ベテランの技術は若手に継承されず、紙の野帳や墨だけでは協力会社との情報共有も難しい状況です。筆者は20年以上にわたり建設業界のDX支援に携わり、多くの現場でこうした課題に向き合ってきました。この記事では、レベル出しという身近な測量作業を起点に、BIMや3Dスキャン、クラウドなどのデジタル技術をどう活用すれば現場が変わるのかを、実践的な知見を交えて解説します。

5つの実践ステップと3つの心構えを知ることで、小さく始めて着実に成果を出す方法が見えてきます。建設DXの第一歩を、今日から踏み出しましょう。

レベル出しとは？建設現場の基準を守る測量作業の基本

建設現場では、レベル出しが全ての工事の基準となります。

高さを正確に測り、現場に展開することで施工品質と安全性が確保されるからです。ここではレベル出しの基本的な役割と、従来の方法が抱える課題を解説していきます。

レベル出しの役割と現場での重要性

高さ基準を現場に写し取る基礎作業で、ミスは工程遅延に直結する重要な測量です

レベル出しは、建物や土工の高さ基準を現場に正確に写し取る基礎作業です。施工品質と安全性を確保するための要となります。

水準測量や丁張り、通り芯の設定などが含まれます。基準高から設計レベルや各階レベルを求め、オートレベルやレーザーレベルなどを使って丁張りや躯体に墨として転写していきます。

コンクリート打設や土工、仕上げ工事の許容誤差を守るための前提です。現場では「レベルが全ての基準」として機能しています。ここでのミスは手戻りやクレーム、工程遅延に直結するため高い精度が求められるのです。

従来のレベル出しが抱える3つの課題

属人化、情報分断、安全リスクがアナログ運用の限界を示しています

従来型のレベル出しは職人技に依存しており、アナログ運用ならではの限界があります。現場で日々発生している課題を整理すると、大きく3つの問題点が浮かび上がってきます。

課題1：属人化とノウハウの継承困難 ベテラン測量者の感覚や暗黙知に頼りがちで、若手にノウハウが継承されにくい状況です。測量結果が紙の野帳や墨だけに残るため、全体最適な議論が困難になっています。
課題2：設計と現場の情報分断 設計図と現場のレベル情報が分断され、設計変更の反映漏れや勘違いが起こりやすくなっています。協力会社間で高さの基準が共有されず、干渉や仕上がり不整合が発生するのです。
課題3：安全リスクと非効率な作業 足場上や危険箇所での測量が必要になり、転落リスクが高まります。レベル確認のための移動ややり直しが多く、付加価値の低い作業時間がかさんでしまいます。

このアナログなレベル出しの世界を、データとデジタル技術で拡張するのが建設DXです。

建設DXでレベル出しはどう変わる？3つの統合視点

建設DXは、BIMや3Dスキャン、ドローンやクラウドなどを組み合わせて建設プロセス全体を変革する取り組みです。

レベル出しは空間座標と高さ情報というデータの入り口として重要な役割を担います。ここではDXによってレベル出しがどのように進化するかを、3つの視点から解説していきます。

BIM/CIMとの連携で3Dデータと現場を直結

BIMモデルと現場の差分を可視化し、設計と施工の断絶を解消します

建設DXでは、BIMモデル上のレベル情報を現場の測量座標系と紐づけることが可能になります。

GLや梁下、天井高などの情報を3Dモデルと現場のレベル出し結果の差分として可視化できるのです。これにより合意形成や是正判断に活用できます。

レベル出しを現場だけの作業からプロジェクト全体のデータ入力ポイントに昇格させることが、DXの実務的な第一歩です。設計と施工の情報断絶が解消され、変更管理もスムーズになります。

