医療現場にロボット活用、疾患啓発を行う問診Pepperの導入効果は?
来院患者に声掛けをして和ませたり、子供たちを喜ばせるだけでは物足りなかった。
Pepperが健康チェックを呼びかけ、知られていない疾患を知らせて、問診によって危険度をプリントする疾患啓発を行った病院がある。
沖縄徳洲会湘南厚木病院の山下氏はPepper World 2017 の基調講演に登壇し、Pepperの導入事例としてその知見を紹介した。
「ある日突然、病院長からPepperを導入すると言われ、Pepperで何をすればいいのか見当も付かなかった。そこで近隣病院との差別化に活用しよう」と考えたと言う。
Pepperを目立つところに配置し、「ちょっとおしゃべり」というアプリを使ってPepperによる来院患者への声掛けを行った。また、院内の保育園でお誕生会などのイベントでダンスアプリ等を活用し、たくさんの子供たちが喜ぶ姿を見た。
しかし、物足りなさを感じ、もっと実業務に役立てる方法はないかと考えていたところ、疾患啓発に使えないか? ということになったと言う。
対象とする疾患は「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」(筆者も20年前にかかり、別の病院だが2回の手術を受けた経験がある)。眠っている間に呼吸が止まり、本来の深い眠りが得られずに昼間に眠くなったり、集中力がなくなったり、それが運転の重大な事故を引き起こすことにも繋がることもある。また、睡眠時に呼吸がとまるためそのまま死ぬケースもある。
しかし、睡眠時に症状が出るため本人は症状に気付かないことが最大の課題だ。
実証実験では、Pepperが病院のロビーで呼び込みを行い、健康チェックと称して問診を行うことにした。
プリンタと連動して結果をプリントアウトしてくれる。その際、睡眠時無呼吸症候群の恐れがあると判断した人に対してはきちんと医師による診断を受けるようにアドバイスする。
実証実験は一週間、実施された。
その結果、まず疾患啓発Pepperを利用した患者の属性に大きな変化が見られた。狙い通り、症候群の予備軍が多い、30~60歳代の男性の利用割合が増えた。
今までもポスターにより症候群の健診を喚起していたが、受診する人はゼロだった。Pepperの呼びかけにより、SASの存在を知らせることができ、更に54%の人が「今後受診をしたい」と回答、実際に5名の患者が二週間以内に検査を予約したという効果があった。
また、疾患啓発の満足度アンケートには73%が満足と回答した。
「今後はSAS以外の疾患についても広く知ってもらうために活用したい」とし、「ひとつの科で成果が出ると、ほかの科からも”やりたい”という声が上がり、良い循環が生まれる」と語った。
別の病院の例では、Pepperによる健康啓発と問診を既報のとおり北里大学病院でも実証実験を行った事例がある。
コミュニケーションロボットが今後も医療現場に入っていく可能性は高く、大いに期待したい。
Source: robotstart .info
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