また今月も、現場は追い込みで疲れきっています。働き方のルールが変わっても、この苦しみは終わりません。しかし道は開けます。建設DXで情報を一つにまとめ、業務のやり方を変えれば、追い込みのない健全な現場をつくることができるのです。

はじめに
建設の現場では、工期の終わりが近づくとあわただしさが増します。長時間はたらくことや休みの日に出勤することが当たり前になる「追い込み」が、何度もくり返されているのです。
2024年4月には、時間外労働に上限のルールが設けられました。しかし根深い問題は、いまも解決されていません。
この記事では、建設業界にはびこる追い込み問題の実態をあきらかにします。そして建設DXが、どのように解決の糸口となるのかを具体的にお伝えしていきます。
建設業界で「追い込み」が常態化する理由
建設の世界では、なぜ追い込みがなくならないのでしょうか。その背景には、人手が足りないこと、工期が短いこと、そして現場の仕事が特定の人に頼りきりになっていることがあります。ここでは追い込みを生み出す3つの理由を、くわしく見ていきましょう。

人手不足と短工期が追い込みを生む理由
有効求人倍率5.04倍の人材不足が一人あたりの業務量を増やし短工期受注を招く
建設の業界は、深刻な人手不足にみまわれています。2025年7月の時点で、建設業の有効求人倍率は5.04倍にたっしました。これは求職者1人に対して、5件以上の求人がある状態を意味します。
とくに躯体工事では7.65倍ときわめて高く、基礎的な工事をになう人材の確保がむずかしくなっています。
建設技能者の数も、1997年の464万人から2024年には303万人まで減りました。ピーク時とくらべて65.3%まで縮小したのです。人手が足りないために、ひとりあたりの仕事量がふえています。
さらにお客様の要望にこたえるため、短い工期での受注がふえているのです。公共工事が集中する9月末や3月末には、業務量が急に増加します。
工期を守ることを何よりも優先するあまり、現場では長時間労働や休日出勤による追い込みが避けられません。こうした状況が、いまも続いています。
経験頼みの現場運営が属人化する問題
ベテランの経験と勘に頼る業務運営が特定の人への集中を生み若手への負担増に
建設の現場では、ベテランの経験と勘にたよった仕事の進め方が長年つづいてきました。工程の管理や品質の管理、安全の管理といった大切な判断が、特定の人に集中しています。
その人がいなければ、現場が回らない状態になっているのです。建設業で働く人の35%が55歳以上である一方で、29歳以下はわずか12%ほどにとどまります。
高齢化が進んでいるのがわかるでしょう。技術や知識が十分にうけつがれないまま、ベテランが退職していきます。そのため若手や中堅の社員への負担が、どんどん大きくなっているのです。
さらに属人化された業務では、標準化や効率化が進みません。トラブルが起きたときの対応も、特定の人にたよることになります。
結果として追い込みの時期には、その負担がさらに増してしまう悪循環におちいっているのです。
追い込みが品質・安全に与える悪影響
年間労働時間1978時間の長時間労働が判断力低下と災害リスク増大をもたらす
追い込みによる長時間労働は、現場の品質と安全に深刻な影響をあたえます。2024年の時点でも、建設業の年間総労働時間は1,978時間となっています。全産業の平均である1,632時間よりも、350時間以上も長い状態がつづいているのです。
つかれがたまった状態での作業は、判断力の低下をまねきます。施工のミスや手戻りがふえてしまうのです。また安全の確認が十分にできなくなり、労働災害のリスクが高まります。
建設業の労働災害が起きる割合は、ほかの業界よりも高い傾向にあります。追い込みの時期には、さらに危険性が増すのです。
品質が下がれば、お客様の満足度が低下します。補修にかかる費用も増大するでしょう。安全の事故が起きれば、企業の信用がうしなわれます。
法的な責任もともないます。こうした悪い影響は、企業が持続的に成長することをさまたげます。そしてさらなる人材の流出をまねく要因となっているのです。
なぜ建設現場の追い込みはなくならないのか

追い込み問題は、なぜ解決されないのでしょうか。その背景には、精神論をたよりにする文化、業務の分断による情報共有の不足、そして忙しさが改善をさまたげる悪循環があります。ここでは追い込みがなくならない3つの理由を、深く掘り下げていきます。
精神論に頼る建設業界の慣習とは
工期厳守と個人の努力を美徳とする文化が業務改善を後回しにし問題を継承する
建設の業界には「工期は絶対に守るもの」「現場の苦労は当たり前」といった精神論が、根強くのこっています。長い時間はたらくことや、休みの日に出勤することを美徳とする風潮があるのです。
