なぜ大成建設はARES CADに乗り換えたのか?BIM時代の静かな革新

「AutoCADをやめたい、でも踏み切れない」――そんな葛藤を抱える設計現場は、今も数多く存在します。大成建設はその壁を静かに越え、BIM推進・現場のデジタル化・セキュリティをすべて同時に実現しました。どう決断し、どう展開したのか。その全貌が、あなたの次の一手を変えるかもしれません。

はじめに

「AutoCADからARESへ」――大手ゼネコンの大成建設が進めてきたCAD基盤の刷新は、業界に大きな示唆を与えています。

ただのツール代替ではなく、BIM推進・現場のデジタル化・情報セキュリティを一体で設計した、戦略的な取り組みです。

この記事では、導入の背景から選定の理由、展開の方法、BIMとの共存戦略まで体系的に解説します。製造業・建設業のDX支援を20年以上手がけてきた執筆者の視点を交えながら、CAD選定やDX推進に悩むゼネコン・設計事務所のかたに、具体的なヒントをお届けします。

AutoCAD依存が招いた3つの現場課題

AutoCAD依存が招いた3つの現場課題

大成建設の設備設計部門が抱えていた問題は、ツールの話にとどまりませんでした。

建築・構造・設備という三部門がそれぞれ異なるCAD環境で動いていたことが原因で、図面データのやり取りに多大な手間がかかり続けていたのです。BIM推進という方向性を持ちながら、日々の2D図面業務が滞るという矛盾した状態が現場を蝕んでいました。

その構造的な非効率を解消するために、大成建設はCAD基盤そのものの見直しに踏み切りました。この章ではその背景と課題の本質を解説します。

なぜAutoCAD基盤が現場の足かせになったのか

設備部門がAutoCADを標準化できなかったことで、部門間変換が恒常化し設計生産性を蝕んでいた。

大成建設の設備設計部門では、長年にわたって建築設備CADアドオン「ARCADE NEO」を使って業務を進めてきました。

しかし、このアドオンが動作する前提となるCADがAutoCADであったため、建築・構造部門との間でファイル変換が頻繁に発生していました。複雑な図面ほどデータ量が増大し、設計の進捗を圧迫する非効率が日常的に積み重なっていたのです。

設備部門がAutoCADを標準ツールとして使っていなかったことも重なり、部門間の連携に余分な工数が恒常的に生じる状態が続いていました。「BIM推進を進めつつ、2D図面も効率よく扱える統一基盤をどう作るか」という問いが、現場レベルのボトルネックとして浮上したのはこうした背景からです。

この状況は単なるツールの問題ではなく、設計部門全体の生産性に直結する構造的な課題として認識されるようになっていきました。

BIM推進と2D業務の二重課題とは何か

なぜ今ラボ開発なのか?DX・AI時代の開発モデル完全解説

BIM移行と2D業務効率化という二重課題を解くには、三部門共通のCAD基盤統一が唯一の現実解だった。

設備設計における最大の課題は、CAD環境の多様性が引き起こすデータの不整合と、それにともなう変換作業の積み重ねでした。

建築・構造部門との間でファイル形式の差異が生じるたびに、担当者が手作業で変換・調整を行う必要があり、プロジェクト全体の工数を静かに侵食し続けていたのです。さらに、AutoCAD前提のARCADE NEO環境が設備部門に十分定着していなかったことも、標準化を妨げる大きな要因となっていました。

BIMへの移行を推進しながら、同時に2D図面の日常業務を効率化するという二重の課題を解決するには、三部門を横断して機能する統一のCAD基盤の構築が不可欠でした。設備・建築・構造が共通の図面基盤で連携できる環境を整えることが、設計業務全体の底上げにつながると判断されたのです。

この複合的な非効率を解消する現実解として、ARES Commanderへの移行が本格的に浮上してくることになります。

ARES Commander採用の決め手と導入構成

大成建設がARES Commanderを選んだ理由は、「安いから」でも「AutoCADに似ているから」でもありませんでした。

現場に根付いた業務のやり方を守りながら、CAD基盤だけを近代化できる現実解として評価されたのです。特に、設備設計向けのアドオン「ARCADE NEO」がそのままARES上で動く点は、現場の抵抗を抑えながら移行を進める上で決定的な強みとなりました。

