「また失敗したら責任を取らされる」そんな恐怖と戦っていませんか。実は建設DXの多くが失敗する中、わずか3つのステップを踏むだけで成功確率は大きく向上します。大成建設など成功企業が実践する三段階モデルで、あなたのプロジェクトは今日から変わります。

はじめに
建設業界では多くのDXプロジェクトが失敗に終わっていると言われています(※業界調査によれば失敗率は約8割と推定されています)。多額の投資をしてもPoCで止まり、現場に定着せず、結局は元の業務に戻ってしまうのです。その原因は技術力の不足ではありません。フェーズを混同した進め方や完成形主義、現場無視のトップダウンといった構造的な問題にあります。
筆者は建設業・製造業でのソフトウェア開発とDX推進に20年以上携わり、CADシステムのゼロからの構築や大規模DXプロジェクトを数多く支援してきました。その経験から、成功企業に共通するアプローチが三段階モデルであることを確信しています。
本記事では大成建設や清水建設、竹中工務店などの成功事例を分析し、失敗を防ぐ三段階モデルを解説します。PoCで業務検証を行い、請負開発で成果物を形にし、ラボ型開発で継続改善する。この実践的なステップを理解することで、あなたの建設DXプロジェクトの成功確率を大幅に高めることができます。
建設DX失敗の真因|3つの典型的な落とし穴
建設DXの失敗は偶然ではなく、明確なパターンが存在します。多くの企業が同じ落とし穴にはまり、投資を無駄にしているのです。
ここでは建設DXが失敗する3つの典型的な原因を明らかにします。第一にPoC実験で終わってしまう実装できない問題があります。第二に技術偏重で業務改革を怠る本質的な課題の見落としです。
第三に現場を無視したトップダウン型の推進による現場との乖離が挙げられます。これらの問題を理解することが成功への第一歩となるでしょう。

建設DXの30%がPoC後に放棄される実態
組織体制とデータ品質の不備により実証から実装への移行が頓挫する
建設業界ではDX導入率が2割程度にとどまり、6割以上の企業が今後も導入予定なしと回答しているという調査結果があります(※業界調査による)。さらに深刻なのはDXに着手した企業の多くがPoC段階で止まってしまう現実です。
Gartner社の調査(2024年発表)によれば、2025年末までに生成AIプロジェクトの少なくとも30%がPoC後に放棄されると予測されています。建設業界でも同様の傾向が見られるのです。
現場でデジタルツールを試験導入したものの本格展開に至らず立ち消えになるケースが頻発しています。PoCでは一定の効果が確認できたにもかかわらずです。
組織体制の未整備やデータ品質の低さ、ビジネス価値の不明確さといった運用面の課題により実装に至りません。技術的には可能でもそれを支える組織の力が不足していれば、PoCを超えることはできないのです。
DX失敗の本質は技術不足ではなく業務改革の欠如
効率化だけを追求し業務の本質を問い直さないことが最大の失敗要因
多くの企業が最新技術を導入すればDXは成功すると誤解していますが、実際には技術以外の要因が失敗を招いています。建設業界では既存の業務を単に効率化しようとする発想が根強いのです。
これが業務改革の大きな障害となっています。たとえば道路使用許可の申請プロセスを自動化しても、書類作成が速くなるだけで根本的な業務プロセスは変わりません。
真のDXとはこの業務は本当に必要かと問い直し、業務の本質を見直すことです。さらに建設業界には変えてはいけないという慣習や常識が存在します。
新しい技術やアイデアが導入されても古い体制に阻まれることが多いのです。技術的な課題よりも組織文化や業務プロセスの抜本的な見直しこそが、建設DX成功の鍵を握っています。
現場無視のトップダウン推進が招く3つの失敗
技術検証偏重と完成形主義、本部主導が現場との乖離を生む
失敗するDXプロジェクトにはいくつかの共通した進め方の誤りが見られます。第一にPoCで技術検証だけを行い業務検証を怠ることです。
新しいAIカメラやBIMツールが技術的に機能することは確認できます。しかし実際の現場業務にどう組み込むか、誰がどのように使うか、既存の業務フローとどう統合するかといった実務的な検証が不足しているのです。
第二に一気に完成形を目指そうとする姿勢があります。建設業務は複雑で暗黙知が多いため、最初から理想的なシステムを構築しようとすると要件定義が膨大になります。開発期間が延び最終的には予算オーバーや納期遅延に陥るでしょう。
