測量に数日、記録作業で残業続き。そんな天端管理の悩みが建設DXで劇的に変わります。ドローンなら1時間、ICT施工なら丁張不要の時代です。2025年度の原則化を前に今始めれば、人手不足も働き方改革も同時に解決できます。中小企業でも踏み出せる一歩をご紹介します。
はじめに

建設現場で日常的に使われる天端という言葉をご存じでしょうか。構造物の高さや水平精度を左右する重要な管理項目です。
従来は人手に頼る測量が中心で、時間と労力がかかっていました。しかし現在はICT施工やドローン測量の普及により、天端管理の手法が大きく変わりつつあります。
本記事では天端の基本から建設DXを活用した最新の管理手法まで、わかりやすく解説します。
天端とは何か?現場での意味と重要性
建設現場における天端管理の基礎知識として、その定義から実際の活用場面、品質管理上の重要性まで順に見ていきます。正確な天端管理は構造物の安全性と施工品質を確保するために欠かせません。

天端(てんば)とは?建設現場での定義
構造物の上端面の高さを示す基準点で、設計値との差異管理が施工品質を左右します。
天端とは構造物の最も高い部分や上端面を指す建設用語です。盛土や擁壁、護岸、ダムなど、あらゆる構造物において設計図で指定された高さの基準となる部分を意味します。
たとえば道路工事では路盤の上面、河川工事では堤防の頂部が天端に該当するでしょう。この天端の高さや水平度が設計値からずれると、後工程での手戻りが発生したり構造物の機能を損なったりする恐れがあります。
そのため施工中は測量機器を用いて天端の標高や勾配を繰り返し確認し、設計値との差異を管理することが求められます。天端管理の精度が施工全体の品質を左右するといっても過言ではありません。
天端が使われる構造物と施工場面
道路、河川、ダム、擁壁など全工種で天端管理が実施され、次工程への品質保証となります。
天端は土木工事のあらゆる場面で重要な管理項目として扱われます。道路工事では路床や路盤の各層で天端高さを確認し、舗装前の平坦性を確保するのです。
河川工事では堤防天端の高さが洪水時の安全性に直結するため、ミリ単位での管理が必要となります。また擁壁やダムでは天端の高さだけでなく、幅や勾配も設計値通りに仕上げることが求められるでしょう。
基礎工事においても杭頭やコンクリート基礎の天端レベルは上部構造の精度に影響するため、丁張や測量機で厳密に管理されます。このように天端管理は構造物の種類を問わず施工の各段階で実施され、次工程へ引き継ぐための品質保証の役割を果たしています。
天端管理が品質・安全に重要な理由
わずかな誤差が災害リスクや手戻り工事を招き、工期とコストに直結する重要項目です。
天端管理の精度は構造物の安全性と機能性に直接影響を与えます。設計値から外れた天端高さのまま施工を進めると、排水勾配が確保できず水たまりが発生したり構造物の強度が不足したりする恐れがあるのです。
特に道路や河川堤防ではわずかな高さの誤差が災害時の被害拡大につながる可能性もあります。また天端のずれは後工程での修正作業を招き、工期延長やコスト増加の原因となるでしょう。
品質管理の観点からも天端は出来形管理の重要な検査項目として位置づけられており、発注者による検査でも必ずチェックされます。正確な天端管理により手戻りを防ぎ、安全で高品質な構造物を効率的に築くことが現場に求められる基本的な責務となっています。
天端管理の従来手法と課題とは?
