ARやVRの活躍は、それらを体験するためのハードウェアの普及により、ますます目立つようになってきました。
特にVRゴーグルなどは様々なメーカーから発表されており、安価な価格で入手できるモデルも増えてきています。
そんな中、新たに開発が進められているのがスマートコンタクトレンズの存在です。
ゴーグルやメガネではない、新しいAR体験の最前線について、ご紹介します。
モジョビジョンとは
Googleの関連会社であるMojo Vision(モジョビジョン)は、ゴーグルを使わずにARを実現するスマートコンタクトレンズの開発に力を入れている企業です。
通常のコンタクトレンズのように眼球へ装着するこのハードは、従来のARゴーグルとは異なる全く新しい体験を提供してくれます。
視点移動で使えるスマートコンタクトレンズ
モジョビジョンが目指しているのは、視点を移動するだけであらゆる操作が実現するコンタクトレンズです。
通常のARゴーグルの場合、操作はフレームや連携しているスマホ、コントローラー などから行うのが一般的です。しかしモジョビジョンの場合、眼球の挙動をリアルタイムで分析し、そのまま視点移動で操作できる環境を実現します。
コンタクトレンズ以外には何も必要としないのが、モジョビジョンの目指すスマートコンタクトレンズです。
スクリーンのない世界を実現可能
私たちの生活において、IT技術はもはや欠かせないものとなりましたが、同時に普及したのがスクリーンの存在です。
ITから情報を得るためにはディスプレイなどの存在が欠かせませんが、一方でスクリーンによって、多くの行動やイノベーションが制限されてきた事実も見逃せません。
近年ではスマートフォンの小型化やスマートスピーカーの登場により、ITの汎用性は高まっているものの、やはりスクリーンに囚われた技術である現状に大きな変化はありません。
スマートコンタクトレンズは、このようなスクリーンの呪縛から解き放ち、よりITを身体的で、効率的に扱えるテクノロジーへと発展させる可能性もあるでしょう。
眼球そのものに情報を投影することで、スクリーンの必要性は大幅に低下するかもしれません。
スマートコンタクトレンズの強み
モジョビジョンのスマートコンタクトレンズはまだ試験段階にとどまっていますが、プラン通りに実現すれば、AR運用において大きなアドバンテージを獲得します。
複雑な操作は一切不要
まず、スマートコンタクトレンズには複雑な操作が一切発生しないため、誰でも気軽にARを体験するきっかけとなります。
既存のAR運用は既に実践段階にはあるものの、ITに強くない人にとっては扱いづらさを覚えることもあり、有益なハードになるかどうかはその人のスキルレベルにも依存してきました。
しかしモジョビジョンのレンズを利用した場合、あらゆる操作は視点移動で解決できるようになります。
ボタン操作や機器の扱いに困る心配もなくなるため、高齢者や体に障害を抱える人など、あらゆる層にまでITを普及させるきっかけを作ります。
頭にかかる負担の低下
従来のARゴーグルは、通常のメガネやサングラスよりも大型で重量も重くなる傾向にあったため、頭にかかる負荷が大きくなる懸念もありました。
そのため、ARゴーグルは長時間の利用には適しておらず、休憩を挟みながらの利用というのが当たり前でしたが、スマートコンタクトレンズであれば、長時間の連続使用にも耐えられます。
ハードの重量を感じることはなく、肌などを傷つけてしまう心配もありません。いつも通りの視野角を確保しながら利用できるため、心理的・身体的ストレスの小さいAR活用が実現します。
医療現場に従事する人や、長距離のドライブに携わる人など、できるだけ疲労を避けたい職業に従事している人にとっては優れたハードとなるはずです。
低視力者向けの医療機器としても有効
また、モジョビジョンはこのコンタクトレンズを医療行為に応用するケースも検討を進めています。
ただ視力が弱いだけでなく、視覚障害などを抱えている人に向けて、眼鏡では矯正できないレベルの視野のサポートに活躍するというわけです。
スマートコンタクトレンズにイメージセンサーを搭載し、レンズが自動的に目の前の物質を認識することで、目の状態に合わせてコントラストなどを引き上げます。
通常では見えない物体を暗いところでも捉えられるようになるなど、驚異的な視力機能のサポートに努めてくれるということです。
健常者にとっても優れた支援機能となるため、さらなる技術開発に注目が集まります。
おわりに
モジョビジョンのスマートコンタクトレンズは、まだ実用段階には達していないものの、数年以内に実現する技術であることは確かです。
その運用方法やメリットも幅広く、今後の開発の動向からは目が離せないところです。