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ベトナムへのBIM外注先をどう選ぶか

ベトナムのBIM制作会社へ見積りを依頼すると、単価と納期に目が行きます。ただ、日本側の担当者が納品モデルを開いた後に、設置高さや機器番号を図面・機器表と突き合わせ、参照した図面の版まで調べ直すなら、制作費だけでは負担を比較できません。私は委託先を選ぶ段階で、「納品後に日本側がどこまで手をかけずに使えるか」を確かめます。

そのためには、完成イメージを見せてもらうだけでは足りません。代表的な一画を対象に、発注条件を渡し、制作側からの質疑を受け、サンプルモデルを日本側の環境で開いて照査し、指摘を修正してもらう。小さくても受渡しを一巡させると、制作能力に加えて、資料が食い違ったときの対応や、設計判断をどちらが担うかが見えてきます。

モデルの用途から発注条件を組み立てる

最初に決めるのは、モデルを何に使うかです。意匠・構造・設備の取り合いを確認するのか、数量を拾うのか、図面を作成するのか、維持管理に渡すのかによって、必要な形状と属性情報は変わります。LODだけを書いても、数量算出の対象外や、機器番号の付け方、受入れ時に必要な図書までは伝わりません。

例えば機械室の設備モデルなら、対象図面の版、座標系と単位、モデル化する機器・配管、保留する範囲、納品形式、必要な属性、図面出力の範囲を明記します。IFCを納品する場合は、どの属性を保持し、どのソフトで開いて確認するかまで決めておきます。既設図と機器表が食い違ったら、制作側が都合のよい値を選んで完成扱いにするのではなく、対象を特定した質疑として返せる条件にします。

ONETECHのBIM制作代行では、意匠・構造・設備の制作と、着手前の基準合わせが紹介されています。発注側も図面一覧、使用するソフトの版、命名規則、モデル化しない部分を用意しておけば、見積りの前提をそろえやすくなります。未調査の部材は、形だけ補うよりも、対象外または確認待ちとして残した方が後の判断につながります。

利用目的、入力資料、制作条件、確認方法を結ぶBIM発注の四層

図1 BIM委託で合わせる四つの要素。利用目的、入力資料、制作範囲、検収方法を発注条件へ落とすための提案図。

不明点を一つ残したサンプルで対応を見る

稼働中の工場で機械室を改修する場面を考えます。竣工図には更新されていない配管があり、保温後の外観から管の呼び径は分かりません。天井裏の一部は点群データでも確認できないとします。

私なら、観察・計測できた箇所、図面だけに記載された箇所、現時点では確認できない箇所を分けて扱います。保温後の外形をそのまま管の呼び径に読み替えたり、見えない区間を推測でつないだりすると、後でモデルを使う人は調査済みの経路と誤解します。初期の配置検討なら未確認の表示を付けた簡略モデルで足りるかもしれませんが、製作寸法や施工位置を決める段階では、追加資料や現地確認が必要です。同じ点群でも、利用目的が変われば必要な確からしさは変わります。

ONETECHのScan to BIMへ相談するときは、共有が認められたサンプルデータに、計測日、計測範囲、遮蔽された場所、モデルの用途を添えます。制作側は資料を見て初めて、モデル化の作業量と確認が必要な箇所を見積れます。データがないまま「点群から全部再現する」という条件にしても、後で受入れの基準が定まりません。

試行には、仮の機器番号MEP-A01を用いたQC記録を付けます。基準点に対する機器の位置、設置高さ、機器番号について、参照図書、確認方法、結果、担当者を一行ずつ記録する形です。図面と機器表で設置高さが食い違うなら、合格でも不合格でもなく「確認待ち」とし、誰の判断が必要かを示します。日本側の担当者が画面共有に頼らず同じ項目と資料を探せるかまで試せば、モデルそのものだけでなく、質疑と根拠の渡し方も評価できます。

確認待ちの理由が資料不足なら入力を補います。根拠はあるのに見つからないなら、参照位置やファイル名の付け方を直します。原因を分けずにすべて「説明不足」として返すと、次回の納品でも同じやり取りが起こります。サンプルで見たいのは合格欄の多さより、発見した問題をどの担当者が、どの資料に基づいて閉じるかです。

制度は制作拠点でなく対象案件にひも付ける

日本の建物のモデルをベトナムで制作しても、適用する手続きや設計条件は日本の案件側で決まります。反対に、日本企業がベトナムで建設するなら、現地の建物区分や事業段階を確認しなければなりません。「海外のBIM基準に対応」とだけ書かれた提案では、どの資料を優先して制作するか判断できないため、私は発注資料に適用文書の名称、版、判断する担当者を記載します。

ベトナムの政府政令217/2026/NĐ-CP(署名版PDF)(新しいタブで開きます)(および第8条・第76条の条文テキスト版(新しいタブで開きます))は2026年7月1日施行です。第8条には新築で等級II以上の建物等に関するBIM適用条件と適用除外があり、第76条には経過措置があります。すべての建物で一律にBIMが義務だと解釈せず、案件の区分と時期に照らして確認します。

