「このままでは現場が回らなくなる」そんな危機感を抱えている建設業の方に、今すぐ読んでほしい記事です。国交省が賃金・育成・働き方・安全・キャリアの五つを一気に動かす大改革を打ち出しました。5つの施策を正しく理解することで、あなたの会社が次に取るべき行動が明確に見えてきます。
はじめに
建設業の人材不足は、業界全体の存続にかかわる深刻な課題です。 60歳以上が全体の約4分の1を占める一方、29歳以下はわずか約12パーセントにとどまります。 このままでは、地域のインフラや災害復旧を支える現場が立ち行かなくなります。
国交省は今、賃金・労働時間・育成・安全・キャリアという五つの課題に同時に取り組む施策を進めています。 本記事ではその内容をわかりやすく整理します。 建設業に関わるすべての方に役立つ情報をお届けします。 本記事は、製造業・建設業のDX支援に20年以上携わってきた筆者が、現場目線で整理・解説しています。
建設業の人材危機、なぜ今すぐ対策が必要なのか
建設業はいま、かつてない人材危機に直面しています。 60歳以上が全体の約4分の1を占める一方、若手の入職は年々減少しています。 このまま対策が遅れれば、道路や橋梁の維持管理すら困難になりかねません。
国交省はこの現実に向き合い、総合的な施策を打ち出しました。 賃金・処遇・育成・働き方・安全という五つの課題を同時に改善します。 ひとつひとつの対策が連動することで、産業全体の底上げが実現します。 この章では、その背景にある実態と改革の核となる考え方を整理します。
60歳以上が4分の1、建設業の世代断層とは
高齢化と若年層の激減により、建設業の担い手不足は構造的な問題となっている。
建設業は、道路・橋梁・上下水道といった地域インフラの整備を担います。 台風や地震のような災害時の緊急復旧も、この産業が支えています。 社会に不可欠な基幹産業でありながら、技能者の高齢化が今や深刻な問題となっています。
60歳以上の技能者が全体の約4分の1を占めます。 一方で、29歳以下はわずか約12パーセントにとどまります。 世代間の偏りは極端に広がっており、現状は危機的な状況といえます。 このまま高齢層の退職が続けば、現場を支える担い手が急速に失われていきます。
国交省が目指すのは、単なる採用増ではありません。 入職後に長く働き続けられる産業への転換こそが目標です。 処遇・育成・労働環境を三位一体で変えることが、今まさに求められています。 若い世代が安心して将来を描ける環境を整え、業界の魅力を高めること。 それが建設業の持続的な発展にとって、最も重要な課題となっています。
CCUSで賃金は上がる?処遇改善の仕組みを解説
CCUSは技能・経験をデータ化し、公正な賃金設定と処遇改善を実現する核心的な仕組みだ。
今回の施策の核心は、建設キャリアアップシステム、通称CCUSを軸にした処遇改善です。 CCUSとは、技能者の資格・現場経験・就業履歴を継続的に蓄積する仕組みです。 キャリア全体を客観的に見える化し、処遇改善の根拠として活用できます。
このシステムにより、技能や経験に基づいた公正な評価が可能になります。 適切な賃金水準の設定にもつなげやすくなるでしょう。
国交省は全国規模の説明会や広報を通じて、CCUSの普及を積極的に後押しします。 厚生労働省は助成金の活用促進や職業訓練の提供で、導入しやすい環境を整えます。
両省の連携によって、技能者が正当に評価される仕組みが全国に広がります。 長期的にキャリアを積み上げられる環境の構築が、今回の改革の出発点です。 この基盤があってこそ、すべての施策が有機的に機能します。 CCUSは今後も、建設業全体の処遇改善を支える中心的な仕組みであり続けるでしょう。
建設業に人を集め、育てるための2つの施策

建設業に人を集めるためには、求人票を出すだけでは不十分です。 業界のリアルな魅力を伝え、長く働き続けられる仕組みが必要です。
国交省と厚生労働省は二つの柱で、この課題に取り組んでいます。 ひとつはハローワークを活用した採用支援、もうひとつは公的訓練による育成支援です。 採用の導線をつくり、入職後の成長を支えること。 この二つが整ってはじめて、人材の確保と定着が実現するでしょう。 この章では、人を集め育てるための具体的な施策の内容を確認します。