若手の社員も、こうした文化にしたがわざるをえない状況におかれています。問題の本質的な解決よりも、個人の努力や根性で乗り切ることが重視されてきました。
業務のやり方を改善したり、効率化したりすることが後回しにされているのです。発注者や元請けからの短い工期の要求に対しても、交渉や調整よりも現場のがんばりで対応する傾向が強くあります。
無理な工程でも受注してしまうことが多いのです。こうした精神論を重視する文化は、働き方を変える改革やデジタル化への抵抗感を生みます。
追い込み問題の解決をさまたげる、大きな要因となっています。組織として仕組みを変える必要性が認識されにくく、問題が世代をこえてうけつがれてしまうのです。
業務が分断され情報共有できない現状
エクセルと紙での個別管理が最新情報の把握を困難にし早期発見を妨げる
建設の現場では、さまざまな業務がバラバラに分かれています。設計、施工の管理、資材の調達、安全の管理など、多岐にわたる仕事が分断されているのです。
情報の共有が十分にできない状態がつづいています。それぞれの担当者が、個別にエクセルのファイルや紙の書類で管理しているため、最新の情報をつかむことがむずかしいのです。
現場と事務所のあいだでも、情報を伝えるのに時間がかかります。日報をつくったり報告書を出したりするために、現場から事務所にもどる必要があります。
建設業界の多重下請けという構造も、情報の分断を加速させています。元請けから一次受け、二次受けへと情報が流れる過程で、くいちがいや遅れが生じるのです。
情報が一つにまとまって管理されていないため、工程の遅れや問題のきざしを早くに見つけることができません。気づいたときには、追い込みが避けられない状況になっています。
また過去の仕事のデータが活用されず、同じ失敗がくり返される傾向もあります。
忙しさが改善を妨げる悪循環の正体
日々の業務に追われ改善の時間を確保できず問題が深刻化する負のスパイラル
建設の現場は、いつも複数の仕事をかかえています。日々の業務におわれているのです。この忙しさが、業務を改善する時間をうばっています。
追い込み問題を解決できない悪循環を生んでいるのです。業務を効率化したり、新しいツールを導入したりする必要性はわかっています。しかし準備や社員への教育の時間が、確保できません。
とくに中小の建設企業では、人員にゆとりがないのです。担当者が通常の業務と改善の活動を、同時に進めることがむずかしくなっています。
さらに追い込みによるつかれがたまると、新しい取り組みへの意欲が下がります。現状を維持することに留まってしまうのです。
改善を先のばしにした結果、追い込みがさらに深刻になります。ますます改善するゆとりがなくなるという、負のスパイラルにおちいるのです。
この悪循環を断ち切るには、トップが主導する改革と、小さな成功体験を積み重ねることが欠かせません。
建設DXが追い込み問題を解決できる理由
建設DXは、追い込み問題をどのように解決するのでしょうか。デジタル技術を活用することで、情報を一つにまとめて管理し、業務のやり方を標準化できます。ここでは建設DXが解決策となる3つの理由を、くわしく説明していきます。

建設DXとは何か?デジタル化との違い
単なるIT化でなく業務プロセスを根本から変革し生産性を1.5倍にする取り組み
建設DXとは、デジタル技術を活用して建設の仕事のやり方やビジネスのモデルを根本から変えることです。競争で優位に立つことをめざします。
単なるデジタル化やIT化とは、はっきりとちがいます。デジタル化は、紙の書類をPDFにするなど、アナログの情報をデジタルの形式に変えることです。
IT化は、今ある業務を効率化するために情報の技術を導入することを指します。これらは部分的な改善にとどまるのです。
一方で建設DXは、BIMやCIM、IoT、AIといった先進の技術を組み合わせます。企画や設計から施工、そして維持管理まで、建設のライフサイクル全体をデータでつなぐのです。
業務のやり方そのものを見直し、人手不足やベテラン技術者の高齢化といった建設業ならではの課題に対応します。持続的に生産性を向上させることを実現するのです。
国土交通省が進めるi-Construction 2.0では、2040年度までに建設現場の省人化を3割にし、生産性を1.5倍に向上することをめざしています。
情報一元化で追い込みが減る仕組み
クラウド型システムで全情報を集約しリアルタイム更新で問題を早期に発見可能
建設DXの中心には、情報を一つにまとめて管理することがあります。クラウド型の施工管理システムを導入すれば、さまざまな情報が一か所に集まります。
設計の図面、工程の表、日報、写真、検査の記録など、あらゆる情報が集約されるのです。現場の担当者は、スマートフォンやタブレットから直接データを入力できます。