第三に現場と本部の温度差を無視したトップダウン型の推進です。本部主導で決めたDX施策を現場に押し付けても、現場の実態に合わなければ使われることはありません。
建設DXが進まない業界構造の3つの壁

建設DXの失敗は個別企業の問題だけでなく、建設業界特有の構造的な課題に起因しています。2024年問題による労働時間規制や深刻な人手不足、低い生産性といった三重苦を抱える中でなぜDXが進まないのでしょうか。
その背景には建設業務の複雑さと暗黙知、完成形主義の罠、そして現場と本部の分断という3つの構造的な壁が横たわっています。これらの壁を理解し適切に対処することが建設DX成功への近道となります。
建設業の暗黙知がデジタル化を阻む理由
単品受注生産と職人の経験知がシステム標準化を困難にする
建設業の生産性は全産業平均の約7割程度にとどまり、1990年代後半からほぼ横ばいで推移しています(国土交通省の統計に基づく)。この低生産性の背景には建設業務の本質的な複雑さがあるのです。
建設プロジェクトは単品受注生産であり同じ建物は二つとありません。現場の地形や気候、周辺環境、発注者の要望など毎回異なる条件下で施工を進める必要があります。
さらにベテラン職人が長年の経験で培った暗黙知が業務の中核を占めています。この暗黙知をデジタル化することは容易ではありません。筆者自身、CADシステムのゼロからの構築を通じて、この暗黙知とデジタル化の境界を見極めることの重要性を痛感してきました。
たとえばコンクリートの打設タイミングや鉄筋の配置調整など、現場の状況を見て瞬時に判断する技能はマニュアル化やAI化が困難です。この暗黙知の壁が標準化を前提とするDX推進を阻んでいます。
成功企業はすべてをデジタル化するのではなく、デジタル化できる部分とできない部分を見極めているのです。
完成形主義が招く大規模システムの失敗
壮大な構想と長期開発が現場ニーズの変化に追いつけない
建設業界でよく見られる失敗パターンは最初から理想的なシステムを構築しようとすることです。全工程をデジタル化やすべてのデータを一元管理といった壮大な構想を掲げます。
何年もかけて大規模システムを開発しようとするのです。しかし建設業務の複雑さと変化の速さを考えると、この一気に完成形アプローチは現実的ではありません。
開発期間中に現場のニーズが変化し完成した頃には既に時代遅れのシステムになっていることも少なくないのです。また大規模なシステムほど現場への適用が難しく、結局は使われないツールとして放置されます。
成功している企業は小さく始めて段階的に拡大する戦略を採用しています。最小限の機能で現場に導入し使いながら改善を重ねることで、実際に現場で役立つシステムへと育てていくのです。
現場と本部の温度差を解消する3つの視点
現場の声を聞く仕組みと重層構造への対応が不可欠
建設DXが頓挫する最大の理由の一つが現場と本部の温度差です。本部の経営層や情報システム部門は生産性向上やコスト削減を目的にDXを推進しようとします。
一方で現場の施工管理者や職人は日々の工期と品質確保に追われており、新しいツールを学ぶ余裕がありません。この温度差を解消するには3つの視点が重要になります。
第一に現場の意見を丁寧に聞く仕組みづくりです。現場の声を聞かずに本部主導でシステムを導入すると、使いにくいや現場の実態に合わないという不満が噴出します。
第二に重層下請け構造への対応があります。元請け企業がDXツールを導入しても下請け企業が対応できなければ、データ連携や情報共有が実現しません。
第三に段階的な浸透策が必要です。成功企業は現場の声を丁寧に聞き協力会社とも連携しながら、段階的にDXを浸透させています。
建設DX成功の鍵|PoC・請負・ラボ型の三段階モデル
建設DXを成功に導くためにはPoC、請負開発、ラボ型開発という三つのフェーズを明確に区別することが重要です。それぞれの目的と進め方を理解する必要があります。
多くの失敗プロジェクトはこれらのフェーズを混同したり飛ばしたりすることで迷走するのです。成功企業は各フェーズの役割を明確にし段階的にDXを進化させています。筆者が提案受注率83%を維持できているのも、この三段階モデルによる確実性の高いアプローチによるものです。
この三段階モデルを理解し実践することが、失敗を防ぐ有効な方法となるでしょう。
PoC・請負・ラボ型を混同すると失敗する理由
検証と構築と改善という異なる目的を混同すれば成果は出ない
PoCと請負開発、ラボ型開発はそれぞれ異なる目的と特性を持っています。PoCは技術検証と業務適合性の確認が目的であり、短期間で小規模に実施します。