ロボット測量とドローンで自動化・省人化を実現

一人測量や広範囲自動取得により、安全性と効率を同時に向上させます

計測作業の自動化と省人化が急速に進んでいます。最新の測量技術を活用することで、従来の人手による測量と比べて大幅な効率化が可能になりました。

ロボティック測量システム GNSSやトータルステーション連動の自動追尾により、ロボティックトータルステーションによる一人測量が可能になりました。複数人が必要だった作業を一人で完結できます。
ドローンによる広範囲計測 ドローン測量やUAV搭載3Dレーザースキャナで、地形や出来形を広範囲に自動取得できます。従来は数日かかった測量が数時間で完了するようになりました。
地上型3Dスキャナの活用 地上型3Dスキャナを使えば、躯体形状とレベルを高密度に取得できます。人が立ち入りにくい危険箇所でも安全に計測が可能です。

これらの技術により、危険箇所での作業を削減し安全性を向上させながら、同時に測量精度と速度を両立できるのです。計測データはデジタル形式で保存されるため、後工程での活用や分析も容易になります。

クラウド共有でリアルタイムの情報連携が可能に

関係者全員が同じ高さ情報を確認でき、履歴管理と原因究明が容易になります

レベル出し結果をクラウドに自動アップロードし、写真や位置、値を紐づけて蓄積できます。

元請や協力会社、設計者や施主が同じビューア上で高さ情報を確認できるようになるのです。従来の紙の野帳や墨だけでは実現できなかった、リアルタイムでの情報共有と履歴管理が可能になります。

設計変更や施工手順の変更にも柔軟に対応できます。データのトレーサビリティが確保されることで、問題発生時の原因究明が容易になり品質管理の精度も向上するのです。

協力会社間での情報断絶が解消され、プロジェクト全体での最適化が図れます。

レベル出しDXで使える4つのデジタル技術

レベル出しのデジタル化には、さまざまな技術が活用できます。

導入コストや現場環境に応じて選択できるよう、代表的な4つの技術とその活用方法を紹介していきます。初めて導入する場合でも取り組みやすい順に解説します。

デジタルレベルとクラウド連携で帳票作業を自動化

測定値を自動記録しクラウド共有することで、導入コストも低く第一歩に最適です

デジタルレベルや電子野帳は、測定値を自動記録します。

測量路線や高低差、レベル計算を機械処理することでヒューマンエラーを削減し、帳票作成も自動化できるのです。測定データを現場からそのままクラウドへ送信し、所内や協力会社と即時共有できます。

従来の紙ベース運用とデジタル化後の違いを、以下の表で比較してみましょう。

表1：紙ベースとデジタルレベルの比較

項目	従来の紙ベース運用	デジタルレベル・クラウド連携
データ記録	手書きで野帳に記録	自動記録・即時保存
計算処理	手計算でミスが発生	機械処理でエラー削減
情報共有	紙を持ち帰り転記	リアルタイムでクラウド共有
帳票作成	手作業で時間がかかる	自動生成で大幅短縮
データ活用	過去データの検索困難	データベース化で分析容易
導入コスト	低い	比較的低い

従来の紙ベース運用と比べて、情報伝達のスピードと正確性が大幅に向上します。データに写真やメモ、位置情報を付けることで後工程からも理解しやすい状態になり、施工履歴の可視化と品質管理の効率化が実現するのです。

導入コストも比較的低く抑えられるため、DX推進の第一歩として最適でしょう。

トータルステーションとBIM/CIM連携で墨出しを省人化

一人で高精度な墨出しが可能になり、設計変更への対応も迅速化します

トータルステーションで測量した基準点や通り芯を、BIMモデルの座標系と一致させることでモデルのレベル情報をそのまま現場に展開できます。

レイアウトロボットは、モデル上で指示したポイントを現場に投影する機器です。柱芯やスリーブ位置、レベルなどを一人で高精度に墨出しできるため、省人化と精度向上を両立します。

表2：従来の墨出しとBIM連携後の比較

項目	従来の墨出し作業	BIM連携・レイアウトロボット
必要人数	2〜3人	1人
作業時間	1日〜数日	数時間〜1日
精度	±数mm（人的ミス含む）	±1mm以下
設計変更対応	手作業で再墨出し	モデル更新で即座に対応
手戻りリスク	高い	低い
人手不足への寄与	影響なし	大幅な省人化

