「また名前が変わっただけ?」と思ったなら、それは危険なサインかもしれません。Autodesk Formaへの統合は、BIM担当者の日常業務からデータ管理の根幹まで、静かに、しかし確実に変えていきます。今すぐ把握して動ける人だけが、変化の波に乗れるのです。この記事を読めば、取るべき行動が明確になります。
はじめに
2026年3月、ACCがAutodesk Formaへ統合され、建設やBIMの現場に大きな変化が生まれています。
「ACCはなくなるのか」「使っているツールはどう変わるのか」と、不安を感じているBIM担当者も多いでしょう。
この記事では、Forma統合の背景やプロダクト名の変更、データ基盤の変化、AIへの移行、そして既存ユーザーへの影響という5つの視点から整理します。状況をいち早く把握し、自社の対応方針を立てるための情報として活用してください。
ACC統合とは何か?Formaへ移行した理由を解説
Autodesk Forma統合の核心は、単なるブランド変更ではありません。
施工管理クラウドとして普及してきたACCがAutodesk Formaという業界向けクラウドに吸収されることで、建設プロジェクトの企画から運用までを一元管理する新しいデータ基盤が生まれます。
この章では、今回の統合で何が変わったのかをBIM担当者の視点で整理し、4製品にわたるプロダクト名の変更内容もわかりやすく解説します。
AutodeskがACCをFormaに統合した3つの理由

ACCはなくなるのではなく、Formaに統合される。設計から運用を一元化するAutodeskの長期戦略が背景にある。
Autodeskは2026年3月25日、ACCを単独プロダクト群として継続するのではなく、AECO向けの業界クラウド「Autodesk Forma」の一部として統合すると正式に発表しました。
これにより、企画から設計、施工、運用までの全ワークフローが、Forma上でつながる構造へと移行します。
ACCが「なくなる」のではなく、FormaのエコシステムにACCが統合される形です。長年AECO業界で定着してきたACCブランドは終息し、Formaという新しい基盤のもとで機能が引き継がれていきます。
設計から運用まで一気通貫のデータ環境を構築するAutodeskの長期戦略が、ここにひとつの形として具体化されました。BIM担当者にとっては、ツールの使い方やデータ管理の考え方を見直す好機でもあります。
BIM担当者が確認すべきプロダクト名変更の全容
4製品が全面改称。機能変更はないが、社内資料の更新と現場への周知が急務となる。
今回の統合で、ACCの中核プロダクト4製品がFormaブランドへと全面的に改称されました。
Autodesk DocsはForma Data Managementへ、Autodesk BIM Collaborate ProはForma Design Collaborationへ、Autodesk BuildはForma Buildへ、Autodesk TakeoffはForma Takeoffへとそれぞれ変わっています。
名称の変更は2026年3月25日から画面やウェブサイト上で順次反映されており、利用者の目に触れる場所から段階的にFormaブランドへの移行が進んでいます。
名称変更の主な目的はブランドの統一であり、機能そのものがすぐに変わるわけではありません。ただし、社内のマニュアルや研修資料、調達仕様書など旧プロダクト名を記載した書類は速やかに更新する必要があります。BIM担当者はまず社内資料を棚卸しし、現場担当者への周知を優先して進めてください。
| 旧名称(ACC) | 新名称(Forma) |
| Autodesk Docs | Forma Data Management |
| Autodesk BIM Collaborate Pro | Forma Design Collaboration |
| Autodesk Build | Forma Build |
| Autodesk Takeoff | Forma Takeoff |
BIM・施工DXに直結するデータ統合の2つの変化

Forma統合によって最も大きく変わるのが、プロジェクトデータの扱い方と経営への可視性です。
これまで設計や施工、財務でばらばらに管理されていた情報が、Forma上の共通データ基盤へと一元的に集約されていきます。
データが統合されることで、現場と経営のギャップが解消され、より迅速で正確な意思決定ができるようになります。この章では、データ統合が現場にもたらす変化と「Field to Finance」という新しい仕組みをBIM担当者の視点から解説します。
施工DXを加速する共通データ環境(CDE)とは何か
旧Autodesk DocsがCDEに進化。設計と施工が同じデータを共有し、ミスと非効率を根本から解消する。
旧Autodesk DocsはForma Data Managementへと改称され、すべてのプロジェクトデータを集約する共通データ環境として機能します。
設計データや施工図面、現場写真、RFIなど、プロジェクトに関わる情報がすべてこの基盤に一元管理されます。設計チームと施工チームが常に同じデータを参照できるため、バージョン違いや情報伝達のミスが大きく減ります。
従来はツール間でデータが分断されており、手動でのファイル転送や二重入力が発生しやすい状況でした。Forma Data Managementへの集約でこうした非効率が解消されます。
共通データ基盤の整備は施工DX推進の最重要インフラであり、プロジェクト全体の情報品質と意思決定のスピードを高める根幹的な変化です。筆者もCADゼロからの業務構築支援において、データの一元管理が現場効率に与える影響の大きさを数多く経験してきました。
