日本国内の市場が縮みゆくなか、中国依存リスクにも頭を悩ませていませんか。実はベトナムが2025年に実質GDP成長率8%を遂げ、中小企業にも開かれた新たな進出先として急浮上しています。この記事を読めば、今こそベトナムに目を向けるべき理由と、具体的に押さえるべき機会やリスクが見えてくるはずです。

はじめに
日本国内の市場が縮みゆくなか、中国依存リスクに不安を抱える経営者は少なくないでしょう。そんなとき注目されているのが、2025年に実質GDP成長率8%を記録したベトナムです。新たな海外展開先として、急速に存在感を高めています。
本記事ではVinaCapitalのレポートをもとに、ベトナム経済の最新動向を整理しました。あわせて2026年の見通しと、構造改革がもたらす事業機会やリスクもお伝えします。製造業・建設業のDX支援を手がける筆者の視点もまじえながら解説しますので、読み終えるころには、自社が今動くべきかの判断材料が見えてくるはずです。
ベトナム経済成長率8%とは?中小企業の進出機会
この章ではベトナム経済が、なぜ今これほど注目されているのか確認していきます。背景となる数字を見ながら、その理由をひも解きましょう。日本国内の市場縮小や中国依存リスクは、日本の中小企業が抱える共通の課題です。こうした課題を出発点に、2025年の実績から2026年の見通しまで順番にお伝えします。
VinaCapitalのレポートが示すGDP成長率の推移も整理しました。成長を支える要因についても触れていきます。進出の判断材料に、ぜひお役立てください。

中小企業がベトナムに注目すべき3つの理由
中小企業がベトナムに注目する理由は、脱中国依存、若年労働力、外資受け入れ政策の3つです。
日本の国内市場は、少子高齢化の影響で縮小が続いています。新規顧客を開拓できる余地は年々狭まり、海外に活路を求める動きが中小企業にも広がってきました。ベトナムが注目される理由は、大きく3つに整理できるでしょう。1つ目は、中国依存からの脱却ニーズです。
中国に偏ったサプライチェーンは、地政学的リスクにさらされやすい構造をもっています。調達先が集中すると、有事の際に事業継続そのものが揺らぎかねません。2つ目は、ベトナムの労働力が若く豊富なことです。若年層を中心とした人材が、製造業やサービス業の担い手として期待されています。
3つ目は、外資受け入れに積極的な政策と、整いつつある法制度です。行政手続きの簡素化も進んでおり、初めて海外進出を検討する企業にも扱いやすい仕組みが整いつつあります。情報の少なさから二の足を踏んでいた企業にとっても、今がまさに検討を始める好機といえそうです。
2025年GDP8%成長を支えた輸出と観光需要
2025年は輸出と観光がけん引し、ベトナム実質GDPは8%成長を達成しました。
VinaCapitalのレポートによると、2025年のベトナム実質GDP成長率は8%に達しました。2024年からさらに加速した結果です。この成長をけん引したのは、輸出と観光という2つの分野でした。輸出面では米国向けの輸出が拡大し、なかでも電子機器の輸出が大きく伸びています。
グローバルな製造拠点としての存在感を強めたことが、輸出の伸びを後押ししたといえるでしょう。サプライチェーンの分散を進める各国企業にとって、ベトナムは生産移管先の有力な候補地になりつつあります。観光面では、中国人観光客の増加が観光収入を押し上げました。
宿泊や飲食、小売といった関連産業にも、好影響が幅広く波及しています。海外旅行需要の回復が、地域経済の隅々にまで効果を及ぼした形です。製造と観光の両輪で、輸出主導型の成長を実現した点こそ、2025年を象徴する特徴だといえるでしょう。
2026年は10%成長も視野、3つの追い風とは
2026年は8%成長が基本線、インフラ投資など3つの追い風で10%成長も視野に入ります。
2026年についても、8%成長が基本線になると見られています。ベトナム政府の目標やVinaCapitalの見通しでも、同様の水準が示されました。好条件が整えば、10%成長も視野に入るとされているのです。世界経済には依然として変動の要素が残るものの、ベトナム経済の基礎体力は高いといえます。
成長継続への期待は、大きいと考えてよいでしょう。2026年の成長を支える追い風は、主に3つです。1つ目はインフラ投資の拡大で、道路や港湾、エネルギー関連の整備が経済活動を底支えします。2つ目は輸出受注の回復で、欧米向けを中心とした注文増加が工場の稼働率を押し上げる見込みです。
3つ目は個人消費の改善で、所得水準の向上が国内市場の購買力を底上げしています。これら3つの要因が重なり合うことで、成長は一時的なものにとどまらないでしょう。複数のエンジンが並行して回り始めている点が、これまでの成長局面との違いです。中長期的な視点での進出計画を、立てやすい局面が訪れています。