事務所にもどる必要がなくなるのです。情報がリアルタイムで更新されるため、工程の遅れや資材が足りないといった問題を早くに見つけることができます。
追い込みになる前に、対策をとることができるのです。元請けと下請けのあいだでも、情報の共有がスムーズになります。多重下請けの構造における情報のくいちがいが減るでしょう。
BIMを活用すれば、3次元のモデル上で設計の変更がどう影響するかを、すぐに確認できます。手戻りを大きく削減できるのです。
過去の仕事のデータもたまっていきます。似たような案件での工期の設定や見積もりの精度が上がり、無理のない計画を立てることが可能になります。
人に依存しない業務フローの作り方
ベテランのノウハウをデジタル化し誰でも一定水準の業務遂行を実現する仕組み
建設DXは、属人化された業務を標準化します。だれでも一定の水準で仕事を進められる仕組みをつくるのです。
施工管理のアプリを使えば、ベテランのノウハウをチェックリストや作業の手順としてデジタル化できます。経験の浅い担当者でも、適切な判断ができるようになるのです。
AIによる工程の最適化システムは、過去のデータから最適な工程を提案します。ベテランの勘にたよらない計画づくりを実現するのです。
ドローンやIoTのセンサーを活用した測量や点検の作業は、特別な技能がなくても正確なデータを集めることができます。オンラインの会議やリモートでの検査により、特定の技術者が現場に常にいる必要がなくなります。
複数の現場を効率的に管理できるのです。業務の標準化は、技術のうけつぎも促進します。職人の作業をコンピューターで解析して言葉にすれば、効率的な研修が実現するでしょう。
人にたよらない業務のやり方は、追い込みの時期に特定の個人への負担が集中することを防ぎます。
追い込みを減らす建設DXの進め方
建設DXを進めるには、どのようなステップをふめばよいのでしょうか。現場の負担を実際に減らせるテーマを選び、小さく始めて成功体験を積み重ねることが大切です。ここでは効果的なDXの進め方を、3つの観点から解説していきます。
現場負担を減らすDXテーマの選び方
日報作成や写真整理など時間のかかる事務作業から優先的にデジタル化を進める
建設DXを進めるには、現場の負担を実際に減らせるテーマを優先することが成功のカギです。まず現場の担当者にヒアリングを行い、日常の業務で最も時間をとられている作業をさがします。
またミスが起きやすい工程を洗い出すのです。多くの建設現場では、日報をつくること、写真を整理すること、検査の書類を準備することなど、事務の作業に多くの時間を費やしています。
これらをデジタル化すれば、現場から事務所への往復の時間を削減できます。残業の時間を短くすることに直結するのです。
また導入のむずかしさも考えます。現場での操作が簡単で、すぐに効果が実感できるツールを選ぶことが大切です。
スマートフォンで撮った写真が自動で整理され、報告書に反映される仕組みがあります。音声で入力して日報をつくれるアプリもあるのです。
ITに慣れていない現場の作業員でも、抵抗なく使えます。コストと効果のバランスも重要です。初期の投資が少なく、月の料金がはっきりしているクラウドのサービスから始めるのが賢い選択でしょう。
スモールスタートでDXを定着させる方法
一つの現場で試験導入し具体的な数値効果を示して段階的に適用範囲を拡大する
建設DXは、一度に会社全体で展開するのではありません。小さな規模の仕事で試しに導入し、成功の体験を積み重ねることが大切です。
まず一つの現場や特定の業務にしぼって、ツールを導入します。運用する上での課題を洗い出すのです。たとえば新しい仕事で、施工管理のアプリを試しに使ってみます。
そして効果をはかるのです。導入の最初のころは、現場の担当者から抵抗や不満が出ることもあるでしょう。ていねいなサポートの体制を整えることが必要です。
使い方の講習会を開いたり、困ったときにすぐ相談できる窓口を設けたりします。試しの導入で成果が出たら、具体的な数字で効果を示すのです。
日報をつくる時間が30分から5分に短くなった、検査の書類のミスが半分になったなど、数字で表せる成果を共有します。ほかの現場の導入への意欲が高まるでしょう。
段階的に使う範囲を広げていきます。現場からの意見を反映して、ツールをカスタマイズしていくのです。あせらず着実に進めることで、組織全体にDXが定着します。
建設DXで変わる働き方と組織文化
リモートワークが可能になりデータに基づく合理的判断が業界の体質を変革する
建設DXは、単なる業務の効率化にとどまりません。建設業界の働き方と組織の文化を、根本から変えていくのです。
リモートワークや時差の出勤ができるようになり、仕事と生活のバランスが改善されます。クラウド上で情報を共有できるため、在宅でも設計の変更を確認したり承認の作業ができたりします。