ハローワークとCCUSで変わる採用の新しい流れ
ハローワークとCCUSを連携させ、求職者と優良事業主をつなぐ質の高いマッチングを実現する。
ハローワークの人材確保対策コーナーを活用したマッチング支援が大幅に強化されます。 建設業を希望する求職者に対し、CCUSに登録済みの事業主の求人情報を案内します。 採用につながる導線をきめ細かく整備することが、この取り組みの大きな特徴です。
企業の処遇改善の状況やキャリアアップの仕組みも、あわせて提示します。 これにより、単なる求人紹介を超えた質の高いマッチングが実現します。
また、若い世代の入職促進に向けた「つなぐ化」事業も継続されます。 高校生を対象とした職業理解の授業や、建設現場の見学会を実施します。 建設業への関心を早い段階から丁寧に育てることが大きな狙いです。
業界の仕事内容や将来の成長可能性を、できるだけ直接伝えます。 進路選択の段階から建設業を有力な選択肢と見てもらえるよう努めます。 官民が連携しながら、入職への土台を着実に築いていきます。
ハロートレーニングとマイスター制度で技能者を育てる方法
公的訓練とマイスター指導を組み合わせ、入職前から成長後まで途切れない育成体制を整える。
人材育成の面では、中小の建設事業主や業界団体を通じた訓練支援が幅広く拡充されます。 建設分野のハロートレーニング、いわゆる公的職業訓練を積極的に活用します。 現場経験が浅い入職者でも、基礎から体系的なスキルを段階的に習得できます。
ものづくりマイスター制度による実技指導も組み合わせます。 座学では得にくい実践的な技能を、効率よく着実に身につけられます。
若い技能者向けの育成支援も一層充実します。 現場に入る前の準備段階から、入職後の定着・成長まで途切れなく学びを支えます。
この取り組みの狙いは、人数の確保にとどまらず、長く活躍できる人材を育てることです。 成長し続けられる環境そのものを、業界の大きな強みにしていく必要があります。 定着率の向上と産業全体の持続的な発展は、こうした育成への投資から生まれます。 ひとりひとりが成長できる仕組みが、建設業の未来を支えていくでしょう。
働き方と職場環境を変える2つのアプローチ

採用や育成と並んで、建設業が変えなければならないのが働く環境そのものです。 長時間労働や安全面への不安が、若者や女性の入職をためらわせています。
国交省は工期の適正化とICT活用で現場の生産性を高めます。 厚生労働省は助成金・研修・安全対策で職場環境の底上げを図ります。 制度と現場の両面から変えることで、業界全体のイメージも変わっていきます。 若い世代が「入りたい」と思える産業にすることが、今もっとも重要な課題のひとつです。 この章では、働き方と職場を変える二つのアプローチを詳しく見ていきます。
工期適正化とICTで長時間労働をなくす取り組み
工期の実態調査とICT活用で、長時間労働が常態化した現場の構造を根本から見直す。
国交省が特に力を入れているのが、工期の適正化と技術者の働き方改革です。 建設現場ではこれまで、長時間労働を前提とした運営が慢性的に続いてきました。 それが若い世代を中心に、離職の大きな要因のひとつとなっていたのです。
この構造を変えるため、工期設定の実態調査を実施します。 無理のある工期が業界慣行として定着していないか、詳細に把握します。 調査結果をもとに制度を合理化します。 発注側と受注側の双方にとって適正な工期が確保されやすい契約のあり方を整えます。
また、建設業の生産性向上に向けたICT活用の現状調査も行います。 普及を妨げる技術的・費用的な課題を、ひとつひとつ明らかにしていきます。 筆者自身も建設・製造業へのICT・DX導入支援を長年手がけており、現場ごとの実情に即した段階的な導入が定着率を高める鍵だと実感しています。 働き方改革に積極的に取り組む企業が正当に評価されるよう、評価の仕組みも見直します。 こうした環境整備が、建設業全体の生産性向上と若手定着につながっていくでしょう。
安全・助成金・研修で職場イメージを変える方法
研修・助成金・安全対策の三本柱で、危険で厳しいという業界イメージを払拭する。