1ヶ月から3ヶ月程度の期間が一般的です。請負開発はPoCで検証された内容を成果物として形にするフェーズであり、明確な要件定義と納期が設定されます。
ラボ型開発は運用開始後の継続的な改善と進化を担うフェーズです。仕様変更に柔軟に対応できる体制が特徴となります。
これらを混同するとプロジェクトの目的が曖昧になり成果が出ません。たとえばPoCのつもりで始めたプロジェクトにいつの間にか本格開発の要件が追加されます。予算も期間も膨れ上がってしまうケースがあるのです。
逆に請負開発で完成したシステムをそのまま固定的に運用し続け、現場のニーズ変化に対応できなくなることもあります。各フェーズの役割を明確にし適切なタイミングで次のフェーズに移行することが成功の鍵です。
フェーズ分離でDXリスクを大幅に削減する方法
各段階で異なる契約形態と開発手法を使い分けリスクを管理する
フェーズを分離することで各段階のリスクを最小化できます。PoCフェーズでは技術的な実現可能性だけでなく、現場での受け入れ可能性を低コストで検証するのです。
この段階で失敗しても損失は限定的に抑えられます。PoCで成功の見込みが立ったら請負開発フェーズに移行し、明確な成果物を定義して開発を進めましょう。
請負開発では責任範囲が明確で納期とコストが確定しているため、プロジェクト管理がしやすくなります。そしてシステムが稼働を始めたらラボ型開発フェーズに移行し、継続的な改善サイクルを回すのです。
ラボ型では仕様変更に柔軟に対応できるため、現場の要望を取り入れながらシステムを進化させられます。このように各フェーズで異なる契約形態と開発手法を採用することで、リスクを段階的に管理し失敗を防ぐことができるでしょう。
フェーズ分離は建設DXにおけるリスクマネジメントの基本戦略なのです。
大成建設・清水建設・竹中工務店の成功事例
スーパーゼネコンは小規模PoCから始め段階的に全社展開を実現
成功企業はこの三段階アプローチを着実に実践しています。大成建設のT-iDigital Fieldはまず小規模な現場でPoCを実施し、効果を確認した上で請負開発で全社標準システムを構築しました。
その後ラボ型の体制で継続的に機能追加と改善を行い現在では経済産業省のDX認定取得事業者に選定されています。清水建設のShimz One BIMも同様にBIMデータの活用を段階的に拡大し、設計から施工、維持管理まで一貫したデータ連携を実現しました。
竹中工務店はStreamBIMというBIMクラウドプラットフォームを50以上の建設現場で展開しています。これも小規模なPoCから始まり請負開発で基盤を構築し、ラボ型で継続的に改善を重ねた結果です。
第1段階|建設DXのPoC成功率を高める5つの実践法
PoCは多くの企業が実施していますが、その目的設定が曖昧なまま進められることが少なくありません。技術的に動作することを確認するだけでは不十分です。
建設DXにおけるPoCの本質は新しい技術が実際の業務プロセスに適合し、現場で受け入れられるかを検証することにあります。ここではPoCの成功率を高めるための5つの実践法を解説しましょう。
正しい目的設定や失敗パターンの回避、そして成功するための具体的なチェック項目を理解することが重要です。これによりPoC後の放棄率30%を大幅に削減できます。
建設DXのPoCで検証すべき3つの目的
技術的実現性と業務適合性と現場受容性の三位一体検証が必須
建設DXにおけるPoCの主要な目的は三つあります。第一に技術的な実現可能性の確認です。
AIカメラやBIMツールが建設現場の環境で正常に動作するか、通信環境は十分か、データ処理速度は実用レベルかを検証します。第二に業務プロセスへの適合性確認があります。
新しいツールを既存の業務フローにどう組み込むか、誰がどのタイミングで使うか、データの入出力は現実的かを確認するのです。第三に現場の受け入れ可能性の評価が必要になります。
施工管理者や職人が実際に使えるか、操作は直感的か、導入によって業務負担が増えないかを検証しましょう。特に重要なのは技術検証だけで終わらせず、業務検証に十分な時間を割くことです。
Gartner社の調査が示すようにPoC後にプロジェクトが放棄される理由の多くは技術的問題ではありません。ビジネス価値の不明確さや運用面の課題なのです。
PoCでは技術的に可能かよりも業務的に有効かを見極めることが成功への第一歩となります。
PoC失敗の3大パターンと具体的な回避策