ここでは採用の決め手と導入構成の全体像を解説します。

ARES CommanderがAutoCADより選ばれた3つの理由

DWG互換性・コスト・拡張性の三点でARESが選ばれ、既存ノウハウを守りながら基盤刷新を実現した。

大成建設は、長年使用してきたARCADE NEOのCAD基盤を、AutoCADからDWG互換CADである「ARES Commander」へ移行することを決断しました。

ARESがAutoCADより選ばれた理由は、大きく三つあります。まず、DWGとの高い互換性を持ちながらコストパフォーマンスに優れている点です。次に、土木・建築分野で必要な機能を標準で備えており、追加投資を抑えられる点です。そして、将来的なクラウド連携やモバイル活用を見据えた拡張性の高さです。

単なるコスト削減目的の代替ではなく、現場の業務のやり方を継承しながらCAD基盤だけを刷新できる点が、組織的な導入判断を後押しした決め手となりました。DWG互換という安定した共通基盤の上に新たな業務フローを積み上げるための土台として、ARESは最適な選択肢だったといえます。

ARCADE NEOをそのまま使えるとはどういうことか

ARCADE NEOがARES上で動くことで再教育ゼロに近い移行が実現し、現場の受け入れ抵抗を最小化した。

ARCADE NEOは、機器の配置や電線管・ダクト・配管の経路作図、材料集計などを簡単な操作で実現する、2次元設計に特化したアドオンです。

このアドオンがARES Commander上でそのまま動作する構成にしたことで、設備設計者はこれまでと同じ操作感を保ちながら、CAD基盤だけを静かに刷新するという理想的な移行が実現しました。複雑な再教育や業務フローの全面見直しを必要とせず、最小限のトレーニングで図面作成から材料集計まで完結できる環境が整ったことは、組織展開のしやすさに直接貢献しています。

慣れ親しんだ操作体系を維持しつつ基盤だけを近代化するこのアプローチは、現場の抵抗を抑えながら変革を進めるための合理的な戦略です。業務のやり方の継承と基盤の近代化を同時に実現したことが、現場で広く受け入れられた最大の理由といえます。

AutoCAD文化を捨てたARES標準展開の戦略

大成建設のARES導入でとくに注目すべきは、AutoCADをまったく経験していないスタッフを対象に展開を始めた点です。

これは旧来のAutoCAD文化を持ち込まないための、意図的な選択でした。過去の慣習と切り離すことで、ARES標準の運用フローをゼロから設計し、BIMやクラウドとの相性がよいフラットなDWG基盤を先に固める狙いがありました。

この章では、その戦略的な判断の背景と、運用設計の考え方を紹介します。

AutoCAD未経験から始めるARES標準化の意図

AutoCAD未経験を逆手に取り、旧文化を持ち込まないARES標準フローをゼロベースで構築した。

注目すべきは、大成建設があえて「CAD=ARES Commander」という環境を整え、AutoCAD未経験の状態から設備部門への展開を始めた点です。

これは既存のAutoCAD文化に引きずられることなく、DWG互換CADを前提とした新しい標準フローをゼロから構築するという、明確な意思決定の結果です。AutoCADの操作習慣や旧来のファイル管理の慣行をそのまま持ち込んでしまえば、基盤を変えてもワークフローの非効率は残り続けます。

それを防ぐために白紙からARES標準の運用設計を行うという判断は、表面的なツール置き換えにとどまらない、組織変革としてのCAD移行を意味していました。新しい文化をゼロから育てるためには、過去の慣習との決別が必要になることもあります。

大成建設がAutoCAD未経験という状態を逆に強みとして活かし、ARES標準運用を徹底した姿勢は、業界内でも際立つ取り組みとして評価されています。CADゼロからの業務構築を支援してきたコンサルタントの立場からも、この判断は組織変革の好例といえます。

最小教育で現場に定着させる運用設計の方法

最小教育で図面から集計まで完結できる運用設計が、ARES定着率の決め手となった。

BIMやクラウドとつながりやすいフラットなDWG基盤を先に固めるという狙いが、この判断の背景にあります。

設備設計者にとっては、複雑な操作体系や長期のトレーニングに頼らず、最小限の教育で図面作成と集計表の出力まで到達できる運用が強く求められていました。その点において、ARES+ARCADE NEOの組み合わせは「現場に定着しやすい環境」として機能しています。