Doi Moi 2.0が生む事業機会と進出前の注意点
この章ではベトナムが進める構造改革、Doi Moi 2.0によって生まれている事業機会をご紹介します。データセンターや都市開発、発電施設の整備が、各地で進んでいます。国際金融センターといった大型プロジェクトの動きも、押さえていきましょう。
あわせて進出を検討する際に、見落としがちなリスクについても整理しました。好材料とリスクの両面から判断できるよう、情報をまとめています。期待だけで動くのではなく、地に足のついた検討を進めるための材料として、ぜひお役立てください。
Doi Moi 2.0とは?広がる4つの事業機会
Doi Moi 2.0改革で、データセンターなど4つの分野に新たな事業機会が広がっています。
ベトナムは現在、Doi Moi 2.0と呼ばれる構造改革を進めています。民間セクターの活性化に、力を入れているのです。これは過去の改革をさらに一歩進める動きとして、国内外から注目を集めています。この改革のもとで広がっている事業機会は、主に4つです。
1つ目はデータセンターの整備、2つ目は公共交通を軸とした都市開発で、いわゆるTODの取り組みです。3つ目は発電施設の拡充です。4つ目は国際金融センター構想といった大型プロジェクトで、いずれも各地で動き出しています。これらは単なる一過性の政策ではありません。
長期にわたって魅力的な事業機会を生み出す、土台となるものです。インフラやエネルギー、金融といった幅広い分野で、外資を含む民間企業の参入余地が広がっています。中小企業にとっても、関連分野での協業や調達といった機会が今後さらに増えていく可能性があるでしょう。技術提供という選択肢も広がっていきそうです。データセンター整備や都市開発のようなDX・GX領域は、IT・データ・業務設計の視点から収益性につなげる支援が求められる分野でもあり、筆者も国内の製造業・建設業で同様の支援を行っています。
ベトナム進出で注意すべき2つのリスク
進出には資金調達環境や為替などのリスクもあるが、ベトナムは有望な展開先です。
進出を検討するにあたっては、好材料だけでなくリスクの確認も欠かせません。押さえておきたいリスクは、主に2つです。1つ目は、銀行セクターの資金調達環境の変化でしょう。流動性が逼迫する傾向があり、金利も上昇基調にあります。とくに現地での借り入れを前提とした事業計画には、注意が必要です。
金利動向を、継続的に確認しておくことが望ましいでしょう。2つ目は、為替変動や業種ごとに異なる規制の存在です。成長性の高さだけに目を向けるのではなく、現地の実情を慎重に調べたうえで判断することが重要でしょう。とはいえ2025年の高い成長実績を踏まえれば、ベトナムは有望な選択肢に映ります。
2026年の堅調な見通しも、その評価を後押しするでしょう。構造改革やインフラ投資がもたらす効果も、その後押しとなるでしょう。まずは情報収集や市場調査から始めてみましょう。JETROなどの公的支援も、積極的に活用しながら検討を進めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
ベトナム経済は、2025年に実質GDP成長率8%を達成しました。2026年も8%を基本線に、10%成長すら視野に入る勢いを保っています。背景には、輸出と観光が牽引する確かな実績があるのです。さらにインフラ投資、輸出受注、個人消費という3つの追い風も控えています。
Doi Moi 2.0によるデータセンターや都市開発、発電施設の整備も進行中です。国際金融センターという、4つ目の事業機会も広がりつつあります。一方で、資金調達環境の変化や為替、規制リスクには注意が必要でしょう。
少子高齢化と中国依存リスクに直面する日本の中小企業にとって、ベトナムは検討に値する有望な選択肢です。好材料とリスクの両方を踏まえたうえで、まずは情報収集から一歩を踏み出してみましょう。
FAQ
なぜ今、中小企業がベトナムに注目すべきなのですか?
日本市場の縮小と中国依存リスクという二つの課題を、同時に解決できる選択肢だからです。
少子高齢化で国内の新規顧客開拓が難しくなるなか、海外に活路を求める中小企業が増えています。ベトナムは若い労働力が豊富で、外資受け入れにも積極的な国です。脱中国依存の受け皿としても期待されており、初めての海外進出先としても扱いやすい環境が整いつつあります。
2025年にベトナム経済が8%成長した理由は何ですか?
輸出と観光という二つの需要が、力強く経済を押し上げたためです。
米国向け輸出、とくに電子機器の輸出が大きく伸び、グローバルな製造拠点としての存在感を強めました。あわせて中国人観光客の増加が観光収入を押し上げ、宿泊や飲食など関連産業にも波及しています。製造と観光の両輪がそろったことが、2025年の高成長を支えました。
2026年もベトナムの成長は続くのでしょうか?