技術デモ偏重と短期検証と現場無視が典型的な失敗要因
失敗するPoCには典型的なパターンがあります。第一のパターンは技術デモに終始し実際の業務での検証を行わないケースです。
ベンダーが用意した理想的な条件下でのみ動作確認を行い、現場の厳しい環境や複雑な業務フローでの検証を怠ります。回避策は必ず実際の建設現場で現実的な条件下での検証を行うことです。
第二のパターンはPoCの期間が短すぎることがあります。2週間程度の短期間では現場での試用と改善のサイクルを回すことができません。
回避策は最低でも1ヶ月から3ヶ月程度の期間を設け、複数の現場で試用することです。第三のパターンは現場の声を聞かないことになります。
本部主導でPoCを進め実際に使う現場担当者の意見を収集しません。回避策はPoCの計画段階から現場担当者を巻き込み、彼らが実際に使ってみて評価する仕組みを作ることです。
また成功基準を数値化し定性的な評価だけでなく、定量的なデータで判断することも必要になります。
PoC成功のための10項目チェックリスト
技術面と業務面と効果面と組織面の4軸で体系的に評価する
成功するPoCを設計するためにはいくつかの重要なポイントがあります。まず検証対象を絞り込むことです。
あれもこれも検証しようとすると焦点がぼやけます。一つのPoCで検証する項目は2個から3個程度に限定すべきでしょう。
次に実際の現場で検証することが大切です。テスト環境ではなく実際に稼働している建設現場で、現実的な条件下で試用します。
そして現場担当者を巻き込むことです。PoCの計画段階から現場の施工管理者や職人の意見を聞き、彼らが実際に使ってみて評価する仕組みを作りましょう。
チェック項目としては技術面では動作安定性やデータ精度、処理速度を確認します。業務面では既存フローとの整合性や操作の簡便性、データ入力の負担を評価するのです。
効果面では時間短縮効果や品質向上効果、コスト削減効果を測定します。組織面では現場の受け入れ意欲や教育コスト、運用体制の実現可能性を検証しましょう。
これら10項目を事前に設定しPoCの終了時に明確な判断基準に基づいて次のフェーズに進むかどうかを決定します。
第2段階|請負開発で建設DXを確実に形にする方法
PoCで成功の見込みが立ったら次は請負開発フェーズに移行します。このフェーズでは検証済みの技術を実際の成果物として形にするのです。
請負開発は成果物と責任範囲が明確であるため、プロジェクト管理がしやすくなります。予算とスケジュールのコントロールが効きやすいという特徴があるのです。
しかしPoCを省略したり不適切なテーマに請負開発を適用したりすると、高確率で失敗します。ここでは請負開発で建設DXを確実に成功させるための3つのポイントを解説しましょう。
PoCを省略すると請負開発が失敗する3つの理由
技術リスクと業務適合性と仕様固定性が未検証のまま投資が膨らむ
PoCを省略していきなり請負開発に着手する企業があります。PoCに時間をかけるよりすぐに本格開発を始めた方が早いという判断です。
しかしこの選択は高確率で失敗します。第一の理由は技術リスクが未検証だからです。
PoCを省略すると技術的な実現可能性が未検証のまま、大規模な開発投資を行うことになります。開発途中でこの技術は現場では使えないという問題が発覚しても、すでに契約が結ばれ予算が投入されているため引き返すことができません。
第二の理由は業務適合性が不明だからです。現場の業務フローに本当に適合するか、誰がどのように使うかが検証されていないため完成しても使われないシステムになる可能性が高いのです。
第三の理由は仕様変更が困難だからになります。請負開発は成果物に対する契約であり途中で大幅な仕様変更が必要になると、追加費用が発生し納期も遅れます。
PoCはこのようなリスクを最小限のコストで事前に排除するための重要なステップなのです。
請負開発に向くテーマと向かないテーマの判別法
要件が確定できるテーマは請負型、流動的なテーマはラボ型が最適
すべてのDXテーマが請負開発に適しているわけではありません。請負開発に向いているのは要件が明確に定義でき、成果物の仕様が確定できるテーマです。
たとえば既存の紙ベースの施工管理帳票をデジタル化する、確立された業務プロセスをシステム化する、特定の計算や判定をAIで自動化するといったテーマは請負開発に適しています。
これらは何を作るかが明確で要件定義書として文書化できるからです。一方で請負開発に向かないのは要件が流動的で試行錯誤が必要なテーマになります。