導入後の定着率を左右するのは機能の豊富さよりも、担当者が迷わず使いこなせるシンプルさです。大成建設の展開戦略はこの原則を正確に捉えており、業務に直結した操作性を優先するという設計思想が組織全体への浸透を実現しました。

CAD基盤の統一によって設備・建築・構造の三部門が共通フォーマットで連携できる土台も生まれており、将来的なBIM統合に向けた重要な準備にもなっています。

ARES Touchが変えた建設現場のDX実態

大成建設は、CAD基盤の刷新にとどまらず、現場のデジタル化にも大きく踏み込みました。

タブレットやスマートフォンで動作するARES Touchの導入により、紙の図面への依存を断ち切り、現場と設計事務所をリアルタイムでつなぐ情報基盤を整備しています。さらに、MDMやSSOとくみあわせたセキュアな運用環境を自社仕様で構築し、利便性とセキュリティを高い次元で両立させました。

この章では、その具体的な仕組みと効果を解説します。

紙図面の限界とARES Touchが解決した現場課題

紙図面の物理リスクとタイムラグをARES Touchが解消し、クラウド経由で現場と事務所をつないだ。

大成建設はタブレットやスマートフォンで動作する「ARES Touch」を早期から導入し、現場の図面閲覧と情報共有のあり方を根本から変えました。

従来の施工現場では、紙図面の印刷・持ち運び、雨による損傷や破れといった物理的なリスクが常にありました。最新図面を確認するには事務所に戻るか事前印刷の図面に頼るしかなく、情報伝達に構造的なタイムラグが生じていたのです。設計変更時に旧版図面が現場に残り続けるリスクも、深刻な問題でした。

ARES Touchの導入は、こうした課題に直接応えるものです。モバイル端末からDWG図面をクラウド経由で即座に呼び出せる環境により、現場と設計事務所の情報ギャップを解消することが可能となりました。

紙を基点とした現場管理の限界をデジタルの力で乗り越えるための重要な第一歩であり、建設DXの実践として大きな意味を持っています。

DWG図面をリアルタイム共有できる仕組みとは

リアルタイム共有で施工ミスを防ぎ、DXとコスト削減を同時に実現する情報管理の一元化を達成した。

ARES TouchでDWG図面をクラウドからリアルタイムで呼び出し、写真の添付・コメント・書き込みをその場で行えるようになったことで、図面を中心としたやりとりが一気にデジタルへと移行しました。

現場担当者が常に最新図面を手元で確認できる環境は、情報伝達のタイムラグを大幅に削減し、施工ミスの防止にも直接貢献しています。設計変更の最新情報が即座に現場へ届く仕組みが実現したことで、アナログとデジタルが混在していた情報管理がようやく一元化されました。

紙図面の印刷コストや保管・廃棄に要する管理工数の削減という副次効果も見逃せません。現場の情報流通が速くなることはプロジェクト全体の意思決定にも波及し、施工品質の底上げにつながります。

DXとコスト最適化を同時に実現するこのアプローチは、建設現場の情報共有のあり方を具体的に示した実践モデルです。

MDM・SSO・OneDriveで実現するセキュア運用

MDM・MAM・SSOの三層構造で端末管理とデータ保護を両立し、現場DXのセキュリティ基盤を確立した。

大成建設はARES Touchに加え、MDMとMAMによるアプリ配信とデータ管理、OneDrive for Businessとの統合、Office 365アカウントによるSSOを組み合わせ、セキュアで運用しやすいモバイルCAD基盤を自社仕様で構築しました。

端末の紛失・盗難時のリモートワイプや、アプリのバージョン管理・アクセス権限の一元管理が可能となっています。建設現場で扱う図面データは機密性が高く、セキュリティ要件への対応は導入の可否を左右します。

コストと利便性を両立しながらエンタープライズレベルのセキュリティを実現したこの構成は、同業他社にとっても参考になるモデルとなっています。クラウドを活用しながら情報漏洩リスクを徹底管理するこの姿勢は、建設DX推進において欠かせない視点です。

BIM推進とARESの共存戦略と将来像

大成建設はBIM推進の専門組織を社内に設置し、RevitなどによるBIM活用を積極的に進めています。

一方でARES Commanderは、BIMと2D図面をつなぐ橋渡し役として重要な役割を担っています。BIMとCADは対立するものではなく、それぞれの得意な領域で役割を分担しながら全体の効率を高めるという考え方が、大成建設のDX戦略の根幹にあります。