従来は複数人で行っていた墨出し作業が一人で完結するため、人手不足の解消にも寄与するのです。BIMモデルとの連携により設計変更への対応も迅速になり、手戻りリスクを大幅に低減できます。

ドローン・3Dレーザースキャナで出来形管理を効率化

広範囲を短時間で計測し、レベル不良を早期発見して手戻りを防ぎます

ドローン撮影とSfMやレーザースキャンで地形モデルを作り、設計面との高低差を一括把握できます。

従来のレベル飛行的な均一高度撮影から、地形追従飛行による効率的な計測へと移行しました。土工や造成の出来形確認が大幅に効率化されています。

地上型3Dスキャナで躯体形状とレベルを高密度に取得し、BIMモデルと差分比較することで局所的なレベル不良や変形を早期に発見できるのです。手戻りコストを低減します。

広範囲の計測が短時間で完了するため、従来の測量と比べて工程への影響も最小限に抑えられます。

現場アプリとAR/VRで施主への説明もスムーズに

ARで高さを可視化し、施主や非技術者にも直感的に理解してもらえます

レベル出し結果を現場アプリに入力し、図面や3Dモデル上にピン立てして見える化します。

撮影写真とレベルを紐づけることで、施工状況を時系列で追跡できるようになるのです。端末をかざすと設計レベルや仕上がり高さが重ねて表示されるARやVRの仕組みにより、施主や非技術者でも高さイメージを直感的に掴めます。

説明や合意形成がスムーズになります。スマホやタブレットで手軽に利用できるため、現場での導入障壁が低く職人の世代を問わず活用しやすい点も大きなメリットです。

可視化により施工前の問題発見が容易になり、品質向上にも貢献します。

レベル出しDX導入の5ステップ実践法

実務で無理なくDXを進めるには、いきなりフルDXではなく段階的なアプローチが重要です。

ここでは現場で実践しやすい5つのステップを順を追って解説します。小さく始めて着実に成果を積み上げることが、DX定着の秘訣なのです。

ステップ1：現状の作業フローとムダを洗い出す

手順や機器、ミスの傾向を棚卸しし、改善の優先順位を明確にします

レベル出しフローを分解して小さく始めるのが現実的です。

現在のレベル出しの手順や使っている機器、帳票やミスの傾向、工数を棚卸ししていきます。どこで待ち時間ややり直し、伝達ミスが発生しているかを作業単位で分解するのです。

以下の表を活用して、現状を体系的に整理しましょう。

表3：現状分析チェックリスト

分析項目	確認ポイント	現状把握の視点
作業手順	レベル出しの工程・順序	どの工程に時間がかかるか
使用機器	測量機器・ツールの種類	古い機器や故障が多い箇所はないか
帳票類	野帳・報告書の形式	転記作業や二重入力が発生していないか
ミスの傾向	エラーが起きやすい場面	どの工程・担当者でミスが多いか
工数・時間	各作業にかかる時間	待ち時間・やり直しがどこで発生するか
伝達方法	情報共有の手段	口頭・紙・メールのどれを使っているか

現場の実態を正確に把握することで、どこから改善すべきかの優先順位が明確になり効果的なDX推進が可能になります。現場の声を丁寧に拾い上げ、ベテランの暗黙知や若手の困りごとを可視化することが成功への第一歩です。

ステップ2：紙の帳票をやめる「小さなDX」から始める

電子野帳やクラウド帳票など、コストの低い施策から成功体験を作ります

大規模なシステム刷新ではなく、現場で毎日使う小さなツールから導入することが重要です。紙をやめる領域からスタートすることで、現場の抵抗感を減らしながらデジタル化のメリットを実感してもらえます。

電子野帳・クラウド帳票の導入 測定結果を紙の野帳ではなく電子野帳に記録し、クラウド上で即座に共有できるようにします。帳票作成の手間が大幅に削減されます。
写真連携機能の活用 測定箇所の写真を位置情報と紐づけて記録することで、後工程からも測定状況が理解しやすくなります。記録の信頼性も向上します。
既存機器への通信機能追加 新しい機器を購入するのではなく、既存の測量機器に通信機能を付加するなど、置き換えコストの低い施策を優先しましょう。初期投資を抑えられます。