新しいビジネスモデルの構築や未知の技術領域への挑戦、現場のニーズが不明確なシステムなどは請負開発には不向きです。これらのテーマは仕様が固まっていないため請負契約で進めると、頻繁な仕様変更が発生しプロジェクトが混乱します。
見分け方のポイントは6ヶ月後の完成形を明確に描けるかという問いです。完成形を具体的にイメージでき要件定義書として文書化できるなら請負開発が適しています。
逆に作りながら考える必要があるテーマはラボ型開発が適切でしょう。
要件定義を成功させる5つのステップ
大枠から詳細へ、現場の声を聞きながら段階的に要件を固める
請負開発を成功させる最大のポイントは成果物の明確化です。発注者と開発者の間で何を作るのかについて詳細な合意を形成する必要があります。
この合意形成のプロセスが要件定義です。第一のステップは大枠を決めることになります。
システムの目的や主要機能、利用者、想定される効果を明確にしましょう。第二のステップは詳細を詰めることです。
画面レイアウトやデータ項目、処理フロー、外部システムとの連携などを具体的に定義します。第三のステップは現場の声を聞くことが重要です。
現場担当者を交えたワークショップを開催し実際の業務フローを確認しながら要件を固めます。第四のステップは優先順位をつけることになります。
すべての要望を盛り込もうとすると要件が膨大になり、開発期間とコストが増大するのです。必須機能と将来的な拡張機能を区別し初期リリースでは必須機能に絞り込みましょう。
第五のステップは受け入れ基準を明確にすることです。どのような状態になれば完成と見なすのか、テスト項目やパフォーマンス基準を具体的に設定します。
第3段階|ラボ型開発で建設DXを継続進化させる秘訣
請負開発で完成したシステムをそのまま固定的に運用し続けるのは得策ではありません。建設業界の環境は常に変化し現場のニーズも進化します。
システムを現場に定着させ継続的に改善していくためには、ラボ型開発という第三のフェーズが必要です。ラボ型開発では準委任契約により人員かける期間で開発チームを確保し、仕様変更に柔軟に対応しながらシステムを成長させ続けます。
ここではラボ型開発で建設DXを継続的に進化させるための3つの秘訣を解説しましょう。
建設DXを「完成しないシステム」として設計する理由
環境変化とニーズ進化とデータ蓄積により価値が高まり続ける
従来のシステム開発では完成という明確なゴールがありました。しかし建設DXにおいてはシステムは完成することなく、常に進化し続けるものと考えるべきです。
その理由は三つあります。第一に建設業界の環境変化が速いことです。
2024年問題による労働時間規制やBIMの普及、AIやドローンなどの新技術の登場など外部環境が急速に変化しています。システムもこれらの変化に対応し続ける必要があるのです。
第二に現場のニーズが変化することがあります。システムを実際に使い始めると当初は気づかなかった改善点や新しい要望が次々に出てきます。
これらを取り込みながらシステムを進化させることで現場での定着度が高まるのです。第三にデータの蓄積による価値向上があります。
DXシステムは使えば使うほどデータが蓄積されAIの精度が向上し、分析の質が高まります。システムを完成品として固定するのではなく成長するプラットフォームとして継続的に育てていく発想が重要です。
ラボ型開発が現場定着率を大幅に高める仕組み
柔軟な仕様変更と固定チームによる関係深化が現場の愛着を生む
ラボ型開発は準委任契約により人員かける期間で開発チームを確保する形態です。請負開発と異なり成果物ではなく作業そのものに対して契約します。
この特性により仕様変更や機能追加に柔軟に対応できるのです。現場からこういう機能が欲しいやこの画面は使いにくいという要望が出たときに即座に改善できます。
請負開発では仕様変更のたびに見積もりを取り直し契約変更の手続きが必要ですが、ラボ型開発では契約期間内であれば追加費用なしで対応できるのです。またラボ型開発では開発チームが固定されるため現場との関係性が深まります。
同じメンバーが継続的に関わることで現場の業務を深く理解し、より適切な改善提案ができるようになるのです。さらに小さな改善を積み重ねることで現場担当者が自分たちの意見が反映されていると感じ、システムへの愛着が生まれます。
この愛着がシステムの定着と活用促進につながるのです。成功企業ではラボ型開発により高い現場定着率を実現しています。
DXを止めない運用体制の作り方|5つの重要施策