8%成長が基本線とされ、条件次第では10%成長も視野に入ります。
成長を支える追い風は、インフラ投資の拡大、輸出受注の回復、個人消費の改善の3つです。これらが同時に進むことで、一時的でない持続的な成長が期待されています。世界経済の変動要素は残るものの、ベトナム経済の基礎体力は高いといえるでしょう。
Doi Moi 2.0とは、どのような改革ですか?
ベトナムが進める、民間セクターの活性化を狙った構造改革です。
データセンターの整備や、公共交通を軸とした都市開発、発電施設の拡充、国際金融センター構想といった大型プロジェクトが各地で動き出しています。インフラやエネルギー、金融といった幅広い分野で、外資を含む民間企業の参入余地が広がっているのが特徴です。
ベトナム進出にはどのようなリスクがありますか?
資金調達環境の変化と、為替や規制に関するリスクの二つが主な注意点です。
銀行セクターでは流動性が逼迫し、金利も上昇基調にあります。現地での借り入れを前提とした計画には注意が必要です。また為替変動や業種ごとに異なる規制もあるため、成長性だけでなく現地の実情を慎重に調べたうえで判断することが大切です。
中小企業がベトナムに進出する際、何から始めればよいですか?
まずは情報収集と市場調査から着手するのが現実的な一歩です。
いきなり大きな投資を行うのではなく、現地の業界動向や規制、競合状況を把握することから始めましょう。JETROなどの公的支援機関を活用すれば、信頼できる情報や相談窓口にアクセスしやすくなります。無理のない範囲で、段階的に検討を進めることが望ましいでしょう。
脱中国依存は本当に必要なのでしょうか?
サプライチェーンの集中リスクを下げるという意味で、検討する価値は高いといえます。
中国に調達先が偏っていると、地政学的な緊張が高まった際に事業継続そのものが揺らぎかねません。ベトナムをはじめとするASEAN諸国への分散は、リスクヘッジの選択肢として多くの企業に検討されています。すべてを切り替える必要はなく、調達先の一部を分散させるだけでも効果が期待できます。
専門用語解説
実質GDP成長率:物価の変動による影響を取り除いた、実質的な経済成長の度合いを示す指標です。名目の数字だけでなく、実態に近い成長スピードを把握するために使われます。
VinaCapital:ベトナムを拠点とする資産運用会社で、同国経済に関する調査レポートを定期的に発表しています。本記事の経済成長率や見通しも、同社のレポートを参考にしています。
Doi Moi 2.0:ベトナムが進める新たな構造改革のことです。1980年代の経済改革であるドイモイ政策をさらに発展させ、民間セクターの活性化を狙っています。
TOD:公共交通機関を軸に据えたまちづくりの考え方です。駅やバス路線の周辺に住宅や商業施設を集約し、利便性の高い都市開発を目指す手法を指します。
国際金融センター構想:海外からの投資や金融機関を呼び込み、金融取引の拠点となることを目指す国家戦略です。実現すれば、関連する事業機会も広がると見込まれています。
サプライチェーン:原材料の調達から製造、流通を経て消費者に届くまでの一連の流れのことです。調達先が特定の国や地域に偏ると、政治情勢の変化などで供給が止まるリスクが高まります。
JETRO:日本貿易振興機構の略称で、企業の海外進出を支援する公的機関です。現地の市場情報の提供や、進出相談の窓口としての役割を担っています。
執筆者プロフィール
小甲 健(Takeshi Kokabu) AXConstDX株式会社 CEO/株式会社OneTechnologyJapan 特別顧問
製造業・建設業に精通し、20年以上のソフトウェア開発実績を持つ、技術起点の経営者型コンサルタントです。AI、DX、GX、経営、マーケティングを横断するハイブリッド型の支援を強みとし、CADゼロからの業務構築や大規模DX推進を数多く手がけてきました。
現場の課題解決力には定評があり、これまでに次のような実績を積み重ねています。
赤字案件率0.5%未満という高い案件管理精度を維持
提案受注率83%を誇る、実行力に裏づけられた提案力
生成AIを活用した業務改革、DX推進、コンテンツ制作、戦略支援を一貫して提供
近年は脱炭素・省エネ・資源効率化をIT・データ・業務設計の視点から収益性に結びつける「実装型GX戦略」にも注力
国内にとどまらないグローバルな視点も特徴です。日本版ハーバードビジネスレビューへの寄稿を2回経験したほか、CES視察やサンフランシスコでのbtraxデザイン思考研修、シリコンバレー視察を5回以上重ねてきました。ドラッカーや孫正義氏、白潟敏朗氏、安達裕哉氏、後藤稔行氏といった経営者・専門家から学んだ知見をもとに、先見性ある意思決定と業界構造の転換を見据えた先行アクションを得意としています。
本記事も、製造業・建設業の海外展開支援に携わってきた経験をふまえ、実務に即した視点でまとめています。