成功体験を積み重ねることで、次のステップへの意欲も高まり段階的なDX推進が加速します。導入初期は使いやすさと即効性を重視し、複雑な機能は後回しにすることが定着のポイントです。

ステップ3：プロジェクト共通の高さ基準ルールを決める

関係者全員で高さ基準を標準化し、情報断絶を根本から解消します

プロジェクト共通のTPやBM、座標系やレベル表記ルールを定義します。

BIMモデルと整合させることで、元請や協力会社、設計や測量会社の間でどの高さを基準に話すかを標準化するのです。ルールが統一されていないと、デジタル化しても情報の断絶は解消されずむしろ混乱が増す恐れがあります。

プロジェクト開始時に関係者全員で合意形成を行い、文書化して周知徹底することが重要です。標準ルールがあることで新規参入の協力会社もスムーズにプロジェクトに参画でき、全体の生産性向上につながります。

ステップ4：重要箇所でBIM連携を試して成功体験を作る

パイロットプロジェクトで検証し、DXが楽になるイメージを共有します

一部の重要箇所から、BIMとトータルステーション、3Dスキャンのデータ統合を試行します。

成功体験を現場で共有することでDXは手間が増えるというイメージを楽になるに変えられるのです。全現場を一度に変えるのではなく、パイロットプロジェクトで検証しながら段階的に展開しましょう。

リスクを最小化しながら確実にノウハウを蓄積できます。現場からのフィードバックを反映しながら運用を改善し、次の現場ではより洗練された形で導入できるようになります。

ステップ5：データを分析して次の現場に活かす

蓄積データから改善点を見つけ、継続的な改善サイクルで競争力を高めます

蓄積されたレベルデータを分析し、バラツキの大きい工程や業者を特定します。

教育や手順見直し、機器更新などを通じて次現場では初期からDX前提のフローにしていくのです。データは蓄積するだけでなく、分析して改善につなげることで初めて価値を生み出します。

工程ごとの精度傾向や作業時間の推移を可視化し、ベストプラクティスを標準化することで組織全体の施工品質と生産性が向上するでしょう。継続的な改善サイクルを回すことでDXの効果を最大化し、競争力の源泉とすることができます。

レベル出しDXを成功させる3つの心構え

デジタル技術を導入しても、現場に定着しなければ意味がありません。

最後にレベル出しDXを確実に成功させるための3つの心構えを紹介します。技術よりも人と組織の変革が成否を分けるポイントなのです。

測るだけでなく「残す・共有する・活かす」データ文化を育てる

データを組織で活用する文化が、レベル出しを戦略的資産に変えます

レベル出しの価値は、数値そのものではなくプロジェクト全体で活用されて初めて最大化されます。

データを次の工程や次の現場の改善に回す視点が重要です。測るだけでなく残す、共有する、活かすという文化を組織に根付かせることでレベル出しが単なる作業から戦略的な資産に変わるのです。

データを活用する仕組みとルールを整え、組織全体でデータドリブンな意思決定を行う土壌を作ることがDX成功の鍵でしょう。

ベテランの暗黙知をデジタルで形式知化して継承する

現場の知恵を組織資産として記録し、世代を超えて継承できます

ベテランの当たり前の工夫を、DXの設計に組み込むことが重要です。

基準の取り方や仮設の置き方、誤差の見方など現場の声を聴きながらツールやフローを作ることで定着率が大きく変わります。デジタル化は現場の知恵を否定するものではなく、むしろそれを組織の資産として形式知化し次世代に継承するための手段なのです。

ベテランと若手が協力してデジタルツールを育てる姿勢が、持続可能なDX推進を可能にします。

完璧なシステムより現場で毎日使える実用性を優先する

80点のシステムを早く投入し、使いながら改善する方が成功します

高機能なソリューションより、毎日使える簡便さや速度、オフライン耐性を重視します。

レベル出しが今より早く、安全に、楽になるかを導入判断の基準にすることが肝要です。現場は理想的な環境ではなく、通信が不安定で泥や埃にまみれた状況でも確実に動作する必要があります。