人手による従来の天端管理には精度や効率の面で多くの課題が存在しました。ここでは測量作業の問題点から精度不足が工事に与える影響、さらに記録や報告業務の非効率性まで具体的な課題を整理します。

人手測量による天端管理の問題点
広範囲で数日要する測量は人手不足と施工中断を招き、天候にも左右されます。
従来の天端管理ではレベルやトータルステーションを使った人手測量が中心でした。この方法では測量技術者が現場を歩き回り、複数の測点で高さを計測する必要があります。
広範囲の現場では数日かかることも珍しくありません。また測量には最低でも二人一組の作業が必要で、人手不足が深刻な建設業界では技術者の確保自体が困難になっています。
さらに測量中は重機を止めなければならず、施工の中断が生産性を低下させていました。天候にも左右されやすく雨天時や強風時には測量精度が落ちるため、スケジュール管理も難しくなります。
加えて測量結果を手作業で野帳に記録し事務所で図面と照合する作業にも時間がかかり、リアルタイムでの管理が困難でした。
天端精度不足が工事に与える影響
手戻り工事による工期遅延とコスト増加、検査不合格が企業信頼を損ないます。
天端の精度不足は工事全体に深刻な影響を及ぼします。設計値からのずれが大きい場合、盛土のやり直しや削り込みといった手戻り工事が発生し、工期の遅れとコスト増加を招くのです。
特に舗装工事では下層の天端精度が不十分だと、舗装厚にばらつきが生じて耐久性が低下します。河川堤防では天端高さの不足が洪水時の越水リスクを高め、地域住民の安全を脅かす恐れもあるでしょう。
また天端管理の不備は発注者検査で不合格となり、補修や再施工を求められることになります。これらの手戻りは単なるコスト増だけでなく、現場の士気低下や企業の信頼失墜にもつながるのです。
精度の高い天端管理は単なる品質管理ではなく、プロジェクト全体の成否を左右する重要な要素となっています。
記録・報告作業が非効率になる理由
手書き野帳からの転記、図面照合、報告書作成が技術者の残業時間を圧迫します。
従来の天端管理では測量後の記録と報告作業に多大な時間を要していました。現場で手書きした測量野帳を事務所に持ち帰り、表計算ソフトに入力してから設計値と比較する作業はミスが起きやすく手間もかかります。
さらに出来形管理図や品質管理表の作成には測量データを図面に転記し、許容範囲内かどうかを一つ一つ確認する必要がありました。これが技術者の残業時間を増やす原因となっていたのです。
また紙ベースの記録は保管や検索が煩雑で、過去のデータを参照したい時にすぐ見つからないという問題もあります。発注者への報告書作成でも測量結果を整理して書類化する作業に丸一日かかることも珍しくありません。
こうした非効率な記録や報告業務が本来施工管理に充てるべき時間を圧迫していました。
建設DXで天端管理はどう変わる?
ICT技術の導入により天端管理は飛躍的に効率化されつつあります。ここでは国土交通省が推進するICT施工の仕組みからドローン測量や3次元データ活用の具体的な手法、さらに生産性向上につながる理由まで解説します。

ICT施工で天端管理はどう効率化する?
建機搭載センサーで設計値と実測値をリアルタイム比較し、出来形を自動管理できます。
ICT施工では3次元設計データと施工現場の測量データをリアルタイムで比較し、天端の出来形を自動管理できます。建設機械にGNSS受信機や傾斜センサーを搭載することで、オペレーターは設計値との差異をモニター上で確認しながら施工できるのです。
従来のような丁張設置や人手測量が不要になります。国土交通省は2025年度からICT土工を原則化する方針を示しており、天端管理の効率化は業界標準となりつつあるでしょう。
また施工データは自動記録されるため、出来形管理図の作成も大幅に簡素化されます。人材不足が深刻な建設業界においてICT施工による省人化は生産性向上の切り札として期待されています。
中小企業向けには後付け装置を認定するICT建設機械認定制度も開始され、導入のハードルが下がっています。このような建設業界のデジタル化支援は、製造業や建設業の業務改善を専門とする当社でも多くの企業に提案している取り組みです。
ドローン測量で天端を計測する方法
レーザーや写真で広範囲を1時間で測量し、施工中断なく数センチ精度のデータ取得が可能です。
ドローンを活用した天端測量は従来の人手測量と比べて作業時間を大幅に短縮できます。UAVレーザー測量ではドローンに搭載したレーザースキャナーが地表にレーザー光を照射し、反射時間から距離を計測することで数センチメートル精度の3次元点群データを取得するのです。
植生がある現場でもレーザーが葉の隙間を通過して地表面を捉えるため、正確な地盤高を把握できます。また写真測量ではドローンで撮影した複数の画像を専用ソフトで処理し、3次元モデルを生成するでしょう。
広範囲の現場でも1時間程度で測量が完了し、測量中も重機を止める必要がないため施工の中断時間を最小限に抑えられます。取得したデータは即座に解析でき現場で天端の出来形を確認できるため、迅速な施工判断が可能になります。
3次元データで天端を共有する仕組み
クラウド上の3次元モデルで関係者全員がリアルタイムに天端情報を視覚的に確認できます。
BIM/CIMと呼ばれる3次元データ活用により、天端情報を関係者全員で共有できるようになりました。2023年度から国土交通省の公共工事では原則BIM/CIMが適用され、設計から施工、維持管理まで3次元モデルを連携させることが標準となっています。