この章では、BIM推進とARESが共存する戦略の背景と、AI活用を含む将来の展望を整理していきます。

BIM推進部門がARESに担わせた役割とは何か

ARESはBIMと競合せず、現場・協力会社・設備部門へBIMを浸透させるためのDWG足場として機能する。

大成建設は設計部門にBIM推進の専門組織を設置し、RevitをはじめとするBIMツールを使った3Dモデルベースのワークフローに積極的に取り組んでいます。

その中でARES Commanderは、DWGという共通フォーマットを軸に、BIMモデルと2D図面の橋渡し役を担う存在として位置づけられています。「CADを進化させれば即BIM」という単純な図式ではなく、BIMモデルを現場・協力会社・設備部門まで浸透させるための足場として、ARESベースのDWG環境を整備するという考え方です。

高度なBIMツールでは対応しきれない現場実務の隙間を、ARESが着実に埋めています。BIMとCADを補完しあう関係として捉え、それぞれの役割を定義した上で並行運用するこの戦略は、現実的かつ持続可能なデジタル移行のあり方を体現しています。

2D図面が必要な場面と3Dモデルが有効な場面を見極め、両者を使い分けながら全体の効率を高める設計思想が大成建設のBIM推進の根幹にあります。

AI操作とマルチBIM連携が変える設計の未来

AI自然言語操作とマルチBIM連携が実現すれば、ARES上のDWG資産がBIM統合の中核となる。

将来的には、AIアシスタント「A3」による自然言語でのCAD操作や、マルチディシプリンBIMとの連携強化が視野に入っています。

自然言語操作が実現すれば、CADに不慣れな担当者でも図面作成に参加できるようになり、設計業務の裾野が大きく広がります。マルチディシプリンBIMとは、建築・構造・設備を統合した多専門連携のBIMのことです。この連携が強化されれば、ARES上のDWG資産をBIMモデルへ統合する流れがさらにスムーズになるでしょう。

大成建設のARES活用は、現状の2D業務効率化にとどまらず、BIM時代の設計インフラを長期視点で整備するための布石といえます。技術変化が加速する建設DXの時代において、今積み上げる基盤の質が数年後の設計力の差となって現れてきます。

将来の変化を先読みしながら現在の基盤を着実に整えていくことが、持続的な競争力を維持するための本質的な戦略です。

大成建設の導入が示すCAD選定の新基準

大成建設のARES CAD導入は、単なるAutoCAD置き換えではありませんでした。

BIMと共存しながら、現場で実際に機能するDWG基盤をどう設計するかという問いへの、具体的な答えを示した事例です。このアプローチは、CAD選定に悩む多くのゼネコンに対して、新しい判断基準を提示しています。

この章では業界全体への示唆と、他社でも活かせるリファレンス構成としての価値を、導入の本質から掘り下げていきます。

AutoCAD代替ではなくBIM共存基盤を選んだ理由

AutoCAD置き換えではなくBIM共存基盤の設計という視点が、大成建設の戦略的決断の本質だった。

この事例が示すのは、「AutoCADをARESに替える」という発想ではなく、「BIMと共存しながら現場で機能するDWG基盤をどう整えるか」という視点からCADを選び直す、より本質的なアプローチです。

ツールの置き換えを目的にするのではなく、BIM移行の全体像を見据えた上で現場が実際に動ける基盤を設計するという考え方は、多くのゼネコンにとって重要な示唆となります。既存の文化やツールのしがらみを乗り越えながらも、現場の実態を尊重した移行設計を実現した点において、大成建設の選択は単なるコスト削減を超えた戦略的決断として評価できます。

AutoCAD一辺倒という業界の慣習に疑問を持ち、DX推進の本質から逆算してCAD基盤を選び直した姿勢は、建設DXの新たな標準を描く上で欠かせない考え方を示しています。この決断が業界内に与えるインパクトは、導入コストの多寡をはるかに超えるものです。

建設DX標準として参照されるアーキテクチャとは

ARES+アドオン+クラウド+MDM構成は、建設DX推進のリファレンス構成として業界に参照され続ける。

ARESと専門アドオン、クラウド連携、SSO・MDMを組み合わせた構成は、コスト最適化・セキュリティ・運用性のバランスを保ちながら、BIM時代の図面ワークフローを現実解として組み上げるリファレンス構成となり得ます。