完璧を求めて導入が遅れるよりも、80点のシステムを早く現場に投入し使いながら改善していく方が結果的に成功するのです。現場の実態に即したシンプルな解決策を選ぶことが、DX定着の秘訣でしょう。

まとめ

レベル出しは建設現場で最も身近な空間データの起点であり、ここをデジタル化することが建設DX成功の鍵です。

従来の属人化や情報断絶、安全リスクという3つの課題は、デジタルレベルやBIM連携、ドローン測量やクラウド共有といった技術で解決できます。重要なのはいきなりフルDXではなく、紙の帳票をやめる小さな一歩から始めることです。

現状分析から標準ルール化、パイロット導入、データ活用という5ステップで段階的に進めましょう。筆者がこれまで支援してきた多くの現場でも、この段階的アプローチが高い成果を生んできました。そして技術導入以上に、測る、残す、共有する、活かすというデータ文化を組織に根付かせることが不可欠です。

ベテランの暗黙知を形式知化し、現場で毎日使える実用性を優先する姿勢を持ちましょう。レベル出しのデジタル化は単なる効率化ではなく、高さ情報を組織の戦略的資産に変える変革なのです。

FAQ

レベル出しのDX化は小規模な建設会社でも導入できますか？ 導入コストの低いデジタルレベルやクラウド帳票から始めれば、小規模でも十分可能です。 大規模なシステム刷新ではなく、電子野帳やクラウド帳票など紙をやめる領域から小さくスタートすることで、初期投資を抑えられます。既存の測量機器に通信機能を付加するだけでも効果が見込めますので、規模に関わらず段階的に導入できるのです。成功体験を積み重ねながら、徐々に範囲を広げていくアプローチが現実的でしょう。

従来のレベル出しとデジタル化されたレベル出しの最大の違いは何ですか？ データが組織全体で共有・活用できるようになり、属人化が解消される点が最大の違いです。 従来は紙の野帳や墨だけに記録され、ベテランの暗黙知に依存していました。デジタル化することで測定結果がクラウド上で即座に共有され、元請や協力会社、設計者が同じ情報を確認できます。データの履歴管理や分析も可能になるため、次の現場への改善にもつながるのです。

BIMモデルとレベル出しを連携させるメリットは何ですか？ 3Dモデルと現場の差分を可視化でき、設計変更への対応が迅速になります。 BIMモデル上のレベル情報を現場の測量座標系と紐づけることで、設計と施工の情報断絶が解消されます。レイアウトロボットを使えば、モデル上で指示したポイントを現場に投影して一人で高精度な墨出しができます。設計変更があっても反映漏れが減り、手戻りリスクを大幅に低減できるのです。

ドローン測量は従来の測量と比べてどれくらい効率的ですか？ 広範囲の計測が短時間で完了し、従来は数日かかった測量が数時間で終わります。 ドローン撮影とSfMやレーザースキャンで地形モデルを作ることで、設計面との高低差を一括把握できます。地形追従飛行による効率的な計測により、土工や造成の出来形確認が大幅に効率化されました。人が立ち入りにくい危険箇所でも安全に計測できるため、安全性と効率性を両立できます。

レベル出しDXを成功させるために最も重要なことは何ですか？ 完璧なシステムより、現場で毎日使える実用性を優先する姿勢が最も重要です。 高機能なソリューションではなく、簡便さや速度、オフライン耐性を重視することが肝要です。80点のシステムを早く現場に投入し、使いながら改善していく方が結果的に成功します。現場の声を聴きながらツールやフローを作ることで、定着率が大きく変わるのです。

データ文化を組織に根付かせるにはどうすればよいですか？ 測るだけでなく、残す、共有する、活かすという視点を持つことから始めます。 レベル出しの価値は、数値そのものではなくプロジェクト全体で活用されて初めて最大化されます。データを次の工程や次の現場の改善に回す仕組みとルールを整え、組織全体でデータドリブンな意思決定を行う土壌を作ることが重要です。ベテランの暗黙知を形式知化し、次世代に継承する手段としてデジタル化を位置づけましょう。