クラウドベースのプラットフォームを使えば現場で取得した天端の測量データを即座にアップロードし、事務所や発注者がリアルタイムで確認できるのです。3次元モデル上では天端の高さを色分け表示し設計値との差異を視覚的に把握できるため、従来の図面では気づきにくかった問題点も早期に発見できます。
また属性情報を付加することでいつ誰がどの測定機器で計測したかといった品質管理情報も一元管理できるでしょう。こうしたデータ共有により手戻りを防ぎ、工事全体の品質向上につながっています。
天端DXが生産性向上につながる理由
測量時間が数日から数時間に短縮され、2040年度に省人化3割を目指す国策の柱です。
天端管理のデジタル化は建設現場の生産性を飛躍的に向上させます。従来は測量に数日かかっていた作業がドローンやICT建機により数時間で完了するため、工期短縮に直結するのです。
また測量データの自動記録により出来形管理図や品質管理表の作成時間が大幅に削減され、技術者は本来の施工管理業務に集中できるようになります。国土交通省はi-Construction2.0として2040年度までに省人化3割、生産性1.5倍という目標を掲げており、天端DXはその実現に不可欠な要素でしょう。
さらにリアルタイムなデータ共有により問題発生時の意思決定が迅速化し、手戻りによる損失を最小限に抑えられます。労働時間の削減は働き方改革にも貢献し若手人材の確保にもつながるのです。
天端DXは単なる効率化ではなく建設業界全体の構造改革を促す重要な取り組みとなっています。
天端DXを現場で進める実践方法
天端DXの導入を成功させるには段階的なアプローチと適切な準備が欠かせません。ここでは導入時の注意点から中小企業でも実践できる具体的な手順、さらに天端管理を起点とした現場DXの展望まで解説します。
天端DX導入で失敗しない注意点
小規模試行から始め、人材育成と既存システム連携、発注者協議を並行して進めます。
天端DXの導入で最も重要なのは目的を明確にすることです。単に最新技術を導入するだけでは効果は限定的で、自社の課題解決につながる形で活用することが成功の鍵となります。
また一度に全ての工程をデジタル化しようとすると現場が混乱してしまいます。まずは小規模な現場で試行し効果を確認してから水平展開する段階的なアプローチが推奨されるでしょう。
人材育成も欠かせません。ICT機器の操作やデータ解析には一定のスキルが必要で、人材開発支援助成金などを活用した研修実施が効果的です。さらに既存の施工管理システムとの連携も考慮すべきでしょう。
新旧システムが分断されているとかえって業務が煩雑になる恐れがあります。発注者との協議も重要でBIM/CIM活用の範囲や成果品の仕様について事前に合意しておく必要があります。
中小建設業でもできるDX導入手順
スマホ日報から始め、測量外注で体験後、補助金活用で後付け装置を段階導入できます。
中小建設業でも段階的に天端DXを導入できます。第一段階としてスマートフォンやタブレットを活用した写真管理や日報のデジタル化から始めることで、ペーパーレス化の効果を実感できるでしょう。
第二段階ではドローン測量サービスを外注することで、大型機材への投資なしに3次元データ活用を体験できます。測量会社が提供するパッケージサービスを利用すれば1現場あたり数十万円程度から導入可能です。
第三段階としてICT建設機械の後付け装置導入を検討します。新車購入と比べて初期投資を抑えられ既存の建機を活用できるのです。またものづくり補助金や中小企業新事業進出補助金などICT導入を支援する制度も活用できます。
重要なのは自社の規模や予算に合わせた無理のない計画を立て、成功体験を積み重ねながら段階的に拡大していくことです。当社では20年以上のソフトウェア開発経験を活かし、中小企業のDX導入を段階的に支援しています。
天端管理から始める現場DXの展望
2026年以降はデジタルツインで施工データ統合管理が標準化し、全業務に波及します。
天端管理のデジタル化は現場DX全体への第一歩となります。天端データの3次元化により土量計算や施工計画の最適化が容易になり、プロジェクト全体の見える化が進むでしょう。
さらに蓄積されたデータはAI解析により最適な施工手順の提案や品質予測に活用できる可能性があります。2026年以降は国土交通省がICT施工ステージ2として工事全体の効率化を推進する方針を示しており、天端データを含む施工データの統合管理が標準となるのです。
また建機の位置情報とリアルタイム連携したデジタルツインにより、遠隔地からでも施工状況を把握できる環境が整いつつあります。天端DXで培ったノウハウは安全管理や品質管理など他の業務にも展開でき、現場全体の生産性向上につながるでしょう。
天端管理という具体的な課題から始めることでDXへの抵抗感を減らし、組織全体の変革を促すことができるのです。
まとめ
天端管理は構造物の品質と安全性を左右する重要な要素でありながら、従来は人手に頼る非効率な作業が課題となっていました。しかし建設DXの進展によりICT施工やドローン測量、3次元データ共有が実用化され、天端管理の効率と精度が飛躍的に向上しています。
国土交通省は2025年度からICT土工を原則化し、2040年度には省人化3割、生産性1.5倍という目標を掲げています。中小企業でも段階的な導入により補助金や認定制度を活用しながら天端DXに取り組むことが可能です。
天端管理のデジタル化を起点として現場全体のDXを推進することで、人手不足や働き方改革といった建設業界の課題解決につながることが期待されます。
FAQ
天端管理とは何ですか?