既存の文化を乗り越えて新しいCAD基盤を選ぶ際の参照モデルとして、「大成建設のARES CAD導入」は建設業界で今後も繰り返し参照されるでしょう。DX推進と現場定着の両立という難題に一つの解を示したこの事例は、建設業界のデジタル変革を語る上で長く参照される先行事例となるはずです。

個々のツール選択を超え、組織全体のDX設計という問いに向き合い実践してみせた大成建設の取り組みは、業界全体への確かなメッセージを発し続けています。そのメッセージが持つ重みは、導入規模や投資額をはるかに超えており、建設DXの本道を示す事例として今後も語り継がれることでしょう。生成AIやDXを活用した戦略支援の現場でも、こうした先行事例から学ぶ姿勢が、次の一手を生み出す力となっています。

まとめ

大成建設のARES CAD導入は、「AutoCADを安く替える」という発想を超えた、BIM時代の図面基盤戦略です。

AutoCADを経験していないスタッフを対象にARES標準を展開した点、ARCADE NEOをそのまま活用して移行のコストを抑えた点、ARES TouchとMDM・SSOを組み合わせてセキュアな現場のデジタル化を実現した点。この三つの取り組みが重なることで、設備・建築・構造の三部門が共通の基盤で動く環境が生まれました。

ARESはBIMと競合するものではなく、BIMモデルを現場まで浸透させるための「足場」として機能しています。CAD選定に悩むゼネコンにとって、この事例はコスト・定着のしやすさ・将来的な拡張性のバランスをとったお手本となるでしょう。

まず自社のCAD環境とBIM推進の現状を整理し、DWG基盤の統一から始めることが、建設DX前進への現実的な第一歩です。

© AXConstDX株式会社

FAQ

ARES CommanderはAutoCADと互換性がありますか? DWG形式に完全対応しており、AutoCADで作成した図面をそのまま開いて編集できます。

ARES CommanderはDWG互換CADと呼ばれる種類のソフトウェアです。AutoCADで作成したDWGファイルを変換なしで読み書きできるため、取引先や協力会社とのデータのやり取りもスムーズです。既存の図面資産をそのまま活かせる点が、移行を検討する企業に安心感を与えています。

AutoCAD未経験のスタッフでもARESを使いこなせますか? ARESはシンプルな操作体系を持ち、最小限のトレーニングで実務に入れるよう設計されています。

大成建設はAutoCADをまったく経験していないスタッフを対象にARES展開を行い、現場への定着に成功しています。AutoCADの操作習慣がない分、ARESの標準フローを素直に身につけやすいという利点もあります。必要最小限の教育で図面作成から材料集計まで完結できる環境が整っている点が強みです。

ARCADE NEOはARES Commander上でも動作しますか? ARCADE NEOはARES Commander上でそのまま動作し、従来と同じ操作感で使い続けられます。

大成建設はARCADE NEOのCAD基盤をAutoCADからARESへ切り替えた際も、アドオンをそのまま継続して使用しています。再教育や業務フローの全面見直しが不要なため、移行コストを大幅に抑えられました。これにより、長年蓄積してきた設備設計のノウハウを失わずに基盤だけを刷新できます。

ARES Touchとはどんなアプリですか? タブレットやスマートフォンでDWG図面を閲覧・編集・共有できるモバイルアプリです。

ARES TouchはARES Commanderと連携して使えるモバイル向けアプリで、クラウド上の図面をスマートフォンから呼び出すことができます。現場で写真を添付したりコメントを書き込んだりする機能もあり、紙図面への依存を大きく減らします。設計事務所と施工現場がリアルタイムで最新情報を共有できる点が最大の強みです。

MDMやSSOを導入しないとARES Touchは使えませんか? ARES Touch自体はMDMやSSO不要で利用できますが、企業導入ではセキュリティ上の併用が推奨されます。

ARES Touchは単体でも使用可能ですが、大成建設のように複数の現場や部門で組織的に展開する場合は、MDMによる端末管理とSSOによる認証の統一が重要になります。端末の紛失時のデータ消去や、アクセス権限の一元管理が可能になるため、機密性の高い図面データを安全に扱えます。