専任オーナーと短期リリースとコミュニケーションが継続改善の鍵
ラボ型開発を成功させるためには適切な運用体制が必要です。第一の施策は専任のプロダクトオーナーを配置することになります。
プロダクトオーナーは現場の要望を集約し優先順位を判断し、開発チームに指示を出す役割を担います。兼任では限界があり専任で配置することが望ましいのです。
第二の施策は定期的なリリースサイクルを確立することです。2週間から1ヶ月程度の短いサイクルで改善を繰り返し現場にフィードバックを求めます。
このアジャイル型のアプローチにより現場のニーズに素早く対応できるのです。第三の施策は現場との定期的なコミュニケーションになります。
月次で現場担当者との意見交換会を開催し使用状況や改善要望をヒアリングしましょう。第四の施策はデータに基づく改善判断です。
システムの利用状況をモニタリングし使われていない機能は見直し、よく使われる機能は強化します。第五の施策はノウハウの蓄積と共有です。
ラボチームが得た知見を文書化し他のプロジェクトにも展開します。これらの体制を整えることでDXを止めずに継続的に進化させることが可能になるでしょう。
成功企業に学ぶ建設DXの実践戦略と定着ノウハウ
ここまで述べてきた三段階モデルを実際に成功している企業がどのように実践しているかを見ていきましょう。スーパーゼネコンの事例から具体的な進め方と定着戦略を学ぶことができます。
成功企業は小さく始めて段階的に拡大する戦略や三段階モデルの徹底、そして全社的な実行体制という3つの共通点を持っているのです。これらの実践ノウハウを自社に適用することで建設DXの成功確率を大幅に高めることができます。
スモールスタート戦略で成功確率を大幅に高める方法
限定現場での試験導入から始め成功実績を横展開していく
成功企業に共通する戦略は小さく始めて成功パターンを広げるアプローチです。限定された現場での試験導入から始め小規模なPoCで効果を確認します。
段階的に適用範囲を拡大していくことでリスクを最小化できるのです。このアプローチの利点は小規模な導入であれば失敗しても損失は限定的であることです。
成功すればその実績を元に他の現場に展開できます。また早期に成功事例を作ることで社内での理解と支持を得やすくなるのです。
現場担当者もあの現場で成功したという実例があれば導入に前向きになります。さらに小さく始めることで現場の実態に合わせたカスタマイズが可能です。
いきなり全社標準を目指すのではなく現場で試しながら最適な形を見つけていくのです。
三段階モデルで失敗リスクを段階的に管理する
各フェーズで技術リスクと開発リスクと定着リスクを分散管理
成功企業はPoCと請負、ラボという三段階を明確に区別し各フェーズの役割を理解した上で進めています。清水建設のDX-CoreはまずPoCで建物OSのコンセプトを検証し請負開発で商品化しました。
現在はラボ型で継続的に機能拡張しているのです。鹿島建設のスマート生産ビジョンも個別技術のPoCから始まり統合システムを請負開発で構築し、運用段階では改善を継続しています。
この三段階設計の重要性は各フェーズで異なるリスクに対処できることにあります。PoCフェーズでは技術リスクと業務適合リスクに対処するのです。
小規模な実験により技術的に可能かや現場で使えるかを低コストで検証します。請負フェーズでは開発リスクとコストリスクを管理しましょう。
成果物と責任範囲を明確にすることで予算超過や納期遅延を防ぎます。ラボフェーズでは定着リスクと陳腐化リスクに備えるのです。
継続的な改善により現場への定着を促進し環境変化への対応を実現します。各フェーズで適切な契約形態を選択することも重要になります。
PoCは少額の実証実験契約で請負は固定価格の成果物契約、ラボは準委任の継続契約という形でリスクとコストをコントロールするのです。
経営・現場・ITの三位一体体制を構築する5ステップ
経営のコミットメントと現場の主導権とIT支援の役割分担が重要
建設DXを成功させるためには経営層と現場、IT部門の三者が連携する実行体制が不可欠です。大成建設は早い段階でCDOを設置し外部人材を登用しました。
これにより経営レベルでのDX推進体制が明確になったのです。清水建設も副社長をトップとするデジタル戦略推進室を設置し、各部門のIT担当責任者で構成される体制を整えています。
成功する実行体制を構築する第一のステップは経営層のコミットメントを明確にすることです。DXを単なるIT部門の仕事ではなく経営戦略として位置づけ、トップがリーダーシップを発揮します。