構造物の上端面の高さを設計値通りに管理する施工品質管理の重要項目です。
天端管理とは道路、河川堤防、ダムなど土木構造物の最上部の高さや勾配を測量し、設計値との差異を確認する作業を指します。わずかな誤差が後工程の手戻りや構造物の安全性低下につながるため、施工の各段階で繰り返し確認することが求められます。正確な天端管理により品質を確保し、検査合格とコスト削減を実現できます。
従来の天端管理にはどのような課題がありましたか?
人手測量に数日かかり、記録作業の非効率性が技術者の負担となっていました。
従来はレベルやトータルステーションを使った人手測量が中心で、広範囲の現場では数日を要していました。また測量中は重機を停止する必要があり、施工の中断が生産性を低下させていました。さらに測量野帳からの手作業転記、図面との照合、報告書作成に多大な時間がかかり、技術者の残業時間を圧迫していたのです。
ICT施工で天端管理はどう変わりますか?
建機搭載センサーでリアルタイム管理が可能となり、丁張設置が不要になります。
ICT施工では建設機械にGNSS受信機や傾斜センサーを搭載し、3次元設計データと実測値を自動比較できます。オペレーターはモニター上で設計値との差異を確認しながら施工できるため、従来必要だった丁張設置や人手測量が不要です。施工データは自動記録されるため出来形管理図の作成も簡素化され、大幅な省力化を実現します。
ドローン測量は天端管理にどう活用できますか?
広範囲を1時間程度で測量でき、施工を中断せず数センチ精度のデータを取得できます。
ドローンに搭載したレーザースキャナーや高解像度カメラにより、従来数日かかっていた測量が1時間程度で完了します。UAVレーザー測量では植生がある現場でも地表面を正確に捉え、3次元点群データを取得できます。測量中も重機を止める必要がないため施工の中断時間を最小限に抑え、取得データを即座に解析して迅速な施工判断が可能です。
中小建設業でも天端DXを導入できますか?
スマホ活用から始め、測量外注、補助金活用で段階的に導入できます。
中小企業でも段階的なアプローチで天端DXに取り組めます。第一段階はスマートフォンやタブレットで写真管理や日報をデジタル化し、ペーパーレス化の効果を実感します。第二段階ではドローン測量を外注し、数十万円程度から3次元データ活用を体験できます。第三段階でものづくり補助金などを活用してICT建機の後付け装置を導入すれば、初期投資を抑えて本格的なDXを推進できます。
BIM/CIMは天端管理にどう役立ちますか?
3次元モデル上で関係者全員が天端情報をリアルタイムに視覚的に共有できます。
BIM/CIMによりクラウド上の3次元モデルで天端の測量データを即座に共有でき、事務所や発注者がリアルタイムで確認できます。天端の高さを色分け表示することで設計値との差異を視覚的に把握でき、従来の図面では気づきにくかった問題も早期発見できます。いつ誰がどの機器で計測したかの品質管理情報も一元管理でき、手戻りを防いで工事全体の品質向上につながります。
天端DX導入で失敗しないためのポイントは何ですか?