ARESを導入するとBIMへの移行が遅れませんか? ARESはBIMの代替ではなく、BIMを現場まで浸透させるための補完的な基盤として機能します。

大成建設はRevitによるBIM推進と並行してARESを導入しており、両者は対立するものではありません。高度なBIMツールでは対応しきれない2D図面の日常業務をARESが担うことで、BIMと現場実務を無理なくつなぐ役割を果たしています。DWG基盤を統一することで将来的なBIM統合もスムーズに進めやすくなります。

他のゼネコンでも大成建設と同じ構成を再現できますか? ARES+ARCADE NEO+クラウド+MDM・SSOという構成は、他社でも再現しやすいリファレンスとなっています。

この構成は特定の大企業だけに向けたものではなく、規模や業種を問わず応用できる現実的な組み合わせです。コスト・定着のしやすさ・将来的な拡張性のバランスがよく、CAD選定やDX推進の入り口として多くのゼネコン・設計事務所にとって参考になります。まず自社のCAD環境を整理し、DWG基盤の統一から始めることが第一歩です。

専門用語解説

ARES Commander:DWG形式に対応したCADソフトウェアです。AutoCADと同じ形式の図面ファイルを扱えるため、既存の図面資産をそのまま継続して活用できます。コストパフォーマンスと拡張性に優れ、建設・土木分野を中心に世界で広く使われています。

DWG:CADソフトウェアで図面を保存する際に使われる代表的なファイル形式です。AutoCADが普及させた形式で、建設・製造業界では事実上の標準となっています。DWG互換CADであれば、AutoCAD以外のソフトでも同じファイルを開いて編集できます。

BIM:建物の形状や材料・設備情報などを3次元モデルにまとめて管理する設計手法です。建築・構造・設備の各部門が同じモデルを共有することで、設計ミスの削減や工程管理の効率化が期待できます。日本では2024年以降、大規模公共工事でのBIM活用が推進されています。

ARCADE NEO:建築設備の設計専用に開発されたCADアドオンです。電線管・ダクト・配管などの経路を自動で作図したり、材料の数量を集計したりする機能を持ちます。ARES Commander上でも動作するため、CAD基盤を変えながら従来の設備設計業務をそのまま続けられます。

MDM:モバイルデバイス管理の略称です。会社が従業員のスマートフォンやタブレットを一元的に管理するための仕組みを指します。端末の紛失時にデータをリモートで消去したり、アプリのバージョンをまとめて更新したりできるため、現場でのセキュリティ対策に欠かせません。

SSO:シングルサインオンの略称で、一度のログインで複数のサービスを使い続けられる認証の仕組みです。社員が複数のアプリごとに異なるパスワードを管理する手間を省き、利便性とセキュリティを同時に高めます。大成建設ではOffice 365アカウントを使ったSSOを採用しています。

DX:デジタルトランスフォーメーションの略称で、デジタル技術を活用して業務のやり方や組織の仕組みを根本から変えることを指します。建設業界では、紙図面のデジタル化・現場の情報共有改善・BIM推進などがDXの代表的な取り組みとして挙げられます。

執筆者プロフィール

小甲 健(Kokabu Takeshi) 

AXConstDX株式会社 代表取締役CEO

株式会社OneTechnologyJapan 特別顧問

製造業・建設業に精通し、ソフトウェア開発歴20年以上を持つ、技術起点の経営者型コンサルタントです。CADゼロからの業務構築や大規模DX推進を数多く手がけてきた実績を背景に、現場課題の本質を捉えた実装型の支援を強みとしています。

生成AI・DX・GX(グリーントランスフォーメーション)を統合した戦略支援とコンテンツ創出にも精通しており、近年は脱炭素・省エネ・資源効率化をITとデータの視点から収益性に直結させる「実装型GX戦略」に注力しています。

主な実績・資格

  • 赤字案件率0.5%未満、提案受注率83%という高い成果を継続的に維持
  • ハーバードビジネスレビューへの寄稿(2回)
  • シリコンバレー視察(5回以上)、btraxデザイン思考研修(サンフランシスコ)受講
  • CES視察(1回)を通じたグローバルテック動向のキャッチアップ
  • ドラッカー、孫正義らの経営思想を実務に応用した先見性ある意思決定を実践

製造業・建設業のCAD選定やDX推進、BIM導入支援に関するご相談は、AXConstDX株式会社までお気軽にお問い合わせください。

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