現場データと財務を直結させるField to Financeとは
現場の進捗や安全データが財務管理とリアルタイムで直結。コスト超過や工期遅延を早期に検知できる。
Autodeskが今回の統合で強調しているのが、「Field to Finance(現場から財務まで)」の可視性強化です。
Forma上の共通データ環境を通じて、現場の進捗や品質、安全データが財務管理や原価管理とリアルタイムで直結する仕組みが整備されます。プロジェクトマネージャーや経営層にとっては、現場の実態がリアルタイムで財務指標に反映される環境が整いつつあります。
これまでは現場データと財務データが別々のシステムで管理されており、手作業による集計に多くの工数がかかっていました。データの鮮度や精度にも課題がありました。
Formaの統合基盤はこのギャップを解消し、コスト超過や工期遅延の兆候を早期に検知して、迅速な意思決定につなげます。現場から財務までをつなぐ基盤として、FormaはAECO業界の経営可視化と現場管理高度化を同時に実現する重要な転換点となるでしょう。
AIネイティブ化と既存ACCユーザーへの影響
Forma統合はブランド変更にとどまらず、AIを中心に据えた建設向けクラウドへの本格移行を意味しています。
設計から施工、運用のすべてにわたってAIが活用できる統合プラットフォームの構築が、Autodeskの長期戦略の中心です。一方で、既存ACCユーザーへの即時の影響は最小限に抑えられています。
この章では、AIを軸にしたFormaの全体像と、今から進めるべき準備について解説します。
Formaが目指すAIネイティブな建設クラウドの全体像
バラバラだったツールをAIが束ね、設計から運用まで途切れなくデータが流れるエコシステムへ移行する。
従来、AutodeskはBIM向けツールや施工管理ツール、クラウドストレージをそれぞれ独立した製品として提供してきました。しかしツール間でデータが分断されるという課題が常につきまとっていました。
今回のForma統合は、それらをAIを軸にしたエンドツーエンドのプラットフォームとして一体化する戦略の中核です。
業界クラウドのコンセプトのもと、設計から施工、運用のすべてにAIを活用できる統合基盤を構築することがAutodeskの長期的な狙いです。これにより、単なるツールの寄せ集めではなく、データが途切れなく流れるエコシステムが整います。
AIによる設計支援やリスク予測、コスト最適化といった機能がForma上で段階的に展開される見込みであり、AECO業界全体のデジタル化と生産性向上を推進する基盤となることが期待されます。筆者は生成AIを活用した業務改革支援を通じて、こうしたAI基盤が現場の意思決定に与える実質的な効果を現場で確認してきました。
ACC既存ユーザーが今すぐ取るべき3つの準備
データ移行不要で利用継続できるが、中長期的な運用方針と移行計画の早期策定が求められる。
既存ACCユーザーにとって重要なのは、ライセンスやAPIなど外部連携、プロジェクトデータを含め、環境の中断やデータ移行が不要とされている点です。
実質的な変化は、ブランドとポータルがForma側に統一されること、そして共通データ基盤へのデータ集約が段階的に進むことの2点です。
当面は「名前が変わった」という感覚で使い続けられますが、中長期的にはFormaのAI機能やエンドツーエンド連携を最大限に活かすため、自社のデータ運用方針や社内ルール、外部との連携フローを見直す必要が出てきます。
BIM担当者はAutodeskのロードマップを継続的に追跡しながら、自社のDX戦略と連携させた段階的な移行計画を早期に策定してください。機能強化の波に乗り遅れないよう、今から計画的に準備を進めましょう。筆者がこれまで支援してきた建設DXの現場でも、変化への先行対応が競争力の分岐点になるケースを繰り返し目にしてきました。
まとめ
2026年3月のForma統合は、AutodeskがAECO業界向けにAIを軸にした業界クラウドを構築するための戦略的な転換です。
ACCの4製品はFormaブランドへ改称されましたが、既存ユーザーはデータ移行なしで利用を継続できます。最大の変化は、共通データ環境への一元集約と「Field to Finance」による現場と財務の可視化です。
Formaは設計から施工、運用のすべてをAIでつなぐエンドツーエンドのプラットフォームを目指しています。BIM担当者は今すぐ社内資料の更新と運用方針の見直しに着手し、Autodeskのロードマップを追跡しながら自社のDX戦略に組み込む計画を立ててください。
FAQ
ACCはなくなってしまうのですか? なくなるのではなく、Autodesk Formaに統合される形です。 ACCという名称と独立したブランドは終了しますが、提供されてきた機能はFormaに引き継がれます。既存のプロジェクトデータやライセンスはそのまま継続して利用できるため、業務が突然止まる心配はありません。「消える」ではなく「進化して吸収される」とイメージすると理解しやすいでしょう。
Autodesk Docsは今後どうなりますか? 「Forma Data Management」に名称が変わり、機能は継続されます。 2026年3月25日以降、画面やウェブサイト上の表記がForma Data Managementへ順次切り替わっています。機能自体はこれまでと同じように使えますが、社内マニュアルや手順書に「Autodesk Docs」と記載している場合は、早めに書き換えておくことをおすすめします。