日本では、国土交通省の建築BIM推進会議(新しいタブで開きます)が、BIM図面審査の開始を2026年4月1日と案内しています。BIMから作成する図面を用いるこの審査と、BIMデータ審査に関する検討は区別して読みます。確認申請図書を外注範囲に含めるなら、対象図面の表現、出力方法、モデルと図面の照合、最終確認の担当を具体的に決める必要があります。IFCを出力できるだけでは、申請図書の要件を満たしたことにはなりません。

シンガポールでは、BCA・URAの2026年7月23日付通知(新しいタブで開きます)により同年10月1日から新基準が適用されます。GFA5,000m²以上の対象新規案件はCORENET Xでの提出が必要です。一方、基準未満の案件や同年9月30日までにCORENET 2で申請を開始した案件は、従来のCORENET 2の手続きを継続できます。

日本、ベトナム、シンガポールの制度と契約条件を確認するマトリクス

図2 日本・ベトナム・シンガポールの制度を案件条件として確認するための問い。図中の情報は2026年10月17日に公開資料と照合しました。

質疑を修正モデルと発行図面までつなぐ

設備図と機器表で設置高さが違うときに「高さを確認してください」とだけ送ると、設計者は対象探しから始めることになります。機器番号、通り芯と階、食い違う図面・機器表の版、設備や構造との取り合いへの影響を添え、優先する情報の判断を求めます。制作側は不整合を見つけて対応案を示せますが、設計変更を伴う判断は案件の権限者へ戻さなければなりません。

回答後は、質疑番号から修正したモデルの版、再出力した図面、再照査の結果を追えるようにします。共通データ環境(CDE)でも、作業中、確認中、用途を指定して発行済みの区別が必要です。finalという名のファイルを何度も増やしても、受領者が使える版は分かりません。発注者情報要件(EIR)とBIM実行計画書(BEP)は、情報の要求とその実施方法を整理するために使います。小規模の委託なら、成果物一覧、担当表、質疑と発行のルールを簡潔にまとめてもよいのですが、実際の判断に合わせて更新できる形にしておきます。

情報要求から発行と更新へ進むBIM情報管理フロー

図3 情報要求、制作、照査、発行、更新をつなぐ提案フロー。

機器番号の重複や属性情報の空欄は、判定条件を決めれば自動チェックを検討できます。ONETECHの建設業向けAI開発への相談でも、現在の図書と作業手順、繰り返す不具合、最後に技術者が判断すべき点を持ち込むのがよいでしょう。干渉チェックで問題が出なかった場合も、それは投入したモデルと設定した条件で検出されなかったという結果です。保守空間や施工可能性まで確認したかどうかは、照査項目を分けて記録します。

単価より先に、受渡しの範囲をそろえる

同じ図面を渡しても、一社は属性入力と図面作成、照査後の修正まで含め、別の一社は形状作成のみを見積るかもしれません。数量、設備の密度、既設資料の不足、納品形式をそろえずに床面積当たりの単価だけを比べても、作業範囲が異なります。私は対象エリアを一つ決め、準備、質疑、制作、自主照査、日本側の検収、修正にかかった作業を双方で分けて記録した上で、次の委託範囲を判断します。

試行中に日本側が機器表を作り直したなら、その理由を確認します。制作側の転記ミスなのか、発注資料の不足なのかで、次回直すべき発注条件は違います。また、座標系の誤りと表記の軽微な修正を同じ「一件」と数えても検収可否は決まりません。発行を止める不具合、条件付きで残せる事項、修正後に再確認する項目を先に合意しておきます。

代表サンプル、自主確認、受入れ、委託拡張の四段階

図4 代表エリアの試行、自主照査、検収、修正、委託拡大を判断する流れ。

納品時は、日本側の担当者が自社環境でモデルを開き、対象機器、属性、関連図書を探します。継続利用を想定するなら、保護したコピーで機器情報を一件変更し、集計表や図面への影響を追うのも有効です。制作側の画面で見えたことと、受領者が社内で使えることは同じではありません。

確認する項目

確認する資料と条件

利用目的

利用者と成果物で支援する判断を特定する

適用資料

優先順位、発行日、対象範囲を一覧にする

入力資料

分野、版、座標、単位、不足資料を確認する

委託範囲

成果物、除外、形式、開始条件を明記する

判断権限

技術回答者と成果物の受入れ担当者を決める

QCの根拠

対象、資料、結果、課題を閉じる根拠を残す

受入れ環境

日本側で開き属性と関連資料を確認する

拡張の条件

未解決事項、双方の工数、再検証範囲を残す

サンプルを検収した後は、検証した条件と未確認の条件を残します。対象の設備分野、利用ソフト、資料の品質が変われば再試行が必要なこともあります。担当者が交代しても成果物一覧と質疑履歴から作業を引き継げるなら、委託量を増やす土台になります。二人の記憶だけで成立した試行は、同じ方法を別エリアへ広げる前に記録を整えます。

