産性の低さです。今よりも効率的かつ高品質な業務を実施するひとつの対策として、i-Constructionを掲げ、新技術の導入がスタートしました。
i-Constructionで必須となるBIM/CIMとは?
i-Constructionの考えを取り入れるうえで重要になるのが「BIM/CIM」という仕組みです。
BIM/CIMの特徴を詳しくまとめました。仕組み・言葉の違いも解説しているので、BIM/CIMの基礎知識としてチェックしてみてください。
BIMの特徴
BIMとは、コンピューター上に現実と同じ座標をもつ地形空間を作成して、3Dモデル(BIM
モデル)を作成する仕組みのことです。正式名称をBuilding Information Modelingと言い、主にBuilding(建物)を対象とする建築業界で利用されているi-Constructionの仕組みとなります。
作成した3Dモデルから自動で数量(面積・体積等)を算出できるのはもちろん、属性情報を与えることにより3Dモデルを使ったリアルな構造計算・シミュレーションを実施できるようになりました。
また、点群データやテキストデータ、オブジェクトデータなど、豊富なデータを複合して、施工ステップの作成や、工程管理表の作成にも活用されています。
CIMの特徴
CIMとは、BIMと同じくコンピューター上に現実と同じ座標をもつ地形空間を作成して、3Dモデル(CIMモデル)を作成する仕組みのことです。基本的にBIMの仕組みと違いはありません。正式名称をConstruction Information Modelingと言い、おもにConstruction(工事)を対象とする土木業界で利用されているi-Constructionの仕組みです。
ただし以下の理由から、BIMとCIMの名称を統合しようという流れが生まれています。
- 海外ではBIMとCIMをまとめてBIMと呼んでいる
- 2つの仕組みに違いがない
現在の日本では「BIM/CIM」という名称で呼ばれていますが、いずれはBIMという言葉だけに統合される予定です。
i-Constructionで掲げられている3つの柱
i-Constructionでは、次の3つの柱が掲げられています。
- ICT技術の全面的な活用
- 規格の標準化
- 施工時期の標準化
紹介した内容をもとに、i-Constructionを導入した後どのような対策を実施すべきか、検討してみてください。
①ICT技術の全面的な活用
まず掲げられているのがICT技術を工事全体で活用するという柱です。
これまでの建設工事では、調査・測量、設計、施工、維持管理がバラバラに実施されており、それぞれの業務で別々に図面や数量がまとめられていました。
対して、i-Constructionの考えを取り入れれば、BIM/CIMを駆使して、調査・測量〜維持管理をすべてワンストップで実施できます。図面作成の手間を削減できることはもちろん、過年度データを活用しやすい体制が整うため、生産性向上の実現が可能です。
②規格の標準化
i-Constructionでは、工事効率化のために、コンクリート製造における規格の標準化が目標に掲げられています。
例えば、コンクリート構造物のプレキャスト化(工場製造)のほか、同じ材料を使って建設できるように、工事材料の統一化も進んでいる状況です。
出典:全国コンクリート製品協会「建設現場施工時の生産性向上の取組みプレキャスト化・プレハブ化の実例と課題」
従来は、現場によって異なる材料のコンクリートを利用したり、場所打ち(現場製造)を用いた手間のかかる工事を実施していました。対して、規格標準化でプレキャスト製品の利用が増えていけば、自然とコンクリート製造のコスト削減・生産性向上を目指せます。
③施工時期の標準化
i-Constructionでは、月・年単位で時間の時間のかかる施工時期を標準化する目標が掲げられています。
出典:国土交通省「施工時期の平準化」
現在の土木・建設業界では、12〜翌3月までに工期が集中しているほか、雨季の影響で施工時期にばらつきが生じてしまうのが一般的でした。土木・建設業界の残業時間を増加させてしまう要因となっていることから、1〜12月に工期をばらつかせて、施工時期の安定化を図る狙いがあります。
i-Constructionの活用事例
i-Constructionとして実施できることがわからないと悩む方向けに、これまでに実施されたi-Constructionの活用事例を紹介します。
①ICT土工|北海道帯広市
出典:国土交通省「ICT土工事例集【工事編】」
北海道帯広市の事例として、河川掘削工事の中でICT土工が組み込まれました。
UAVを使った測量データをもとに、自動運転技術が組み込まれたバックホウ・ブルドーザーを操作して切土掘削を実施します。工事作業中は遠隔モニターで工事の状況を確認しつつ施工が正しく実施されているのかを確認します。
ICT土工を取り入れた結果、工期・人工ともに20%近い手間を削減できました。
②レーザー測量|秋田県由利本荘市
出典:国土交通省「ICT土工事例集【工事編】」
秋田県由利本荘市の事例として、地上レーザー測量であるLS(レーザースキャナー)を使って現況地形の把握、また3Dモデルに施工完成モデルを反映してICT重機の自動掘削を実施しました。
ICTバックホウを使って工事を自動化したのはもちろん、取得した3Dデータを用いて、工事状況の確認もリアルタイムで実施しました。
出典:国土交通省「ICT土工事例集【工事編】」
結果として、i-Construction導入前と比べて、測量においては5割、工事においては3割近い手間の削減を実現できています。
i-ConstructionのXRの開発はONETECHにご相談ください
i-Constructionは、土木・建設業界に必要不可欠な取り組みです。しかし、ICT建機やUAV(ドローン)など、導入コストが莫大にかかるのも事実です。
そこで、費用を抑えつつ実施できるi-Constructionの対策をお求めなら、まずはXRの開発からスタートしてみるのはいかがでしょうか。XRの技術を活用すれば、3Dモデルの現場投影や3Dプレゼンテーションなどさまざまなシーンで役立ちます。
ONETECHでは、i-Construction用としてXRの開発サービスを提供しています。興味をお持ちなら、ぜひ開発予算や用途についてご相談ください。