データ移行の作業は必要ですか? Autodeskは「データ移行不要」としており、既存環境はそのまま継続できます。 ライセンスやAPI連携、プロジェクトデータを含めて、利用環境の中断なく使い続けられる設計になっています。ただし、社内の運用ルールや外部ベンダーとの連携フローについては、自社側で見直しが必要になる場面もあります。
BIM担当者が今すぐやるべきことは何ですか? まず社内資料の旧プロダクト名を更新し、現場担当者へ変更内容を周知することが最優先です。 Autodesk DocsやBIM Collaborate Proなど旧名称が記載されたマニュアルや仕様書は、Formaブランドの名称に書き換えてください。また、APIや外部ツールとの連携に影響がないかを確認しておくと、トラブルを未然に防げます。
Field to Financeとはどういう意味ですか? 「現場の情報を財務管理に直結させる」という考え方を表す言葉です。 Forma上の共通データ環境を通じて、現場の進捗や安全データがリアルタイムで原価管理や財務指標に反映されます。これにより、コスト超過や工期遅延の兆候を早い段階で察知できるようになり、経営判断のスピードが上がります。
FormaとRevitは今後どのような関係になりますか? RevitはBIMの設計ツールとして独立して存在し続け、Formaとの連携がより強化されていく方向です。 Forma(旧ACC)はクラウドベースのプロジェクト管理基盤であり、Revitは建物の3Dモデルを作るオーサリングツールです。両者は役割が異なるため、統合ではなく連携強化という位置づけになります。今後はRevitで作ったデータをForma上でよりスムーズに扱える環境が整っていく見込みです。
Forma統合によってAI機能はいつ使えるようになりますか? 段階的に追加される予定で、2026年以降も継続的にアップデートが行われます。 設計支援やリスク予測、コスト最適化といったAI機能は、Forma上で順次展開される計画です。具体的なスケジュールはAutodeskの公式サイトやロードマップで随時確認することをおすすめします。今から情報収集を習慣にしておくと、機能が追加されたときにすぐ活用できます。
専門用語解説
Autodesk Forma: AutodeskがAECO業界向けに提供する業界クラウドです。設計から施工、運用までの全工程を一つのクラウド基盤でつなぐことを目的としており、旧ACCを統合した新しいプラットフォームです。
ACC(Autodesk Construction Cloud): Autodeskがかつて提供していた施工管理向けクラウド製品群のブランド名です。2026年3月にAutodesk Formaへ統合され、ブランドとしては終息しましたが、機能はForma内に引き継がれています。
BIM(Building Information Modeling): 建物の形状や構造、設備などの情報を3次元のデジタルモデルとして一元管理する手法です。設計から施工、維持管理までの各段階で情報を共有・活用できるため、建設業界のDX推進において中心的な役割を担っています。
CDE(Common Data Environment): プロジェクトに関わるすべての情報を一か所に集約して管理する共通のデータ環境のことです。設計チームと施工チームが同じデータを参照できるため、情報の行き違いやバージョンの混乱を防ぐ効果があります。
Field to Finance: 現場で発生する進捗や品質、安全などのデータを、財務管理や原価管理の情報とリアルタイムで直結させるAutodeskの戦略概念です。現場と経営の情報ギャップを埋め、コスト超過や工期遅延を早期に把握できる環境の実現を目指しています。
AECO: Architecture(建築)、Engineering(エンジニアリング)、Construction(建設)、Operations(運用)の頭文字をつなげた略語です。建物の企画から設計、施工、完成後の維持管理までを包括する業界全体を指す言葉として使われます。
DX(デジタルトランスフォーメーション): デジタル技術を活用して業務のやり方や組織の仕組みを根本から変革することを指します。建設業界においては、紙や手作業による管理をデジタルツールに置き換え、生産性や品質を向上させる取り組みとして注目されています。
執筆者プロフィール
小甲 健(Takeshi Kokabu) AXConstDX株式会社 CEO/株式会社OneTechnologyJapan 特別顧問
製造業・建設業に精通し、ソフトウェア開発歴20年以上を持つ、技術起点の経営者型コンサルタントです。CADゼロからの業務構築や大規模DX推進を数多く手がけ、赤字案件率0.5%未満・提案受注率83%という高い成果を一貫して維持しています。
生成AIを活用した業務改革、DX推進、コンテンツ制作、戦略支援を強みとし、近年はGX(グリーントランスフォーメーション)を経営・DXと統合した「実装型GX戦略」にも注力しています。脱炭素・省エネ・資源効率化を、IT・データ・業務設計の視点から収益性と競争力に直結させる支援を行っています。
先見性と迅速な意思決定を武器に、業界構造転換(DX→GX)を見据えた先行アクションを得意とし、建設・製造業界の変化を現場視点と経営視点の両面から先導しています。
- ハーバードビジネスレビュー 寄稿2回
- CES視察 1回
- btraxデザイン思考研修(サンフランシスコ)受講
- シリコンバレー視察 5回以上
- 影響を受けた人物:ドラッカー、孫正義、白潟敏朗、安達裕哉、後藤稔行ほか