厚生労働省側の施策では、三つの柱が中心となります。 雇用管理責任者向け研修の充実、働き方改革推進支援助成金の活用促進、安全衛生対策の強化です。
雇用管理責任者研修では、採用から育成にわたる人材マネジメントの知識を高めます。 職場環境の改善を事業所の単位から着実に進めていくことが目的です。
働き方改革推進支援助成金は、中小事業者が処遇改善に踏み出す後押しとなります。 労働時間の短縮にも活用でき、幅広い事業者からの活用が期待されます。
安全衛生の面では、一人親方や中小の専門工事業者への支援を強化します。 墜落・転落災害の防止対策も重点的に推進します。 こうした取り組みが「危険で厳しい業界」というイメージを払拭します。 女性や若者が長く働ける職場づくりを、制度と現場の両面から支えます。 入職促進と定着率の向上を同時に実現することが、この施策の大きな目標です。
まとめ
国交省が打ち出した建設業の人材確保施策は、五つの柱を同時に動かす総合施策です。 入職促進・人材育成・働き方改革・職場環境整備・処遇改善が連動して機能します。
CCUSによる技能評価の見える化、訓練支援による育成環境の整備。 ICT活用と工期適正化による生産性向上、安全衛生環境の強化。 これらは単独では効果が限られ、連動してはじめて産業全体が底上げされます。
今すぐ取り組むべきは、CCUSの登録・活用と雇用管理体制の見直しです。 若い世代が働き続けられる職場を整えることも、急務です。 行政施策を自社の採用・育成・処遇改善に組み込むことが、 担い手不足という構造的課題を乗り越える確かな道となるでしょう。 自社の状況を整理し、どの施策から着手すべきかを判断する際は、専門家への相談も有効な選択肢です。
FAQ
CCUSとは何ですか?登録しないとどうなりますか? CCUSとは技能者のキャリアや資格を記録・管理する国の仕組みで、未登録では処遇改善の恩恵を受けにくくなります。 建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の就業履歴・保有資格・現場経験をデータとして蓄積し、適切な評価と賃金設定につなげるための国の制度です。登録していない事業主は、ハローワークでのCCUS連携求人案内の対象外となります。また今後、公共工事での加点評価や助成金対象要件にも影響する可能性があり、早めの登録が重要です。
建設業の人材不足はどれほど深刻なのですか? 60歳以上が全体の約4分の1を占め、29歳以下は約12パーセントという極端な偏りが生じています。 このまま高齢層の退職が進めば、現場を担う技能者が急速に不足します。道路・橋梁・上下水道といったインフラ整備や、災害時の緊急復旧にも支障が出かねません。業界全体として若手の入職促進と定着の両立が、今もっとも急ぎの課題です。
ハロートレーニングは中小事業者でも活用できますか? 中小事業者こそ積極的に活用できる制度で、費用負担を抑えながら人材育成が進められます。 ハロートレーニング(公的職業訓練)は、国や都道府県が運営する職業訓練制度です。事業者の規模を問わず利用でき、現場経験が浅い入職者でも体系的なスキルを習得できます。訓練期間中の受講者に対して助成金が使える場合もあり、育成コストを抑えたい中小事業者に特に有効な選択肢です。
工期の適正化とは具体的に何をするのですか? 無理のある工期が慣行として定着していないかを調査し、発注・契約の仕組みを見直す取り組みです。 国交省は全国の工期設定の実態を詳細に調査します。調査結果をもとに制度を合理化し、発注側と受注側の双方が納得できる適正な工期を確保しやすい契約のあり方を整えます。これにより慢性的な長時間労働の構造が変わり、若手技能者の離職防止にもつながることが期待されます。
働き方改革推進支援助成金はどんな場合に使えますか? 労働時間の短縮や処遇改善に取り組む中小事業者を対象に、費用の一部を国が助成する制度です。 たとえば、残業削減のための業務効率化ツールの導入や、賃金制度の見直しにかかる費用が対象となる場合があります。建設業の中小事業者にとっては、取り組みの第一歩を踏み出す際の財政的なハードルを下げる制度です。詳細な要件や申請方法は、厚生労働省または最寄りの労働局に確認することをおすすめします。