子育てや介護と両立しやすい職場の環境が実現するのです。若手の人材にとって、建設業が魅力的な選択肢となります。人材の確保の改善にもつながるでしょう。
またデータにもとづく意思決定がひろがり、精神論や勘にたよる文化から脱却します。工程の管理や品質の管理が見えるようになり、客観的な事実にもとづいて議論できるのです。
合理的な判断がうながされます。組織のなかのコミュニケーションも変わります。上下の関係にしばられない、自由な意見の交換が生まれるのです。
若手の社員がデジタルのツールを使いこなし、ベテランの社員に新しい知見をていきょうする場面もふえます。こうした文化の変革が、追い込みを生み出す業界の体質そのものを変えていくのです。
まとめ
建設業界の追い込み問題は、人手が足りないこと、工期が短いこと、属人化していること、情報が分断されていることなど、さまざまな要因が複雑にからみあって長年続いてきました。精神論にたよる文化や、忙しさによる改善の先のばしが問題をさらに深刻にしています。
建設DXは単なるデジタル化ではありません。業務のやり方とビジネスのモデルを根本から変える取り組みです。情報を一つにまとめて管理することで、工程の遅れを早くに見つけることができます。
業務を標準化することで、特定の個人への負担が集中することを防ぐのです。DXを進めるには、現場の負担を実際に減らせるテーマを選びます。そして小さく始めて、成功の体験を積み重ねることが大切です。
建設DXは働き方と組織の文化を変え、データにもとづく合理的な意思決定をうながします。追い込みのない健全な建設業界を実現するには、トップの強いコミットメントと現場の協力、そして着実な実行が欠かせません。
2024年4月に時間外労働の上限のルールが適用された今、建設DXによる業務の改革は待ったなしの経営の課題となっています。
FAQ
建設DXを導入すると本当に追い込みはなくなりますか?
建設DXは追い込みを完全になくす魔法ではありませんが、大幅に軽減できます。 情報の一元管理により工程の遅れを早期発見でき、追い込みになる前に対策がとれます。業務の標準化で特定の人への負担集中も防げます。ただし成果を出すには、トップの強いコミットメントと現場の協力、そして着実な実行が必要です。段階的に取り組むことで、確実に追い込みを減らしていけるでしょう。
中小の建設企業でも建設DXは導入できますか?
初期投資が少ないクラウドサービスを選べば中小企業でも導入可能です。 月額料金が明確なクラウド型の施工管理システムなら、大きな設備投資は不要です。スモールスタートで一つの現場から始め、効果を確認しながら段階的に広げていけます。むしろ中小企業のほうが組織が小さいため、意思決定が早く導入しやすい面もあります。コストと効果のバランスを見ながら、無理のない範囲で進めることが成功のカギです。
ITに慣れていない現場作業員でも使えますか?
スマートフォンで簡単に操作できるツールを選べば問題ありません。 写真を撮るだけで自動整理される仕組みや、音声入力で日報を作成できるアプリなど、ITに不慣れな人でも直感的に使えるツールが増えています。導入時には丁寧な講習会を開き、困ったときにすぐ相談できる窓口を設けることが大切です。現場の負担を減らすことが目的ですから、使いやすさを最優先に選定しましょう。
建設DX導入にどのくらいの期間がかかりますか?
スモールスタートなら1〜3ヶ月、全社展開には半年から1年が目安です。 まず一つの現場で試験導入し、運用の課題を洗い出すのに1〜3ヶ月かかります。効果を確認して他の現場に展開する際も、段階的に進めるため半年から1年ほど見込むとよいでしょう。あせらず着実に進めることで、組織全体にDXが定着します。現場からのフィードバックを反映しながら、カスタマイズしていくことも重要です。
BIMやAIなどの新技術は必ず導入しなければいけませんか?
まずは日報作成や写真整理など身近な業務のデジタル化から始めましょう。 いきなり高度な技術を導入する必要はありません。現場の負担を実際に減らせるテーマから優先することが成功のカギです。日報作成時間が30分から5分に短縮されるだけでも、大きな効果があります。成功体験を積み重ねてから、段階的にBIMやAIといった先進技術を検討すればよいのです。
追い込みをなくすには建設DX以外に何が必要ですか?
精神論に頼る文化を変え、データに基づく合理的判断を浸透させることです。 建設DXはあくまでツールであり、組織文化の変革なしには効果が半減します。工期厳守を個人の努力でなく、適切な工程設定と情報共有で実現する仕組みが必要です。またトップダウンでの改革推進と、現場の小さな成功体験の積み重ねが、悪循環を断ち切るカギとなります。働き方と組織文化を根本から変える覚悟が求められます。
情報一元化すると現場の自由度が失われませんか?