パイロットプロジェクトはどのように進めればよいですか？ 一部の重要箇所から試行し、成功体験を現場で共有することで定着を図ります。 全現場を一度に変えるのではなく、BIMとトータルステーション、3Dスキャンのデータ統合を小規模に試行しましょう。成功体験を共有することでDXは手間が増えるというイメージを楽になるに変えられます。現場からのフィードバックを反映しながら運用を改善し、次の現場ではより洗練された形で導入できるようになります。

専門用語解説

レベル出し： 建物や土工の高さ基準を現場に正確に写し取る測量作業のことです。水準測量や丁張り、通り芯の設定などが含まれ、施工品質と安全性を確保するための基礎作業として現場で「全ての基準」とされています。

BIM（ビム）： Building Information Modelingの略で、建物の3D形状や属性情報をデジタルモデルとして管理する手法です。設計から施工、維持管理まで一貫して情報を活用でき、レベル出しでは現場の測量座標系と紐づけることで設計と施工の断絶を解消します。

CIM（シム）： Construction Information Modelingの略で、土木工事版のBIMです。道路や橋梁、ダムなどの土木構造物を3Dモデルで管理し、設計から施工、維持管理まで情報を統合的に活用します。

トータルステーション： 角度と距離を同時に測定できる電子測量機器です。自動追尾機能を持つロボティックトータルステーションでは、一人で高精度な測量が可能になり、省人化と精度向上を両立できます。

デジタルレベル・電子野帳： 測定値を自動記録し、デジタルデータとして保存できる測量機器とシステムです。紙の野帳と異なり、測定データをクラウドへ即座に送信して共有でき、帳票作成も自動化できるため、DX推進の第一歩として導入しやすい技術です。

3Dレーザースキャナ： レーザー光を使って対象物の形状を高密度に計測し、3Dデータとして取得する機器です。地上型とドローン搭載型があり、躯体形状やレベルを広範囲に自動取得できるため、出来形管理の効率化に貢献します。

クラウド共有： インターネット上のサーバーにデータを保存し、複数の関係者が同時にアクセスできる仕組みです。レベル出し結果を写真や位置情報と紐づけて蓄積することで、元請、協力会社、設計者、施主が同じビューア上で高さ情報を確認でき、リアルタイムでの情報連携が可能になります。

執筆者プロフィール

小甲健（Takeshi Kokabu） AXConstDX株式会社 CEO

製造業と建設業に精通した、技術起点の経営者型コンサルタントです。20年以上にわたるソフトウェア開発の経験を活かし、CADシステムのゼロからの構築や、BIM導入支援、建設DX推進など、現場の課題解決に取り組んできました。

特に建設業界では、レベル出しや測量業務のデジタル化支援を通じて、属人化の解消や情報共有の効率化を実現してきました。赤字案件率0.5％未満、提案受注率83％という実績は、現場の実態に即したソリューション提供の証です。

専門領域と実績

製造業・建設業向けDX戦略立案と実行支援
CADシステム構築、BIM/CIM導入コンサルティング
生成AIを活用した業務改善と生産性向上支援
デジタルマーケティングとコンテンツ戦略
20年以上のソフトウェア開発実績
ハーバードビジネスレビュー寄稿（2回）

グローバル視点とイノベーション

シリコンバレー視察を5回以上実施し、最新のテクノロジートレンドとビジネスモデルを研究。btraxデザイン思考研修（サンフランシスコ）を修了し、ユーザー中心の課題解決手法を習得しています。ドラッカーの経営哲学、孫正義氏のビジョン思考、出口治明氏の合理的判断力を学び、先見性と迅速な意思決定による業界変革を推進しています。

AXConstDX株式会社では、建設業界のデジタル化を加速させるため、現場で実際に使えるソリューションの提案と、組織全体のDX推進を一貫して支援しています。技術と経営の両面から、持続可能な成長を実現する戦略パートナーとして活動しています。

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