「つなぐ化」事業とはどのような取り組みですか? 高校生など若年層に建設業の魅力を直接届け、進路選択の段階から入職を促す官民連携の活動です。 出前授業や現場見学会を通じて、建設業のリアルな仕事内容や将来の成長可能性を若い世代に伝えます。求人票だけでは伝わらない「働く現場の魅力」を体験してもらうことで、進路選択の段階から建設業を有力な選択肢として考えてもらうことが狙いです。
女性や若者が建設業に定着しにくい理由は何ですか? 長時間労働・安全面への不安・業界のイメージが、入職と定着の大きな障壁となっています。 「危険で厳しい」というイメージが根強く残っており、特に女性や若い世代が業界を敬遠する要因となっています。国交省と厚生労働省は、安全衛生対策の強化や雇用管理責任者研修、助成金の活用を組み合わせることで、こうした障壁を取り除こうとしています。制度と現場の両面から変えることが、定着率の向上に欠かせません。
専門用語解説
CCUS(建設キャリアアップシステム): 技能者の就業履歴・保有資格・現場経験をICカードで一元管理する国の仕組みです。蓄積されたデータをもとに、技能や経験に見合った適切な処遇・賃金設定が可能になります。国交省が普及を推進しており、事業者・技能者ともに登録が求められます。
ハロートレーニング: 国や都道府県が運営する公的職業訓練の総称です。離職者や転職者、新たなスキルを身につけたい在職者を対象に、専門的な知識・技能を無料または低コストで習得できる機会を提供します。建設分野でも活用が進んでいます。
ものづくりマイスター: 厚生労働省が認定する、優れた技能と豊富な経験を持つ熟練技能者のことです。若い技能者への実技指導を担う制度として活用されており、座学では得にくい現場の技能を効率よく伝える役割を果たしています。
雇用管理責任者: 建設業者が現場ごとに選任する、労働者の雇用管理を担う担当者のことです。採用・労働条件・安全管理・福祉増進などを担い、良好な職場環境の整備に責任を持ちます。国交省・厚生労働省は研修を通じてその育成を支援しています。
働き方改革推進支援助成金: 中小事業者が労働時間の短縮や賃金引き上げ、業務効率化などに取り組む際に、かかる費用の一部を国が助成する制度です。建設業も対象となっており、働き方改革に踏み出す際の財政的な後押しとして活用できます。
つなぐ化事業: 国交省が推進する、建設業への若年層の入職促進を目的とした取り組みの通称です。高校や学校と連携した出前授業・現場見学会を通じて、進路選択の段階から建設業の魅力を直接届けることを目指しています。
一人親方: 労働者を雇わず、自分ひとりで建設業などの仕事を請け負う個人事業主のことです。社会保険の適用関係や安全管理の責任が複雑になりやすく、適切な支援や制度整備が求められる存在として、近年注目されています。
執筆者プロフィール
小甲 健(Takeshi Kokabu) AXConstDX株式会社 代表取締役CEO/株式会社OneTechnologyJapan 特別顧問
製造業・建設業に精通した、技術起点の経営者型コンサルタントです。ソフトウェア開発歴20年以上を背景に、CADゼロからの業務構築や大規模DX推進を数多く手がけてきました。現場課題の解決力と戦略立案の両面を兼ね備え、赤字案件率0.5%未満・提案受注率83%という高い成果を維持しています。
近年は生成AIを活用した業務改革・コンテンツ制作・戦略支援に加え、GX(グリーントランスフォーメーション)を経営・DXと統合した「実装型GX戦略」にも注力しています。脱炭素・省エネ・資源効率化を、IT・データ・業務設計の視点から収益性と競争力に直結させる支援を行っています。
- ハーバードビジネスレビュー 寄稿2回
- CES(世界最大の家電・技術見本市)視察
- btraxデザイン思考研修(サンフランシスコ)受講
- シリコンバレー視察 5回以上
先見性と迅速な意思決定を武器に、業界構造転換(DX→GX)を見据えた先行アクションを得意としています。建設業・製造業のDX推進や人材・組織の課題でお困りの際は、お気軽にご相談ください。