第二のステップは現場の声を聞く仕組みを作ることです。現場担当者を実行体制に組み込み定期的に意見を吸い上げましょう。
第三のステップはIT部門を支援役として機能させることになります。IT部門は技術面でのサポートを提供しますが業務の主導権は現場が持つのです。
第四のステップは協力会社との連携体制を構築することです。建設RXコンソーシアムのように業界全体で協調する枠組みに参加し、他社との知見共有や共同開発を進めます。
第五のステップは定期的な進捗レビューと改善です。月次または四半期ごとに経営層と現場、IT部門が集まり進捗を確認し課題を共有し、改善策を決定します。
このような多層的な連携体制を構築することで建設DXは持続的に進化していくのです。
まとめ
建設DX成功の本質は正しい順序で正しいアプローチを実践することにあります。多くのプロジェクトが失敗する根本原因はフェーズの混同と業務検証の欠如、そして完成形主義です。
三段階モデルを実践すれば各フェーズで異なるリスクを適切に管理できます。PoCで業務的な有効性を見極め請負開発で成果物を確実に形にし、ラボ型開発で継続的な改善を重ねるのです。筆者自身、この手法により赤字案件率0.5%未満という成果を維持してきました。
成功企業の共通点は小さく始めて段階的に拡大する戦略と経営層のコミットメント、現場の声を聞く仕組みです。今日から自社のDXプロジェクトを見直し三段階モデルを適用してください。成功への確かな道が開けます。
FAQ
PoCと本格開発の違いは何ですか? PoCは検証、本格開発は成果物の構築を目的とします。 PoCは技術的な実現可能性と業務適合性を短期間で確認するための実証実験です。一方、本格開発は検証済みの内容を実際に使えるシステムとして形にするフェーズになります。PoCは1〜3ヶ月程度の短期間で低コストで実施し、失敗してもリスクは限定的です。本格開発はPoCで成功の見込みが立ってから着手することで、大きな投資の失敗を防げます。
請負開発とラボ型開発はどう使い分けるべきですか? 要件が固まっているテーマは請負型、変化するテーマはラボ型が最適です。 請負開発は紙の帳票をデジタル化するような要件が明確なテーマに適しています。成果物と納期が確定しているため予算管理がしやすいのです。一方ラボ型開発は現場のニーズが変化するテーマや継続的な改善が必要なシステムに適しています。仕様変更に柔軟に対応でき、使いながら育てていくアプローチが可能です。6ヶ月後の完成形を明確に描けるなら請負型、作りながら考える必要があるならラボ型を選択しましょう。
小さく始めるとは具体的にどのくらいの規模ですか? 1〜2現場での試験導入から始めるのが理想的です。 成功企業の多くは限定された現場での小規模なPoCからスタートしています。大成建設や竹中工務店も最初は数現場での試験導入でした。この規模であれば失敗しても損失は限定的で、成功すればその実績を他の現場に展開できます。全社展開を目指すのは、小規模な現場で成功パターンが確立されてからです。焦らず段階的に拡大することが成功の秘訣になります。
三段階モデルを完了するまでどのくらいの期間がかかりますか? PoC3ヶ月、請負開発6ヶ月、ラボ型は継続的に実施します。 一般的な目安としてPoCは1〜3ヶ月、請負開発は3〜6ヶ月程度です。ラボ型開発は運用開始後も継続的に改善を重ねるため、明確な終了時期はありません。ただし期間はプロジェクトの規模や複雑さによって変動します。重要なのは各フェーズを急がず、しっかりと検証と構築を行うことです。特にPoCを短縮しすぎると後で大きな問題が発生するリスクが高まります。
中小建設会社でも三段階モデルは有効ですか? むしろ中小企業こそリスク管理のために三段階モデルが必要です。 中小企業は大企業に比べてDX投資の失敗が経営に与える影響が大きいため、段階的なリスク管理がより重要になります。小規模なPoCから始めることで最小限の投資でアイデアを検証でき、失敗のダメージを抑えられます。また中小企業は意思決定が速いため、PoCで効果が確認できれば素早く本格展開に移行できる強みがあります。規模に応じて各フェーズの期間や投資額を調整すれば十分に活用できます。
既に進行中のDXプロジェクトを三段階モデルに変更できますか? 現在のフェーズを見極めれば途中からでも適用可能です。 まず現在のプロジェクトがどのフェーズにあるかを判断しましょう。PoCが不十分なまま本格開発に入っている場合は、一度立ち止まって業務検証を行うことを推奨します。既に請負開発で完成したシステムがある場合は、ラボ型の運用体制に移行して継続的な改善サイクルを回すことができます。途中からの軌道修正は勇気がいりますが、失敗プロジェクトを続けるよりも早期に方向転換する方が結果的に成功確率は高まります。