目的を明確にし、小規模試行から始めて段階的に拡大することが成功の鍵です。
最も重要なのは自社の課題解決につながる形で活用目的を明確にすることです。一度に全工程をデジタル化せず、まず小規模現場で試行して効果を確認してから水平展開します。人材育成も欠かせず、人材開発支援助成金を活用した研修実施が効果的です。また既存システムとの連携を考慮し、新旧システムの分断を避けることも重要でしょう。発注者とBIM/CIM活用範囲や成果品仕様について事前合意しておくことも成功のポイントです。
専門用語解説
天端(てんば): 構造物の最も高い部分や上端面を指す建設用語です。盛土、擁壁、護岸、ダムなど、あらゆる土木構造物において設計図で指定された高さの基準となる部分を意味します。道路工事では路盤上面、河川工事では堤防頂部が該当し、設計値通りの精度管理が施工品質を左右します。
出来形管理: 施工された構造物の寸法や形状が設計図通りに仕上がっているかを確認する品質管理活動です。天端の高さ、幅、勾配などを測量して設計値と比較し、許容範囲内に収まっているかを検査します。出来形管理図として記録され、発注者検査の重要な資料となります。
ICT施工: 情報通信技術を活用して建設機械を制御し、測量から施工、検査までを効率化する施工手法です。3次元設計データと建機搭載のGNSSや傾斜センサーを連携させることで、設計値通りの施工を自動支援します。国土交通省が推進するi-Constructionの中核技術で、2025年度からICT土工が原則化されます。
UAVレーザー測量: ドローンに搭載したレーザースキャナーで地表を計測し、3次元点群データを取得する測量手法です。レーザー光の反射時間から距離を計測することで、数センチメートル精度の地形データを短時間で取得できます。植生がある現場でもレーザーが葉の隙間を通過して地表面を捉えるため、正確な地盤高の把握が可能です。
BIM/CIM: 建築情報モデリングと土木情報モデリングの総称で、3次元モデルに属性情報を付加して設計から維持管理まで一貫して活用する手法です。2023年度から国土交通省の公共工事で原則適用され、関係者間の情報共有を効率化します。天端管理ではクラウド上の3次元モデルで測量データをリアルタイム共有できます。
GNSS受信機: 全球測位衛星システムの信号を受信して位置情報を取得する装置です。GPS、準天頂衛星みちびき、GLONASSなど複数の衛星システムを組み合わせることで、数センチメートル精度の測位が可能です。ICT建機に搭載され、リアルタイムで建機の位置と天端の高さを測定します。
丁張(ちょうはり): 設計図通りの高さや位置を示すために現場に設置する木杭と水糸による仮設の目印です。従来の施工では丁張を基準に構造物の位置や高さを確認していましたが、設置と撤去に時間がかかり、強風や重機接触で狂いが生じる問題がありました。ICT施工ではGNSSによる自動測位により丁張設置が不要になります。
i-Construction2.0: 国土交通省が2024年に策定した建設現場の自動化を目指す施策です。2040年度までに省人化3割、生産性1.5倍を目標とし、従来のICT活用から自動化施工へのシフトを推進します。2026年以降はICT施工ステージ2として工事全体の効率化を図り、デジタルツインによる施工データの統合管理を標準化する方針です。
執筆者プロフィール
本記事は、建設業と製造業のデジタル変革を専門とするAXConstDX株式会社CEOの小甲 健が執筆しました。
20年以上のソフトウェア開発経験を持ち、CADシステムのゼロベース構築から現場の業務改善まで幅広く支援してきました。特に建設業界においては、ICT施工の導入支援やBIM/CIM活用のコンサルティングを通じて、中小企業でも実践可能なDX推進を実現しています。
専門分野と実績
- ソフトウェア開発歴20年以上、CADシステムのゼロベース構築実績
- 赤字案件率0.5%未満、提案受注率83%を誇る高い実行力
- 製造業・建設業に特化した生成AI活用とDX推進支援
- BIM/CIM導入から施工管理システム最適化まで一貫サポート
グローバル視点とコンテンツ創出力
- ハーバードビジネスレビューへの寄稿実績
- シリコンバレー視察5回以上、btraxデザイン思考研修修了
- CES視察を通じた最新技術トレンドの把握
- 技術者視点と経営者視点を融合した戦略提案
建設業界の課題を現場目線で理解し、段階的かつ実践的なDX導入をサポートしています。天端管理のような具体的な業務から始めて組織全体の変革につなげる、無理のないアプローチを提案いたします。