むしろ情報の透明性が高まり、現場の判断がしやすくなります。 リアルタイムで全体の状況が見えるため、現場担当者は自信を持って判断できます。事務所に戻らずスマートフォンから直接データを入力でき、移動時間が削減されて本来の業務に集中できます。過去のデータも蓄積されるため、似た案件での経験を活かした判断も可能です。情報共有は自由度を奪うのでなく、より良い判断を支援するのです。
専門用語解説
建設DX: デジタル技術を活用して建設業務のプロセスやビジネスモデルを根本から変革し、競争優位性を確立する取り組みです。単なるIT化やデジタル化とは異なり、業務のやり方そのものを見直して生産性を向上させます。BIMやAI、IoTなどの先進技術を組み合わせ、建設のライフサイクル全体をデータでつなぎます。
属人化: 特定の人の経験や知識に業務が依存し、その人がいなければ仕事が回らない状態を指します。建設現場ではベテランの勘や経験に頼った判断が多く、技術継承が進まないまま属人化が深刻化しています。標準化やデジタル化により、誰でも一定水準の業務を遂行できる仕組みづくりが求められます。
BIM: ビルディング・インフォメーション・モデリングの略で、建物の3次元モデルに設計や施工の情報を集約する技術です。設計変更の影響を即座に確認でき、手戻りを大幅に削減できます。建設DXの中核技術として、企画から維持管理まで一貫したデータ活用を可能にします。
クラウド型施工管理システム: インターネット上のサーバーで情報を管理する施工管理のツールです。現場担当者がスマートフォンやタブレットから直接データを入力でき、事務所に戻る必要がありません。設計図面、工程表、日報、写真などあらゆる情報が一か所に集約され、リアルタイムで更新されます。
有効求人倍率: 求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値です。建設業は2025年7月時点で5.04倍と極めて高く、深刻な人手不足の状態にあります。1倍を超えると求人のほうが多い売り手市場を意味し、企業にとっては人材確保が困難な状況です。
i-Construction 2.0: 国土交通省が推進する建設現場の生産性向上プロジェクトです。2040年度までに建設現場の省人化を3割、生産性を1.5倍に向上することを目指しています。施工のオートメーション化、データ連携のオートメーション化、施工管理のオートメーション化を3本の柱としています。
スモールスタート: 小規模な範囲で試験的に新しい取り組みを始め、成功体験を積み重ねながら段階的に拡大していく方法です。建設DXでは一つの現場や特定の業務から導入し、効果を確認してから全社展開します。失敗のリスクを抑えつつ、組織全体への定着を図ることができます。
執筆者プロフィール
本記事は、製造業・建設業のDX推進と業務改善に20年以上携わってきた小甲 健が執筆しました。
AXConstDX株式会社のCEOとして、建設業界の現場課題を深く理解し、デジタル技術を活用した実践的な解決策を提供しています。これまでCADシステムのゼロからの構築、赤字案件率0.5%未満の実績、提案受注率83%という成果を通じて、現場の追い込み問題や属人化の課題に向き合ってきました。
建設業における追い込みの根本原因は、情報の分断と属人化にあります。私自身、数多くの建設企業のDX推進を支援する中で、クラウド型施工管理システムの導入により日報作成時間が30分から5分に短縮され、現場の負担が劇的に改善された事例を数多く見てきました。
主な専門領域
- 製造業・建設業に特化したDX推進支援
- 生成AIを活用した業務効率化
- CAD・BIMシステムの構築と導入コンサルティング
- 建設現場の業務改善と標準化
- 経営戦略とマーケティング支援
実績と経験
- ソフトウェア開発歴20年以上
- CADシステムのゼロからの構築実績
- 赤字案件率0.5%未満を達成
- 提案受注率83%の高い成約実績
- ハーバードビジネスレビュー寄稿2回
- シリコンバレー視察5回以上、CES視察1回
技術起点の経営者として、建設業界の慣習に精通しつつも、グローバルな視点から先進的なデジタル技術の導入を推進しています。btraxデザイン思考研修やシリコンバレー視察を通じて得た知見を、日本の建設業界の実情に合わせて実装することを得意としています。
ドラッカーの経営哲学、孫正義氏の先見性、出口治明氏の合理的思考に影響を受け、精神論ではなくデータに基づく合理的な意思決定を重視しています。建設業界の追い込み問題を解決し、働き方改革を実現するため、実践的なDX推進支援を続けています。