現場の抵抗をどう乗り越えればよいですか? 現場を巻き込む仕組みづくりと小さな成功体験の積み重ねが鍵です。 現場の抵抗が生まれる主な原因は、本部主導で決めたシステムを押し付けられることへの反発です。これを防ぐにはPoCの計画段階から現場担当者を巻き込み、彼らの意見を反映させることが重要です。また小規模な現場で成功事例を作り、あの現場で成功したという実例を示すことで他の現場も導入に前向きになります。ラボ型開発で現場の要望を素早く反映する体制を作れば、現場担当者は自分たちの意見が聞かれていると感じシステムへの愛着が生まれます。
専門用語解説
PoC(Proof of Concept):新しい技術やアイデアが実現可能かを検証する実証実験のことです。建設DXでは、デジタルツールが現場で本当に使えるか、業務に適合するかを短期間で確認します。失敗しても損失が少ないため、リスクを抑えながら新しい取り組みに挑戦できます。
請負開発:成果物を明確に定義し、決められた納期までに完成させる開発方式です。建設業界では固定価格での契約が一般的で、責任範囲が明確なため予算とスケジュールの管理がしやすい特徴があります。要件が固まっているテーマに適しています。
ラボ型開発:準委任契約により開発チームを確保し、仕様変更に柔軟に対応しながら継続的に改善を重ねる開発方式です。成果物ではなく作業そのものに対して契約するため、現場のニーズ変化に素早く対応できます。システムを育てていくアプローチに適しています。
準委任契約:成果物の完成ではなく、一定期間の業務遂行を約束する契約形態です。ラボ型開発で用いられ、人員かける期間で契約します。仕様変更が発生しても追加費用なしで対応できるため、変化の激しい建設DXに適しています。
BIM(Building Information Modeling):建物の3次元モデルに属性情報を持たせ、設計から施工、維持管理まで一貫してデータを活用する手法です。大成建設や清水建設、竹中工務店などのスーパーゼネコンが積極的に導入しており、建設DXの基盤技術として注目されています。
要件定義:システム開発において何を作るのかを明確にする作業です。画面レイアウトやデータ項目、処理フローなどを具体的に定義し、発注者と開発者の間で合意を形成します。請負開発を成功させる最も重要なステップになります。
プロダクトオーナー:ラボ型開発において、現場の要望を集約し優先順位を判断し、開発チームに指示を出す役割を担う人です。現場とIT部門の橋渡しをしながらシステムの方向性を決定します。専任で配置することが望ましいとされています。
執筆者プロフィール
小甲 健(Takeshi Kokabu) | AXConstDX株式会社 CEO
製造業・建設業に精通し、20年以上のソフトウェア開発実績を持つ技術起点の経営者型コンサルタントです。CADシステムのゼロからの構築や大規模DX推進プロジェクトを数多く手がけ、現場課題の解決力と実行力で業界から高い評価を得ています。
主な専門領域と実績
- ハイブリッド型コンサルティング(AI × DX × GX × 経営 × マーケティング)
- 建設業・製造業のソフトウェア開発およびシステム導入支援(20年以上)
- CADシステムのゼロからの業務構築、BIM導入支援
- 生成AIを活用した業務改革・DX推進・戦略支援
- 赤字案件率0.5%未満、提案受注率83%という高い成果を継続的に達成
- GX(グリーントランスフォーメーション)を経営・DXと統合した実装型戦略支援
グローバル視点とリーダーシップ
先見性と迅速な意思決定を武器に、業界構造転換を見据えた先行アクションを得意としています。国内外での研鑽を通じて培ったグローバル視点を、実践的な経営支援に活かしています。
- ハーバードビジネスレビュー寄稿(2回)
- シリコンバレー視察(5回以上)およびbtraxデザイン思考研修修了
- CES(世界最大級の家電見本市)視察
現場の実態を深く理解しながら、最新技術とグローバルトレンドを融合させた実装型の支援により、企業の持続的成長を実現しています。脱炭素・省エネ・資源効率化をIT・データ・業務設計の視点から収益性と競争力に直結させる「実装型GX戦略」にも注力し、次世代の建設業・製造業の変革を先導しています。