ONETECHの現場から(実務データ・検証状況)

・日越BIM協業の現場から:One Technology Japan株式会社(ONETECH)が13年以上・累計400件超の日本向けBIM・XR・システム開発(ISO/IEC 27001認証・AWSパートナー)を進める中でも、継続的に成果が出る案件は例外なく「入力図書の優先順位と質疑(RFI)台帳」を小さな試行で先に固めています[ONETECH公開会社情報]。

・現況から設備BIMへの連携検証:図面が不足する改修案件に向けて、iPhone LiDAR活用の「insightScanX」を日本の大手空調サブコンと実証・検証中(検証中)であり、Rebro・Revitでの受入れ条件の標準化を進めています[ONETECH製品公開情報]。

・現調から図面・提案書作成までの工数削減:ONETECHが開発したリノベーション支援システム「Next Grid」では、現地調査・図面化・プラン作成の作業時間を1案件あたり17時間から9時間へ短縮(53%削減)しました[導入先実績]。

・検査記録と報告書出力の効率化:AI音声住宅検査アプリ「Smart Home Inspection」では、現場での検査入力からPDF報告書作成までの一連の作業を8時間から2.5時間へ短縮(68%削減)しています[ONETECH社内試算]。

よくある質問

2026年からベトナムの建物はすべてBIM必須ですか

いいえ。政令217/2026/NĐ-CPには適用範囲、適用しない場合、経過措置があります。建物区分と事業段階を案件ごとに確認します。

制作会社がベトナムにあると日本案件の要件は変わりますか

変わりません。日本案件に適用する図書と手続きに沿って、委託範囲、判断権限、検収方法を決めます。

二次元図面だけで見積りを頼めますか

概算相談はできます。対象分野、図面の充足度、モデルの用途と納品形式を確認し、未確定部分は見積条件に記載します。

試行後、いつ委託範囲を広げればよいですか

日本側でモデルと関連図書を開いて使え、質疑の根拠と修正履歴を追え、検収に必要な作業量を把握できた段階が一つの目安です。別分野や別の入力条件には追加確認が必要です。

相談に持参したい資料

最初の相談には、モデルの利用目的、代表エリアの図面と機器表、希望する納品形式、いつ誰が検収するかをまとめてください。ONETECHへの無料相談・見積相談で、小さな範囲から試す方法と必要な資料を確認できます。費用と日程は案件の条件に応じて協議し、機密資料は双方が認めた方法で共有します。

無料特典・トライアルのご案内:実務でそのまま使える共通特典「BIM・現況調査・住宅検査の発注・検収チェックリスト(PDF)」の無料ダウンロード、または代表エリアでの「無料の小規模トライアル相談」は、ONETECHのお問い合わせ・無料相談窓口よりお申し込みいただけます。

関連コラム・連載記事:第2回「設備BIMを外注しても、日本側の仕事が減らない理由」(公開予定)、第3回「設備改修のScan to BIMをどう発注・検収するか」(公開予定)。ほかの記事はONETECHコラム一覧からご覧いただけます。

ONETECHについて(会社概要)

One Technology Japan株式会社(ONETECH)は、日本市場向けに13年以上・累計400件超のBIMモデリング(意匠・構造・設備)、Scan to BIM、建設AI・XR・業務システム開発を提供しています(ISO/IEC 27001認証取得・AWSパートナー)。無料の小規模トライアル相談やチェックリストPDFのご請求はお問い合わせページ(https://onetech.jp/contact)までご連絡ください。

著者について:Huynh Hieu Liem(フイン・ヒエウ・リエム)。One Technology Japan株式会社(ONETECH)にてBIM・建設AI・業務自動化(建設DX)の技術統括および日越協業プロジェクトの品質設計を担当。建設IT・BIM領域で10年以上の実務経験を持ち、私が現場で実践している「日本側の技術者が根拠を追跡してそのまま使える発注・検収手順」を発信しています。

注記:本稿で言及するONETECHのサービス・製品情報は公式公開ページに基づく案内であり、本文中の図表・QC記録は手順を説明するための構成案です(アイキャッチ画像はAIによる概念イラスト)。個別案件の精度・工数・検収条件は対象図書と契約条件に基づき決定します。

出典

2026年10月18日に照合しました。各出典へのリンクは本文の該当箇所に設けています。

  • BCA・URA「CORENET X mandatory submissions from 1 October 2026」(2026年7月23日):GFA5,000m²以上の対象新規案件の提出方法と経過措置

  • 国土交通省「建築BIM推進会議」:BIM図面審査の開始(2026年4月1日)とBIMデータ審査の区別(2026年10月17日照合)

  • ベトナム政府 政令217/2026/NĐ-CP(2026年7月1日施行):第8条(BIMの適用範囲と適用除外)、第76条(経過措置)

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